その8 劇団いしやね


 

 地域で演劇をやろう。という発言が整形外科のドクターから出た。公衆衛生活動とくに地域の健康教室に熱心で、町(行政)をどんどん動かしていく才能のあるM先生だった。劇団いしやねをいづはら病院で結成し参加者を募った。大学時代に演劇をやっていた私がシナリオを書いた。”検診はちゃんと受けよう”という内容の演劇で、検診を軽視したばかりに、手遅れになってしまった患者さんの事をおもしろく表現した。劇には病院の職員が出演した。場所は豊玉町の田という地域の公民館であり、歩く度に音がする木造の建物である。おじいちゃん、おばあちゃんを初め多くの町民が集まり、笑いのウズに巻き込まれた。病院の職員にしてはみんな上手である。病院で練習した甲斐があった。演劇は、住民の心をつかむのに非常に良い手段である。演劇は、寂しいお年寄りや、娯楽のない田舎にあっては、大変喜ばれるものである。病院の職員が自分たちの地域に足を運んで、それを演じてくれるということは、住民にとってどれだけ心強いことか。この劇団いしやねは住民と病院の信頼関係を築くのに重要な役割を果たしたのだ。



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