2000年年末公開作品
Haさんからの投稿です。賛否両論合い乱れる本作ですが、氏の評価は如何に……
物語は過去のゴジラ襲撃のニュース映像から始まり一気に世界観を説明します。
その後、ゴジラは或るモノを目当てに大阪に上陸。過去にゴジラに痛い目にあってる割には、少人数の特殊部隊がチンケな作戦で退治しようとします。隊長が死んで主人公は絶叫。そしてタイトル。(初見のときはここで「今年は結構やってくれるのではないか。」などと思ってしまいました。)
その後は、(プロローグからはとても連想できない)Gグラスパーなる対ゴジラ部隊のG消滅作戦が展開されます。大阪ではバズーカ砲のような武器でゴジラを倒そうとしてたのに5年後にはブラックホールを生み出す兵器をあっさり完成させるのですから、なんとも人類の英知とは素晴らしいですね。
秋葉原にいた軽薄な青年の協力もあって兵器の小型化に成功。ところが、人工ブラックホールの実験のせいで時空を超えて、古代トンボのヤゴが出現。このメガヌロンにより渋谷は水没。他の場所は大丈夫みたいです。主人公らはもう少し責任を感じて良い気もしますが、お構いなしにG消滅作戦に邁進してくれます。
一回目の作戦は奇岩島なる孤島にゴジラを誘き寄せて消滅させようというもの。ふ化したメガヌロン=メガニューラの邪魔も入ってか、当然のごとく失敗。ゴジラは目の前にいる特別戦闘機グリフォンに攻撃を加えることも無く、一目散に東京に向かいます。一方、渋谷ではゴジラのエネルギーを調達してきたメガニューラ達によってその親玉がメガギラスに変身。お台場にやってきたゴジラと一戦交えます。
メガギラス退場後、いよいよ本題のG消滅作戦に突入。果たしてゴジラが東京を狙う目的は?ゴジラは本当に消滅してしまうのか!?
というのがおおまかな話の流れです。
プロローグこそかなり楽しめましたが、どうも私はこの映画をあまり楽しむことは出来ませんでした。
以下、気になった箇所をいくつか上げてみました。
まず、主人公。ゴジラ退治に異常なまでの情熱を燃やしていますが、これは「VSスペースゴジラ」や「ミレニアム」でもやっていたことであまり新鮮味を感じません。脚本の柏原氏の趣味なのでしょうが、他に無いのかという気がします。ついでに登場人物が(台詞も含めて)薄っぺらなのも特徴といえばそうかもしれません。
Gグラスパーという対ゴジラ部隊ですが、これを好きになれるかどうかで、この映画にノれるかどうかが決まるといっても過言では無いと思います。このGグラスパーはGフォースよりむしろ平成ウルトラマンのGUTSなどに近い雰囲気で、グリフォン等のメカデザインもまるでガイアに出てきそうなモノです。どうもゴジラにはミスマッチという気がしてなりません。これは好みの問題でしょうが、ゴジラには実際に存在する(又は存在しそうな)軍隊が対抗するのが一番燃えるのではないでしょうか?
超兵器も然り。「あり得ない」けど「ありそうな」ものが必要だと思います。
ネガヌロンによる渋谷水没シーン。これは割と好きなのですが、水没していく過程こそもっと描写されるべきだと感じました。勿論、物語の上ではあまり重要なシーンではないのかもしれませんが・・・。
ゴジラと人間の攻防の間で物語を引っ掻き回すメガギラスですが、ほんとに邪魔だったと思います。ストレートにゴジラと人類の攻防を描いた方が完成度は高まった思うのですが。まぁ諸々の事情で敵怪獣は出さざるを得ないのでしょうね。それでも、むしろメガヌロンやメガニューラのままの方が魅力的だったのは皮肉だと思います。敵怪獣は植物でも甲殻類でもトンボでも最終形態は必ずドラゴンのような顔になるというのもこれまた諸々の事情なのでしょうが・・・。
最近の怪獣映画には何故かお笑い芸人が特別出演する傾向があるようですが、これはやめてもらいたいと思います。出るなら出るで、もっとしっかり話に溶け込む形で登場してもらわないと、ただ単に映画を壊すだけの存在になってます。さらに「リベンジ」「おっはー」等の流行語を映画の中で使うのも勘弁してほしいです。
評判の高い本編ですが、気になる点もありました。確かにあの荒唐無稽すぎる脚本にしてはうまくまとまっていたと思います。しかし、手塚監督が最も伝えたかったと仰っている部分に「怖かったり辛かったりする時こそ、逃げるな!闘え!」というのがあります。テーマの是非は別として、露骨に登場人物にこの台詞を喋らせる(しかも2回も)というのはどうなのでしょう。本来、伝えたいことがあればそれを登場人物の行動などで表現するのが演出というものではないでしょうか?
全体に軽いノリの映画の中で唐突に上の台詞が出てくるので、なにか取って付けた印象です。主人公の行動が十分に体現していたと思うので、むしろ嫌味に感じました。まぁ、そもそもゴジラが襲ってきてるのに「逃げるな!」っていうテーマは無理があると思いますが。
以上、いろいろ言いたい放題言わせて貰いましたが本編はそれでもかなり頑張っていたのではないかと思います。
最も問題なのは造型も含めた特撮にあったと私は考えます。
今回、ゴジラの造型と特撮の狙いはある程度一致していたように見えますが、それらが映画全体の方向性に合致していたかというとかなり疑問を感じます。今作の話の骨格は、ゴジラとそれを倒そうとする人類にあります。ここでは平成ゴジラのようにゴジラに同情的な人間など存在せず、あくまでゴジラは人類の脅威として描かれています。つまり、話はハチャメチャでもゴジラはあくまで超越的な存在として人類の前に立ちはだかっているのです。
ところが肝心のゴジラはむしろ愛嬌をウリにしたような見せ方になっており、まるで話に合っていません。円らな瞳で全く擬人化された仕草をみせるゴジラは「脅威」とは程遠いものです。これでは映画自体が目指したゴジラが一体何だったのかさっぱり分らないと思います。
「ミレニアム」製作時に富山Pは不気味で無骨なゴジラを目指すと仰っていました(私はその不気味なゴジラを是非見たいと思いました)。であれば何故ゴジラの造型を若狭氏に、特撮を鈴木氏に任せられたのかがそもそも疑問なのです。というのも「モスラ3」の時点で鈴木+若狭コンビによる怪獣の見せ方ははっきりしていたからです。つまり、鈴木特撮は怪獣を人間に見立てて撮る。これはスタッフの方も何かのインタビューで仰ってましたし、ご本人も時代劇の立ち回りを参考にしていると明言されています。この傾向は今作でいよいよ極まったと思います。
また若狭氏は「モスラ3」以降、造型プロデューサーという役職に就いておられ、造形物全般に渡って指揮をとる立場になっているようです。そこで氏は「ヤングギドラはモンスターズ(若狭氏が主宰する造型会社)が造った怪獣で、グランドギドラは自分が納得いくように造った怪獣」であるという旨のことをある本で述べられてます。このグランドギドラは確かにそれまでモンスターズが手がけてきた怪獣とは一線を画する造型でした。シワやヒダもデザイン化され、目は大きく、生物というより東洋のお面を思わせる顔立ち。これはこれで魅力的な造型だと思いますが、凶暴さや不気味さとはかけ離れたもののように思えます。また幾つかのインタビュー記事を読んだ限りでは、若狭氏はゴジラには子供に愛着を持ってもらうことが必要として恐怖感のある造型などは目指していないようです。
このようなお二人がゴジラを作れば、そして大河原監督が本編演出をすれば「不気味で無骨な」ゴジラにはならないと富山Pは考えなかったのでしょうか。そもそもそのようなゴジラを目指すという発言自体がデマカセだったというのなら納得はできますが。勿論「モスラ3」のみで鈴木+若狭コンビの傾向を決め付けてしまうのは乱暴かもしれませんし、タイミングも「ミレニアム」製作はギリギリのものだったでしょう。しかし、実際に「ミレニアム」は不気味なゴジラにはならず、なんとも言えない中途半端なものになりました。
余談ですが、酒井ゆうじ氏がお造りになった雛型を東宝が大っぴらに公表したのも意図がよく分りません。既にほぼ同時製作でモンスターズによる雛型も製作されており、実際のスーツを若狭
氏が担当することから先のグランドギドラを踏襲したような造型になることは多くのファンが予想していたはずですが、あのような素晴らしい造型を見せられては、これがそのまま劇中に登場してくれればと思った人も多いのではないでしょうか。結果、ミレニアムゴジラは別の作者によるそれぞれ違う方向性を目指した造形物が存在する形になり、それぞれがオフィシャルであることから東宝がそもそもどのようなゴジラを目指していたかが益々分らない状況になったと思います。
先程述べたとおり特撮と話が合致してない以上、今作もゴジラをどのように描きたかったのか分らないまま幕を閉じてしまいます。富山Pはこれからは毎回違う世界でゴジラを描きたいと発言されてます。それぞれ方向性を徹底させて、その方向性に相応しいスタッフでじっくりと臨むのなら私は大賛成です。
しかし、特撮と造型はまた同じ布陣でというのなら、結局なんか毎回お茶目なゴジラにならざるを得ないのではないかと思います。これが杞憂に終わることを望みます。
なんだかんだ言って私はゴジラ映画が好きなのですが、それにしてもいい加減に傑作が出来てくれないと困ります。毎年毎年「どうやった?」」と聞かれ「うん、まぁ・・・好きなシーンもあったよ。」なんて答えるのも、もうウンザリです。せめて3年ぐらいかけて作った方がいいと思うのですがどうでしょう。見に行かなければいいと言われれば、そのとおりなのですがね・・・・。今回のメガギラスとゴジラの格闘シーンなんて、「ショボくて見ちゃおれん。」というのが正直な感想なのですよ。それでもプロローグだけはそれなりに楽しめたのがせめてもの慰めですが。敵デザインも含めて、もう少し何とかならないものかと思ったのは私だけではないはずです。
あ、最後になりましたが今回の音楽はかなり良かったと思います。
どうも全然まとまりませんでしたが、私の「G×M」の感想はこんなものです。