その1-平治の乱
合戦データ
大将軍 | 平家軍=平清盛/重盛/頼盛 | 源氏軍=平義朝/藤原信頼 |
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戦力 | 平家軍=3000騎(待賢門:1000騎/郁方門:1000騎/陽明門:1000騎) | 源氏軍=800騎(待賢門:300騎/郁方門=200騎/陽明門:300騎) |
清盛の留守をついてクーデーター勃発
保元の乱以後、後白河の側近として絶大な権力を振るったのは、後白河の乳母の夫でもある少納言入道信西こと藤原通憲であった。信西は当代随一の博学の士であり、位こそ少納言と低かったものの政治的策略に優れた人物で、大規模な荘園整理を断行し、ほとんど実現不可能とされていた大内裏の造営を成功させた。この信西が清盛と手を組み、乱後の政治をほしいままにしていたのである。
天皇・上皇による政治権力の掌握を目指していた信西は、摂関家を弱体化させるために、代々摂関家と強く結びついてきた源氏の台頭を押さえた。保元の乱の恩賞が平家には篤く、源氏に薄かったのはそのためであり、客観的に戦功第一のはずだった源義朝は当然これを恨んだ。一方、当時後白河上皇に取り入って寵を得ていた藤原信頼は、近衛大将を希望したのを信西に阻止され、これもまた信西に恨みを抱いていた。そして、この信頼と義朝が手を結び、さらに二条天皇による天皇親政を策していた権大納言藤原経宗、検非違使別当藤原惟方を抱き込んで、反信西、反平家のクーデターが勃発した。 平治元年12月9日、清盛が熊野詣でに出かけて京都を留守にしている虚をついて、信頼・義朝の軍勢は三条烏丸にある院の御所を急襲した。御所に火を放ち、後白河上皇及び上皇の姉である上西門院を内裏の東側にある一本御書所に幽閉、信西は奈良への逃亡中に自害して果てている所を発見され、首をかかれた。次いで内裏を占拠した信頼・義朝らは二条天皇を清涼殿の北側にある黒戸の御所に押し込め、クーデターは一端の成功を収める。
この報は熊野参詣の途上、田辺(『平治物語』では切部)の宿にあった清盛のもとに届けられた。しかし一行は息子の基盛、宗盛のほか、わずか15人足らずであり、苦悩した清盛はいったん太宰府に落ちて勢力の増大をはかることまで考えた。しかし、在地武士の湯浅権守宗重や熊野の別当湛快の援助で何とか兵を整え、義朝の嫡男悪源太義平が阿倍野で待ち伏せているとの報に戦々兢々としながらも、同17日、無事に京への帰還を果たす。
清盛、会心の大逆転劇!
清盛帰還の情報が伝わると、二条天皇の側近が信頼から離反する動きが見え始める。清盛は信頼を油断させるために、従者であることを示す名簿(みょうぶ)を提出し、一方で経宗・惟方と通じて天皇と中宮を内裏から脱出させ六波羅へ迎えることに成功する。ここで初めて清盛は義朝と戦うための名分を得ることができたのである。
清盛が天皇の六波羅遷幸を京中に宣伝すると、関白基実以下、公卿のほとんどが六波羅に集まった。平治物語によると、清盛はこれを「家門の繁昌、弓箭の面目」と言って喜んだという。一方、上皇は美福門院、上西門院とともに仁和寺へと逃れた。
同26日、信頼・義朝追討の宣旨が下され、平家軍は内裏に籠もる信頼・義朝らの軍勢を討つべく進軍する。官軍側は戦闘に際し、新造されたばかりの内裏の焼失を防ぐために、内裏より源氏軍をおびき出し、内裏を占拠して後に源氏軍を壊滅するという作戦を立てた。清盛は六波羅にとどまり、討手の大将軍には重盛、頼盛、経盛が選ばれ、それぞれ信頼の守る待賢門、義朝の固める郁方門、源光保・光基らの陽明門を攻撃した。
まず重盛が待賢門を破ると、逃げ出した信頼に代わって悪源太義平が防戦、有名な大庭での騎馬戦が繰り広げられる。機を見計らって重盛は退き、一方の頼盛も郁方門から義朝の軍勢を誘き出す。情勢の不利を悟った光保・光基は戦わずして陽明門を放棄し、平家方に寝返った。勝ちに乗じた源氏軍は引き揚げる平家軍を追いかけ、入れ替わりに官軍が内裏を占拠すると、内裏への道を閉ざされた源氏軍は六波羅へと攻めていった。その頃になると源氏軍からは多くの離反者が出ており、六波羅を攻撃した軍勢はわずかに20余騎。ついには源頼政の300余騎にも見捨てられ、源氏軍は惨敗を喫した。義朝主従は東国での再起を図るために、20余騎で大原から近江へと落ちていった。
翌27日、後白河上皇を頼って仁和寺に逃げ込んだ信頼と、乱に荷担した藤原成親は六波羅に連行され、信頼は六条河原で斬首に処された。翌平治2年正月4日、義朝は郎等の鎌田政清の舅で尾張の内海庄司長田忠致の邸で入浴中、寝返った忠致によって殺された。義平は同18日に近江の石山寺で捕まり、21日に斬首。頼朝は2月9日、頼盛の郎等弥平兵衛宗清に捕らわれたが、斬首されるところを清盛の継母池の禅尼に助けられ、3月11日に伊豆へ流された。
参考文献
岸谷誠一校訂『平治物語』』(岩波文庫)/ 五味文彦著『人物叢書・平清盛』(吉川弘文館)(吉川弘文館)/ 安田元久著『人物叢書・後白河上皇』(吉川弘文館)/ 日下力著『古典講読シリーズ・平治物語』(岩波書店)