始皇帝暗殺


皇なつき著
原作  陳凱歌、王培公

1998年10月23日発行
発行所:株式会社角川書店
           ASUKA COMICS DX



映画部屋でも映画のほうを紹介する時に書きましたが、「史記」の中の「刺客列伝」に記されている荊軻の話。とても印象深く、好きな話です。その話をもとに映画「始皇帝暗殺」が公開されたのが1998年11月。その直前に発売されたのが、映画の原作をもとにコミック化されたこの皇なつきさんの「始皇帝暗殺」です。

皇なつきさんの絵はとても美麗で人気があるようですが、最初は正直言ってこの話には合わないような気がしていました。たとえば後の始皇帝である秦王・政は、たいしていい男ではなかったようですし(子供時代にいじめられたせいで声もひどかったらしい)、荊軻も私のイメージではちょっと泥臭い感じだったので。でも、皇なつきさんの絵だったらぜんっぜんOK。変な絵にされるよりは美しくなっているほうが百万倍ましです(最近「星界の紋章」で怒りを覚えている自分。もちろん某漫画家のコミック版に対してですが)。
中でも重要人物の一人趙姫は、映画のコン・リーも十分美しかったけど、このコミック版のほうがもっと美しい。まさに政をはじめ男たちを魅了する美しさと気品、とてもいいんです。

それから、有名な易水の別れの場面。「風蕭蕭兮易水寒  壮士一去兮不復還」で知られるところですが、これもまたコミック版のほうが好きです。やまむらはじめさんの漫画「未来のゆくえ」の感想でも同じことを書いていますが、肝心な場面では無駄な文字を入れずに絵で見せる。そんな作風には私は無条件で魅了されてしまうのかもしれません。

映画と決定的に違うのは、そのほとんどが趙姫を軸に話が進むこと。なので、政にまつわるエピソードは極限まで削ぎ落とされているような気がします。ゆえに、私のこれまでの荊軻の話への印象とはまた違った感じでした。後書きで書かれている「男女の感性の違いか」もしれません。でも、なんだか新たな魅力を見せてもらったような気がして面白かったです。

この「始皇帝暗殺」、漫画単行本ですがハードカバーになっています。角川系の少女漫画のコーナーにあることが多いかと思います。ぜひ一度ごらんあれ。

2001.01.21