氷の世界
2000年9月26日作成
最終更新日 2001年2月24日

『あらすじ』

 主人公『江木塔子(以下塔子)』と付き合う男性は皆死ぬ。奇妙なのはどのケースも男性が死ぬ直前に保険金が解約されていることだ。はたして偶然なのだろうか。それとも彼女が意図的に行ったことなのか。このことで塔子を疑う男が三人出てきた。刑事『烏城武史(以下武史)』、保険会社員『廣川英器(以下英器)』、大学時代の同級生『迫田正午(以下正午)』、それぞれが独自に調べはじめた。はたして塔子は大勢の人を殺してしまう人なのか、否か。

『第一印象』

 サスペンスとしてこの先どうなるんだろうと気にさせる展開なので悪くない。つかみ所のない塔子の人柄、生い立ちはもちろん、事件や謎、回想シーンなどの見せかたを見る限り、今後を期待させるに十分な内容だった。彼女を追い回す男達も一筋縄ではいかない癖のあるキャラであることも非常に興味をそそられる。オープニングでの意味ありげなメッセージも見逃せない。一瞬だがあたかも塔子が犯人と思わせるとこや、烏が舞い上がる事で烏城夫婦(妻は『眞砂子』)が怪しいことを匂わせるなど、見所はいっぱいだ。

『気になる点』

 ただ、ひっかかるところもある。確かな証拠がないにもかかわらず、あそこまで塔子を疑う根拠はなんだろう。あるのは警察に届けられた一つの手紙「学園内に犯人がいる」それだけで普通あそこまで執拗に調べ上げ、精神的に追いつめるものだろうか。どこの誰が出したのかわからない手紙に必要以上に固執することはないと思う。今回の話で塔子が15歳の時両親が焼身自殺を図り、その傍らで呆然としていたということがわかった。その際、父親の保険金は借金の返済に回され、母親の保険は塔子の手元に渡った。この時七千万もの大金を手に入れた。その後同じように保険金をせしめていれば疑ってもおかしくない。実際は塔子や昔の彼氏『久松皓一(以下皓一)』が保険を解約させていたこともあり、大金は手にしていない。このことで英器はお金ではない何かを得たはずだと、自身ありげに話す。そんなの彼の想像でしかないのに、何故そこまで言い切れるのだろう。とはいえまだ分けのわからない部分が多いのでもう少し様子を見てみようと思う。

『深まる謎』

 一連の殺人は誰が行ったのかさっぱりわからない。誰にも動機があるにはあるが、決め手にかける。唯一彼氏を取られた婦人警官『庄野月子(以下月子)』が塔子に携帯を送り付け、なにかしらの罠にはようとしている事は気になる(実際は鳥城真砂子の仕業ということが判明)。次週では殺されてしまうようだし(しかし、殺されたのは全く別の女性だった。

『魅力的でない主人公』

 八幕で塔子の過去を見て、少しがっかりさせられた。自分の理想通りの人物像でないと醒めてしまうとは何事だ。そんなの当たり前じゃないか。完璧な人間なんているわけない。さらに失望したのは最初だけでなく、第二第三の恋人に対しても全く同じ接し方を求めようとしているのにはあきれた。とどめはそんな塔子を見てもあきらめずにいる男共だ。はっきりいてこんな女、早々に見切りをつけて別れた方がいい。
 すると疑問が浮上してきた。彼らは塔子の何に惹かれたのだろう。彼女は愛想は良くないし、わがままで、自分だけが正しいと思い込んでいる。こんな身勝手な女のどこがいいというんだ。はっきりいって塔子に魅力が感じられない。このせいで、このドラマに対する興味はかなり薄れてしまった。一応、最後までは見るつもりだけど、このままでは犯人が誰なのかということだけしか関心を持てなくなりそうだ。

『納得いかないことが多すぎる』

 最終回直前までの話を見てわかったのは、江木塔子はみだりに怪しい表情をすることくらいだ。どういう意図でそのような表情をするのかはさっぱりわからん。拘留から開放されたときの勝ち誇った顔以外は以前と変わりがない。つまり、容疑者と思われる人物は全員疑わしいけど、それぞれの犯行の動機は全くつかめなかった。そもそも犯人が一人なのか複数なのかの見当もつかないのに推理もへったくれもない。まあ、とにかく最終回で納得のいく説明がなされることを祈る。

『自分なりの推理』

 その前に一応犯人の予想をしてみたい。まずは一番怪しい『江木塔子』。はっきりいって本命である。彼女なら犯行の動機がしっかりとあるからだ。つまり屈折した愛情を得るために連続殺人を重ねてしまう異常人格者ということなら納得できる。ただ、彼女が犯人でも疑問が残る。警察に出した手紙の意味が分からなくなる。折角事故に見せ掛けたのにわざわざ自分が殺人者だと教えるようなことはしないと思う。塔子が犯人だとすると別の人間が手紙を出すことはありえる。思い違いでなければ手紙の主こそ一連の事件の犯人だと考えている(今回の物語で唯一当たっていた推理)。この問題が解決すれば間違いなく塔子が犯人だといえよう。これ以外で携帯電話による謎の声やブルドーザーで英器を襲ったのは別(最有力は『庄野月子』)だとすればつじつまは合うので問題無いはず。
 次に怪しいのは『迫田正午』。理由は現生存者(皓一は死んだものと仮定して)の中で塔子ともっとも深い関わりを持つ人間だからだ。最初の犠牲者が出る前に正午は塔子に振られていることから、彼女を奪う人間を次々と殺害した可能性はあるだろう。しかし正午の妹『迫田ななみ(以下ななみ)』が殺害された時間は警察に交流されていたので、犯行は不可能に思える。仮に可能だとしてもななみは実の妹である。血のつながった家族を殺すことがはたしてできるのか。それとも塔子を愛するがゆえに妹に手をかけなければならないほど追いつめられていたというのだろうか。
 後は横一線という感じがする。『廣川英器』『烏城武志』『庄野月子』のいずれかが犯人の場合、過去に塔子と知り合っていると匂わすシーンが全くないのが気になる。そう、彼らが犯人だと動機が全く見えない。英器と月子の場合、八年もの間付き合っていたというのが犯人としてネックとなる。これが事実なら、塔子と知り合うはずがないので犯行の理由が見つからない。烏城も同様で、前の二人と違うのは彼宛てにきた手紙が自作自演ならありえない話でもない。ただねえ、たとえ手紙が烏城だとして一体どんな理由で連続殺人を犯したのかが説明できなくなる。残りの二人、烏城の奥さんとバーテンのねーちゃんは物語にあまり絡んでいないので彼女らが犯人ということはまずない。
 最後に『久松浩一』であるが、もし生きていたとすると彼が犯人だとしても全くおかしくない。理由は正午と同じで塔子に言い寄る蛆虫共を排除するためだ。ひっかかるのは久松自身が死体として引き上げられたシーンで塔子と正午の二人は久松本人であることを確認していることである。このあたりをうまく偽装しているのなら久松が真の犯人でまだ生きていることもありうる。最終回直前での結論、第一候補は江木塔子で決まり。あとは迫田正午と久松浩一に犯人である可能性も十分考えられる。それ以外は動機不十分で犯人だとはいえない。さあ、結果はどうなのだろうか。

『なんじゃそりゃ』

 最終回を見た。唖然とした。なんと、真犯人は『烏城真砂子』だったのだ。犯行理由を聞くと横からひょいと現れたかと思うと、あっという間に犯人面をしていた。そんなイメージが浮かぶ。あれほどストーリーに関わらなかったくせに。しかし、これこそが作者のいう引っかけだったのだろう。動機はというと、塔子の最初の恋人である桧山は以前真砂子と付き合っていた。ところがいきなり塔子に彼を取られたかと思えば、いつの間にやらIRAのテロの銃弾で命を落としてしまう。恋に破れた上に彼の命までも奪っていった塔子が憎い。こうなったら徹底的に彼女の人生を破壊すること、これが真砂子の犯行の動機である。後は塔子に恋人ができるたびに邪魔をし、真砂子自身に危害をもたらしそうな人物は容赦無く排除した。その結果、男女各二名、計四人もの尊い命を奪い、英器も殺害しようとしたが未遂に終わる。ていうか、英器も本来ならとっくに死んでてもおかしくないんだけど、制作側の御都合主義により奇跡の復活を遂げてしまう。
 最後にこれだけの出鱈目を並べるのであれば、始めからギャグとして作ってほしかった。そうすれば矛盾だらけでなんでもありの世界を描いてても楽しく見られたかもしれない。登場人物の作り込みも甘いので、設定上の矛盾に気づかせない工夫は必要不可欠だ。それでも最終回直前までは犯人が誰なのかを予想する楽しさがあったことは否めない。塔子の奇怪な仕種や他の登場人物の異常ともいえる行為から犯人像を想像するのは結構おもろかった。それにインターネットで様々な意見を拝見できた。おかげでいろんな角度からドラマを見られた。

『結論』

 結局、このドラマで伝えたいことがわからなかった。サスペンスと恋愛、二つの難しいテーマを中途半端に表現しようとしたことが失敗の原因である。基本的に物語が同時進行しないのも失敗だと思う。その一つの展開にしてもストーリーとしての中身は薄い。そのため話の間で疑う余地を産んでしまっている。多くのエピソードを盛り込み、視聴者にいろいろと考えさせる作りにしていれば、また違った評価になっていたと思う。ただし、こんなことをしたらサスペンスとて成立しないかもしれないが・・・。
 どうせなら気持ちよくだまされたかった。納得いくいかないはともかく、『氷の世界』なりの理屈というか、ルールというものをはっきり示してほしかった。そうすれば、たとえどんなに矛盾に満ちていようが、不満を述べることはなかった。しかし、最終回直前まであれほどシリアスな展開にしておいたくせに、土壇場でこれまでの約束事をあっさりと破られた、そんな感じがしてならない。つまり、筋の通った展開を見せたいのであれば最後まで貫き通せといいたい。最終回であんな茶番を見せられては「なんだよ、そりゃないだろ、詐欺だこの野郎」と言われても仕方がないと思う。どうせやるのであればもっと徹底的に、それこそ視聴者が呆れるくらいのハチャメチャな展開にした方が潔かった。せっかく物語として期待させる部分があっただけに残念でならない。


【今回見たドラマ】
タイトル放送局 放送年度
氷の世界フジテレビ 不明