アトピー性白内障


 インターネットの時代になると、ホームページを見て来院する患者さんが増えてくる。彼の場合もそうだった。最近、ものがよく見えないと言うメールが名古屋に住む彼からきた。近くの眼科を受診して、アトピー性白内障の診断を受けている。手術を当院でしてもらえないだろうかといった内容のメールだった。

 私は、メールのお返事に、22歳という年齢を考慮し、遠近の調節力が落ちるのでなるだけ不便になってからの手術がいいよと書いた。それに、名古屋に住んでいるから、通院できる名古屋の施設で手術したほうがいいとも書いた。しかし、彼はどうしても当院での手術を希望した。彼の実家が福岡ということもあり、休暇を2週間とって帰るからその間に手術してくれと言う。どうしても当院での手術を希望するということなので、私は予定に入れざるを得なかった。

 彼はやってきた。初対面であるが、メールでやりとりしていたせいか初対面の感じがしない。診察をして、調節力の話をもう一回する。アトピー性白内障の話、網膜剥離の話もする。彼は手術に納得した。というより、もう決めてきていたのだ。裸眼視力は0.6。

 年齢が22歳ということもあり、水晶体の核はほとんどない。手術はあっという間に終わった。でも、術後の度数はやはり心配だ。しかし、翌日視力を測ってみてびっくりした。裸眼の遠見視力が1.5、近見視力も0.9だった。遠くも近くも見える!彼は、術前の説明がオーバーだというような顔をして素直に喜んだ。やはり、福岡で手術をして良かったと。不思議なことがある。手術をしても若い人の場合ある程度調節力は残るのだろうか?私は素朴な疑問に襲われたのだ。