2001年公開作品
のぶさんからの投稿です。
行ってまいりましたワーナーマイカル(横浜みなとみらい)!
やっぱ遠いわ。
祝日2回目上映で客の入りはちょうど半分、他が新作のトラフィック、ザ・メキシカンや超話題作のハンニバル等とあっては劣勢は否めませぬな。
監督川尻義昭、制作マッドハウスとくれば、私にとって観に行くためのモチベーションは十分。妖獣都市、獣兵衛忍風帖、等うまみあふれる作品の数々を思い起こします。
ストーリーはチェイス&バトルのシンプルさ。最近の設定に物語が飲み込まれている複雑系なアニメばかり観ているアニオタ脳には清冽でありました。
世界公開をにらんで、脚本段階からアメリカ側スタッフの細かいチェックが入り、キャラクターの芝居一つ一つまで指導があったということで、実はこの点が不安でした。派手だけど単純でスカスカなハリウッドムービーになっちまわないかと。でも観た感じは、川尻節がちょっとマイルドになったかというところ。ハリウッドチェックは良い効果があったようです。
作画の高密度さ、動きの流麗さはさすがゴージャス川尻節。CGはこの作品の制作が開始された当時のスプリガンあたりと同じレベルかと。でも手書き作画との擦りあわせはバッチリでした。「アニメスタイル」でいうところの、技術のコントロ−ルが上手くいっている例、ですね。
音楽はOVA「ジョジョの奇妙な冒険」を手がけたマルコ・ダンブロージオなのですが、これがまったく印象に残っていません。あのメインテーマはカッコよかったなんてのがないんですね。ダンブロージオの音楽はそれ単体で聴くと旋律の変化の仕方などが不自然に感じられるのだけど、画面と共に聞くと、それが実際のシーンや物語の変化にピタリと合わせたものだとわかる、と聞いたことがあります。それがハリウッド式。プロの手による仕事なのだと。音楽が印象に残らない、耳障りにもならないのは、音楽が映画に実に良く溶け込んだ証拠といえそうです。
でもカッコいいテーマ曲のサントラも好きですよね。最近ならばなんといっても「アヴァロン」でした…。
英語吹き替え字幕スーパーは作品の雰囲気に合っておりました。特にクライマックス、ヒロイン
( 多分)レイラが「飛べ!」というシーンは英語発音のニュアンスとあいまってグッとくるものがありました。また2CH掲示板に、本場の役者さんによる「D」という発音の響きがとても良い、という意見があり、なるほどとうならされました。
日本語吹き替え版もすでに収録が終わっているそうです。こちらのD役は大ベテラン田中秀幸とのこと。やはりOVA版の塩沢兼人氏の印象が強く、氏の逝去が惜しまれるところですが、田中氏もベターなキャスティングですね。
「左手」は永井一郎さん、これはハマッてます。OVA版も永井さんだったかしら。
かといって、ゴージャスかつシンプルなばかりでではありません。
芯のあるスト−リーが基盤にあってこその豪華さなのです。
吸血鬼『貴族』マイエル=リンクと人間の娘シャーロット。『貴族』の血を求める業と、人間の血族の絆、永遠の命と限りある命が、求め合う2人の許されぬ愛に絡み付く。その全てを振り払い、逃れるべく、彼らははるか遠くの何処かへと逃避行していく。その2人を追うのは、Dと凄腕バンパイアハンターのマーカス兄妹。憎しみと孤独から兄妹に加わることになった過去を持つレイラは、吸血鬼と人間の間に生まれながら、ハンターという立場のDにこだわる。激烈な闘いの末、彼女は一体、何を見出すのか。
そして、底知れぬ闇を感じさせつつも、人間の側に立ち続けるダンピール、Dという存在。
ラストは原作と異なるということですが、その切なさと共に一気に胸のすくような感覚は希なる得難さでした。
85年制作の芦田豊雄監督によるOVA版は川尻監督も意識されたそうですが、今回の映画は総合的に前作をはるかにしのぐフィルムになりました。前作もOVA勃興期の気迫に満ちた良作でありましたが、今の目で見るといかにもアニメファン向けに映ってしまいますね。そういえば芦田氏の初監督作でした。当時は結構熱心に見た覚えが…。
気になるところも少しあるんですよねぇ。冒頭の仕事依頼のシーンはDではなくマーカス兄妹で、にした方が後のD登場シーンが引き立つとの意見に賛成。そのマーカス兄妹はどうにもインパクトに欠ける。バルバロイの護衛連中とひっくるめて一芸さん大集合という感じ。
また物語のバランスが各キャラクターに均等に割り振られ、どのキャラにも見せ場がある代わりに、突出して深く描かれたキャラがいない。これもハリウッドチェックの結果でしょうか。
後は、そんなに気にならなかったですね。長所が短所をカバーしていたかと。
映画の中身には直接関係ないですが、エンディングの主題歌!
邦楽なんですよね〜。知らなかったんでびっくりしました。Do
As Infinityの曲は悪くはなかったけど、Dには合ってない。人によっては気分を著しく害しているようです。テキトーなタイアップであてがったという印象がぬぐえなくて。彼らの曲なら曲として、せめて作品にばっちり合う新曲を持ってきてほしかった。
ワーナーマイカル10周年記念キャンペーンの一環で1,000円で見られたのはうれしかったのですが、アニメ作品ということで良くも悪くも特別扱いという感もありました。公開前のTVCMもほとんどなかったので、一般人へアピール度もあまりなかったですよね。劇場公開はハクづけ、ソフト販売を主な収入と当て込んでいるのでしょうか。
実際、各地の劇場の入りも大したことはないようです。並ばなくていいのはありがたいけど。国内ではどの道、大して売れんとされているようでさびしいですね。
DVDが配給元のワーナーから出たら即買いします! 英語・日本語版と両方の収録はワーナーならば基本だし、値段も信頼できますから(^^) ただ、サントラはavex modeから出てて不安ですよねー。こちらから出たら値段の点でどうなるか…。是非ハリウッドプライスで出て欲しいものです。
エンターテイメントとは、喜怒哀楽全てが入ったものといいます。ならばこの映画は正しくエンターテイメント。一見の価値アリと、オススメできましょう。
参考資料
アニメ@2ch掲示板 吸血鬼ハンターD
「WEBアニメスタイル」【TOPICS】川尻アニメの決定版!劇場大作『バンパイアハンターD』
アニメージュ01年5月号