その診療所はいづはら病院から車で40分の距離にある。お隣の美津島町の賀谷、鴨居瀬という2つの診療所であった。私は眼科であるが来る患者さんは内科と腰痛の患者さんが圧倒的に多い。診療所に着くともう患者さんが10人くらい待っている。そこは医者の常駐しない無医地区であり、医者にかかるためにはお隣の豊玉町まで出かけなければならない。いづはら病院から週に2回交代で勤務することになった診療所である。午前中の診療を終え、ばたばたと昼食をすませタクシーに乗り込む。 2つの診療所をまわって、病院に戻ってくるのはもう6時近くになっていた。離島のなかの離島、辺地に生きる人々。医療は均等に与えられるべきものなのに、医療機関はあってもそこには医師がいないのだ。医療資源の絶対的な不足。そして限られた小さな努力。大きな砂漠をほんのちょっぴり潤すだけしかない私たちの置かれた状況を思うとき、これでいいのだろうかという声が内側から沸き上がってくるのを感じた。
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