決戦
リアルタイム シミュレーション 2000年発売 コーエー
★★★☆☆
コーエーのPS2用ゲーム第一弾。コーエーはPS2に対し当初から意欲的で、PS2スタート当初に投入したのが本作「決戦」です。
本作はかの天下分け目の戦いと言われる「関ヶ原の合戦」を題材としたリアルタイムシミュレーションゲームで、プレーヤーは東軍総大将
徳川家康もしくは、一度クリアすると選択可能になる西軍総大将
石田三成となり、軍を指揮して相手勢力の撃滅を目指します。意外な事に、コーエーのゲームで関ヶ原をモチーフとしたものは本作が初めてなんですね。「信長の野望」とかはあくまで秀吉による天下統一以前しか描いていなかった訳で。パソコンゲームとしては、以前アートディンクが関ヶ原を題材にしたものを発売していたのですけどね。
本作が発売された2000年は、関ヶ原合戦400周年に当たり、現地でイベントが催されたりNHK大河ドラマ『葵
徳川三代』が放送されるなど「関ヶ原」が盛り上がった年であり、そういう事もあってか「関ヶ原」が題材に選ばれた様です。
PS2という事で画像は全てポリゴン。PS2初参入で、かつPS2黎明期の一翼を担うとあってか、かなり気合の入った内容でした。またシステムもそれまでのコーエーのゲームとは全く異なったものとなっています。
ゲームシステムは合戦を次々とクリアしていく面クリア型なのですが、他のゲームと異なるのは最終面以外は負けてもゲームオーバーにならないという点です。負ける事によって新たな武将が仲間になったりもするので、一度クリアした後は負けてみると面白いです。ステージはこの勝つか負けるかによって分岐するのですが、ステージの総数はあまり多くはなく、ゲームクリアまでにはそれ程時間はかかりません。その為、「信長の野望」「三国志」といった他のコーエーのSLGとは違い、かなり手軽にブレイできる作品となっております。
合戦の始まる前や、合戦中に条件を満たすと発生するイベントでは、ハイクオリティなムービーが流れます。PS2発売時にかなり話題になったもので、今みてもかなりの出来栄えです。合戦の戦闘時にはリアルタイムレンダリングのグラフィックで武将の勇姿が拝めますが、こちらはPS2初期という事もあってかムービーシーンよりはクオリティは落ちる印象です。しかし、ここで実現した多くの兵士が一人一人個別に戦うという表現は、後の「真・三国無双」において結実します。戦闘シーンでは流石に表現的に問題があるのか、斬っても突いても血糊が飛び散らないのがちょっと残念なところです。(笑)
ゲームの流れとしては、まず合戦の前に家臣と共に、政略と軍議を行います。政略では敵武将に寝返り工作をしたり、部隊の備え(陣形)の変更をします。次に軍儀では実際の戦場での部隊配置などを行います。初めは細かい事までは指定できないのですが、ゲームが進むにつれて自分の立場が強化されたされたという演出か、細かい部分まで指定できる様になります。
武将にはそれぞれ「戦闘力」「魅力」といったパラメーターが設定されており、合戦時における強さが異なっています。史実で猛将と言われている人物はやはり戦闘力が高いですね。また、使える特殊戦術も武将毎に設定されています。
武将が率いる部隊は最大10個の小隊で構成されており、この小隊には槍隊、鉄砲隊、騎馬隊など数種の兵種があります兵種と備え(陣形)により使用できる特殊戦術が異なってきますので、合戦前の編成は重要です。と言っても、残念な事にあんまし自由度は無いんですけどね。(汗)
兵種ではやはり「信長の野望」でも強力である騎馬鉄砲隊が強いです。女騎馬鉄砲隊や、くの一隊といった女性ばかりの部隊を持つ武将もおり、ここが本作の独特な部分ですね。
ここまで準備が終わると、いよいよ合戦です。味方の部隊に指示を出して敵と戦闘をします。コントローラーの操作法が独特なので、初めはとまどうかもしれませんが、やっているうちに慣れると思います。本作では、味方の部隊と敵の部隊が接近すると自動的に戦闘に突入するシステムです。敵よりも兵数が少ないと不利なので、出来るだけ同数以上の兵数で敵に当たらねばなりません。味方の武将にはそれぞれ忠誠心が設定されており、忠誠の低い外様な輩はなかなか命令を聞いてくれなかったりします。この、基本的に自分が完全自由に出来るのはプレイヤーである総大将部隊のみという点が面白いところです。まぁなんちゅうか、なかなか思い通りに部隊を動かせなくてもどかしい部分もありますわな。
本作では、戦闘においては敵味方の小隊は1対1でしか戦いません。こちらが部隊が3小隊、敵が2小隊の場合、こちらの2小隊しか敵小隊と戦わないという事です。敵武将配下の小隊数がこちらの武将の部隊の小隊よりも多い場合は、さらに別の味方武将を敵に隣接させて戦闘に参加させられますが、敵武将の小隊数が少なくなると更に味方を戦闘に参加させる事は出来なくなります。複数の部隊で敵部隊を囲んでも、敵部隊内の小隊数が減ると全然意味が無い訳で、ここら辺は今一戦術に幅が無い気が。したがって、敵部隊の小隊が多い場合は複数の武将で同時に攻撃を仕掛け、敵の小隊数が減ったら1人の武将でじっくりトドメをというのが基本的戦術です。
部隊は兵士数が0になると壊滅します。また、そうなる前に陣形を立て直すため敗走する場合もあります。敵部隊が敗走した場合それに追撃をかける事になるのですが、追撃部隊が足軽だと追撃に失敗する場合も。騎馬隊ならばほぼ100%追撃に成功する様です。敗走した敵部隊は離れた場所に移動して集結を行うのですが、敵部隊は壊滅させないとこちらの戦意が上がらない為、戦意を上げたい場合は追っ手の部隊を派遣してきっちり壊滅させてしまいましよう。(笑)
武将には「戦意」というパラメーターが存在し、これが80以上あると特殊戦術を使う事が出来ます。特殊戦術は上手く使えば戦局をひっくり返す事が出来るので重要なのですが、使用すると戦意を消費してしまいます。しかも強力な特殊戦術ほど戦意の消費量が高い為、よく考えて使う必要があります。戦意はほっておいても貯まっていくのですが、敵部隊を壊滅させると味方の全部隊の戦意が一気に上昇します。という訳で、敵部隊を壊滅させると戦意が貯まって特殊攻撃が使用可能になって、より敵部隊を壊滅させやすくなり、更に壊滅させるにつれドンドン有利になっていく訳です。逆にいうと、味方部隊がドンドンやられていくと、坂を転がり落ちる様に自軍が不利に……。
特殊戦術は使い方によって強大な威力を発揮します。
本作では、騎馬隊は直接斬り合う近距離戦に強く鉄砲などの遠距離攻撃に弱い、足軽は遠距離攻撃に強く近距離戦に弱いという性質を持っています。従って、特殊戦術も敵の性質に合わせたものを使用するのが上策です。
「激励」は総大将のみが使える特殊戦術で、使用した味方部隊の戦意をアップさせます。大規模な合戦で味方の武将が多い場合は戦闘は味方武将に任せ、総大将は後方に待機しひたすら味方への激励に徹するという戦術もあります。
「鉄砲三段」「鉄砲」は、明らかに騎馬隊に使用した方が効果が高い為、出来るだけ騎馬隊に対して使用していきたいところです。「鉄砲三段」ならば一気に騎馬隊を壊滅状態に追い込める事も。
「大砲」は特殊戦術中最大の破壊力を持ち足軽にも大ダメージを与えられますが、これは攻撃範囲が自部隊よりもかなり離れた場所である為、目標との間合いをしっかりチェックしている必要があります。ボヤっとしていると敵に接近しすぎていて大砲を撃ち込めない事も。(汗)
一気に敵に大ダメージを与えられる分、戦意の消費量も多い為、出来るだけ効果的に使っていきたいところです。逆に言うと敵の大砲能力を持っている部隊も要注意な訳で、大砲を持っている敵は真っ先に数を減らすとか、豪腕で戦意を減少させるなど、早めに対処しておいた方が賢明です。総大将部隊は大砲を装備しつつ兵力が多い為、敵に大砲で与えるダメージは莫大ですが、「激励」を使えるのも総大将だけな為、どちらを使うか悩むところですね。味方に他に大砲を使える部隊がある場合は、総大将部隊はその味方部隊への激励役に徹して、その部隊の大砲を何度も使用するという手もあります。その場合、その部隊は敵に対する位置を上手くコントロールしてアウトレンジ戦法に徹した方が良いでしょう。
「豪腕」は敵に与えるダメージはそれ程ではないですが、敵の戦意を減少させられるので重要です。強力な特殊戦術を発動させそうな敵には、積極的に使用していきましょう。
「騎馬突撃」は足軽に対して敢行すると効果的ですが、他に敵に包囲された状態から脱出する手段にも使用できます。
「槍衾」「弓」はイマイチ効果の程は薄い攻撃でした。
音声は一応フルボイスで、ムービーシーンや戦闘時の一騎打ち、特殊戦術発動時に喋ってくれて場面に彩りを添えてくれるのですが、声優陣はかなり豪華です。徳川家康は玄田哲章氏(コンボイ司令官!)が担当、他にも本多正信は八奈見乗児氏、福島正則は屋良有作氏、島津義弘は郷里大輔氏が担当するなど非常に豪華なメンバーとなっております。大谷吉継は故・塩沢兼人氏で、もうこの声が聞けないとは……。声優の演義はもうバッチリでした。
キャラクターデザインは大体私のイメージに合っていました。大谷刑部はあれはあれで解釈として面白いんじゃないかと思いますね。ただ、鎧兜は全般的史実よりかなりハデにアレンジされているのでにもここは評価の分かれるところか。また、主役クラスの武将はちゃんと固有のポリゴンデータがあるのですが、脇役になると色を変えただけの使い回しの場合も……そんなに容量を喰っている訳でもあるまいに、これは止めてくれという感じでしたね。あと、史実通り本多忠勝なんかは大坂の陣の頃になると息子に代変わりしてしまうのですが、家康自身のポリゴンデータは一つしかないので、いつまでたっても歳をとらないんですよ。(笑)
これは他の武将も同様な事ですが。また、武将の名前にフリガナが全くふられていない為、中には資料を見ないと読み方が判りにくい人物もおりました。
初回プレイでは東軍しか使用できないのですが、2回目からは西軍でもプレイ出来る様になり、さらにクリアを重ねるにつれ難易度調整とか合戦を選んでプレイ出来る様になる等の隠し要素が増えていきます。西軍プレイはそもそもの総大将である石田三成の戦闘力自体が家康よりも劣る為、同じ大砲攻撃でも与えるダメージが少ない上に、味方武将に忠誠心が低い連中が多いので全体的に難易度は高くなっています。
本作の魅力
本作では西軍プレイで東軍を破り、豊臣政権を守る事が出来るので、やはり最大の魅力は歴史のifに挑戦できるという点ですね。関西人で西軍贔屓の方には特にお薦めです。
私なんかもっぱら西軍プレイばっかで、豊臣政権守護、徳川幕府誕生阻止ばっかりやってますからね。(笑)
また、色々と細かい歴史考証がなされている様で、歴史マニアとしてもニヤリと来る描写が多くて楽しめました。どうも制作者は黒田如水に思い入れがあるらしく、進め方によっては「如水の野望」と化す場面も。あの世の如水殿も喜んでおられる事でしょう。合戦時に起こるイベントにもかなりナイスなものが。加藤清正と福島正則を戦わせると・・・。
進め方によっては原哲夫の漫画で有名なあの人も出てくるので、あの漫画のファンの方にもお薦めです。「信長の野望」での場合と同様戦闘能力の数値が高く設定されており、突撃をかけると敵部隊が激減してくれます。(笑)
島左近(石田三成の軍師)も、原哲夫の「影武者徳川家康」「SAKON
戦国血風録」での描写にモロに影響を受けた演出がなされている気がします。(笑)
反面、ある意味戦国ファンにとってのキャラゲーという要素も高く、戦国時代に興味があまり無い人にはお勧めしかねるなぁ、という部分はありますね。鎧兜があまりにもハデハデのデザインにアレンジされており、「なんだあれは!?」って感じで、ちょっとアレンジがキツ過ぎる感が。そこまでして西洋の鎧の要素を取り入れ無くても良いのにと思うのですが……。加藤清正の鎧とかケバ過ぎてチト辛いところです。
クリアするまでにそれほど時間はかからず、あまり肩肘張らずにプレイできます。標準の難易度もそう高くはなく、やっているうちに難易度も細かく調整出来るので、ライトユーザーでも取っ付き易いと思います。逆に言えば結構すぐに終わってしまい、またシステム的に取れる戦術の幅が狭く力押しになりがちなので、ヘビーユーザーには物足りない部分も多いと思われます。「信長の野望」「三国志」などコーエーの他のSLGは新しいものになるにつれドンドン複雑化してきておりますが、本作はそういう物に腰が退けてしまう層にもアピールしようとした様ですね。このライトユーザー向け路線は、先頃発売された「真・三国無双」において遂にに完成をみたと言えるでしょう。
最近は中古での価格がかなり安くなっておりますので、コーエー初心者にもお薦めしたい一本です。