その15 心停止


 対馬高校に通っていた高校生が病院に救急車で運び込まれたのは朝8時を少しまわっていた時だった。校門の前で倒れていたという。運ばれてきたときにはすでに意識はない。完全昏睡の状態で瞳孔は散大、心停止の状態だった。Dead On Alive! 心臓マッサージをしている救急隊員の姿を見ながら私はアンビューバッグを押した。気管内挿管、心マッサージ、血管確保、ドラッグ注入と続く。しかし、患者の心臓は動かない。ICUに運びながら、ドクターの応援を呼ぶ。しかし、間に合わない。カウターショック2度3度。応援のドクターが駆けつけたとき、心臓は動き出した。血圧も徐々に上がりだした。私にとってこの高校生の生死を分ける行為が続いた。レスピレーター(人工呼吸器)をつける。しかし、瞳孔は散大したままで反応はない。レスピレーターによる呼吸管理と全身管理の毎日は続いた。そして3週間もしたであろうか、なんと自発呼吸が出てきたのである。1カ月後には痛みに反応するようになった。そして3ヶ月後にはレスピレーターがはずせるようになってきた。半年後には片言ながら会話ができるようになってきたのだ。私は本当にこの奇跡に感激した。いづはら病院のICUスタッフのすばらしさと若い生命力の強さにびっくりしてしまったのだ。あの恐怖の一日、半分私の心の中にあったダメかもしれないという疑念が吹き飛んでしまったのだ。この経験は私のなかに何事にもあきらめない不屈の精神を養わせてくれた貴重なものだった。



対馬やまねこ