My Merry May
2003年8月5日作成
最終更新日 2003年10月4日

シナリオについて
ヒロイン別に気になったこと
レゥ 吾妻もとみ  杵築たえ
その他

『きっかけ』

 「マイメリ」シリーズがコアなギャルゲーマーから評価されているということ知り、早速探してみるとその続編である「My Merry Maybe」は簡単に見つかったので、とりあえず触りをやってみたところ、好感の持てる内容だった。それなら前作もやってみようと思い、ちょっとした苦労の末、無事入手することに成功した。


『シナリオについて』

 共通ルートにおける純真無垢なレゥの可愛らしさと、各ヒロインルートにおけるシリアスな展開の両方を描こうと欲張ったことが徒となって、どちらも中途半端な感じで終わらせてしまっているのがこの作品最大の問題点であろう。バグというイレギュラーによって赤子同然の精神状態で現れたというアイデアそのものは光っていただけに、シナリオ後半ではそれを十分に生かしきれなったのが残念でならない。
 一方で違法とされているレプリスを使用していることが周りにバレてしまうことで、レゥと渡良瀬恭介が離れ離れになってしまうのでないかというシビアな設定も、シナリオが進むにつれて次第に緊張感が薄れていってしまったことに拍子抜けしてしまった。

「シナリオ全般を通して思ったこと」

 前半におけるレゥへの異常なまでの執着は、とてもではないが他のヒロインが割って入り込む余地なんてなかった。後半に入っても、レゥの精神状態が不安定で放っておけない状況下で、他のヒロインに乗り換えてしまうなんてこと、今までの恭介の態度を考えると納得出来ない。彼にとってレゥは掛け替えのない大切な存在であるはずのに、簡単に別のヒロインに乗り換えてしまったことが心情的に許せない。レゥとの信頼関係を築いたばかりで、これから愛情を育んでいかなければならないというのに途中で放棄してしまうなんて、いくらなんでも無責任ではないか。
 どうせ他のヒロインに惹かれてしまうのであれば、レゥがレプリスであるが故に起こるであろう問題は、フェードアウトさせるべきだったと思う。そうでなければ、それを十分に生かしたシナリオ、例えば最終的選ぶヒロインは全てレゥに統一して、他のヒロインはあくまでも恭介に対してサポートする存在に過ぎない、というような思いきった展開にしていた方がもっと楽しめたのではないだろうか。
 全体的に中途半端な印象を受けるシナリオの中でも、榛名ひとえルートは特に際立っていた。確かに恭介と恭平との間で揺れ動く乙女心は判らなくもないが、如何せんひっぱりすぎた。これに限らず、全体的に「どうでもいい描写が水増しされている」ように感じた。一つ一つは大したことがないものの、それを延々と続けられるとたまったものではない。そのもったいぶった言い回し自体も、わざと話を引っ張ってるとしか思えない退屈な代物でしかなかったことに、断続的なストレスを蓄積させられた。


【ヒロイン別で気になったこと】

レゥ

 レゥがレプリスである以上、恋愛の対象には決して為り得ないのだとしても、やはり彼女を選ぶことが妥当ではないかと思った。それに、いくらレゥが人間ではないからといっても、ゲームに登場する人物よりも魅力があって、その上人工的に作られたとは到底思えない身体機能を兼ね備えていたら、恭介でなくても恋愛対象となりうる1人の女性だと勘違いしたくもなる。
 ただ、もし、というよりほぼ間違いなくといって差し支えないとは思うが、レプリスが半永久的に不老不死であるならば、一番の悲劇はレゥAエンドであると言わざるを得ない。他のエンドのように距離を置いて扱うことになれば然程問題はない。しかし、一度恋愛感情が沸き起こって付き合っていくことになろうものなら、年月とともに感じる肉体のズレという壁にぶち当たるのは、もはや時間の問題であろう。
 言うまでもなく、レゥの身体はいつまで経ってもあどけない少女のままだし、一方恭介のそれは時と共に成長してしまう。それに、人である恭介は成長するばかりか、やがては年老いていくし、いつかは死んでしまう。いつに日か普通の幸せが訪れないであろうことを、どちらかでも気にし始めた時、2人の仲はどうなってしまうのだろうか。

「気になった台詞」

 そうした心配を他所に、レゥAエンドの最後にレゥが「魂がない自分が人を好きになって果たしていいのだろうか」みたいなことを呟くのだけど、何故だかあまりピンとこなかった。理由は「レプリスという存在が世間では疎まれていたとする設定の割には、実際のシナリオではそれ程強く感じられなかった」からだ。普段のレゥは一体どんな気持ちで恭介に接していたのだろうか。恭介に対して過度に甘えようとしていることばかりの印象しかないせいで、先の台詞にあるべき重みが全く感じられなかった。
 状況を考えればレゥが人と恋をすることは難儀なばかりか、本来ならば許されるはずがないことは容易に想像がつく。だからといって、そうした状況証拠だけでレゥに対して感情移入するのもどうなんだろう。そう思わせたいのであれば、そこに至るまでの間に、レプリスと人間との間には目に見えない深い溝があることを、実感させてほしかった。そこら辺の説明を碌(ろく)にしないで、いきなりそんなことを言われても正直困ってしまう。



吾妻もとみ

 ゲームの設定のことを抜きにすれば凄惨な過去を持つもとみシナリオはそんなに悪くはない。もとみと亮が別れた理由というものには驚いたし、その原因の一端を担っていた彼女が背負ってしまった十字架の重さには、なんともいたたまれない気持ちになった。確かにもとみのしてしまった軽率な行為は褒められたものではない。それはそうなのだけど、もし、もとみのように極限にまで追い詰められた状況というものを想像すると、一方的に責められないもどかしさも感じた。
 ただ、この手の陰惨な表現というのを家庭用で表現しきるのは非常に難しい。出来るものなら18禁パソゲーとして出していた方が、シナリオとしての充実度は飛躍的に向上したのではないかと思う。とはいえ、いくらもとみに暗い影が付きまとっているからといって、亮の代わりに彼女のことを支えられるかというと、レゥのことで精一杯な恭介には無理な話だと思う。



杵築たえ

 最終的にたえを選んでしまうたえAエンドはこの際除外するとして、たえ、恭介、レゥが家族のような絆で結ばれるたえBエンドに関してはそれなりに納得している。ただ、出来ることなら、レゥがレプリスであることをたえが納得するという部分は最初にもってきてほしかった。なんといっても、たえは代理とはいえ寮母であるし、レプリスに関しても他の人に比べて抵抗が少ないという設定であるならば、まずは何を於いても彼女にだけは、理解を求めるべきだったのはないかと思った。
 そうすると、たえエンドが作りにくくなるかもしれないが、予め彼女がレゥの理解者になって何かとフォローしてあげる存在になってくれていれば、その後のシナリオの説得力は格段に増したのではないかと思う。


【その他】

『システムについて』

 メッセージ表示の速度が変えられないという致命的な欠陥によって、ゲームの進行を著しく妨げられた。これではいくら他の部分が優れていたとしても、とてもではないが評価することは出来ない。

『最後に』

 まるで手の掛かる小さな子供のように振舞うレゥに振り回される前半はそれなりに面白いと思う。しかし、後半になってレゥがレプリスであるという設定が今ひとつ生かされてなかったことは、大きなマイナスであろう。操作面でも、普通にプレイしててストレスを蓄積させる環境も如何なものだろうか。レプリス関連のアイデア自体は面白そうな素材だっただけに、あらゆる意味で詰めの甘い完成度が全てをぶち壊してしまった。



【今回プレイしたゲーム】
タイトルメーカー 対応機種発売年度
My Merry MayKID PS22003年