世界の車窓へ(2003年8月分)

2003/09/02 (Tue) 31

.「8月31日(日)」.
■稽古は休み。

■山口に来て、もう3週間たったことに驚く。あっという間だった。3週間いるのに、この町のことを何も知らない。今日は自転車で町を探索。まず、湯田温泉駅。駅前の巨大白狐のオブジェに驚く。その高さ8m。何で?
また、売店で「ゴリラの鼻くそ」という銘菓を見つけ、遣る瀬無くなる。その後、温泉街を抜けると「カラオケプール」という建物が出現。水着でカラオケということか。その建物からは、不思議な歌声が聞こえてきた。
■あと、この町にもありました、スナック「来夢来人」。「姉妹店かな?」と好意的に解釈することにして家に戻る。やっぱり、まだこの町のことを何も知らない。


2003/08/31 (Sun) 30

.「8月30日(土)」.
■マンションからYCAMへ行く途中、ひとつ踏切がある。遮断機が降りてることなど見たことなかったのだが、今朝は違った。電車を待つ間、何気なく宙を見ると電線がない。え?と思うと、遠くから黒い煙が見え、ポー!という音が近づいて来る。電車ではなく、銀河鉄道999みたいな機関車が目の前を通過して行った。運転手も大正時代みたいな格好で、俺は夢を見てるのかと思った。夢じゃないんだけどね。

■で、いつものようにミュリエルのクラス。そのあと、ダンサー達はダンスの練習。僕とステファンは昨年の空中WSでもやったハーネス(フライング時に腰に装着する道具)を使ったネタの練習。空中WSの記録ビデオを見て、何やったか思い出しながら、新プランも交えて試す。

■昼休憩あけに、何人かがフィリップにプレゼン。僕もまだ未完成だが、スイッチャーネタを披露する。Yさんとのタイミングも非常に難しく、仮に上手くいったとしても、「アイディアのみ」でしかない気がしてくる。この案を膨らませるよりも違うことを考えた方がいい気もしてくる。それは、僕の次にやったステファンの「家の中のダンス」がとても表現として豊穣だったことも関係している。けしてダンスダンスしてない、些細なものなのだが、とても気が利いてた。

■その後、「脚立バレエ」の続き。何度か公開してるので形にはなってるが、まだ満足のいくものにはなってない。長いし。フェイ・ボーはいいダンサーだが、油断すると道化的なことをするので、通訳の方を通して、面白いこととは何かを説明する。あと、ボクデスのときでもそうなのだが、つい正面向きの演目になってしまう。空間の使い方、構成が「脚立バレエ」の課題。

■「脚立」の後は「家」。昨日の「メ〜モリー」が功を奏したのか、歌手のクレールも交えて、ルー、カオリ、ステファン、僕でミュージカル調に試す。やー歌った、歌った。クレールは7段階の声が出せ、ルーは京劇仕込み。対抗策として、僕は演歌。「よこはま〜たそがれ〜」とか「住み慣れた〜我が家に〜花の香りを添えて〜」だって。演出家は喜んでいたらしい。

■稽古後、明日は休みなので、DCAチームと2時頃まで温泉街のカフェ・バーへ行く。いや、ほんと、カフェ・バーなんですよ。いろいろ続くが息抜きできた。楽しいと思えた時間。


2003/08/31 (Sun) 29

.「8月29日(金)」.
■午前中、ひさしぶりにミュリエルのクラス。エクササイズもやったがストレッチ、マッサージを主にやったので、からだの疲れがほぐれる。からだを動かすことが気持ちいいと思う。食事休憩をはさんで、午後からはシャトーバロンでも組んだフェイ・ボーとの「脚立バレエ」。まさか演るとは思ってなかったが上演予定演目に入る。最初だけ中国人の通訳の方を入れて意志確認。あとは、ブロークン・イングリッシュでの、二人だけの作業。昨年の赤レンガ・バージョンとも違う、ワールド・スタンダード・バージョン完成を目指す。「何をしたいか」でやや相違が出る。この辺の按配が共同作業の難しさだ。夕方から「舞台の隅にあるスペース」を考える組と昨日見た「影絵を軸にした新表現」を考える組に分かれて作業。僕は「舞台の隅にあるスペース班」。このスペースというのは、フィリップからもう許可出たので公表しちゃけど、「家」です。この家の使い方をステファン、ルー、バティスト、ミヤ、僕の5人で考える。なんだかメチャクチャの展開になった。最後には俺、「メ〜モリ〜!」って歌ってた。

■夜、東京から嬉しい知らせ。おって報告します。



2003/08/30 (Sat) 28

.「8月28日(木)」.
■上がってる?下がってる?と聞くのなら、「ちょっとずつ上がってる」という気分。

■今日の午後2時から4時の間、YCAM全館に役所の検査が入るということで、その時間に休憩をとることになった。なので稽古開始は午前11時。いつもより1時間遅く始まった。で、昨日に引き続きカオリのクラス。その後、ダンスチームは新しい振付の練習。僕は廊下で自習。休憩前に、構想中のビデオとスイッチャーを使った新ネタのことをフィリップに相談。Yさんとの実験も見てたらしく、幾つか質問もされる。で、このまま続けたほうが良いか?別のアイディアを考えたほうが良いか確認。で、「GO」が出た。ひとまず一安心。このまま膨らませる方向で考える。
■休憩中も、伊藤千枝や照明のMさんが進めている「見たこともない照明の使い方を考える」チームに加入していろいろ試してみる。
■休憩明けは「舞台の隅にあるスペース」をフィリップ抜きで考える。フィリップは音楽や衣裳の打ち合わせ。「舞台の隅にあるスペース」ワークショップは、各自がいろいろ提案して試す。僕も提案したが面白いものにはならなかった。フィリップが戻り、「過剰な芝居」の提案。皆で大仰に演じる。初めてやったよ、いわゆる劇研みたいな演技。言ってることもデタラメ。でも、デカイ声はたしかに気持ちは良い。こういうことなのか。
■小休憩を挟み、20時半からフランスの影絵アニメーションの上映会。いくつかヒントをもらう。
■22時退館。何人かの出演者とジョイフルで食事。皆、何かしら課題を抱えていた。


2003/08/28 (Thu) 27

.「8月27日(水)」.
■火星大接近といえども、昨日からの気分が全く晴れたという訳ではない。
■午前中はカオリ主導のクラス。フォーサイスみたいなバレエ主体のエクササイズ。と言ってもよく分かってないけど。クラス後は、午後から照明を入れてやる「器官のダンス」のおさらい。僕は心包という全てを司る別枠扱いの器官担当なので、9月から参加する中国のダンサー・ヤンの「膀胱」を代理でやる。突然の指名でおろおろしながら敢行。
■昼食後、照明、音楽を入れて「器官のダンス」の練習。全ての器官を続けて行う。僕は膀胱代理。芝居の稽古のときもそうだが、他人の代役というのは、何でこうも気楽に出来るのだろう。一度通した後、フィリップが演出を入れて再度通し。それを幾度かくり返す。
■そのあとは各自のアトリエ作業。ところで、この各自の作業はYCAM内の至るところで行われてる。スタジオBだったり、ホワイエだったり、マックが並ぶDCAルームだったり。音楽班はスタジオCで曲作り。僕の作業場は、大抵、廊下の椅子の上。ここで書き物。手違いでマギー司郎がラスベガスのショーに出演することになってしまった感覚ってこんな感じなのかなあ、と今日は心包のテキスト作り。
■夕方、「舞台の隅にあるスペース」の使い方を全員で試す。稽古初日にやった、フィリップが日本で目撃した不思議な光景というテーマを基に。「時間の歪み」を考慮しながら。で、やったのだが、「時間の歪み」について個人的にある方法を発見する。思わず、そうか!と思ったのでした。今日の稽古はそんな感じ。

■YCAMからの帰り道に一軒のラーメン屋がある。あるというか、あった。店の前に「8月15日をもって閉店しました。長い間ありがとうございました」と貼り紙しており、いつも電気が消えていた。ただ、今日は違った。暗い店の窓の中から少し明かりが見える。不思議に思い、近づいて見ると、中で老夫婦がテレビを見ていた。


2003/08/27 (Wed) 26

.「8月26日(火)」.
■一喜一憂した日。楽しいだけでは、やっぱ済まされない。分かってんだけどね。

■午前中はフィリップによるエクササイズと新しい振付の練習。その振付、基本は「手の振りと歩行」という単純なもの。最初は誰にでも出来た。けど、だんだんバリエーションが増えてきて、続々脱落者が出てくる。もちろん、最初に脱落しました。
■午後から、まず緊急ミーティング。全出演者&スタッフが集まり、「今、何がヤバイか」を話す。色々あるが、一番は言葉の問題もあり、フランスチーム、日本チーム、中国チーム間のコミュニケーションがうまく行ってないのではないか、と。なんとなく国別に行動してしまっている傾向は確かにある。そのへんの対策を話し合う。あと、毎週、週末に通し稽古をやることになった。早いのは承知って何も出来てないに等しいが、現在、何が出来ていて、何が出来てないかを認識するため。
■ミーティングのあとは、各自の作業。僕は、ミヤと「バカ兄妹が呼吸について勉強する」劇のおさらい。ひたすら下らなかった。あとから、あんなことになるとは思いもしない二人だった。
■その後、ひとり用のネタ作り。ビデオカメラとスイッチャーを使った新しいもの。以前から、何となく構想していたのだが、ここでの機材なら実現出来そうなので、テクニカル・ディレクターのYさんにいろいろ相談しながら具体的なプランを膨らませる。めちゃくちゃ楽しい時間。
■その後は、全員集合して「舞台の隅にあるスペース」の使い方を試す。全員では多過ぎてよく分からないということでステファン、クリストフ、バティスト、ミヤ、僕が居残る。で、ミヤとの劇をプレゼン。酷かった。びっくりするくらい酷い有様だった。(通訳の人も訳してなかったらしく)静まりかえる客席。その反応にますます、こわばる体。最後のサゲも無残に散る。そのままコメントもなく、5人でのエチュードにうつる。で、このエチュードも俺は酷かった。フィリップからいろいろ駄目だし。演技かあ。演技はなあ。演技のことはなあ・・・。
■落ち込んだ後、Yさんと舞台上でビデオカメラとスイッチャーを使った試し。全くのイメージ通りというわけではないが、何か出来そうだ。ただ、その試しに没頭できない自分。
■20時、なんか重いもの背負ってYCAM退館。
(こんな気分の記録は、どうかと思うが、いつかのためにあえて記載。)


2003/08/26 (Tue) 25

.「8月25日(月)」.
■今日も稽古は休み。充電。

■最近、何かしてると「て〜てて、て〜て、て〜てて〜」と口ずさむことが多く、何の曲だっけ?と思ってたのだが、↓これだった。

http://www.universal-music.co.jp/meta/umkk/nippon/matakitene_Full_300k.ram


2003/08/25 (Mon) 24

.「8月24日(日)」.
■稽古は休み。掃除したり、蒲団干したり。

■直訳した「心臓の大使」という器官は、どうやら「心包」という名称らしい。仙台のIさん、メールありがとう。

■夜、テレビで世界陸上を見る。「どれだけ早く走れるかを競う」という分かりやすさが面白い。


2003/08/24 (Sun) 23

.「8月23日」.
■午前中、ミュリエルのクラスではなくフィリップによるマッサージ指南。四人で一人のからだをマッサージしたり、ジェンカみたいな円を作り、前にいる人の肩を揉む。あと、大きく息を吸ったり吐いたりのヨガ。腸が動き出したのかトイレに行きたくなる。
■午後からは各自の作業。僕はまず、「からだについて」の自習。その後、ミヤが自身の練習終了後、合流。二人で「芝居」を作る。昨日書いた、「僕個人の活動の文脈」という構図を、少し横にずらして考えてみる。ある世界を構築するための技法。たとえば、より過剰に行うとか。そのひとつとして、「バカ兄妹が呼吸について勉強する」というくだらない設定が浮かぶ。で、やってみた。やー、楽しかった。楽しかっただけかもしれないが。(日々の生活でふざけると怒られるが、ふざけたいが為に、この仕事をやってると言っても過言では無い。)「どの観客にも伝わる芝居」云々とか、小難しい事が吹き飛んでしまったが、タイムテーブルの都合もあり、今日はフィリップにプレゼン出来なかった。
■夕方、何人かで、ひびのさんが以前に作ったコスチュームを着て、照明の中、動いてみる。フィリップ、ひびのさんがイメージを広げるための作業。僕が身に着けたのは、赤い網状の巨大な帽子。被ってシルエットを見ると、この頭でっかちが!って言いたくなる。
■その後、フィリップ抜きでステファン主導のワークショップ。と言うか、「舞台の隅にあるスペース」の使い方を、全員であれやこれやと試す。PJが書いた現時点での美術プランを見ながら。ステファンという俳優は、「ワタシのナマエは生ビールデス」とか「ワタシの生ビールはドコデスカ」というような感じのことを常日頃言ってるので、「このスペースは別に楽しいだけの場所じゃなく、たとえばハルキ・ムラカミの小説の1シーンみたいな場面も作ってみたい」と言ったのは、意外でもあったが、発想の方向が広がり嬉しくも思った。
■稽古後、クリストフらとファミレスで夕飯。ビデオも兼任しているということもあり、他のDCAメンバーと比べるとクリストフはすごく几帳面。その容姿、性格からミルコ・クロコップを連想する俺。あと、ジョイフルという名のそのファミレスは、ロゴの形、配色(黄色と赤)がデニーズと同じだっが、値段がとても安くて驚いた。
■夕食後、マンションに戻ると駐車場から白煙が昇っている。何だろうと近づくと、ステファンらが花火をしていた。部屋にリュックを置いて、缶チュウハイ片手に僕も参加。若いバティストが両手に花火を持って走る姿は、「ポンヌフの恋人」みたいだった。山口県だけど。
■明日から2日間休みということもあり、花火大会は夜中まで続いた。ただ、はしゃぎ過ぎたみたいで、近所のおじさんから「ミッドナイトやんけー、ちょっとシャラップしてー!」って怒られちゃった。
■フランス語の会話に耳を傾けながら、寝そべって山口の星空を眺めてたら、「俺、誰だ?」という気分になった。



2003/08/23 (Sat) 22

.「8月22日」.
■稽古のことしか書くことがないのかと言われそうだが、稽古しかしてないのでしょうがない。で、稽古。午前中はミュリエルのクラス。恒例の「部族のダンス」は方向性を再検討するらしく今日はナシ。「器官のダンス」を各自、自主練。
■昼食後、何人かが「器官のダンス」のプレゼン。僕も昨日からの改良バージョンを発表。改良はしたものの「何だか早く終わらせようとしてるように見える。もっとゆっくり見たい」と。内容が卑怯ネタなのでチャッチャチャッチャやっていたのは事実。分かりました。しょうもないネタをたっぷり見せる方向で再考。
■プレゼン後は、昨日からの作業を引き続きする人、新しい課題が出された人がそれぞれに作業。僕も新しい課題が出され、ミヤとのコンビで「からだについての分析的な視点の芝居」を作ることになった。難しいよ。とりあえず、ミヤと「からだについて」いろいろ話す。ミヤのエピソードは面白いが、どういう視線で見せるか悩む。
■一旦ブレイクして、YCAMから自転車で10分のところにある県立図書館まで資料を探しに行く。フィリップが持ってきたフランス語の資料はたくさんあるのだが、日本語で書かれた「からだの本」は無いので、それを求めて。で、いくつか借りてきて、屋外で勉強。真夏の太陽の下、からだの働きを学ぶ。気持ちがいいのもつかの間、フィリップから呼び出される。
■ミヤとの芝居を見せてくれ、と。何も出来てないがエクスキューズを入れて、とりあえずエチュード芝居というか、ただ駄弁る芝居。当然、反応は鈍かったが、「見せてもらったものからしか意見は言えないから」と。で、「映画みたいな芝居だったね。たとえば、言葉が分からなくても、どの観客にでも伝わる芝居が見たいな」と。「どの観客にでも伝わる芝居」。うーん。言いたいことはわかる。が、自分がこれまでやってきたことを考えるとその実践は中々手強い。その説明をする術を自分でも分かってない。ある意味、小恥ずかしいので意図的に避けてきた部分だ。千枝は僕の活動の文脈を分かっているので理解してくれてるが、自分のためにも言語化する作業が必要な時期なのかもしれない。そうしないと、ほんとうのエクスチェンジは出来ない。
■明日、ステファンの演技ワークショップ教室が開かれることになった。開眼したりして。


2003/08/22 (Fri) 21

.「8月21日」.
■最近、朝起きると全身が痛い。何故だろうと思っていたのだが、マンションのロフトにはマットが敷いてない。言うなれば、床の上に直接、蒲団を敷いてる状態だった。何か対策したほうが良いかなあ。

■午前中はミュリエル・クラスと「部族のダンス」の練習。フィリップは山口市役所へ表敬訪問してきたらしく昼前に戻って来た。フィリップ曰く「皆、黒いナイロンの靴下を履いていたが、流行ってるのか?」だって。
■昼食休憩をはさんで15時から各自「器官のダンス」のプレゼン。僕の担当は「心臓の大使」。直前まで「小腸と言っても天皇ではありません」とか言う程度のネタしか浮かばなかったが、突然、ある切り口が閃く。急いで、美術の鯱丸に頼みごとをしたり、近くのスーパーへ小道具を調達しに行ったり。で、プレゼンしたのは、いわゆる卑怯ネタなのだけど、意外に好感触。手前味噌になりますが、山口に来て初めて、「セヴィアン!」とお褒めの言葉を貰う。中国チーム、日本チームにも好評。昨年3月の空中WSや河童次郎シリーズの記憶を甦した。俺ってこの路線じゃん、と。フィリップやドクター・ピエールから幾つかアドバイスをもらい、また明日、改良してプレゼンすることになった。あと、僕が、個人的に印象に残ったのは、クリストフの「胃のダンス」、ステファン&ミュリエルの「肺のダンス」など。
■プレゼン後は各自の作業。フィリップは舞台でカオリ(伊藤郁女)やバティストとビデオの実験。僕は、オリビエに誘われたビデオネタ用の素材撮り。どう使うかは、まだ考え中。
■稽古終了後、ピエール夫妻と(書き損じていたが、一緒に来日していた)フィリップの15歳と7歳の愛娘二人の送別会を居酒屋で。ステファンのハンカチ・マジック披露からいつのまにか手品大会になる。僕は見せるものがなかったので、爪楊枝を頭に刺してみた。驚かれはする。


2003/08/21 (Thu) 20

.「8月20日」.
■携帯電話をバイブレーター機能にしていたら、ブブブブって動いて、ノートPCのキーボードの上に落ちた。で、SHIFTキーが壊れてしまったのだが、二つ付いてるのでなんとかなってる。こういう時のために、SHIFTキーは二つあるのでしょうか。

■午前中、ミュリエル・クラスのあとは、「部族のダンス」の練習。日々進化している新バージョンは跳んだり跳ねたり廻したり乗せたりするので、「これ、ほんとうに俺もやるのかな?」と思ってたら全員参加と言われた。
■午後から、新しい各担当器官の発表。昨日、フィリップが言った器官から、総入れ替えになった。僕の担当も大腸から「心臓の大使」に異動。これは、全ての血管の総体なのだが、それに準じて、「器官のダンスをしているときに、それらの周りで言葉を使って何かしているのはどうだろう、ピエールみたいに」とフィリップから提案される。ピエールみたいに!は無理だが動きで表すより、面白そうなのでやってみることに。発表後、各自自主練習に入る。いろいろ考えるが、「脾臓コレクション」とか、そういったことしか浮かばなかった。
■ところで、「心臓の大使」という名称は、フランス語からの和訳なので、正式な名称なのか分からない。詳しい人がいたら教えていただきたい。
■「器官」の後は、中国刀の練習。これまではルーが指導していたが、初めてフィリップのディレクションが入る。部分的にくり返したり、一時停止したり。
■小休憩を入れて、劇場に異動。昨日より広くなった舞台の上で「部族のダンス」のビデオとの絡みや、僕とステファンの(仮)専用スペースの大きさ、使い勝手をチェック。気付いたら解散してた。あれ?

■フィリップから「本国フランスでは誰も知らないが、日本では売れてる15歳のフランス人女性歌手のCDを探してる」と言われた。誰のことだろう?フランス・ギャルではないです。知ってる人いますか?


2003/08/19 (Tue) 19

.「8月19日」.
■午前中、ミュリエルのクラスの後は、シャトーバロンでもやった「部族のダンス」のおさらい&改訂版の練習。シャトーバロン公開リハではオープニングとエンディングで2回やった。このダンスから始まりこのダンスで終わった印象的なシーン。今回は、まだどこに入るか分からない。
■午後からはドクター・カンファレンス3日目。講義の前に、今日から山口入りしたミュージシャンのクレールとタオが各器官のイメージを基に作ってきた曲を聞く。僕の担当である大腸は和太鼓のようなリズムがベース。で、講義。今日は、陰と陽を中心に各器官のエネルギーの関係性についてだったのだが、ピエール節大爆発。各器官の特徴、イメージする音を身振り手振り足振り腰振り、一人汗だくになって表す。その「プンタ!プンタ!」と叫んで舞う姿しか休みあけの鈍った頭には残らない。新しい通訳のHさんも絶句。説明が一段落した後、とりあえず各器官の担当者がイメージする動きを即興でやってみる。大腸担当は僕とステファン。即興の各動きを見たフィリップとピエールが「ひとまず、このテーマは明日まで寝かす」と。
■講義後、皆は中国刀の練習だが、僕とステファン、オリビエの通称・(コミック)俳優チームは舞台で、フィリップと、ビデオ&モニターを使った実験。まだ、とりあえず試すという段階。
■その実験とは別にフィリップから、僕とステファンとのコンビで使うスペースについての相談。舞台上に僕ら専用のスペースを設けてくれるらしく、その世界の使い方を考えてくれ、と。
■その後、全員で朝やった「部族のダンス」を何度かビデオ中継と絡めてみる。舞台がやや狭く、落ちそう。今日の稽古はそこまで。帰り際、舞台上ではスタッフによる仮舞台装置大チェンジが行われていた。とても恵まれている環境にいることを再確認する。

■数日前から、YCAMのスタッフでハイテク機器ならおまかせという感じのYさんの声に聞き覚えがあって気になっていた。誰だ?誰だ?と思っていたのだけど、今日分かった。ペンギンプルペイルパイルズの倉持さんの声だ。声が似てるというのは、骨格も似てると言われるとおり、Yさんの顔は倉持さんの顔に似ている。だから何?という話だが、だったら、だから何?じゃない話というのは何?となってしまうので、複雑だ。


2003/08/19 (Tue) 18

.「8月18日」.
■休み2日目。前にも少しふれたある雑誌の企画「ボクデスの誰でもダリ」の撮影。オブジェを作って、それをデジカメで撮る。家の近くで撮影してたら、電気工事の人や農家の人が次々集まって来る。が、説明に困る。

■夕方、伊藤千枝と㊙ミーティング。僕や千枝がこの現場にいるのは、エキゾチック・ジャパンではない現在性を求められているからだと勝手に解釈してるのだが、そこら辺の話をキノコの方法論、ボクデスの方法論を交えて話す。フィリップ自身、作品の方向性が固まってない部分もあるが、今回の公演の演出補としての伊藤千枝、珍しいキノコ舞踊団・演出家としての伊藤千枝の違いが顕わに。まだ色々間に合う。


2003/08/18 (Mon) 17

.「8月17日」.
■山口に来て初めての休みだったが、起きて洗濯して寝て、カレーライス作って寝て、フェイ・ボーの部屋のテレビを修理して寝て、ほんとうはしなきゃならない別件の仕事があったのだがやらずに、どこにも行かずぐだぐだしてた一日だった。

■いくつか、この窓の感想メールをもらい励みになる。こういう日々を書いて公開するのは初めてなのだけど、こういうので良いんですか?


2003/08/17 (Sun) 16

.「8月16日」.
■午前中、今日はミュリエルのクラスではなくフィリップによるクラス。いわゆるダンスのクラスではない。顔面、足の指、手の指と指の間のエクササイズ等。また、二人組でやるものも多く、他者と対話しながらやる感じなのが特徴的だ。クラス後、フィリップから「今回のプロジェクトは各キャラクターを見て選んだ。今日のクラスも、ミュリエルのクラスも形だけを強制するものではない。ただ、皆で作り上げるという意識を持って欲しい。どう思う?」と。ルーが答える。「ここでやってることは私がこれまでやって来たこととは大きく違います。だから、今、勉強中です。時間がかかるかもしれませんが、とても幸福な時間を過ごしてます」。あまりにも素晴らしい答えに目頭が熱くなる俺。年寄りか。フィリップが続ける。「私も君から学びたいことがたくさんある。これまでやってきたことは皆、違う。カオリはバレエ、バティストはアクロバット、マサはストレンジな劇場、チエはマッシュルーム・・・。お互いにエクスチェンジしていこう」と。互いに尊敬できる関係。このチームにいて幸福だと思った瞬間だった。
■昼食後、ドクター・カンファレンス二日目。今日は「クリエーション・サークル」という5つの要素によって、ものが作られているという話。火→土→金属→水→木(→火)は各々サークル状に親密な関係にあり、対面上にある火→金属→木→土→水→火は各々星型状に壊す関係にある、と。で、それぞれの要素の意味合い(たとえば、火の色は赤。喜びを表し、体で言うと心臓。また、音で表すならha!など)を身振り手振りでレクチャー。フィリップ曰く「信じるも良し、疑うも良し。ただ真剣に聞いてくれ」と。で、サークルの話のあと、昨日聞いた「12の経絡の話」をPJが大きな図にして持ってきてくれた。皆のそれぞれの顔写真を手に。それを、フィリップがイメージする器官の上に画鋲で留めていく。僕は当初、胆嚢だったが、「マサは、正義を司り、物事をすぐに決断し、すぐ文句を言うタイプ゚じゃないな」ということで異動。分かってらっしゃる。結局、「コミュニケーションを司り、枠を作る。大地に血を送り込む場所という意味でもある」大腸になった。このあと、大腸をイメージして何かを作ることになる。
■講義後は中国刀、クリストフたちとリフト・カルテットの練習をしてフィリップにプレゼン。「悪くない」と。舞台で何人かによるビデオの実験後は、明日から2日間休みになるので、制作から諸注意。

■今日はまっすぐ帰宅。自炊。CX系が見れないので、サップの復帰戦も気にしないようにしてたが、タイソン来たの?テレビではどうだったんだろう。


2003/08/17 (Sun) 15

.「8月15日」.
■二度寝してしまい、ミヤ(在日韓国人ダンサー)からの電話で再び起きたときは10時5分だった。慌ててYCAMへ。ミュリエルにお詫びしてクラス参加。クラスの後、人が人を持ち上げる、リフトの練習を二人組で。俳優兼ビデオ担当のオリビエとルーのコンビが興味深い。オリビエは来日当初、長髪だったのが今はモヒカン。で、今日の稽古着は短パン。ロード・ウォリアーズが技をかけてるにしか見えない。
■いつもの昼食は、朝、弁当をオーダーすると昼までに配達されているシステムなのだが、今日は遅刻したので間に合わず、YCAMの隣にあるNHK山口の社員食堂へ行く。定食も安く、何より気分転換になった。ニュースでニューヨークの大停電を知る。テレビもしばらく見てないことに気付く。
■昼食後は、予定より早めに来日した「謎のドクター」ピエールによる講義。フィリップ曰く「各自の器官、色を見ながらプロジェクト全体を捉える機会にしたい。これからの話を聞いて、イマジネーションを広げてほしい」と。出演者+スタッフ、皆、ペンとノートを持って聴講。この講義がべらぼうに面白かった。今日は「12の経絡について」の話。人間の体は毎日生まれ変わる。それは、体の中にある6つの器官と6つの管、計12個の場所が順番にそれぞれ2時間かけて変化し、24時間ですべて変化する、と。で、各器官の説明に入る。たとえば、朝一番早く変わるのが、肺。肺は、最初に全ての体を包むもの。人間の動き全体を司る器官で、人は空気を吸って生き、全ての空気を吐いてしまうと死ぬ。全くの無と有を司ると言っても良い器官だ、と。色で言うと白。このような東洋医学的な解説が肺、大腸、胃、脾臓、心臓、小腸、膀胱、腎臓、西洋医学では存在しない二つの器官(心臓の大使、3つの体を温める器官)、胆嚢、肝臓の順番に続く。陰と陽の話も交ざり複雑で全て理解出来たわけじゃないが、何だか分からない刺激に感化される。ピエール自身の話もあっちこっち飛ぶので、明日までに美術のピエジャン(通称・PJ)が、分かりやすく図にして書いてきてくれることになった。講義は明日も続く。
■講義の後は、中国刀の練習。中国五千年の歴史にはなかなか太刀打ちできない(語呂合わせ)。その後、デュオ、トリオ、カルテットに分かれてリフトのモチーフ作り。僕はクリストフ(ダンサー兼ビデオ。DCA作品「トリトン」では付髭を生やし玉のダンスをやった人)、ルー、千枝との4人組。ひびのさん曰く「皆、同じことやっていっても、からだがバラバラなのが面白い」と。その後、全員でスタジオAに移動し、ビデオや照明を絡めた実験。いろいろ試す。昨日より照明の「遊び」がバラエティになった印象。
■稽古終了間際、中国中央バレエ団のフェイ・ボーが来日。ドゥクフレ作品に中国人が出演するということで誤解されてるが、燃焼系燃焼系といった雑技団的なダンサーはいない。9月から参加するヤンもモダンダンスの人だ。
■稽古終了後、ピエールやフェイ・ボーの歓迎も含めて、温泉街の居酒屋へ。まだ正式に決まってない作品タイトルの話になる。フィリップやPJがキーワードを言い、僕ら日本人の反応を見る。翻訳したとき、発表会的なものやアングラ的なものになるのは避けたいところ。結局、この夜では決まらなかった。この数日、なんだか気分が晴れない日が続いていたのだけど、今日は変則的なこともたくさんあり、元気になった。


2003/08/16 (Sat) 14

.「8月14日」.
■天気は雨だったけど今日から自転車通勤。午前中はミュリエルのクラス。午後、フィリップはスタッフらと劇場(スタジオA)でビデオ・テクニックの実験。出演者は、アトリエ(スタジオB)でDCAチーム指導のもと「時間を歪める動き」のトレーニング。たとえば、ビデオの巻き戻しみたいな動き。この二つの部屋以外にも、今日から山口入りした、ひびのこづえさんの衣裳のアトリエや鯱丸の美術の作業場等が同時進行で稼動していく。
■その後、僕と千枝はスタジオAに呼ばれ、ビデオと照明と「ある装置」を絡めた実験。一歩間違えると大怪我につながる装置なので、慎重にいろいろ試す。
■実験のあとは、スタジオBに戻り、京劇俳優・ルー指導の中国刀を使ったダンスの練習。独特の動きが難しい。体が攣る。この練習も毎日の日課でやっていくことになった。このように互いの文化をエクスチェンジしながらリハーサルは進んでいく。


2003/08/14 (Thu) 13

.「8月13日」.
■本日の稽古は14時から。睡眠不足の人が多そうだから、というフィリップの配慮。というわけで、時間に余裕が出来たので僕は初めて自炊。まずは誰でも出来るスパゲッティ・ミートソース。美味しく出来ました。ただ、湯切り用のざるが無かったので、まだ一度も使ってない三角コーナーで代用する。
■13時過ぎ、東京から持ってきたMD「スペースインベーダー大作戦」を聴きながらYCAMに向かう。目からはけして都会ではない風景、耳からはピコピコサウンド。それが心地よい。
■14時。フィリップからの指示の後、各自の作業に入る。僕は千枝と「質問コーナー」の問題選び。これは、よその国から見たその国の不思議、聞きたいことを公開質問、意識調査するコーナーで、シャトーバロンの公開リハでもやって来た。そのときは、我々日本人が「日本と聞いて思い浮かべるものは何ですか?」とか「一週間に何個、フランスパンを食べますか?」とか「日本の犬とフランスの犬は会話できると思いますか?」等の質問を日本語で聞き、その質問をステファンがフランス語に訳し、バティストらがエスプリの利いた答を言うというパターンだった。で、今回はその逆でフランス側から日本側への質問。フィリップから、フランス人の観客と日本人の観客の感覚は違うので、日本の観客層に合うものを君たちで選んで欲しい、と。DCAチームが各々提出してきた質問に笑い転げながらチョイス。質問は、そんなこと思いもしなかった日本人の性格のほかに、皇室の話、相撲取り、ハラキリ、など。チョイスしたあと、僕が司会者になり、書いてきた本人が質問を読み上げ、日本人が答える。質問の意図を汲み違えていたり、エスプリの利いた答えがうまく返せなく凹む。よって、このコーナーは保留になっちまっただ。今日の稽古はそこまで。20時解散。


2003/08/13 (Wed) 12

.「8月12日」.
■昨日と同じく午前中はミュリエルのクラス。昼食をはさんで午後からクリエーション。日本でフィリップが不思議に思った光景をテーマに皆が即興で動く。このとき、留意しなければいけないのが「時間の歪み」「速度の差」など。で、その動きをビデオ中継の映像と絡めていく。7月のフィリップ・ソロ公演もそうだったが、今回も一筋縄ではないビデオを多用した作品になりそうだ。僕のある動きに対して「マサ(ここでの僕の呼び名)が今やったのはマイムだからチェンジして欲しい」と言われ少し混乱する。
■ところで、日本人、フランス人、中国人がいる現場で、どういう風に会話が成立してるかと言うと、簡単な日常会話は英語だが、演出などは細かいニュアンスが必要なので通訳の方が二人参加している。日本人のフランス語通訳Aさんと中国人の日本語通訳Hさん。日本人とフランス人の間にはAさんが入るだけだが、ルーに伝える場合、フィリップが言ったことをAさんが日本語に訳し、それをHさんが中国語に訳す。僕とルーの会話にもHさんが入るが、簡単な会話はお互い英語。けど漢字を使った筆談なら細かい話も可能。ちなみに6月のシャトーバロンではフランス人の中国語通訳だったので、僕の言った日本語をAさんがフランス語に訳し、それをフランス人通訳が中国に訳し、ルーに伝えていた。舞台上は整然としてるが現場は四ヶ国語が入り乱れる。
■即興の後は、フィリップが組み分けした二人組でビザールな短いモチーフを作る作業。僕はステファンとのデュオ。で、このときも「時間の歪み」を意識して作る。フィリップは新しいビデオ・テクニックの試し。1時間後、出来たモチーフを各組がプレゼン。で、これにも試していたビデオ・テクニックを絡めてみる。が、面白いものになるには時間がかかりそうだ、と。
■ビデオ実験のあとは、昨日見れなかったシャトーバロン公開リハの続きを鑑賞。僕はソロ・コーナーで、『ムニャムニャ君』でも少しやった「猫を探すアニメとのシンクロ・ネタ」をバージョンアップしてやったのだけど、記録映像では分かりづらかった。僕の実体がクローズアップされて、映写した映像があまり撮られてなかったから。
■18時半稽古終了。帰りしな炊飯器を買って家へ。疲れてすぐに眠る。

■ところで、昨年8月の「芸術見本市」でお世話になったAさんが「フランスダンス・フェスティバル」のスタッフになったらしく山口入りしてた。また、ボクデス『フライング・ソーサーマン』初演時にお世話になった照明家Mさんも稽古にずっと付き合っている。いろいろな場所で出会った人が山口に集まっている。よければ貴方もどうですか?


2003/08/12 (Tue) 11

.「8月11日 」.
■家から歩いて20分弱の場所にYCAMはある。ゆくゆくは自転車が手配されるのだが、まだ人数分無いため、今日は徒歩で行く。
■10時から2時間、ミュリエル(fromDCA)のクラス(ウォーミングアップ、ストレッチ、エクササイズ)を受ける。これが毎日、午前中の日課になる。これまでは皆の隅で受けていたが、ミュリエルの指示で、最前列で受けることに。ダンス歴ゼロの僕は、カニングハム式エクササイズなんて付いていけないが、最善を尽くすスタンスで臨む。エクササイズのあとは、空間を意識したインプロなど。
■食事休憩のあと、13時半からミーティング。フィリップから今後の稽古進行が告げられる。まず、今週はこれまでやってきたことの見直し、フランスから持ってきた機材のチェックなど、準備期間に当てられる。来週はフィリップの友人の「謎のドクター」が来日するので、その人と各自、面談し、そこからソロのダンスを作る作業。謎のドクターは、一度会ったことがあるのだが、見た目はベートーベンを大きくした感じの、ほんとうに謎の人だった。このソロを作るとき、見えないところで動いている各自の器官を意識してほしい、と。また、結果、全体で一つのカラダになるようになりたい、と。3週目は、各自の中に「あるもの」を外に出す期間。前週したことを消化する週。そして、4週目以降は、それまでのことを「いい気分で構築する」作業に進む。
■ミーティングのあとは、各自の作業。DCAチームは設備のチェックなど。僕はひとりで新ネタ思案。思案中、びわ湖公演を終えた伊藤千枝が合流。キノコ公演の話を聞く。挨拶代わりに「それって寺山?」
■15時半過ぎ、6月に南仏シャトーバロンでやった公開リハーサル、7月にスペインでやったフィリップのソロ公演のビデオを皆で鑑賞。18時まで、何を残し、何が良くなかったを話す。
■稽古後、19時からYCAM主催のレセプション。食べたことの無いイタリア料理が並ぶ。食通のスタッフに「これ、あってるんですか?」と聞きながら吟味。明日の朝飯用にお持ち帰りも。まだ自炊の余裕ないからさぁ。こうして、稽古初日は終わりました。


2003/08/11 (Mon) 10

.「8月10日 山口編スタート」.
■フィリップやステファン(fromDCA)たちの顔を見たら、いくらか不安がなくなった。何でも楽しもうという姿勢に刺激を受ける。

■朝11時に羽田集合。びわ湖公演真っ最中のキノコの伊藤千枝を除く、先々月のフランス合宿日本人組と再会、ミーティング。12時25分離陸。羽田-山口宇部空港は奇しくも「500マイル」!機内では美術の鯱丸と近況報告。鯱丸はジブリの森の美術館のでかいロボットを作った彫刻家なのだけど、2003年ビル問題で頓挫した汐留の新作の話などを聞く。
■14時、あっという間に宇部着。YCAMのスタッフの方の車で宿舎に向かう。途中、小郡で中国からの京劇俳優ルーをピックアップ。日本語を少し覚えてきたらしく「オヒサシブリデス」と喜ばせる。ルーはジャパニメーション好きの20歳で、いつもアニメの主題歌を歌っている。中国語で。
■15時、宿舎。一昨日完成したそこはとても綺麗。20部屋あるのだが、その全室に今回のプロジェクトのメンバーが住む。室内も凄く、ロフト付8畳で冷暖房完備、まだ誰も使ったことのないテレビ、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジも完備。料理道具、食器、浴用品などが入った生活道具一式セットもある。あまりの好環境が、早くもプレッシャーに。そんな弱気でどうする、と思う自分がいる。荷解きした後、テレビ環境をチェック。ケーブルテレビに加入してもCX系は見れない。つまり、PRIDEは見れない。でも、そんなことを吹き飛ばす「ようこそ、我が城」状態。
■前日、来日したDCAのステファン、クリストフらが買い物から帰ってくる。ステファンというのは見た人もいるかもしれないが、昨年3月の空中WSで僕とコンビを組んだ俳優。再会にホッとする。
■18時にYCAMへ移動。フィリップとも再会。「ようこそ、我が国へ。あ、間違えた」と僕でも分かるように英語で言ってくれる。YCAMのスタッフも交えて軽い自己紹介の後、中を見学。磯崎新デザインのその建物は何もかもが新しく、また<メディアテクノロジーの共有プラットフォーム>なので何十台もの最新コンピューターが備えられている。でも、僕が一番驚いたのは、世田谷パブリックシアターにいたUさんが、YCAMの小屋付き舞台監督として働いていたことだ。「トーキョー・ボディ」本番中、足を怪我した僕はUさんに応急処置をしてもらった。いわば恩人。そのUさんが山口にいるとは思いもしなかった。その後、浴衣姿の観光客のいる温泉街の店で食事。ハイテクと温泉の共有プラットフォーム、湯田。
■22時過ぎ帰宅。ノートPCの環境設定を整え、いきなり桜庭敗戦の報を知る。ショック。やっぱり格闘界はシビアだ。結局、中継は見れなかったが、見た人はどんな気分だったんだろう。

■悲喜こもごもの一日が終わるけど、本番まで時間のない、長い闘いが始まる。


2003/08/10 (Sun) 9

.「8月9日」.
■いよいよ明日から山口入り。パッキングしたり、当分使わない予定のバイクを人に貸したり。
■生温い風が吹く中、「alt.」シリーズに出てもらった井苅智幸がバイクを取りに来た。僕はよく人にものを頼むのだが、井苅は初代・頼まれ役。最近は関寛之や服部竜三郎に頼むことが多く、久しぶりに頼みごとをした。
■桜井圭介さんが自身の日記でばらしてたので書くが、STUDIO VOICEに原稿を書くことになった。国際共同製作の前パブ。一度は断ったのだが、よくよく考えたらSTUDIO VOICEに書けるなんて初めてのことなんで気が変わった。けど、「やっぱ、やります」と言い出すタイミングがなかなか難しい。トイレに行きたいのに言い出せない子供のような気分だったが、勇気出してクリア。漏らさずにすんだ。やれば出来る。言い出す勇気があればなんとかなる。君も僕も。

■フィリップや制作スタッフは無事、山口入りしたらしい。見知らぬ土地へ行くことがそうさせるのか、時間の無さがそうさせるのか、こういう気分の稽古初日前日は初めてだ。


2003/08/09 (Sat) 8

.「8月8日」.
■新宿に買出しに行ったり、いろいろ準備。
■YCAMのKさんからまた山口情報を戴く。YCAMは湯田温泉の近くなのだが、周りに都市銀行がなく、コンビ二はあるけどATMはないとのこと。少し不便だがなんとかなるだろう。ひとり暮らしの醍醐味として「田舎からの仕送り」というのも体験してみたいところ。どんな気分なのだろう。この他にもKさんは色々な情報を教えてくれるが、どうしても聞けないことが一つある。
■「山口ではPRIDE-GPの当日中継があるかどうか」ということ。8/10にPRIDEの中継をCX系が初めて当日にするのだが、それが見たいのです。ま、迷わず行くけど。行けばわかるけど。
■生活面の心配事ばかり書いてるが、ほんとうに一番気になってるのは、当たり前だけど公演のこと。ここ数日、なんだか覚醒して眠れない日々が続く。他の出演者とは求められてるものが違うので、色々あせってるのかもしれない。迷わず行くけど。行けばわかるけど。

■PRIDEといえば、新体制になってからは番組制作会社イーストが大きく関与しているが、そのイーストから連絡。今月26日から9月7日まで青山スパイラルガーデンで開かれる「たけしの誰でもピカソ大博覧会2003」に何らかのかたちで参加することになった。会期中は山口にいるので、ボクデスはVTR参加になると思う。迷わず行ってください。行けばわかるけど。


「たけしの誰でもピカソ大博覧会2003」
http://www.tv-tokyo.co.jp/pikaso/2003/index.html


2003/08/08 (Fri) 7

.「8月7日」.
■昨年の5月、明和電機なども出演した静岡のイベント「ARTY PARTY」に出させてもらったのだけどその時のDJ、カスガアキラさんのスタッフをやっていたKさんからメール。偶然にも現在、YCAM(山口情報芸術センター)に勤務されているそうで宿舎の情報を教えてもらった。電話はないが、全室LANが通っていてネット環境は万全、とのこと。「世界の車窓へ」も更新出来そう。
■宿舎はYCAMの近くで、主催の神奈川芸術文化財団が手配してくれたウィークリーマンション。食器類やタオル、浴用品も用意してくれているみたいで、至れり尽くせりだが、問題がひとつ。宿舎には炊飯器がない。どうしよう。

■山口へ行く前に「男子はだまってなさいよ!」の佐伯新に渡さなきゃならない物があるので会う。待ち合わせ場所は原宿・LAPNET SHIPでやってる「五月女ケイ子初個展!」会場。デカイ絵や壁にびっしりある600枚の絵、五月女さんの解説、ボクデスの美術もしてくれてるボク松本が作ったオブジェ等、いちいちくだらない。(いい意味で。)
■細川徹や「トーキョー・ボディ」映像班でもあった鈴木謙一とも久しぶりに話す。彼らは、いつも「気が利いてる面白いこと」を口にする。面白い話をする人はたくさんいるが、「気が利いてる面白いこと」を言う人はそうそういない。「2ヶ月合宿して本番2日間って、合宿が目的なの?」だって。
■そういえば、僕と鈴木は「一人暮らし部」を作っていた。自慢じゃないが、これまで、僕や鈴木は一人暮らしをしたことが無く、いざ、その時が来ても困らないように自炊とか洗濯とか雨戸開けとかいろいろ備えておく部だ。おもに心の準備。でも、もう僕は退部しなければならない。山口ではひとり暮らしだからだ。鈴木には内藤やす子の↓この歌を送ろうと思う。

http://columbia.jp/~yasuko/ram/30042_9.ram


2003/08/07 (Thu) 6

.「8月6日」.
■どうにかノートPCの設定できた。これで東京とも連絡がとれ、この窓も続けられるのだが、問題がひとつ。山口の宿舎には電話がない。どうなるんだろう。
■御大フィリップ・ドゥクフレからメール。リハーサルの大まかな進行予定が書かれていて、それらは週ごとに「神秘的な週」「まじないの週」「勤勉な週」と名付けられている。時間があるわけではない。フィリップから言われ、今でも支えになってるのが「時間はいつでも無いんだよ」という言葉。作業時間が2ヶ月であろうと10年であろうと5分であろうと、そこに差は無い。人は、どうしてもその中でもがく。もがかずにいられない。もがきますよ。
■知り合いの映像作家・H君からもメール。あるダンスのコンペに出て、もの凄く怒られたらしい。「舐めてんのか」と。いいことだと思う。

■夜、先日の忍者ビデオの編集チェックで三軒茶屋へ。作業中、河井と「熊沢パンキース」の話になる。僕は7月末に見た。実のところ、松尾スズキ作品は、毎年見逃さないでいるのだけど、宮藤くんの作品は久しぶり。で、たくさんのパワーを貰う。昨年の10万人格闘技イベント「Dynamite!」以来の興奮。何だろう。テレビや映画じゃない、ライブという「目の前でやってくれてることの凄さ」を思い知った。宮藤くん曰く「初演も見てんのは小浜さんと河井さんと顔田さんぐらいですよ。あ、顔田さんは出てんのか」だって。




2003/08/06 (Wed) 5

.「8月5日」.
■昨日買ったノートPCの環境設定に四苦八苦で一日が終わる。今月10日から、10月の国際共同制作のため山口合宿が始まるのだが、このままではメールのやりとりもサイトの更新も出来ない。ちなみにこの文はデスクトップで打ってます。そもそも「世界の車窓へ」と名付けたのも山口からリハーサル・リポートをお届けしたいと思ったからだが、このままでは、この窓も、あと5日で終わる。


2003/08/06 (Wed) 4

.「8月3日」.
■ある雑誌の企画を頼まれたので、いろいろ構想を練る。あんまし良いものが浮かばなく苦しむ中、つい口からこぼれた言葉。

「誰でもダリ」

こぼれた瞬間、名状しがたい、こぼした者にしか味わえない恍惚感に包まれましたね。「誰ピカ」のように「誰ダリ」と呼んでほしい。


2003/08/06 (Wed) 3

.「8月2日」.
■今日も川。荒川の花火大会。生まれて初めて生の花火大会を見た。花火の綺麗さと何十万という人の多さに、ふと目の不自由な人は花火大会を見に来ないんだろうかとなぜか考えてしまった。


2003/08/06 (Wed) 2

.「2003年8月1日」.
■川に行く。河童じゃなくて忍者の衣裳で潜る。遊びじゃなくて仕事。TECH-WINの企画で4月から忍者劇のコーナーをやってるのだけど、この日は多摩川で水遁の術の撮影。まだ水は冷たい。河井克夫が「遠くまで来た甲斐があった」と笑いながら演出。顔の前の布が水を含んで口を覆う。水面に上がってもすぐには呼吸が出来なくNGが続く。ひょうきん族みたいに何度もリテイク。「出来ましぇん」って、ほんとうに口から出た。

■撮影後、大急ぎで「NUMBERING-MACHINE」を見に西荻窪へ。大遅刻で後半2本しか見てないので何も言えないが、丹野さんとは久しぶりに会ったので、色々話す。河童次郎のことも聞かれた。あと、打ち上げに2年前のニブロールのサンフランシスコ公演を見てくれたアメリカの人がいて「YES,Crazy!」だって。(いい意味で。)
■その席で、生まれて初めて、額に爪楊枝さした。やれば出来るんだ。



2003年9月 --+-- 車窓INDEX