その23 ひとつばたごまつり


 

 5月になると対馬のひとつばたごの白い花を思い出す。対馬でも最北端の鰐浦という地域にしか自生しない珍しい花である。5月のゴールデンウイークから2週間ほどしかその白い花の姿は見ることができない。
 上対馬町鰐浦では毎年3日から15日までの祝日か日曜日にひとつばたご祭りを開催する。花の魔力と海の美しさに魅せられて毎年家族連れで鰐浦まで出かけたものだった。厳原からは約100Kmの行程だった。途中の新緑が目にまぶしい。対馬はまさに緑の島でもある。森林面積が全体の90%という山と緑の島だ。
 ひとつばたごは山の斜面に自生している。年によって咲く本数が違うので、何とも言えないが、多い年は山が真っ白に変化してその美しさはなんともたとえようがない。
 祭りでは、とれたてのわかめ、ひじき、さざえ、あわび、いかなどが直売されている。もちろん現地で焼いて食べることもできる。ここのお弁当もなかなか美味しい。 早く買っておかないとすぐ売り切れてしまう。
 鰐浦港から焼き肉海産物バーベキューを食べながらの、遊覧船もなかなか捨てがたい。海栗(うに)島や遠くに韓国の遠望を見ながらのバーベキューも楽しい。5月の風は体に心地よい。また、海上保安部の船上クルーズもこの祭りの出し物のひとつで 何回乗ってもいい経験になる。船上から見るひとつばたごの美しさは言葉には表せない。その美しさはやはりここが容易に近づけない国境の島であるということも感じているからなのだろう。
 比田勝で夜中に見たひとつばたごの咲くお庭の光景は、未だに脳裏から離れない。 まるで雪が降ったかのように真っ白な庭だった。



鰐浦のひとつばたご