『あらすじ』
『第一印象』
サスペンスとしてこの先どうなるんだろうと気にさせる展開なので悪くない。つかみ所のない塔子の人柄、生い立ちはもちろん、事件や謎、回想シーンなどの見せかたを見る限り、今後を期待させるに十分な内容だった。彼女を追い回す男達も一筋縄ではいかない癖のあるキャラであることも非常に興味をそそられる。オープニングでの意味ありげなメッセージも見逃せない。一瞬だがあたかも塔子が犯人と思わせるとこや、烏が舞い上がる事で烏城夫婦(妻は『眞砂子』)が怪しいことを匂わせるなど、見所はいっぱいだ。『気になる点』
ただ、ひっかかるところもある。確かな証拠がないにもかかわらず、あそこまで塔子を疑う根拠はなんだろう。あるのは警察に届けられた一つの手紙「学園内に犯人がいる」それだけで普通あそこまで執拗に調べ上げ、精神的に追いつめるものだろうか。どこの誰が出したのかわからない手紙に必要以上に固執することはないと思う。今回の話で塔子が15歳の時両親が焼身自殺を図り、その傍らで呆然としていたということがわかった。その際、父親の保険金は借金の返済に回され、母親の保険は塔子の手元に渡った。この時七千万もの大金を手に入れた。その後同じように保険金をせしめていれば疑ってもおかしくない。実際は塔子や昔の彼氏『久松皓一(以下皓一)』が保険を解約させていたこともあり、大金は手にしていない。このことで英器はお金ではない何かを得たはずだと、自身ありげに話す。そんなの彼の想像でしかないのに、何故そこまで言い切れるのだろう。とはいえまだ分けのわからない部分が多いのでもう少し様子を見てみようと思う。『深まる謎』
一連の殺人は誰が行ったのかさっぱりわからない。誰にも動機があるにはあるが、決め手にかける。唯一彼氏を取られた婦人警官『庄野月子(以下月子)』が塔子に携帯を送り付け、なにかしらの罠にはようとしている事は気になる(実際は鳥城真砂子の仕業ということが判明)。次週では殺されてしまうようだし(しかし、殺されたのは全く別の女性だった。『魅力的でない主人公』
八幕で塔子の過去を見て、少しがっかりさせられた。自分の理想通りの人物像でないと醒めてしまうとは何事だ。そんなの当たり前じゃないか。完璧な人間なんているわけない。さらに失望したのは最初だけでなく、第二第三の恋人に対しても全く同じ接し方を求めようとしているのにはあきれた。とどめはそんな塔子を見てもあきらめずにいる男共だ。はっきりいてこんな女、早々に見切りをつけて別れた方がいい。『納得いかないことが多すぎる』
最終回直前までの話を見てわかったのは、江木塔子はみだりに怪しい表情をすることくらいだ。どういう意図でそのような表情をするのかはさっぱりわからん。拘留から開放されたときの勝ち誇った顔以外は以前と変わりがない。つまり、容疑者と思われる人物は全員疑わしいけど、それぞれの犯行の動機は全くつかめなかった。そもそも犯人が一人なのか複数なのかの見当もつかないのに推理もへったくれもない。まあ、とにかく最終回で納得のいく説明がなされることを祈る。『自分なりの推理』
その前に一応犯人の予想をしてみたい。まずは一番怪しい『江木塔子』。はっきりいって本命である。彼女なら犯行の動機がしっかりとあるからだ。つまり屈折した愛情を得るために連続殺人を重ねてしまう異常人格者ということなら納得できる。ただ、彼女が犯人でも疑問が残る。警察に出した手紙の意味が分からなくなる。折角事故に見せ掛けたのにわざわざ自分が殺人者だと教えるようなことはしないと思う。塔子が犯人だとすると別の人間が手紙を出すことはありえる。思い違いでなければ手紙の主こそ一連の事件の犯人だと考えている(今回の物語で唯一当たっていた推理)。この問題が解決すれば間違いなく塔子が犯人だといえよう。これ以外で携帯電話による謎の声やブルドーザーで英器を襲ったのは別(最有力は『庄野月子』)だとすればつじつまは合うので問題無いはず。『なんじゃそりゃ』
最終回を見た。唖然とした。なんと、真犯人は『烏城真砂子』だったのだ。犯行理由を聞くと横からひょいと現れたかと思うと、あっという間に犯人面をしていた。そんなイメージが浮かぶ。あれほどストーリーに関わらなかったくせに。しかし、これこそが作者のいう引っかけだったのだろう。動機はというと、塔子の最初の恋人である桧山は以前真砂子と付き合っていた。ところがいきなり塔子に彼を取られたかと思えば、いつの間にやらIRAのテロの銃弾で命を落としてしまう。恋に破れた上に彼の命までも奪っていった塔子が憎い。こうなったら徹底的に彼女の人生を破壊すること、これが真砂子の犯行の動機である。後は塔子に恋人ができるたびに邪魔をし、真砂子自身に危害をもたらしそうな人物は容赦無く排除した。その結果、男女各二名、計四人もの尊い命を奪い、英器も殺害しようとしたが未遂に終わる。ていうか、英器も本来ならとっくに死んでてもおかしくないんだけど、制作側の御都合主義により奇跡の復活を遂げてしまう。『結論』
結局、このドラマで伝えたいことがわからなかった。サスペンスと恋愛、二つの難しいテーマを中途半端に表現しようとしたことが失敗の原因である。基本的に物語が同時進行しないのも失敗だと思う。その一つの展開にしてもストーリーとしての中身は薄い。そのため話の間で疑う余地を産んでしまっている。多くのエピソードを盛り込み、視聴者にいろいろと考えさせる作りにしていれば、また違った評価になっていたと思う。ただし、こんなことをしたらサスペンスとて成立しないかもしれないが・・・。タイトル | 放送局 | 放送年度 |
氷の世界 | フジテレビ | 不明 |