意外と似ている?ソールと中華なべ

ボードをやっていると、色々なことを学べる。ボーダーはただ滑っているだけではないことを本当に実感することが多々ある。

一見、面倒なことがキライと思われるようなアンチャンだって、ボードに関しては実にマメだったりもする。

そんなマメさを感じるのは特に、メンテナンスに関することがおおい。

メンテナンスといっても、色々な内容があるけど、おいらが思うにやはりメインはワクシング。ワックスがけだろうと思う。なにせボードの滑りに直結するからね。

そんなワクシングを達人とは程遠い、masumiが語ってみよう。(いいのかよ、おい)

ワクシングにもいろいろな種類があるが、大別すると以下の2つだ。

1 スプレーワックス→コルクでのワクシング
2 ホットワックスでのワクシング

固形ワックスを生塗りしてコルクで染み込ませる方法も1に入ると思う。要するに熱を加えるか、加えないかである。

ここで思うことがあるんだけど、なぜワックスするの?ワックスはどのような働きをしているの?ワックスってどう利いているの?といったことなんだ。

なぜは簡単に考えれば分かると思う。滑らないものでも油を塗れば滑るようになる。これ原則であ〜る。指輪が抜けないときにも油を塗ると抜けるようになるもんね。じゃあ、何で滑るようになるのか?それは難しい・・・実は摩擦係数が減少するからなんだよね。摩擦係数っていうのはものが擦りあうときに生じる抵抗の力を数値で表したもんなんだ。知ってるって?まあ、聞いてよ。だからその摩擦係数を減らせば抵抗も少なくなり、滑ることになる。実際は油でなく、水でも良いんだろうけど、水は乾くと無くなってしまうから持続性が高い油を、潤滑材料として使うのは当然なんだろうと思う。

だからといって、サラダ油塗って滑ったところで、すぐに走らなくなる。それは油がすぐ切れるから。水が乾いたのとおなじで潤滑材料が切れたら抵抗は大きくなる。

そこで重要となってくるのがワクシング。しかもソールのためにはホットワクシングだ。

それには理由がある。

ソールの素材にはワックスを浸透させるための分子構造となっている。(中にはいいかげんなものもあるけど)いわゆる凸凹としているわけである。しかしながらその凸凹は人間の目では見えないほどの大きさであり、(実際ソールを見て、「見えるジャン!」と思った方。それはストラクチャー、水を払い出す溝です。分子が見える人間には今までおいらは会ったことないです。)そこの凹のなかにワックスを入り込ませるのである。そして滑走時に外力が分子にか
かり、かつ摩擦熱でワックスがその凹から出てくるのである。だから持続して摩擦を軽減することができるのであ〜る。

そんな小さな溝にワックスを入り込ませるわけだから、スプレーでさっとやったぐらいでは入って行かないし、コルクで一生懸命擦っても、アイロンの熱量にはかなわないばかりでなく、浸透も中途半端で、溝に十分にワックスを入れることが出来ない。したがって持続性がいまいちなのである。無駄な抵抗はやめて、おとなしくアイロン使いなさい。

だからといってむやみやたらに高温でワクシングすれば良いってもんじゃない。相手も鋼鉄じゃないので、いつかは燃える物質だ。高温でアイロンを当てればソールはこげる。マスオさんのシャツにアイロンの跡をつけて「ギャフン」といって舌だしているサザエさん状態だ。そんなんじゃだめなんだよ!

重要なのは、適度にソールを暖めつつもこまめに動かして熱を一点に集中させないってことなんだ。目安は、アイロンを当てているデッキ側がほのかに暖かいぐらい温度だね。プロショップじゃボード全体を専用のヒーターで暖めながらワクシングするところもあるんだ。適度な熱を加えて、ワックスを塗れば、分子の凹に吸い付くようにワックスが浸透していく。

おいらは料理が大好きなんだけど、この作業は中華なべを使うときにそっくりだ。鉄で出来た中華なべだって、分子的に見れば(勿論目では見えないよ)凸凹としている。そんなやつだから、鍋に熱を加えないで、油を入れても、いくらも広がらない。たとえ、あつい油を入れても吸い付くような広がりは期待できない。中華なべの場合、相手が鉄なので、ガンガン熱する。煙が出るぐらい熱するのが中華なべの基本だ。そこまで熱した鍋ならば、油を入れたときに広がるように油がなじんでいく。分子までね。そうして浸透させることが出来た中華なべで調理すれば、肉を炒めたってこびりつかない。しっかりコーティングされているから、鉄に直接触れることが出来ないのだ。

そして中華なべは、油を染み込ませれば、染み込ませるほどよい鍋になるといわれている。使い込んだ鍋は料理人にとっては財産である。

これすなわちボードにもいえることアルヨ。

一度や二度のワクシングでは、凹には十分なワックスが満たされないし、すべての凹にワックスが入り込むわけではない。ソールの汚れや、ゴミなどが邪魔をして、空っぽな凹がいくつも存在するわけ。

だから、もったいないような気がするけど、ワックスは、塗っては削り、塗っては、削りを繰り返して、すべての凹にワックスを十分に満たしてやらなければならない。よく、ベースワックスを何度も繰り返して塗るのはもったいない!と言う方もいるけど、けっして、あなたの努力は無になっていないのです。どこかで誰から喜んでいる(このばあいはソールだと思う)のです。汝、疑うことなかれ。信じるものは救われる。のである。

最近では「ソールによく滑る素材を使っています」といったものが多いけど、それはあくまで「ワックスがよく染み込む素材」であって、「ワックスが無くても滑る」素材ではない。と、いうかワックスがいらないソールなんて聞いたことが無い。高価なソールほど、実はワックスを必要としているのである。(勿論素材的に従来品と比べれば摩擦係数の少ない素材を使っているけどね。)

ここまで読めば、あなたもホットワックスしたくなってきたでしょ?おいら?おいらはチャーハンが食べたくなってきた。さ、中華なべを振るってこようっと!