『きっかけ』
『シナリオについて』
「シナリオ全般を通して思ったこと」
「気になった台詞」
一方で違法とされているレプリスを使用していることが周りにバレてしまうことで、レゥと渡良瀬恭介が離れ離れになってしまうのでないかというシビアな設定も、シナリオが進むにつれて次第に緊張感が薄れていってしまったことに拍子抜けしてしまった。
どうせ他のヒロインに惹かれてしまうのであれば、レゥがレプリスであるが故に起こるであろう問題は、フェードアウトさせるべきだったと思う。そうでなければ、それを十分に生かしたシナリオ、例えば最終的選ぶヒロインは全てレゥに統一して、他のヒロインはあくまでも恭介に対してサポートする存在に過ぎない、というような思いきった展開にしていた方がもっと楽しめたのではないだろうか。
全体的に中途半端な印象を受けるシナリオの中でも、榛名ひとえルートは特に際立っていた。確かに恭介と恭平との間で揺れ動く乙女心は判らなくもないが、如何せんひっぱりすぎた。これに限らず、全体的に「どうでもいい描写が水増しされている」ように感じた。一つ一つは大したことがないものの、それを延々と続けられるとたまったものではない。そのもったいぶった言い回し自体も、わざと話を引っ張ってるとしか思えない退屈な代物でしかなかったことに、断続的なストレスを蓄積させられた。
ただ、もし、というよりほぼ間違いなくといって差し支えないとは思うが、レプリスが半永久的に不老不死であるならば、一番の悲劇はレゥAエンドであると言わざるを得ない。他のエンドのように距離を置いて扱うことになれば然程問題はない。しかし、一度恋愛感情が沸き起こって付き合っていくことになろうものなら、年月とともに感じる肉体のズレという壁にぶち当たるのは、もはや時間の問題であろう。
言うまでもなく、レゥの身体はいつまで経ってもあどけない少女のままだし、一方恭介のそれは時と共に成長してしまう。それに、人である恭介は成長するばかりか、やがては年老いていくし、いつかは死んでしまう。いつに日か普通の幸せが訪れないであろうことを、どちらかでも気にし始めた時、2人の仲はどうなってしまうのだろうか。
状況を考えればレゥが人と恋をすることは難儀なばかりか、本来ならば許されるはずがないことは容易に想像がつく。だからといって、そうした状況証拠だけでレゥに対して感情移入するのもどうなんだろう。そう思わせたいのであれば、そこに至るまでの間に、レプリスと人間との間には目に見えない深い溝があることを、実感させてほしかった。そこら辺の説明を碌(ろく)にしないで、いきなりそんなことを言われても正直困ってしまう。
吾妻もとみ
ただ、この手の陰惨な表現というのを家庭用で表現しきるのは非常に難しい。出来るものなら18禁パソゲーとして出していた方が、シナリオとしての充実度は飛躍的に向上したのではないかと思う。とはいえ、いくらもとみに暗い影が付きまとっているからといって、亮の代わりに彼女のことを支えられるかというと、レゥのことで精一杯な恭介には無理な話だと思う。
杵築たえ
そうすると、たえエンドが作りにくくなるかもしれないが、予め彼女がレゥの理解者になって何かとフォローしてあげる存在になってくれていれば、その後のシナリオの説得力は格段に増したのではないかと思う。