始皇帝暗殺

1998年日本・中国・フランス・アメリカ合作作品
出演 鞏俐(コン・リー)
張豊毅(チャン・フォンイー)
李雪健(リー・シュエチエン)
王志文(ワン・チーウェン)
監督 陳凱歌(チェン・カイコー)



   風蕭蕭兮易水寒
   壮士一去兮不復還

これは今でも漢文の授業でよく出てくるんでしょうか。秦王・政(後の始皇帝)を暗殺せんと燕を発つ荊軻。それを見送る易水の別れの場面で出てくるこの詩。あまりにも有名で日本でもよく知られたものだと思います。そして、その荊軻の話。「史記」の中でもほんの数十行しかないちっぽけなエピソードが中国や日本の人々を魅了しつづけるのは、始皇帝になる人物を暗殺しようとまさに帰り道のない試みを行い、そして果てていく荊軻の姿が心をうつのでしょう。

1998年に公開されたこの映画、私も好きな話を映画化するということで、楽しみにしていました。政と荊軻、燕の太子丹に加え、架空の人物である趙姫を絡ませることでとても面白く仕上がっていると思います。興行的にはこけてしまったらしいのですが、多少は歴史をかじっていないと分かりにくかったのかもしれません。でも残念。けっこういい映画になっていると思うだけに。

趙姫がいることで、政の人物描写がさらに引き立っていると思います。ただただ統一のために突き進むだけでは面白くない。意地っ張りで寂しがりで愛情に飢えていて、でも強がりで。暴君としてのイメージが強い始皇帝ですが個人的にはけっこう憎めない人物だったので、この映画の脚色はすんなり受け入れられました。
また、荊軻のエピソードもずいぶん脚色されています。というか、もともと少ない記述なので人物描写などはあまりありませんから、ほとんどが脚色です。でも、「よしわかった」と二つ返事で暗殺を引き受けるのではなく、拒絶したり葛藤したりしてついに決意する、そんな悩む人間的な描写がまた私の持っている荊軻のイメージとすんなり重なってくれたので、楽しむことができました。

それから偽宦官の長信侯(「ろうあい」とも呼びますが、字が日本語フォントにありません)。この役者はなかなかいいキャスティングでしたね。政の前ではいやらしいくらいに諂いながら陰で舌を出している。まさにいや〜な宦官の典型という感じで気に入っています。
李雪健や張豊毅もよかったですし、鞏俐の趙姫も美しかったです。でも趙姫に関しては、図書室で紹介している皇なつきさんのコミック版のほうがもっと気に入っていますが。

興行が今一つだった上に、レンタルでも決して扱いはよくないので、店によってはなかなか見つかりません。でもどこでも置いていないということはないと思います。

 2001.01.21