『改めて思ったこと』
『気になったこと』
だだ、一つだけ気になったのは、紗南に降りかかる事件によって脅かされる生命の危機感が後を追う毎に強まっていったことだ。そりゃ、目の前の困難に立ち向かっていく彼女のひたむきな姿は、見ていて励ましたくなるけど、紗南が心の病を煩ったり秋人が大怪我を負わされて死線を彷徨う件に至ってはかなり複雑な心境になった。「もし取り返しのつかないことになってしまったら」という心配を抱く一方で「極限にまで追い込まれたことで、紗南と秋人の絆がより深まった」ことに感動したのも事実である。とはいえ、正直これ以上厳しい展開となると、それこそ紗南か秋人が死ぬくらいしかなかっただろうから、これで終わってくれたことにホッとしている気持ちもあったりする。『もし』
そう考えると、もし、紗南と秋人がぶつかり合うことのないまま、彼の反抗的な態度だけ酷くなっていたとしたら、なんて考えると背筋がゾッとする。秋人の精神が安定するまでの間に、一度でも紗南が全てを投げ出してしまうようなことがあったとしたら、きっと彼は人生を棒に振っていたかもしれない。羽山の行っていた悪行をそのまま野放しにしていたら、本人のみならず、紗南や周りの人間も多かれ少なかれ不幸の渦に巻き込まれていたかもしれない。その後も、いろいろとトラブルに遭遇するが、そのいずれの瀬戸際も、一歩間違えればとんでもない事態になっていたかもしれない。まるで危険な綱渡りをギリギリのところで乗り越えたからいいようなものの、どこかで一度でも挫折して間違った道に進んでしまったらと考えると、未だに恐ろしくて仕方がない。『「こどものおもちゃ」最大の面白さ』
「こどものおもちゃ」最大の面白さはなんだろうと考えると、意外と難しいことに気がついた。かなり悩んだ挙句見出した結論は「こどちゃという作品には大小様々なアイデアが随所に散りばめられていたこと」ではないかだろうか。これは「踊る大走査線 THE MOVIE」の解説に耳を傾け、それを土台に「松浦 シングル M クリップス@」を観ていてそのように感じたからだ。踊るにしろ松浦にしろ、大勢のクリエイター達が作品のイメージに相応しいアイデアを出し合ってその都度反映させていくという積み重ねをした結果、エンターテイメントとして存分に楽しめる内容に仕上げている。『最後に』
いろいろと込み入った内容が詰め込まれていたにも関わらず、話が破綻することなく、それでいて興味を失わせることのないまま、最後まで駆け抜けていったことは本当に素晴らしい。今まで読んだ中でもっとも心に残るコミックに相応しい極上の内容だったといえよう。アニメも含め、「こどものおもちゃ」という類まれな作品に出会えて心から感謝している。タイトル | 作者 | 出版社 | 第1巻 出版年度 |
こどものおもちゃ 1〜10巻 | 小花美穂 | 集英社 | 1995年 |
タイトル | メーカー | 発売年度 |
踊る大走査線 THE MOVIE | フジテレビ | 2000年 |
松浦 シングルMクリップス@ | ゼティマ | 2002年 |