1987年放映
現在ではSFドラマ「バビロン5」のプロデューサーとして有名なJ・マイケル・ストラジンスキーと、「ビーストウォーズ・トランスフォーマーズ」のシリーズ構成を担当したラリー・ディティリオが、80年代中期(86年頃)にストーリーエディターとして参加した子供向けの特撮ヒーロー番組。それが本作「キャプテンパワー」である。
悪の帝王ドレッドに支配される未来世界。ドレッド軍の圧制に、人々は苦しめられていた。だがそれに対し、特殊強化服を身に纏った未来戦士達が敢然と立ち向かう。というのが大まかなストーリー。
未来戦士側のリーダーが、タイトルにもなっている「キャプテンパワー」。そして飛行能力を持つ「ホーク」、怪力の「タンク」、ホログラムによる変化能力がある「スカウト」、そして紅一点の「パイロット」で構成され、全員が「パワーオン!」の掛け声で特殊強化服を装着する。このスーツの他に、大型母艦や2人乗りの小型飛行艇「ドラゴンフライ」を擁し、これらを駆使してドレッド軍と激闘を繰り広げるのである。
対するドレッド軍は悪の帝王ドレッドを頂点に、飛行能力を持つロボット「ソロン」、そしてこれと対になるべく途中から登場した陸戦用ロボット「ブラスター」と、強化服を纏った雑魚兵士(ストームトルーパーみたいなもの)で構成され、他に普通の人間のスタッフも存在する。
日本のスーパー戦隊を参考にしたとの事で、一見すると戦隊のパチモノに見える。しかし、そこはアメリカ。数々の野心的な試みがなされていた。まず、当時としては珍しかったCGの多用が挙げられよう。ドレッド軍の鳥人型ロボット「ソロン」と、途中から登場した陸戦用ロボット「ブラスター」は、オールCGで描かれており当時の私は目を見張ったものである。今日の水準からすれば稚拙に映るかもしれないが、当時は非常に画期的な事であった。また、CGだからといってたまにしか登場しないという事はなく、殆ど毎回結構な時間画面に登場しており、ここまで大々的にCGがTVドラマで使用されていたのも当時は非常に珍しかったのだ。
もう一つは玩具との連動である。メインスポンサーであるバンダイから、パワージェットという光線銃にもなる戦闘機の玩具が発売されていたのだが、これで画面の点滅する部分を射撃する事によりゲームを楽しめる様になっていた。これは画面のフリッカー機能を使ったもので、劇中ではドレッド兵の胸や背中などが常に点滅しており、ここを狙って点数を稼ぐ仕組みになっていた。当時他社からも似た様な商品が発売されていたが、ポケモン事件後の今となっては幻の玩具と化している感がある。(笑)
なお、このパワージェットの劇中での活躍シーンは私の記憶にまったく残っていない。(汗)
飛行バイクとも言うべき ドラゴンフライは出番が多かったし、母艦も話の最後で助けた一般人を輸送するシーンが記憶に残っているのだが……。
そして最大の特徴はキャラクター描写がしっかりとしている点である。キャプテンパワーの父親はドレッドとは友人であり、チームの紅一点であるパイロットも元はドレッド軍に所属していたのである。パイロットが救援を求めに行った村に、かつて彼女がドレッド軍に所属していた時の事を知る人間がおり、そこで確執が起こりなかなか救援を得る事が出来ない、というエピソードが印象に残っている。他にも、ドレッド側が仕立て上げた偽キャプテンパワーにより一般住民のキャプテンパワーへの信頼が揺らぐ話とか、子供向けにしてはやたらハードな話がかなり多かった。(^_^)
またソロンは、ちょっとドジっぽいにも関わらず、やはり冷酷なうえ結構強いというキャラクターが、個人的にトランスフォーマーのスタースクリームを連想させられた次第である。
私はこういった点に魅せられ、この番組を毎週楽しみにしていたのである。しかし、あぁそれなのに打ち切りとは……。余りに子供向けじゃない話が多かった為か、本国では打ち切り。日本では、さらに最終回の少し前で打ち切りという事態に……。結局日本では最終話は放送されず、私も未見である。聞いた話では、最終話近辺はのちにビデオ・LDで発売され、再放送時にはちゃんと放送されたそうであるが。スーツデザインが非常にアメリカ的なデザインであったというものあるだろうが、何故こんなに内容が素晴らしい番組が子供に受けなかったのかと思うと、非常に残念である。この番組のスポンサーはバンダイであり、どうも向こうで打ち切られたにも関わらず、わざわざ買い付けてきたらしい。(笑)
掲載誌はテレビマガジンであったが、ページ数は少なかった。
思えば同じくバンダイが当時放映していた「超人機メタルダー」も、子供に受けが悪かったらしく途中で路線変更を余儀無くされていた。私の周りではあのハードな世界観が好きな奴等が多くて、結構人気があったのだが……もう少し下というか、玩具を買ってくれる未就学児童には受けが悪かったという事なのだろう。
キャプテンパワーもバンダイは前述のパワージェットの他に、フィギュアなども出していたが、売上は良くなかったと聞く。そう言えば、さっぱり売っているのを見なかったな……。(^^;)
ちなみにパワージェットの玩具にはコクピットにフィギュアを乗せる事が出来、攻撃を喰らうとフィギュアが飛び出すというギミックが付いていた。放送当初は、スポンサーであった月星化成の子供用の靴のCMでも「今、パワージェット
プレゼント」とやっていて、結構あちこちで宣伝していた。日本オリジナルのフィギュアを乗せる事が出来るロボットの玩具を出す企画もあった様で、かの市川裕文氏もデザインに関わっていたとのことである。
最終話はドレッド側によりパワー側の基地が暴かれ、猛攻を受けた末にパワー側の基地は爆破、ヒロインのパイロットも死亡するという壮絶なものだと聞く。キャプテンパワーは惨敗に終わってしまったが、そのストーリーエディターであるJ・マイケル・ストラジンスキーは数年後、「バビロン5」を製作し成功を収め、見事全世界に名を轟かせる事となった。相変わらず重厚な人間ドラマが展開され、CGも効果的に使用されている様で、そこにキャプテンパワーからの系譜を感じ取る事が出来よう。ちなみに、帝王ドレッドの頭部のデザインは、スタートレックのボーグの元ネタになっていると思われる。また、「ビーストウォーズ」のストーリー構成を担当したラリー・ディティリオ氏は、「キャプテンパワー」「バビロン5」共に製作に参加している。
放送局はTV朝日系列であったが、関西では何故か朝日放送ではなく県域局であるサンテレビで、月曜の7時から放送されていた。個人的には、是非ともバンダイビジュアルにはDVD−BOXを発売してもらいたいものである。(多少高くても買うからさぁ〜)
関連サイトとしては、ココが有名かと。(英語サイトです)