自民党県議団質問内容
わが会派の代表質問に当たり、最初に、麻生知事の基本的な政治姿勢についてお尋ねします。
さて国政は鳩山内閣から菅内閣に突然代わるなど、まったくあわただしく、これこそまさに混迷の様相を見せているといえます。
私どもはこの鳩山内閣の退陣と、菅内閣の出現を、単に間近に迫った参議院議員選挙対策としての、票目的としかみなしていません。
冷静で確かな目を持つ国民の多くは、昨年夏の政権交代は一体なんだったのか、疑問を呈し始めていると思います。
民主党の一人の権力者に牛耳られた鳩山前政権は、普天間移設問題にみられたように、「腹案がある」などともっともらしく語りながら、ふたをあけてみたならば単なる軽口で移設問題を混乱させただけで、誠に無定見、無節操でしたから、いづれ行き詰まることは国民の誰もが想定内のことでした。
それが内閣支持率の超下落によりあせった民主党により、鳩山さんから菅さんへと表紙をすげ替えられた。これが今回の内閣交代の実相であります。
民主党びいきの一部の学者や評論家は、今回の内閣交代をまことに立派なことのように褒めそやしていますが、そこに何の意義も無いことは、国民自体が極めて冷静であったことでも明らかだと思います。
さて、知事も既に就任以来四期目、今期もあと一年足らずを残すばかりとなりました。
この間、平成十七年からは全国知事会長として、地方行財政の充実、地方分権改革の推進などに尽力され、知事会長としての任期も来年五月までとなっています。
地方自治体に対する国の義務づけ・枠付けの緩和と条例制定権の拡大、都道府県から市町村への権限委譲、国の出先機関の抜本的な再編と地方自治体への権限委譲など、地方分権の実現に向けて克服せねばならない課題は山積しています。
鳩山首相の突然の辞任など、国政の混迷が深まる中だけに、今まさに全国知事会長として麻生知事の手腕が求められています。
しかしながら、麻生知事。民主連立政権は、法理論として、既に破綻した「地域主権」なる珍奇な言葉を未だ勇ましく掲げつづけています。
首相をヘッドとする「地域主権戦略会議」なる名前は、大層立派な推進体制をつくってはみたものの、その歩みは誠に覚束なく、これまでの具体的な成果はもとより基本的な方向性すら未だなんら明らかにはされておりません。
そんな中、これまでに子ども手当や農家の戸別所得補償、高速道路の無料化といった来年度以降の予算のあり方に大きな疑問が提起されています。さらには、国・地方を通じる財政収支のプライマリーバランス論やひも付き補助金の一括交付金化を巡る議論など、全国自治体の疑惑や不安をいたずらに煽るばかりの事態に陥っています。
これらの諸問題は、いずれも地方税財政のあり方、地方分権改革のあり方に密接に関連する重大問題ばかりです。ところが、最近では、地域主権どころではないというのが民主政権の悲しい現実ではないでしょうか。
普天間基地移設交渉や宮崎県で発生した家畜伝染病口蹄疫に対する危機管理で露わになった政府民主党の統率力の欠如と対策の混乱ぶりには目を覆うばかりであります。
内閣は代わったとはいえ、民主党政権の下で、各省の抵抗がとりわけ激しい地方分権改革を本当に断行できる実力が政府に残っているとお考えですか。
まず、麻生知事の率直な感想をお聞かせ下さい。また、知事は、全国知事会長としての立場から、子ども手当や高校授業料の実質無償化、高速道路の無料化といった民主党の重要政策の現状について地方側としてどう評価されているのか。
とりわけ子ども手当については、私たちは来年度以降、地方負担の完全撤廃の実現を条件に、あなたが提案された本県関連予算の成立を認めていることは勿論、知事も記憶されているはずです。
従って、これら政策の来年度以降のあり方についてどのような方針で政府に申し入れするのか、明らかに願います。
併せて、知事の残されたわずかな任期中、地方分権改革にどのような政治姿勢、戦略で望むつもりなのか。地方分権の課題はいずれも重要なものばかりです。新しい内閣となりましたが、地域主権戦略会議や総務大臣が大風呂敷を広げるだけで実現できるものではありません。
ここは、優先分野と優先順位を明確にし、綿密な戦略と計画に基づいて、果敢に新しい政府にぶつかっていく必要があると考えます。麻生知事の政治家としての堅い決意と対応方針を改めてお尋ねします。
また、あわせてこの際、公社等外郭団体に対する指導のあり方について質しておきます。
先般、国においては、事業仕分けの対象として、公益法人が取り上げられ、結構な国民的共感を呼んでいました。公務員に対する厳しい国民の目がその背景にあったことは言うまでも、公益法人がそのダミーとされていたことは想像に難くありません。
本件の現状はいかがなものでありましょう。公社等外郭団体に対して、出資比率二十五%以上の団体など二十九団体を「運営指導団体」として位置づけ、指導を行っていると聞いてますが、指導の内容は、実施事業や経営など財政的な側面からの指導にとどまっているのが実情ではないでしょうか。
県退職者の再就職問題をはじめ、国・地方を問わず、幹部職員のいわゆる天下り問題にみられるように、外郭団体に対する県民の視線が厳しい現状を踏まえれば、県としてこれら公社等外郭団体に対する指導のあり方として、経営面や財政面だけではなく、役職員の人事管理や組織運営についても、日常的に厳しくチェックし、的確な指導、助言を積極的に行っていくことが重要であると考えます。県が策定している「公社等外郭団体の設立及び運営に関する指導要綱」に違背したとみられかねない運営が行われている団体もあるやに聞いています。早急に是正が望まれるところです。この背景には、各団体が設けている銘々勝手ともみられる内規の存在にも原因があるのではないでしょうか。今後の指導強化に対する知事の所見をお尋ねします。
ところで、鳩山内閣時の去る五月二十七日、普天間基地問題や沖縄県の基地負担軽減等を議題とする全国知事会が開催されました。
麻生会長が鳩山前首相から開催を要請され、会長一存で即刻受諾されたことを踏まえて開かれたものであります。知事は、首相から要請された後の定例記者会見で、「総理のお話をよく聞いて、これをどういう風に理解し、またそれにどんな考え方で臨んでいくかということを考え、また議論しないといけないと思っています」と云われておりますが、開催は有意義なものとなったのでしょうか。
残念ながら、私どもが見る限り二十七日の会議は、鳩山前首相が米軍訓練の分散等について全国の知事に協力を求め、汗かく姿を国民にアピールするアリバイづくりに利用されただけの形式的で無為な儀式に終わった印象を禁じ得ません。
既に、五月二十日の読売新聞では、沖縄県を除く四十六都道府県知事に緊急アンケートを行った結果として、普天間飛行場移設に伴う負担を受け入れられると答えた知事は一人もいない、部隊の訓練などを全国に分散することで沖縄の負担を軽減するのは難しいことが浮き彫りになったと報道されていました。
加えて、麻生知事自身も、以前、「基地機能の移転の話と訓練機能の移転の話は別問題で、訓練に関しては沖縄だけの負担ではなくて、もう少し分散した方がいいのではないか」と発言されていたにもかかわらず、このアンケートでは負担受け入れの可否についてコメントを避けられました。石原東京都知事が「全国知事会を開いて、どっか受け手ないですかと聞くことそのものがナンセンスだと思う。それが何か国民に対するプレゼンテーションになるのか」と知事会開催という発想自体を手厳しく批判していた、その予想がまさに的中したというべきでしょう。
そこでお尋ねします。麻生会長は鳩山前首相から具体的にどのような要請を受けられたのか、また、先般の知事会議開催にどのような意義があったと認識されているか、改めてこの本議会の場でご説明願います。
次に、知事会開催に対する石原都知事の発言をどのように受け止められたか、率直にお答えください。
また当日の知事会で同じく石原都知事は、尖閣列島の領土権問題にふれ、日米安全保障条約は、本当に日本の領土を守るための抑止力であるのか、ないのか、政府で確かめてもらいたいと発言していますが、鳩山前首相はいったいどのような見解を示したのか同席された知事会長として説明を頂きたいところであります。
また、訓練に関しては沖縄だけでなく、もう少し分散して負担した方がよいとの、かつての知事の発言の真意はどこにあるのか、状況次第では米軍訓練を本県築城基地でさらに受け入れる余地があったということを示されていたのか、この際、明快な答弁を求めます。
私が今さら申しあげるまでもないことですが、沖縄の歴史は先の大戦における悲劇の沖縄戦、戦後の米軍占領、そして米軍基地の七十パーセント以上が沖縄に集中しているという復帰後の過大な基地負担等々、とりわけ戦後六十五年にわたって誠に過酷なものでした。
このような歴史的事実を踏まえたとき、米軍基地問題を巡る言動は、沖縄県のこれまでの過酷な歴史を受け止め、沖縄一県が背負ってきた負担を本気でその他の各県が分かち合う、政治生命を賭けたものでなければならないはずです。
知事の認識をお聞かせください。
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麻生渡知事 答弁要旨
(知事の政治姿勢について)
1.地方分権改革と出資法人指導についてなど
民主党政権下での地方分権改革の実現について
地方分権改革の推進については、新内閣で引き続き全力を挙げて取り組むとした四つの政策に挙げられております。
国と地方の協議の場の法制化など、今後の実効ある分権改革の推進のために不可欠な地域主権関連三法案を早期に成立させることが重要であると考えております。
民主党の重要政策に対する評価と今後の対応方針について
子ども手当の実施、高校の実質無償化、高速道路の段階的無料化など、民主党の重要政策については、公約のとおり実施されているもの、あるいは完全な実施にいたっていないものなど、進捗度合いが異なっている状況であります。
これらの重要政策については、民主党が選挙公約として掲げたものであり、実施に向け最大限の努力がなされるべきものと考えております。
また、今年度の子ども手当はあくまでも一年限りの暫定措置であります。来年度以降については、子ども手当のような全国一律の現金給付は国が担当し、一方で保育等サービス給付は地方自治体が担当するという大原則が貫かれるよう、国と協議をしてまいります。
地方分権改革への対応方針について
当面、地域主権関連三法案の成立のほか、地方税財源の強化、国の出先機関の原則廃止や補助金の一括交付金化等の分権改革の具体的方針を定める地域主権戦略大綱が実効ある形で速やかに決定されることが重要であります。
これらの実現のため、地方六団体と一致結束し、国と地方の協議の場も活用しつつ強く主張してまいります。
公社等外郭団体に対する指導について
公社等外郭団体に対しては、出資者の立場から、指導要綱に基づいた運営指導を行い、事業の見直しや団体の統廃合、職員数や支出の削減による経営の効率化等を進めてまいりました。
今後とも、団体の自主性を尊重しながら、適正な監査体制の下、設立趣旨に沿った適正かつ効率的な運営がなされるよう常に指導を行うことが重要です。
このため、指導要綱に基づく点検を行い、組織運営や人事管理の面でも、事業内容の変化に即応し得る効率的な組織や少数精鋭主義を基本とする弾力的な役職員の配置に留意して、必要な指導、助言に積極的に取り組んでまいります。
2.普天間問題と全国知事会の開催など
普天間基地問題に関する鳩山前首相からの要請等について
日米同盟の重要性、普天間基地の移設、訓練の分散等について説明し、沖縄の負担軽減について知事の皆さんの理解と協力を得たいので知事会議を開催してもらいたいとの要請がありました。
会議では、沖縄県知事から米軍基地が沖縄本島の二割弱の面積を占めているなど過大な負担となっているとの詳細な説明がなされました。
会議の成果として、日米同盟が重要であること、このような沖縄の負担軽減が必要であること、国から熟慮された具体的な提案があった場合には真摯に対応していくことを全国知事会の共通の認識とすることができたところであります。
知事会開催に対する石原都知事の発言について
発言の経緯については十分に承知しておりませんが、会議には石原都知事自らが出席されました。これは会議そのものに意義を認めたものと考えております。
石原都知事の発言に対する鳩山前首相の見解について
鳩山前首相は、「現在の日本の考え方というか、アメリカがこのようにとらえていると我々が理解しているのは、施政権(しせいけん)は、当然、日本が有しているということでありますだけに、もし日本と中国との間で衝突があったときには、アメリカは日本に対して安全保障条約の立場の中から行動するということである。しかしながら、帰属問題に関して言えば、日本と中国、当事者同士でしっかりと議論して結論を見出してもらいたいということであると私は理解しております。アメリカにもこの方向を確かめる必要があるいはあろうかと思っておりますが、尖閣列島に対しては、有事ということで衝突が起きたときには安全保障条約が適用されるという理解をしておりますが、確かめる必要があるいはあろうかと思います。」と述べられました。
この総理発言に対し、岡田外務大臣が翌二十八日の記者会見において、尖閣列島が日本の領土であることは議論の余地がない旨、発言されております。
訓練移転に関する発言について
沖縄県への米軍基地の過度な集中による沖縄県民の過重な負担を少しでも軽減できるよう、米軍の訓練の一部を本土側などで受け入れていくべきではないかというのが基本的な考え方であり、この考え方のもとで、本県では、すでに築城基地で米軍の訓練を受け入れています。
普天間基地の移設に伴う訓練移転についてはまず、政府が熟慮した上で、具体的な場所や条件を明確に示すことが必要であります。
仮に、政府から具体的な提案があった場合には、地元の理解を前提として、真摯に対応していく考えであります。
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さて、このような民主党政権が招いた国政における最大の混乱は、思い上がった、いや、間違った「政治主導」なるものにあります。
政権を取れば、政治主導による予算編成により、子ども手当や高速道路の無料化など、重要政策に必要な財源はいくらでも確保できると豪語していたことを、我々は忘れることはできません。
シーリングを廃止し、政権三役によりゼロベースで当初予算を編成された結果が、過去のどの政権も及ばない四十四兆円という史上最高の国債発行を招いたことは疑いようが無く、票ほしさの無責任な戯言であったことが明々白々となりました。
誤った政治主導の例はいくらでもあります。枚挙に暇がないほどです。
前年比マイナス十八パーセントもの公共事業予算の大幅削減についても、「コンクリートから人へ」などと、たわいもない空疎なスローガンに拘泥した結果の愚策でありました。
また、リーマンショックに端を発した世界同時不況のどん底の中で断行されたもので、マクロ経済学の常識からは全くもって考えられないことであります。
優れた知事のことですから、私から知事に述べるなど、まさに釈迦に説法かもしれませんが、まあお聞き下さい。
公共事業の実施による政府投資の増大は、あらゆる消費の増加につながり、さらなる需要の増加、そして所得の増加へ連鎖し、その中で雇用も確保されていく、こうした乗数効果により不況が克服されていくことになります。
これは過去の世界経済の歴史の中で幾度も証明されてきたことであります。公共事業推進論者を古くさいケインジアンなどといって揶揄する話では決してありません。
にもかかわらず、民主党政権は、子ども手当や戸別所得補償制度などの個人給付の増大により内需拡大を促し、景気回復につなげていく政策を愚かにも選択したのでありました。
ようやく我が国の景気も、回復の気配が感じられ始めてきたようですが、これは世界同時不況からの迅速な回復を目指し麻生前内閣が打ち出した、大規模な財政出動による景気対策の効果の賜物であります。
本来であれば今年度の当初予算でその効果を持続させ、景気対策を着実なものにする対策を講じるべきでありました。
なお、経済財政政策の司令塔であるはずの当時の財務大臣、ただ今の菅首相は、乗数効果すら、理解されていなかったことが国会審議の中で明らかになり失笑を買っていました。
これでは、民主党政権の迷走ぶりは"むべ"なるかなであります。
そこで本県についてであります。
平成二十二年度当初予算において、県単独公共事業費を大幅に伸ばし、また、麻生前内閣による第一次補正予算により造成した各種基金事業を積極的に活用することにより、本県経済を下支えしていくと、されたことについては、我が会派は一定の評価をしてきたところであります。
また、四月下旬には、景気持ち直しの動きを着実なものとするため、公共事業の前倒し執行を決定しています。
今年度、国が何らの前倒し方針を示さない中での独自の方針決定には、それなりの敬意を表するところです。
そこでお尋ねいたします。今年度の上半期の執行目標を七十五パーセント、金額にして千四百七十億円弱と設定されたその方針は大いに評価してきたところです。
しかしながら先程らい、私があたかも、にわか経済学者のごとく述べましたように、今日、国はもとより、地域社会は公共事業の切れ目無い発注を求め、地域経済の浮揚が公共事業にかかっていることは間違いなく、公共事業を渇望する声が極めて大であります。
こうして考えてみますと、上半期に目標を達成した場合、下半期については残り僅か二十五パーセントの事業費しか残っていないわけであり、景気下支えのためにはさらなる対策、例えば大幅な補正予算を組んで公共事業の積み増しなどが当然求められると考えますが、知事の率直なる見解をお伺いします。
なお、鳩山退陣の前の話ではありますが、前原国土交通大臣は、今年度で四年間の削減目標分の公共事業費を削減したので、来年度はこれ以上公共事業費を削減せず、凍結した新規公共事業など必要な事業に着手していくとの考えを明らかにしているようです。
また、あの辻元女史でさえが社民党の連立離脱で国交省副大臣の辞職願い提出の際に、「国交省は利権の巣窟というイメージがあったが、そうではなかった。多くの職員が変えていこうという思いに賛同してくれた。」と涙ながらに語っていたことは誠に印象深いものがありました。
民主党のマニフェストによって一方的に悪者扱いされてきた公共事業でありますが、国交省の大臣、副大臣にしてようやくその本来意義を理解されるようになってきたことを、声を大にして指摘しておきます。
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(「政治主導」と景気対策としての公共事業の活用について)
下半期の公共事業について
当初予算において、単独公共事業費を前年度に比べ大幅に増額するなど、雇用・景気対策を積極的に進めることとし、また、改善傾向にある本県の景気の動きを着実なものとするため、公共事業を前倒し執行することとしたところであります。
県内経済は、生産、輸出、設備投資、企業倒産の状況等、いずれの指標も着実に持ち直しを見せているところでありますが、今後、前倒し執行の効果や中小企業の状況など景気の動向を見極め、適切に対処してまいる考えであります。
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次に、理髪・美容業界における公衆衛生のあり方についてお尋ねします。
理髪・美容業界が、今日まで業界をあげて衛生上のトラブルを防ぐとともに、衛生水準の一層の向上を図るため、関係法令を遵守するのをはじめ適正な衛生管理に努めてきたことは決して業界のPRではなく、県行政当局をはじめ多くが認識しているところだと思っています。
しかし、近年、カット専門、低料金システムの全国大手が各地に進出し、「洗髪施設のない店舗」が増加してきました。こうした店では、掃除機のような機械で切った髪を吸い取っています。
理髪・美容業界からは、これまで一定の水準で保たれてきた公衆衛生管理が脅かされており、洗髪設備の設置を条例で義務付けるべきとの強い要望が出されていることは、皆さん既に十分ご承知のことと思います。
このため我が会派では、昨年の九月定例議会及び本年三月の予算特別委員会において、既にこの問題を取り上げ、公衆衛生の観点から条例を改正して洗髪設備を義務付けるべきと主張してきました。
しかしながら、昨年の九月定例議会においての知事の答弁は、「条例による義務付けについては、慎重に対応して参りたい」との表現にとどまっています。
ところで全国の状況を見てみますと、既に義務付けされているとことが主流となっているようです。
「理髪・美容所における一層の衛生確保を図るため」や、「公衆衛生の一層の維持向上を図るため」などの理由から、洗髪施設の設置を条例で義務付けるところが、現在では既に二十一道県となっています。
私見ですが、国や地方自治体が実施するいわゆる規制策については、大きく分けて二通りあると思います。
特に取引や商行為などに対してかけられる経済的規制と、身体、生命に危険を招かないように措置した社会的規制であります。
市場原理に反するような経済的規制についてはできるだけ緩和し、廃止の方向が望ましいのかもしれませんが、社会的規制はこれと同じレベルで論じられるものではありません。
洗髪設備の義務付けは、利用者の衛生面から考えて、まさに社会的規制にあたるものであります。
そこで、理髪・美容所における公衆衛生を保っていくため洗髪設備の設置を義務付けたほうが良いという都道府県が増えているのは自然な流れだと思いますし、公衆衛生を守るためには義務付けが必要だと考えます。
従ってこの際、本県においても利用者の健康、衛生、環境問題、そして理髪、美容業界の深刻な実情等を深く勘案して頂くことを強く要望します。そしてその上で、条例による洗髪設備の義務付けを決断されるべきだと思いますが、知事の明快な答弁を求めます。
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(理容・美容業界と公衆衛生のあり方について)
理容所、美容所における洗髪設備設置の義務付けについて
理容所、美容所においては、衛生管理を徹底することによって公衆衛生を向上させる必要があり、その観点から、条例による洗髪設備の義務付けについて、検討を進めて参りたいと考えております。
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次に農林水産政策問題について伺います。
さる四月二十日に宮崎県で発生した家畜伝染病である口蹄疫問題につきましては、昨十日には日本最大級の畜産地、都城市で新たに二百八頭の肥育牛が殺処分され、また宮崎市や日南市の家畜でも発見されて、感染被害は宮崎県全域に拡大して、誠に憂慮される事態に発展しています。
まず、宮崎県内の被害に遭われた畜産関係者に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。
連日、新聞やテレビで報道される様子を見ますと、本当に心が痛くなるばかりであります。これまで手塩にかけて育ててきた牛や豚を目の前で一度に殺さなければならない無念さは筆舌に尽くしがたいものでしょう。
飼い主にとってはまさに修羅場で地獄を見る思いだと想像するところです。
県議会として、既に五月三十日、義援金を贈呈していますが、わたしたち自由民主党県議団農政懇話会でも、先般、議員各位の理解と協力により、宮崎県の畜産農家支援のための義援金を送る措置を講じたところであります。
既に被害状況は、報道によりますと、六月十日までに十九万一千頭が感染。これは、実に宮崎県全体の飼育頭数の十六%近い被害と報道されておりますが、このうち既に、牛や豚など約十五万頭を超える家畜が殺処分されています。また、発生地から半径十キロメーター圏内の移動制限区域の全ての牛と豚に、ワクチンを接種した上で殺処分する措置に加え、半径十から二十キロメーター圏内の搬出制限区域の農家に早期出荷させ、緩衝地帯とするなどの新たな対策が講じられており、その効果に大いに期待するところであります。
しかしながら、認識の浅さがもたらしたものではないでしょうか。政府の初期対策が遅れたことが、間違いなくこの被害拡大につながっています。最も大事な初期対応の時期に外国に出かけてその責任を問われた際に、「全ての打つ手は打って、外遊に出かけた。」と抗弁した赤松前農水大臣の責任は、極めて大なるものがあり、我々は今後ともただしていかなければならないところです。
全ての手を打つ、などということが存在し得ないのが口蹄疫対策の実情のようであり、だから恐ろしいのであります。手が打てるなら恐ろしくはないのです。赤松前農水大臣の無責任さは、おろかしい限りです。
どうかこの病気が今後終息に向かい、本県をはじめ、近隣各地に被害が拡大しないことを切に願うばかりであります。
そこで知事に伺います。口蹄疫が発生して以来、本県ではその侵入防止にどのような対策を講じてこられたのか、またその効果についてどのようにお考えかもお聞かせ下さい。
また、発生以来、感染拡大防止のため、九州内の家畜市場は自主的に休止されており、その影響が懸念されます。
本県畜産農家への影響はどうなっているのか、実情を説明頂くとともに、本県の畜産農家が今後とも、安心して経営が続けられるよう強力な支援策を講じていく必要があると考えますが見解をお聞かせ願います。
次に、あってはならないことですが、万が一、本県で発生した場合、最大の課題はいかに殺処分した家畜の埋却地を確保するかだと考えます。どのように対応されているのか、知事の決意をお聞かせ下さい。
また、今回の口蹄疫発生で改めて感染症対策の重大さが明らかになったところです。
とりわけ長年発生していなかったからといって、ウイルス感染症対策は絶対に手が抜けないということを如実に知らされました。
この例からいくと、今改めて再確認しなければいけないのが、狂犬病予防対策でありましょう。
民主党内部では、昭和三十二年以来発生していないのだから予防ワクチンの接種は必要ないのではないか、などという意見があった、と聞いていますが、これなどまさに暴論、愚論の類いであります。
そこで感染症対策、とりわけ狂犬病についての予防態勢確立について知事の見解をお聞きしておきます。
またこの際、同じ感染症対策として新型インフルエンザワクチンの大量在庫問題について質しておきます。未知の感染症であった、今回の新型インフルエンザに対し、病院や医院などの医療機関が、医療の最前線で治療と感染予防に努めてきたことは、皆さんご承知の通りだと思います。
ところが、その予防の一環として協力してきたワクチン接種において、多くの医療機関が今日もなお、膨大なる大量の不良在庫を抱え、対応に苦慮している事実はあまり知られていません。
今日福岡県だけで在庫量は、四万一千六百九十一本、成人投与回数に換算しますと、八万七千九百七十七回分になり、購入価格にしますと、約一億三千万円にもなるということであります。また、全国での医療機関在庫は、少し古い数字とはなりますが、三月末時点で約二百八万回分、購入価格にして三十億円超という結果が厚生省に残されています。
今回の膨大な在庫の発生は、接種回数の変更やワクチン供給量の制限、短期間での希望量調査、重複予約や罹患によるキャンセル、国民・マスコミの関心の移り変わりなど、様々な要因が重なった結果であり、医療機関の責任によるものではまったくありません。問われるべき責任は、実施主体となって対象、時期を決め、医療機関に購入希望をとって契約主体にもなった国にあることは誰の目にも明らかであります。
医療機関が安心して治療・ワクチン接種が行える環境を国が整えなければ、今後、新型鳥インフルエンザなど新たな感染症が発生した際、今回と同様な協力が得られないことにもなりかねません。
国は今回の新型インフルエンザ対策と同様、医師としての使命感により協力していただいた医療機関に負担を転嫁することなく、不要な在庫の買い取りや返品を認め、十分な責任を果たすことが重要であります。
そこで知事にお聞きします。
ただ今申し上げた事実について、まず知事の率直なる見解を明らかにして頂きたいと思います。その上で、幸い知事は全国知事会長でもあります。こうしたテーマこそ、知事会に最も相応しいものだと思いますので、この際、是非、知事会として国に申し入れるべきだと判断していますが、その考えのほどを明らかにしてください。
また、この際、医療問題に関して、がん対策並びに歯と健康問題もひと言言及しておきます。
平成十八年六月に、「がん対策基本法」が成立し、平成十九年四月から施行されるとともに、同年六月には「がん対策推進基本計画」が閣議決定され、がん対策の一層の推進が図られることとなりました。
このような状況の中、島根県等においては、がん対策条例を制定しています。条例に基づき乳がんや子宮頸がんなどの検診受診の啓発に力を入れ、がん対策の推進を図っていると聞いており、本県においても患者団体を中心に条例化を求める声が高まってきているところです。
とりわけ県独自の条例制定により、早期発見、早期治療の推進についての考えをただします。また、この条例による取り組みについては、健康作りの源となる歯科についても、その声が全国で高まり、我々も実現に向け強い関心を寄せ、県歯科医師会とも協議を重ねているところであります。併せて県の当面の見解をお示しください。
それではまた、本論の農政問題に戻ります。本年三月三十日に閣議決定された国の新たな「食料・農業・農村基本計画」についてであります。
今回、国が発表した新しい基本計画では、「子ども手当」と同様、今年度からスタートする農業版バラマキ政策である米の戸別所得補償制度を正当化するために、施策の対象を真の担い手に集中させるのではなく、近い将来には農業を止めてしまうであろう農家にまで広げているなど、まったく理解できないものであります。
農業においては特に「施策の選択と集中」を実行していかなければ、高齢化が都市部に比べても急速に進展している農村部で、いったい誰が将来の担い手となり、わが国の農業を守っていくのでしょうか。
政権交代以来、わが会派は議会の度に、この戸別所得補償制度について知事の所見を質してきました。
これまでにも指摘してきたとおり、この制度は、政策の効果や実現性に極めて疑問を感じ、これは今日に至って益々深まるばかりです。
現在の農業構造を、刹那的に単に温存するだけの制度であり、将来展望、つまりは農業の持続的発展に繋がるとは到底考えられないところであります。
そこで改めて知事にお聞きします。知事はこの戸別所得補償制度を政権党のマニフェストに描かれているように農業の持続的発展に繋がる政策だとみなしておられるのかどうか、その見解を明確にお示し下さい。
次に、現在の県農業・農村振興基本計画は本年度が目標年度となっていますが、今後、この戸別所得補償制度を県農業振興基本計画に、どのように位置づけるつもりかお答えください。
さて最後に今、有明海で、一番注目を集めている開門調査問題についてひとことただしておきます。
「諫早湾干拓事業検討委員会」は、四月上旬に「地元関係者の同意を前提として、環境影響評価を行った上で開門調査を行うことが至当と判断する」旨を赤松前農水大臣に報告しています。大臣は替わったものの新大臣はいづれ開門調査の是非についての政治的判断を迫られるものと判断されます。
しかしながら、開門反対を訴える地元長崎県への対応策や、開門による影響を回避する具体的な対策なども未だになんら示されておりません。このため、地元は混乱し、それぞれの立場の違いによる営農者や漁業者など当事者同士の対立が毎日のように報じられております。
事前の対策をなんら講じることなく、もし政府が一部に迎合して、排水門の開門を強行するようなことがあれば、これは大変な事態を招きかねず大変恐れるところです。
また本県の漁場にも悪い影響が及ぶのではないか、と懸念されるのは言うまでもないところであります。
この問題を巡っては、長崎、佐賀、熊本そして福岡県でそれぞれ微妙に見解が異なり、政治的に対応が違っています。
このような時こそ、全国知事会長としてその政治力を遺憾なく発揮して、四県をまとめあげて政府と折衡していくときであります。
知事の見解をお聞かせ下さい。
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(農林水産問題について)
1.口蹄疫など感染症対策とワクチン在庫問題
口蹄疫の侵入防止対策とその効果について
四月二十日に宮崎県において初めて発生が確認されて以降、家畜保健衛生所が中心となり、農家に消毒を指導して参りました。
五月十八日には知事命令を発し、畜舎等の消毒徹底を図ってきたところでありますが、昨日、対策会議を開催し、次のような指示を行ったところであります。
第一に、六月十八日までの知事命令による畜舎等の消毒徹底については期間を更に四週間延長すること、第二に、県境(けんざかい)を中心に主要三路線に設けている消毒ポイントは現行場所で六月末まで継続すること、といたしました。
現時点では、本県での発生は見られておりません。
本県畜産農家への影響と支援策について
本県は口蹄疫が発生していないことから、牛乳や肉牛の出荷についての規制はなされておらず、現時点では経営に大きな影響はないものと考えております。
また、市場の休止によって出荷できなくなった県内で生まれた子牛につきましては、生産者団体が農家間の流通斡旋を行い、県内流通を進めております。
今後、市場の休止が長期化する場合は、他県からの子牛の導入に支障を来すことから、動向を見極めて参りたいと考えております。
家畜の埋却場所について
口蹄疫が本県で発生した場合には、速やかに殺処分を行い、短期間で防疫措置を終了することが、感染の拡大防止に極めて重要と考えております。
このため、昨日開催した対策会議において、埋却地確保の具体的な検討を、畜産農家を有する市町村に要請することといたしました。
狂犬病予防対策について
国内における人の狂犬病感染事例は、ほぼ半世紀に渡って発生しておりませんが、アジア地域では頻繁に発生しており、重要な感染症であると認識しております。
そのため、登録率や予防注射接種率の向上に努めるとともに、発生時に速やかな情報伝達や疑いのある動物の捕獲等の緊急対応が行えるよう、市町村、獣医師会等関係団体とのネットワークの構築に努めて参ります。
新型インフルエンザワクチンの在庫問題について
今回の在庫は、国の方針に基づく通常とは異なる供給方法や接種回数の変更に加え、接種希望者の重複予約や罹患によるキャンセル等によって、当初の見込みより大幅に接種者が減少したことから生じたものであり、個々の医療機関にとっては不可抗力であったと考えております。
このため、本年四月に九州各県保健衛生主管
部長連名で、国に対し、在庫ワクチンの返品を認めるよう要望したところです。
知事会としての国への申し入れについて
全国知事会においては、新型インフルエンザ対策が、国家的な危機管理の問題であることから、これまでも、国が主体となって対策を進めるよう申し入れをしてきたところであります。
今回の新型インフルエンザワクチンの在庫問題についても、各都道府県の状況を把握したうえで、全国知事会として国への申し入れを検討して参ります。
がん対策の条例の制定について
本県では、がん対策基本法に基づき、平成二十年三月に「がん対策推進計画」を策定し、検診受診率の向上のための積極的な啓発活動の実施や、がん診療連携拠点病院を中心にがん診療の質の向上を図るなど、早期発見・早期治療の推進に努めています。
がん対策の条例につきましては、今後、制定する意義や効果などについて、十分に研究してまいります。
歯科保健条例の制定について
生涯を通じて自分の歯で食生活を楽しむことは、健康づくりの重要な要素と考えております。
このため、本県では平成二十一年三月に、歯科保健医療関係者との協議の下、ライフステージごとの施策を盛り込んだ歯科保健医療計画を策定したところです。
したがって、条例については、計画の進捗状況等を十分踏まえながら、関係者とその課題や必要性について議論して参りたいと考えております。
戸別所得補償制度の評価について
この制度は、米を販売する全ての農家が対象であり、規模の大小に関わらず一律に支援する仕組みになっていることから、政策のねらいがわかりにくくなっています。
今後、更に高齢化が進行していくことを考えますと、県としましては、法人化された組織など永続性のある担い手が中心となる生産構造に誘導していくことが、水田農業の持続的な発展に必要であると考えており、これに資する制度となるよう、引き続き提案して参ります。
戸別所得補償制度の県基本計画への反映について
水田農業が持続的に発展するためには、今後、高齢化が更に進行していくことを踏まえ、永続性のある担い手の育成が急務であります。
本年度が目標年度である現行計画においては、農地の貸し借りや農作業の受委託の促進により、農作業の集約化を進め、担い手の育成に努めております。
米所得補償モデル対策が今年度実施されますが、法人化の推進などこれまでの本県の担い手育成の取組にどのような影響があるのか、普及指導センター等を通じて現在調査中であり、その結果を踏まえ、必要な方策を検討して参ります。
2.諫早湾干拓開門調査問題
諫早湾干拓問題に係る関係県の調整について
本県は有明海の環境変化の要因を解明するため、これまで一貫して開門調査を実施すべきと主張してきました。潮受堤防が締め切られて十年以上が経過する中、有明海には新しい環境均衡が形成されつつあります。このため、開門にあたっては事前に十分な環境影響評価を行い、対策を講じることが重要であります。
開門については、長崎県は強く反対、その他の三県は賛成の立場であります。
諫早湾干拓事業は国の事業であり、開門調査も国が実施すべきものであります。
従って、この問題は、国が関係県と意見の調整を行い、その方針を決めるべき問題と考えています。
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最後に教育問題についてお聞きします。
来年度は小学校、平成二十四年度は中学校、さらに平成二十五年度からは高等学校において、今までのゆとり教育の反省の元に生まれた新しい学習指導要領に基づいた教育が始まります。
我が会派は、授業時数を減らし、教える内容までも減らしたこの今までのゆとり教育は、学力の低下をはじめとして愛国心の低下や規範意識の低下など我が国の教育に大変な弊害をもたらしたと捉えております。
こうしたゆとり教育の弊害を取り除くには、今後相当な時間と労力が必要になると思われます。誠に遺憾なことではありますが、県教委としては新学習指導要領の定着をしっかりと図って頂かねばならないところであります。
二期八年勤めた森山前教育長が三月末で勇退し、今年度から杉光新教育長の下で本県の教育の舵取りが始まりました。
そこで教育長に伺います。
新教育長は、現在の本県における教育の課題をどのように捉え、今後どのような決意を持って舵取りをしていこうと考えているのか、総合的な所見を伺います。
次に、新しい学習指導要領をどのようにして本県に定着させていくのか。
とりわけ「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」という教育基本法の教育目標について、どのように認識し本県の教育現場に定着させていくのか明確な答弁を求めます。
さらに本県の学力、体力の問題についてです。
我々の強い要請により、日教組の考えに基づき実施された抽出調査という安易な方針を採用せず、本県は悉皆で調査を行う旨を表明したところです。
そこで、その後の実際の両調査の実施状況を伺うとともに、杉光新教育長は、悉皆調査の意義をどのように捉え、本県の学力、体力問題にどのように評価し取り組んでいく考えなのか、決意のほどをお伺いします。
次に様々な課題を抱えている高校授業料の無償化について伺います。公立高校の授業料を徴収せず、私立高校には世帯の年収に応じて年間約十二万円から二十四万円の就学支援金を高校にまとめて支給するという制度が、国において法案の十分な審議を尽くさず今年の四月からスタートしています。
「子育て世帯の家計支援」なのか「経済的理由で進学困難な生徒への教育の機会確保」なのか政策の理念を明確にしないまま始めた上、さらに支給方法が高校への支給となっています。
家計支援というよりは、高校への助成という面も強くなり、ますます制度の意味合いが分からなくなっています。従って案の定、様々なところから懸念が生じています。
特に大きな問題は、無償化により逆に格差を助長するのではないかという懸念です。
つまり、公立の高校生は全員授業料は無償なのに私立の高校生は授業料と就学支援金の差は自己負担となります。
まさか新政権は、私立高校の生徒は裕福な家庭ばかりであるという時代錯誤的な考え方をもたれているのではないでしょうか。
公立高校に行けなかった経済的に厳しい家庭の生徒が、やむを得ず私立高校に進学する場合は多く見られ、この人たちは授業料を支払わなければならないというまさに不平等の拡大ではないでしょうか。
さらに無償化の財源確保のため十六歳から十八歳の子供を持つ家庭の特定扶養控除が段階的に縮小されるため、高校に進学しなかったり中退したこの年代の子どものいる家庭は特定扶養控除の縮小で逆に負担が増える可能性はつとに心配されています。
また、今まで授業料の免除制度があった生活困窮世帯だけでなく授業料を支払っていた世帯まで無償化されることから、浮いた分を塾代に回すことができ、学力格差がさらに広がるおそれがあります。
本県では、公立高校の授業料無償化により具体的に何か問題が生じているのか、生じているとすればどのように対処されているのか教育長に伺います。
公立よりもさらに問題が大きいのは私立の就学支援金です。この支援金は直接高校に支給されるため、他県ではそれを利用して就学支援金をキャッシュバックするとして生徒の募集に利用している学校もあると聞いております。事実とすれば私立高校のPRのために制度を悪用することとなり大変問題です。
本県ではこのような実態はないかどうか調査したのか。もし実態があればどのように対処するのか。知事の答弁を求めます。
さらに就学支援金は、保護者が学校に申請書を提出し、都道府県の認定を経た上、高校が支援金を代理受領するという申請手続き上の負担も大きい上、必要に応じて保護者が世帯年収を確認できる書類を学校に提出しなければならず個人情報保護の点からも問題が大きいと思えます。
こうした手続き上の煩雑さから、県は私立学校に対して就学支援金の説明会を開催したと聞いていますが、県はどのような説明をしたのか。その際、学校側からどのような反応があったのか。さらに今まで就学支援金について学校や保護者からどのような苦情や不満が生じているのか、明確に伺うとともに、この就学支援金の問題点を知事は総合的にどう捉えているのか答弁を求めます。
留任した川端文部科学大臣は、この無償化制度をスタートさせるに際して、「大きな予算を使って高校の学びの環境を劇的に変化させる」と述べたようです。
これほど問題だらけでは「大きな予算を使って高校の学びの環境を劇的に悪化させている」だけです。
所得制限もせずに年間四千億円もの財源を使うのであれば、支援を本当に必要とする生活困窮世帯にむしろ手厚く配分する方が「学びの場としての高校を劇的に変化させる」ことになると申しあげておきます。
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教育長答弁
(教育問題について)
本県の教育課題と教育長の所見について
本県では、最重要課題である学力や体力の向上はもとより、不登校への取組、大量退職期を見据えた優秀な教員の確保策など様々な課題があると認識しております。
これらの課題の解決に向け、私自身が先頭に立って、県民の教育への期待に応えられるよう、学力向上新戦略や体力アップ推進事業などをはじめとする諸施策に不退転の決意で取り組んでまいる所存であります。
さらに、教育力向上福岡県民運動を通して、学校での教育活動がより充実し、全国でも誇れるものとなるよう、保護者や地域をはじめ、県民の方々と一丸となって取り組んでまいります。
新学習指導要領の定着について
現在、全ての教員を対象にした説明会の実施や指導資料の作成、実践研究校の指定等に取り組み、新学習指導要領の確実な定着に努めているところです。
特に、「伝統や文化の尊重」等については、郷土を支え明日の我が国を担う人材育成のための重要な教育内容であると考えており、古典や歴史学習、道徳教育や武道教育、さらには先達や偉人に学ぶ教育活動等、郷土や国を愛する態度を養う教育の一層の充実を進めて参ります。
本県の学力、体力の問題について
児童生徒の学力・体力向上に向けた有効な取組を進めるには、各学校が児童生徒の個別の状況を把握し、これまでの教育の成果を検証できる悉皆による調査が必要と考えております。
このため、本県では、本年度も悉皆による学力調査を実施したところであり、体力調査についても、全ての児童生徒を対象に実施することとしております。
県教育委員会としましては、全国平均より低位にある本県児童生徒の学力・体力の向上を図るべく、今後とも、最重要の教育課題として取り組んで参ります。
授業料無償化による問題点について
県立高校の授業料不徴収については、授業料徴収条例を改正し、学校や保護者に対して速やかに制度の周知を行ったところです。
現在のところ、無償化による問題の報告は受 けておりませんが、生徒の就学意識の変化や家 庭の教育費支出への影響等が指摘されていると ころであります。
県教育委員会としては、学校現場とも連携し ながら、引き続き状況の把握に努める等、適切 に対応して参りたいと考えております。
知事答弁
就学支援金を用いた不適切な募集活動について
不適切な募集活動を行っている事例は、本県においては聞き及んでいません。 今後とも、生徒募集に際し、就学支援金に関して誤解を生じることのないよう私立高校を指導して参ります。
また、私学団体と連携して、就学支援金制度の周知に努めて参ります。
就学支援金説明会と学校の反応について
国の説明会を受け、制度の内容や具体的事務処理について説明会を開催したところです。 学校側からは、関係法令の成立が年度末となり、保護者・生徒への周知や多大な事務を短期間に処理しなければならないことに対する懸念があったところであります。
このため、届出書の一部割愛など県において可能な限り事務処理の簡素化に努めたところです。
就学支援金に対する学校・保護者からの苦情などについて
公立高校の授業料不徴収については、手続きが不要であるにもかかわらず、私立高校については、受給資格認定申請や就学支援金加算の届出が必要なことから、不公平であり、手続きの負担感が大きいとの声が保護者からでています。 また、学校からは事務負担が格段に増加したとの意見があります。
就学支援金の問題点について
就学支援金は、私立高校に通う高校生を抱える保護者の授業料負担の軽減を図るものであると考えます。 また、本県においては、県独自で生活困窮者に対しては更に軽減措置を設けるなど、公私格差の是正にも取り組んでおります。 就学支援金については、公立高校の無償化に比べ、事務負担が大きいため、今後、私立高校の意見も踏まえ、その手続きの簡素化が図られるよう国に対して要望して参ります。 |
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