頭文字D Second Stage
(+Extra Stage インパクトブルーの彼方に・・・)
2001年7月1日作成
最終更新日 2004年3月6日

『はじめに』

 拓海にとって、セカンドステージはいろんな意味で転機を迎えたと思う。86を中心に車に対する関わり方はもちろん、友達以上恋人未満の茂木ナツキとの関係が今シリーズで大きく変わろうとしていた。

『演出について』

 前シリーズ以上のきめ細かなCGで車が描かれるようになったことで、ドリフトシーンの派手な演出はさらにパワーアップした。中でもまるで暴れ馬のように穴を振りながら走行する86ターボの常識では有り得ない挙動には、新鮮な見応えがあった。それに、今回は音楽がいろんな意味で効果的に使用されている。86ターボのブースト音や拓海の86トレノに搭載されたレース用エンジンの回転音は、なんともいえない心地よさがある。
 また、バトルの最中に挿入されるユーロビートは、相変わらずドラマチックに使われていていい感じだ。特に、秋山渉が強引に高橋啓介にバトルを仕掛けようと決心した瞬間に「BIG IN JAPAN」(ロバート パットン)のカウントダウンが始まり、86ターボが急旋回するところで「ビッグインジャパン、ビッグインジャパン」との合いの手が入り、一気にバトルに突入していく演出には痺れまくった。台詞、曲、エンジン音、いずれもが完璧なタイミングで挿入されていたのだから凄すぎる。
 音関連の強化という意味ではサントラBGMの充実振りも聴き逃せない。場面に合った曲作りなのはもちろん、アイキャッチの時に流れるBGMの数々もセンスの良さを感じた。それも意味もなくたくさん用意したのではなく、作者のこだわりが感じられる凝った楽曲が多いことにいたく感心した。

『ストーリーについて』

 今回のテーマは走り屋のポリシーとでもいえばいいだろうか。登場するそれぞれのキャラには車を転がす上での信念というものがある。それ故に、あるところで対立すればバトルが発生し、勝負の最中や決着がついた後に「何故そういう結果になったのか」をさり気なく解説してくれる。この時の説明がまたマニアックで面白かった。
 印象に残っているのは、赤城で拓海が恭一とのバトルで86をエンジンブローさせてしまうシーンだ。86のポテンシャルを100パーセント出し切ってもパワーの差が埋められない悔しさというものが十分伝わってきた。まるで自分の手足のように操っていたのに、それを自らの手で壊してしまったのだから、これ程辛いことはない。たかが車のエンジンが逝かれただけだというのに、拓海の気持ちを察すると、無性に悲しくてしょうがなかった。
 他にも、「ラリーを制したものが絶対に速いんだ」と主張する須藤恭一と 「峠には峠のテクニックがある」ことを自負している高橋涼介による因縁の対決は熱かった。このバトルで興味深かったのは、バトルで負けた恭一が、涼介にその理由を尋ねるところで意外な事が判ったことだ。それは「ある特定の右コーナー、それも対向車が来る恐れを感じる右コーナーでインで突くのが下手」だと涼介はいう。これを克服するには「とにかく経験を積むしかないが、続けていくことで100%に近づけることは出来る」そうだ。「これまで対向車が来ないサーキットでしか走っていなかったことが恭一の敗因である」というような数々の説明に何度となく唸らされた。
 また、彼の地元である日光いろは坂も一方通行で対向車はない。さらに前日、タクミとのバトルで手の内をすべて披露してしまったことで恭一の欠点が見えたとも涼介はいう。これだけ的確で判りやすい説明をされてしまうと、もはや納得するしかない。運転技術だけでなくストリートならではの精神的なプレッシャーも勝敗に左右されることに、峠にしかないテクニックの奥深さというものをつくづく思い知らされた。

『最後に・・・』

 今後の展開で気になるのは『86トレノに挿入されたニューエンジンの実力は周りと比べてどのくらいのレベルのものなのか、結果的にエンジンを載せ変えるきっかけとなった友達以上恋人未満のなつきとのギクシャクした関係はどうなるのか、そして何より、渉との出会いで「ぽっかり欠けていたもの」を指摘されたことで拓海がどのように成長していくか』といったところである。



『おまけ(インパクトブルーの彼方に・・・)』

 番外編ということもあって本物のユーロビートが挿入されてなかったのはちょっと残念。CGによる映像の迫力も車体の質感が頑張っていたことを除けばそこそこのレベルだったものの、いくつか気になる台詞があって、それについてはいろいろと考えさせられた。
 どんなことにでも当てはまるだろうが、ある程度のレベルまでなら誰でも努力すれば必ず達成出来る。問題はそこからで、あくまでも趣味を嗜む程度で満足するのか、それとも、さらに上の領域にまで辿り着きたいと思うのか、ということだろう。目の前に大きな壁があって、それが自分の能力で乗り越えるのはかなり厳しいものだとしたら、誰だって迷ってしまう。そういったターニングポイントに差し掛かった時、自分のやってきたことが果たして本当にやりたいことだったのかどうか。それによって選択していく将来が自ずと変わっていくのかと思うと「好きなことを続けるのが如何に大変か」ということを改めて実感した。



【今回観たアニメ】
タイトル発売元 発売年度
頭文字D Second Stage
VOLUME-1〜4
エーベックス2000年
頭文字D Extra Stage
インパクトブルーの彼方に・・・
エーベックス2000年

【参考資料】
『CD』
タイトル発売元 発売年度
SUPER EUROBEAT presents
頭文字[イニシャル]D Second Stage
〜D SELECTION1〜
エーベックス 1999年
頭文字[イニシャル]D Second Stage
SOUND FILE
エーベックス1999年