ガメラ  大怪獣空中決戦

1995年公開


  古代文明を滅ぼした怪獣ギャオスが現代に復活。それに呼応して対抗存在であるガメラも復活し、戦いの舞台は福岡を皮切りに木曽山中、富士山麓、そして東京へと移動。首都を舞台に、地球の未来を賭けた決戦が繰り広げられる。


  「宇宙怪獣ガメラ」以来、10数年ぶりに復活したガメラ映画にして、平成ガメラ3部作の第1作。ここ10年の日本映画の中で、文句無しに傑作と言える一品です。
  ガメラは東宝のゴジラに対抗して大映が生み出した、亀をモチーフとした大怪獣です。ゴジラ同様口から火を吐く他、脚を収納してジェット噴射で空や宇宙を飛ぶといった能力を持っていて、子供好きという設定でした。昔はゴジラと並び称された怪獣でしたが、長らく続編が作られなかった為、平成に入った頃には知名度は低くなっておりまして……。(^^;) その間倒産した大映が徳間書店傘下で復活する等を経、ライバルであったゴジラシリーズの新作が好調な為ガメラも復活させようという話が持ち上がり、1995年遂に復活した訳です。
  本作は3部作の第1作目という事もあってか、極めてオーソドックスな展開であり怪獣映画の王道的作品です。しかし、その世界観にかなりリアルな設定が取り入れられており、それを丁寧に描写している点が他の多くの怪獣映画と異なる部分です。昭和シリーズは初期作品こそ大人も対象にした怪獣映画という感じだったのですが、中期以降は子供の味方の怪獣という設定になり、今でもガメラはそのイメージが強い様ですが、本作からスタートした平成シリーズは、子供好きという設定は残しつつもガラリと異なる世界観を描く事となりました。
  正直観る前は不安もあったのですが、その懸念を吹き飛ばす出来栄えでした。予算はあまり無かったと聞きますが、それを感じさせない作劇と演出でした。何と言いますか、突如日常に乱入してきた怪獣が存在する世界を、見事に描ききっていたと思います。怪獣という存在を描写しつつも、リアリティに対して気が配られており、それが怪獣が本当に居たらこう見えるのかもしれないなと観客に思わせる事に成功しているのではないかと。怪獣の描写もかなり格好良いですが、人間側の描写もしっかりしていました。男性陣より女性陣の方がずっと目立って活躍していた気もしますが。(笑)  中山忍はこの映画を観てファンになりましたよ。

  10数年ぶりのガメラ復活という事で、スタッフは色々と悩んだと思うのですが、旧シリーズでも人気怪獣だったギャオスの敵役での登板は、まあ安全牌かなと。ガメラとギャオスは時代に即してデザインが一新され、着ぐるみの造型も良かったです。この新デザインは、昔のラインを残しつつも非常に格好良くアレンジされており、デザインのリメイクの成功例だと思います。まったくターンAガンダムとかも見習って欲しいもんだわ。(笑) ガメラの造型は、後の2作と比べると可愛い顔をしてますね。作品を重ねるにつれてどんどん怖くなっていく……(^^;)
  オープンセットを駆使した特撮は、かなり効果的だったと思います。基本的に予算の少なさを全く感じさせない映像でしたが、惜しむらくはCGIですねぇ。CGIだけはこの当時の日本映画の弱点でして、東京でギャオスに向けて自衛隊が発射したミサイルは、CGIである事がバレバレで残念でした。またCGIではないですが、最後のギャオスとの戦いにおいてガメラが使用した肘から飛び出すトゲ攻撃も、ちと判り難い描写になっていたのが残念なところです。

  昭和シリーズのガメラと異なり平成シリーズのガメラは、古代文明が自らが生み出したギャオスを掣肘する為に対抗存在として生み出した、生体兵器という設定です。厳密には、劇中でそう考えられているというだけの事で、正確な事は不明みたいですが。何故ガメラを見た群集が「あ!  でっかい亀だ」というつっこみを入れないのか疑問視する意見もありますが、実は平成ガメラシリーズの作中世界は、亀が存在しないという微妙にパラレルワールドな設定になっているんですよ。ですから、「亀だ亀だ」と群集は突っ込まない訳です。(^^)

  福岡も舞台になるという事で、福岡の九州朝日放送の深夜番組「ドォーモ」では、積極的に特集を組んでおりました。この時は前年公開の「ゴジラVSスペースゴジラ」と続けて、福岡が舞台になっていますね。

  私が気に入っているシーンですが、木曽山中におけるギャオスとの戦闘で、ガメラが人間の味方であると判明するシーンが好きです。同時期のゴジラ映画と異なり、人間の味方のガメラと人間の敵のギャオスという構図なので、素直にガメラを応援できるのが良かったですよ。でもって、ガメラを容赦なく攻撃する自衛隊に対しては「何て恩知らずな連中だ」と憤りを感じるという。(^^;)  ガメラが福岡の中州に上陸するシーンも気に入っているシーンです。見慣れた街と怪獣の対比が面白い。更にガメラによる福岡ドームの天井の破壊へと続く訳ですが、このシーンのドームの壊れ方も良いですねぇ。やはり見慣れた街が登場しますと、色々と面白いですわ。
  最終決戦におけるガメラの登場シーンも、まさにカタルシスの炸裂という感じで、脚本と演出の勝利ですね。終わり方が極めてオーソドックスな怪獣映画的な終わり方だったので、その時はちと不満もあったのですが、2作目・3作目と観た今では、あれでベストな終わり方だったのだなぁと思う次第です。
  私としては劇場に観に行って満足できた作品でした。ただ、観に行ったのが既に結構遅い時期であったため、スクリーンが小さいところでしかやっていなかったのはちと残念。ま、そういう悪環境を跳ね返す程面白い作品でした。色々とゴジラと比較されるガメラですか、この作品は殆どのゴジラ映画を超えていると思います。私はあんまり映画に詳しくなくて、この映画を観るまで金子修介監督の事は全く知らなかったのですが、この作品以来注目しております。今度監督を担当する新作ゴジラ映画にも期待していますよ。正直、金子監督で駄目ならもうどうしようも無いというか。(笑)  余談ですが中山忍氏はLD党で、LDの行く末を心配されているとか。

  ガメラの復活の話が出てきたのと同じ頃に、「大魔神」の復活の話もあったのですが、こちらは今に至るまで復活しておりませんねぇ。こっちも楽しみにしていたのですが、一体どうなっちゃってるんでしょ。やっぱ立ち消えになっちゃったんでしょうか?(^^;


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