アニメ こどものおもちゃ
(第1話〜第19話)
2003年9月5日作成
最終更新日 2003年9月24日

『なんだか凄い作品たる理由』

 第一話でいきなり倉田紗南という強烈な個性を持ったヒロインが画面を所狭しと弾けているのが強く印象に残った。勢い良く捲くし立てるように台詞の数々を喋りまくる姿は、元気を通り越して変な女の子というイメージが一話にして出来上がった。その後も「虎のイノシシ、キタキツネ」に代表される故事、諺などの言葉の使い方のズレが、どうしようもないくらいに可笑しくて仕様がなかった。勢いという意味では、これまでの内容をストレートに反映した破天荒な歌詞を唐突に歌わせるという発想にも感心してしまった。
 その後もナンセンスとしかいいようのないギャグが妙に冴え渡っていたせいか、何がなんだか判らないうちに話が終了するという滅茶苦茶な展開だったにも関わらず「なんだか凄い作品ではないか」という印象を抱いてしまった。その理由を考えてみると「単純な学園ドタバタコメディーという体裁を取りつつ、紗南を筆頭に彼女と深い関わりを持つようになる羽山秋人が抱える心の闇というものを実感させる内容」だったからだ。
 第1話におけるおちゃらけ色の印象が強かっただけに、羽山一家の家族問題が浮き彫りになってからのゾクゾク感は半端ではなかった。さらに、紗南が抱えている不安が浮き彫りになる頃には、当初抱いていたギャグ色の強さは実のところおまけ(にしては面白すぎ)に過ぎず、本当は負の内面を抉り出すシリアスさがメインディッシュだったのだ、と思い知らされた。それまでは「不安にさせたいのか、笑わせたいのかどっちやねん」という気持ちも少なからずあったのだけど、作品の意図に気づいてからは、相反する齟齬を際立たせる演出こそがこの作品最大の面白さではないか、と思うようになった。そのメインイベントであるシリアスな展開は原作とほぼ一緒なので、そのことについてはコミックの方で詳しく説明しようと思っている。

『アニメならではの遊び心』

 何かと登場頻度の多い謎のツッコミ白コーモリ「ばびっと」がボケたり突っ込んだり、時には場面を仕切る黒子のような役割を担ったりなど、作品のスパイス的な面白さを存分に発揮していた。ライナーノーツによると、最初の頃「ばびっと」が突っ込むシーンは無理矢理だったみたいなことが書かれていて、確認すると確かに苦しい場面もちらほらとあった。それでも11話辺りからは「ばびっと」が突っ込むための隙間をわざわざ用意しているようになっている辺り、面白さに対する製作スタッフの柔軟な対応というものが見え隠れしているような気がした。
 妙なところでは紗南のツインテールにスタッフの拘りを感じた。原作ではストレートヘアやポニーテールといったように、いくつかの髪型を使い分けていたのに、アニメでは何故かツインテールでいることが事の外多かった。特に19話で紗南の家族問題が解決し、自宅に戻って紗南の母実紗子に報告するところでは、家の廊下を歩いているところまではストレートだったのに、次の場面ではいきなりツインテールに変わっていた。よくよく考えると変ではあるのだけど、そこに製作側の拘りがあるのだとしたら、それもアリかなと妙に納得してしまった。

『声優について』

 倉田紗南が持つ半端ではない個性を定着させた影の功労者は声優の小田静江であろう。群を抜いていた実力も然る事ながら、杞憂の個性を持った倉田紗南のイメージ通りに演じていたというのが何よりも大きい。その凄さは秋人役の声優の物足りなさによる悪影響を最小限に留めるほどで、宛ら(さながら)神業といっても過言ではないくらい役者とキャラが一体になっていた。

『最後に』

 アニメならではの表現でヒロイン倉田紗南の個性を限界まで引き出しつつ、原作にある魅力を損なうことなく伝えていた(あくまで19話までではあるが)のは驚愕に値する。個人的にはこのアニメがきっかけで原作を読んだことで、少女コミックに対する偏見を払拭する第1歩になってくれたことが、何よりも大きな収穫だった。



【今回鑑賞したアニメ】
タイトル メーカー発売年度
こどものおもちゃ
VOL.@〜D
SPE ・ビジュアルワークス2000年

【参考資料】
『コミック』
タイトル作者 出版社第1巻 出版年度
こどものおもちゃ
1〜10巻
小花美穂 集英社1995年