『きっかけ』
『小説版の主題』
今回の小説版でも原作であるゲームと同様に「突然降って沸いてきたように訪れる現実」というものを嫌というほど見せつけられた。主人公鳴海孝之(以下孝之)に幾度となく突きつけられる選択肢はいずれもこれと決めることが非常に躊躇われるものばかりで、もし同じような状況に陥ってしまったら誰だって思い悩んでしまうことであろう。『キャラの魅力』
基本的な内容がゲームと一緒ということもあったからか、キャラクターの見せ方は小説になっても相変わらず上手いなと思った。それぞれの登場シーンはインパクトがあったし、各人の主義主張というものがはっきりしていたことも面白さに繋がっていると思う。また、誰が見ても分かるくらいはっきりと差別化されたヒロインが縦横無尽に活躍させてもらえるシナリオだったことも楽しい気分に浸れる要因になっていると思う。『茜が孝之に辛く当たる原因』
3年後の涼宮茜(以下茜)が孝之に辛く当たってしまう原因を探ると、彼女の父親が孝之に「もう2度とこないで下さい」と話したことを知らされなかったことがいかに大きいかということを小説版を読んで改めて思った。一見すると何気ないことのように思われるかもしれないが、もし、このことを茜が知ったら同じような態度を孝之に見せただろうか、いや、それはないだろう。少なくとも一方的に敵視するようなことは茜の性格を考えると出来なかったような気がする。ただ、そうなると最悪の場合、涼宮の家庭が崩壊なんてことになりかねない可能性があるので、茜に教えなかったのは結果的に正解だったといえよう。『ふと思ったこと』
3年前の事故がきっかけで水月が孝之の側にいるようになったのなら、茜にもチャンスがあってもおかしくはなかったのではないだろうか。ゲームでは3年後まで親密になるきっかけがないが、やろうと思えば事故直後に近づくことも可能だったはずだ。そこで死んだような孝之を巡って水月と茜が争奪戦を繰り広げる、なんてことがあったらもっと面白かったかもしれない。『一通り読んで』
小説版の孝之は非常に好感の持てる青年というような印象を受けた。基本的にはゲームと同じ人格なんだけど、あの時は自分のことで思い悩む描写を嫌というほど見せつけられる演出のせいで孝之という人間を評価することがどうしても出来なかった。それに引き替え、小説ではその部分をほとんど切り捨て、最終的な決断も他人に任せず孝之自身の意志で決断したという描写になっていたことが何にも増して素晴らしかった。これによって単純に読みやすくなっただけでなく、以前のヘタレ大王から人間味のある魅力的な男前に変身したといっても過言ではない。『終わりに』
小説として読んでみたけど、やはり感動できる素晴らしいシナリオだった。高校時代の不器用さ加減や少し大人になってからの剥き出しの感情なんかは未だに色褪せてない。そうした人間だけに与えられた気持ちの洪水を再び肌で感じられたことが何よりも嬉しかった。小説タイトル | 作者 | 出版社 | 出版年度 |
君が望む永遠 (上下巻) |
アージュ(原作) 清水マリコ(著) バカ王子ペルシャ (原画) |
パラダイム | 2002年 (上下巻共) |
タイトル | 対応機種 | 発売元 | 発売年度 |
君が望む永遠 | win95、98、2000、me | アージュ | 2001年 |