4万5千人の対馬という広い島に眼科医は1人しかいない。もし私がこの島にいなかったら、住民は福岡まで出ていかなければならないのだ。病気やけがで休むことも許されず、学会で出張することも気を遣う毎日は続く。
しかも対馬島内は広い。南北に80km以上、東西に30km弱の細長い島である。自分の病院だけにいることは許されない。北端の上対馬病院、南端の豆酘診療所、空港の近くの国立対馬病院と、転々と眼科外来を行って回る。そして、広大な島に散らばる地域の公民館、集会所で毎週毎週眼科検診を行う。島内のほとんどの地域の眼科診療はこうして行われていったのだ。来る年も、来る年もこの繰り返しであった。
しかし、ひとりでやる仕事の量は限られている。忙しさにも限界がある。どうしてもどこかに穴が空いてしまう。その悔しさと矛盾とを感じながら仕事をしていたのだ。人口に対して圧倒的に少ない医師数、医療資源。そのなかでいかに有効に動くか。落ちついた患者さんをどのようにして病院と切り離していくかの模索が続いた。
対馬の地図 |