頭文字D
1998年9月24日作成
最終更新日 2004年1月5日


『第一印象』

 「頭文字D」を知るまで86はおろか、トレノ、レビンと呼ばれる車があったこと自体知らなかった。だもんだから、車に関する専門用語が出てきてもチンプンカンプンではあるが、そういうことを知らなくても迫力のあるドリフト映像を見るだけで、十二分に楽しめる。それくらい映像による演出の凝りようが際立っていた。
 車に関してはCGで使われることが多いが、アニメ処理の風景の中にCGの車が紛れても、全く違和感がないのは凄いことである。また峠のバトルの一部では全てCGに切り替わり、アニメでは難しい派手なドリフト走行を見事なまでに表現していたのも凄い。それに、同じドリフトでも暗がりでライトを点灯させた車がコーナーを滑ると、光の演出が加わることで倍増する迫力の映像は堪らないものがある。おまけに、今風(1998年当時)に洗練されたスタイリッシュな車が多数登場していることも、ファン心をくすぐっているのだと思う。

『CG以外の凄さ』

 CG技術もさることながら、溝落としなんていうとんでもない方法で、コーナーを攻めるという馬鹿馬鹿しい発想も、好きだったりする。実際に試せるかどうかはともかく、それを会得するとより早く走れるようになるかもしれない、という不思議な説得力はあったと思う。
 「頭文字D」の目玉は何も、CGによる派手なドリフトシーンだけではない。挿入される「ユーロビート」と呼ばれるダンスミュージックもまた、鳥肌が立つ程に素晴らしい。特有のシンセによるアグレッシブなフレーズはモータースポーツと相性がいいようで、レースシーンと融合することで迸る鼓動の熱さは、計り知れないものがある。
 ちなみに、「ユーロビート」というジャンルがあることを知ったのも「頭文字D」が始めてだった。アニメで挿入される曲を聴いて即座に気に入り、コンピレーションアルバムのCMで流れる曲に身震いした自分は、購入することを即決した。そして、気がつくと「SUPER EUROBEAT」シリーズを始めとするコンピレーションものを(全てではないが)、集めるようになっていた。

『拘りの運転技術』

 例えば、主人公の藤原拓海は何故ドリフトテクニックのことになると、異常なほど飲み込みがいいのか。その理由を紐解くと、運転だけに集中できる環境に身を置いていたことが原因のようだ。なにせ拓海自身は中学のときから五年間、毎日豆腐の配達で運転していた(本当は駄目だけど)のだ。そりゃ、毎日走っていれば嫌でもテクニックが身についてしまうだろう。
 さらに車のセッティングは父親の文太が完璧に調整しているので、タクミは運転のみに集中できる。普通の車好きは運転だけでなく、整備の方にもコスト(お金、時間、労力)を使わなければならない。練習時間が削られれば、どうしたって運転技術の向上は妨げられてしまう。拓海のように恵まれた状況は現実には有り得ないだろうけど、才能が開花させる為には必要だったのだろう。
 また、物語が進むにつれてますます磨きが掛かっていく拓海のドライビングテクニックも、派手なCGとは違った面白さを生み出していた。例えば、バトル中にガムテープデスマッチでコーナーを曲がることをきっけに、拓海は「なにかコツをつかんだな」という仕草をした後、驚異的な適応を見せる場面がある。何気ないことをヒントにして、上達の極意をドライバーの一挙手一投足を交えるなんて、なんとも憎い演出をしてくれる。

『感心したこと』

 拓海の頑固親父文太が「ドラテクは人に教えてもらうのではなく、自分で見つけるものだ」と池谷先輩に諭していたところに、ちょっとばかり感心した。それ自体はとても重要ではあるけど、こと車に関してはテクニックだけ磨けばいいのかというとそうもいかない。車を維持するだけでもお金が掛かるし、メカを弄るようになればその費用だって馬鹿にならない。拓海のように運転に専念できる環境にいればいいが、年齢の問題やお金が莫大に必要だということを考えると、理想ばかり追ってもいられないだろうな。

『最後に』

 車好きはもちろんのこと、自分のようにそれ程興味がなくても、ユーロビートとCGが融合したドリフトシーンの迫力は一見の価値がある。これで自分も車好きになろうとか、要所で熱く語られる走り屋ならではの拘りを積極的に理解しようとは思わないが、何かに対して情熱を注ぐことが如何に大切かということを、このアニメを通して教えられたような気がする。

【今回観たアニメ】
タイトル発売元 発売年度
頭文字D
VOLUME-1〜7
エーベックス2000年

【参考資料】
『CD』
タイトル発売元 発売年度
SUPER EUROBEAT presents
頭文字[イニシャル]D
〜D SELECTION〜
エーベックス 1998年
SUPER EUROBEAT presents
頭文字[イニシャル]D
〜D SELECTION2〜
エーベックス 1998年
SUPER EUROBEAT presents
頭文字[イニシャル]D
〜D SELECTION3〜
エーベックス 1999年
SUPER EUROBEAT VOL.90
ANNIVERSARY NON-STOP MIX
REQUEST COUNT DOWN 90!!
エーベックス 1998年