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自民党県議団 代表質問 平成21年12月7日(月)

   12月1日(火)に開会した12月議会は12月7日(月)、自民党県議団代表質問で口火をきりました。
以下にその質問と知事及び教育長の答弁要旨を記載します。

自民党県議団質問内容

 まず最初に、知事の基本的な政治姿勢についてお尋ねします。
 知事は、十一月上旬、平成二十二年度当初予算の編成方針を作成し、各部局に提示しました。編成の基本的な考え方として、現下の厳しい経済情勢への的確な対応、行財政改革の推進などと並んで、「国の予算編成等を通じて行われる各種制度の見直しへの適切な対応」を掲げています。
 先月二十七日に新政権の目玉である行政刷新会議による政治ショーじみた事業仕分けが終わりました。これを指して、ノーベル賞学者の益川敏英教授は、仕分け人はまるでかつての文化革命時代に名をはせたあの中国の紅衛兵を思わせた、と評していました。誠に言いえて妙であります。また、同じくノーベル賞受賞者で理化学研究所の野依良治所長は「仕分け人は歴史の法廷に立つ覚悟があるのか」とまで言い切っています。
 糾弾あるのみ、洞察を深めることなど、まったく無しで、こういうやり方こそ、まさに戦後の日教組教育の落とし子と、また別の論者が話していましたが、これもまた的確な分析だと思いました。
 さて、この演出をこらした仕分け人による仕分けが最終決定ではないとはいえ、来年度政府当初予算案はこれまでにない大幅な見直し、変容が避けられそうにもない状況にあります。
 そこで、新政権発足後、今日まで政府の動向を具体的に見られて、本県の来年度予算編成に具体的にどのような影響が予想されるのか、県政の進展に大きな障害にならないのか、大多数の県民が大変心配しております。この点、まず現在把握されている状況について、できるだけ具体的な説明を求めます。また、各種制度見直しへの「適切な対応」とは、実際何を意味するのか、併せてお尋ねします。
 次に、本県予算編成方針では、建設事業費について、地方負担額ベースで補助公共事業費及び直轄事業負担金にあっては、その合計額で二十一年度当初予算額の八六%、単独公共事業費にあっては、二十一年度当初予算額の一〇〇%、これらの合算額の範囲内で要求するようシーリングを設けています。行政施策費については、対象経費全体として一般財源ベースで二十一年度当初予算額の七五%の範囲内とされています。
 しかしながら、昨年秋以来の世界的な経済危機の影響を受けて、本年度国税は、三〇兆円台に落ち込むことは必至と見込まれています。国の当初予算では四六兆円を計上していたわけですから、六兆円以上の税収減に直面することになります。必然的に二十二年度当初の税収見積もりの発射台を押し下げ、来年度税収は四〇兆円を割る恐れも指摘されるような危機的状況にあります。本県においても来年度県税収入が予算編成の極めて大きな制約になることは明らかであります。
 本年度当初予算では県税収入が五,二八九億円計上されています。今議会に提案された補正予算案では、県税収の補正がなされておれませんが、引き続く厳しい本県経済・景気情勢に対する見通しを含め、現時点で本年度の県税収の動向をどのように見込んでいるのか、また、減収が見込まれる場合には補填はどうするのか、その対策についても責任ある答弁を求めます。
 加えて、新政権による初めての予算編成で、国の予算の形も歳入・歳出両面で大きく変わることが想定されます。にもかかわらず、新政権の来年度予算編成の全体像は、今に至ってその骨格さえ必ずしも明らかではありません。そんななか本県の当初予算編成方針において公共事業費や行政施策費等のシーリング、その具体の数値は、一体どのような根拠、考え方に基づいて設定したのか。補助公共は国の概算要求などを踏まえたものでしょうが、単独公共は本年度同類とされ、一方行政施策費が七五%以下とされたことは、少しバランスに欠ける気も致します。それぞれの数値の根拠について、県民に分かりやすい納得いく説明を求めます。
 さらに、これから本格化する国の予算編成に向けて、全国知事会長でもある知事は、どのような方針を持って国に働きかけるのか。 総務省は、地方交付税の法定率引き上げや一兆円の特例加算を要求しています。一方、エネルギー・自動車関係税の暫定税率問題については、単なる廃止か、新しい環境税が代って導入されるのか、未だ明確な方針がないままであります。また、子ども手当てに地方負担が求められるのか、直轄事業負担金の廃止と事業量確保の課題はどのように解決されるのか等々、残された課題は山積しています。
 いずれも巨額の財源が関係するにもかかわらず全体像は未だ明瞭ではありません。全国の自治体は大きな不安を抱えています。これらの諸問題に対する知事の政治家としての戦略と決意を明らかに願います。
 また、国の予算編成の動向によっては、本県予算編成方針も大幅に見直さざるを得ない事態も想定されます。今後、弾力的に対応する余地があるのか、知事の基本的な考え方をお尋ねします。
 なお関連して、先般、会計検査院から指摘された補助公共事業の旅費等に係る本県の不正経理問題について、知事は見解の相違で悪質なものはないと主張されているようですが、その後の経緯や善後策について改めて県民に対して納得いく説明を求めます。

麻生渡知事 答弁要旨


(知事の基本的な政治姿勢について)

 国の動向及び予算編成への影響について

 政府予算案の編成においては、地方交付税の確保、自動車関係諸税の暫定税率の存廃及び廃止された場合の財源措置、直轄事業の維持管理負担金の廃止、子ども手当の創設、高校の実質無償化などによる影響が懸念されており、地方の過大な負担とならないよう、適時国に対して申し入れているところであります。
 県の予算編成においては、こうした制度の見直しの状況を十分見極め、歳入、歳出両面において、その内容を適切に反映して参る考えであります。




 今年度の税収見通しについて

 今年度の県税収入は、昨年秋以降の急激な景気悪化に伴う生産や消費の低迷により、ほとんどの税目において減収となっており、十月末の調定実績において、県税全体で前年比九〇・一パーセントで推移しております。
 税収は今後も厳しい状況が見込まれることから、仮に現時点での実績を基に試算すると、当初予算を三百億円程度下回る見込みであります。
 今後、地方交付税の確保や減収補てん債の拡充などを国に対し求めるとともに、一層の経費節減などに努めて参りたいと考えております。




 予算要求枠の設定について

 県単独公共事業費については、地域経済の活性化や生活に密着した社会資本整備の観点から、平成二十一年度当初予算と同水準の要求枠を設定したところであります。
 行政施策費については、夏季に実施しました事業点検の結果を踏まえ、平成二十一年度当初予算と同率の削減率を設定したところであります。




 国の予算編成に向けた働きかけについて

 社会保障費の増加に加え地方税の大幅な減収も見込まれ、地方財政がまさに危機的状況にあることから、地方交付税の復元・増額を強く求めております。暫定税率の廃止に対しては、これに替わる新たな地方税として全国知事会から地方環境税の導入を提案しております。
 子ども手当については、全国一律に給付する以上、地方に工夫の余地がないため、全額国が負担すべきと考えております。
 直轄事業負担金制度については廃止に向けた協議を国と進めておりますが、真に必要な社会資本整備の事業費が確保され、着実に実施されることが重要だと考えております。
 このような考えの下、私自身も関係閣僚と必要な協議・要請を行ってまいります。




 予算編成方針について

 毎年度の予算編成においては、まず要求の基準となる方針を作成し、具体的な編成作業を進め、年末に明らかとなる税制改正や地方財政対策、政府予算案の結果を踏まえ、その内容を予算に反映することとしております。
 平成二十二年度においても、自動車関連諸税の暫定税率の廃止等の取り扱いなど制度改正の動向を十分に見極め、その内容を的確に予算に反映して参る考えであります。
  



 補助公共事業の旅費等に係る会計検査院からの指摘について

 今回の検査は、平成十四年度から十九年度までのものであり、従来、使途基準についての詳細な考え方が示されておりませんでした。県としては、補助事業の執行に直接関係する出張だけでなく、補助事業を円滑に推進していくために必要な関連活動、例えば事業促進のための大会や国への予算要望の出張についても執行してきたものであります。
 しかしながら、これらの関連活動については、補助事業の経費として認められなかったものであります。
 なお、平成二十年度に関係省庁から具体的な使途基準が示されたところでありますが、この基準について協議して参りたいと考えております。

 次に、九月議会に引き続き、民主党が政権公約で掲げ、最近では知事自身もよくお遣いになる「地域主権」なる不可解な言葉遣いについて、「主権」の概念の考察を深めながら改めて知事の見識を伺います。
 知事は、わが会派の代表質問で、「地方重視を非常に強い言葉で表現したもの。是非この考え方のもとで本当の地方分権を実現することを強く求めたい」と、「地域主義」を高く評価されました。
 また、わが会派議員が一般質問でその中身を質したのに対して、「主権でありますから、要するに地方の方で決定権を持つ、自主決定権を十分に持たせるということが中心的な目標なりになっていく」と答弁されました。
 さらに「地域主権型国家」の意味についても、「国(中央政府)レベルは国家戦略を担い、内政面については、思い切って地方に、地方主権ということで決定権を与える」旨の懇切な解説まで頂きました。
 しかしながら念のため、知事ご就任の平成七年以降の本会議や委員会の議事録から「地域主権」を検索致しますと、果たして先の議会を除き知事や理事者側の発言からは、この言葉を全く発見することは、できなかったであります。
 そこでまず、知事が公の場でこの言葉を好んで使用され始めたのはいつ頃からであったでしょうか、また、その契機や動機はどこにあるのでしょうか、お答えください。
 次に、知事は先の本会議をはじめとして、「地域主権は地方分権よりもっと強い考え方で、地方の主体性を重んじいくことである。この考え方はかねて地方も一致して求めていたものである」旨を繰り返し強調されています。一体、どのように受け止めればよいのか、私どもは大いに戸惑ってしまうのであります。
 わが国のような単一の国民国家では、主権は、ネーション(nation)としての国家・国民にのみ淵源し、単一不可分、分割できないというのが通説、国民の共通感覚(コモンセンス)であります。
 この点、邦や州がその本来有する主権の一部を譲り渡して構成される連邦国家とは、根本的に国家の構造原理が異なるのであります。
 そういたしますと、連邦国家への転換を企てでもしない限り、単一の国民国家において地域に「主権」を譲り渡すことなどできないというべきです。知事は、「地域主権」をどのように法構成されるのか、分かりやすくお聞かせください。
 何度も申しあげますように、「主権」は無制限の力を意味する言葉であります。「地域主権」とは地域のあらゆる事柄を制約なく地域の独自決定に任せよということ以外のなにものでもありません。現に知事もそれに近い説明をされています。
 しかしながら、このようなことが現実となればどのようなことが想像されるのでしょうか。
 わが会派議員が、既に平成二十年七月の県議会「地方分権対策調査特別委員会」において、「主権」概念を国民が理解せぬまま、地域が自分のところに主権があるとして勝手なことをやるようになれば国家がバラバラになる、地域間格差や地域間対立も惹起されると、「地域主権」という言葉に潜む大いなる危険性を鋭く指摘していたことをご存知でしょうか。
 仮に「地域主権」が本当に実現されれば、地域のつながりが希薄化し、基地問題や原子力施設の立地問題など国家存立に関わる多くの重大問題もますます解決困難になることは明らかです。このような指摘について、知事の見解をお尋ねします。知事のいう「地方分権」に比べてどこがもっとも強いのか、お聞かせください。
 また先般(十一月十六日)の国・地方協議の場で、「今度こそ本当に分権が進み、真の地域主権国家になることを期待する」旨発言されたようにお聞きします。
 新政権が、マニフェストで約束した子ども手当、高校実質無償化、農業の戸別所得補償、その他様々な社会保障施策など、まさに大きな政府そのものを志向しながら、一方で中央政府の役割を限定的に捉える地域主権型国家の形成を提唱する―そんな政権運営では、「地域主権」も眉唾めいて精神の統合にかけるとなぜ感じられないのでしょうか。
 到底、共に共闘できるような信頼関係が本当に確立できるとは思えませんが、率直な気持ちをお聞かせください。
 麻生知事は全国知事会長であります。でありますから、新政権の言葉遣いなどに惑わされず、堂々とこれまでどおり「地方分権」を叫んでください。
 現に知事が肝いりで設置されている改革担当の財政課課内室は「分権改革推進室」と名づけられているではありませんか。それとも今後は「地域主権改革推進室」に名称の変更をされますか。そんなことはないでしょう。
 こうした私どもの指摘をどう受け止めるか、あわせて率直な気持ちをお聞かせください。


(「地域主権」なるものについて)

 「地域主権」という言葉の使用について
 

 「地域主権」という言葉は、これまでも民間の有識者や総理大臣が「地域主権型道州制」に言及されるなど様々なところで使われております。
 私としては、地域主権を掲げる新政権の下で地方分権が広く深く進むことを期待し、政権発足後、折に触れ、この言葉を引用しているものであります。
  









 「地域主権」の法構成と地方分権との違いについて
 
 「地方分権」は、国の権限・財源を地方に分け与えるという考え方であり、これまでも様々な取り組みがなされてきました。
「地域主権」は、さらに国の権限・財源を地方に思い切って移譲し、それにより地域が強い自治権・自己決定権を持ち、それぞれの創意工夫を生かして、地域の発展を図る条件を整えようとする考え方を意味する言葉と理解しております。  









 分権改革に向けた新政権との関係につい て 
 
 新政権は、国と地方の協議を重視しており、協議の場の法制化の検討を共同で進めております。また、法制化に先立ち、平成二十二年度の地方財政対策を含む実質的な協議を十一月に行うなど、各分野で幅広く協議を進めております。
  このような協議を通じて、国と地方の信頼関係が醸成されるものと期待しております。  

 そこで次に、地方分権改革についてお尋ねします。
 先の議会の代表質問では、「新政権の体質と政治手法を冷静に見きわめ、新政権に対して毅然とした態度を貫く」ことを知事に求めました。案の定、その体質、政治手法両面で、今後の政治・行政運営、とくに地方分権の推進にとって大きな障害になりかねない大変危惧すべき実態が生じています。
 まず、新政権は「官僚依存政治からの脱却」を一枚看板のごとく標榜して政権奪取を実現、以来三ヶ月足らずが経過しました。
 この間、官邸、行政刷新会議、国家戦略室に配属された役人を見る限り、前政権に比較して財務官僚の数が格段に増加したと聞きます。
 テレビにしばしば登場するある高名な大学教授は、この事実を指して十二月はじめのある新聞で、「民主党は財務省と組む決断をしたのではないか。官僚全体を敵に回すわけにはいかないから」と評しております。
 先般実施された「事業仕分け」におけるほとんど問答無用の一方的裁断、いずれを見ても財務省が裏で実質的に取り仕切っていたことは明白であります。要は財務省依存の脱官僚を目指しているわけであります。
 そんな財務省依存の体制で、国・地方の利害が先鋭に対立しがちな地方分権改革、ーとりわけ地方交付税の増額や、地方消費税の拡充を中心とする税制抜本改革などを断行する覚悟が新政権にあるのか、また本当に実現できる力量があるのか、大いに疑わしいものです。
 そこでまずお聞きします。知事は、政権中枢で財務官僚が前政権の時以上に重宝される、そうした新政権の体質についてどんな感慨をお持ちですか。率直なお気持ちをお聞かせください。
 次に、行政刷新会議による「事業仕分け」についてであります。地方交付税は「配分不透明」と断罪され、いとも簡単に「制度の抜本的な見直し」と決めつけられました。
 地方財政に関係の深い各種公共事業やまちづくり関連事業、医療・福祉・教育関係予算なども軒並み、一方的に廃止、削減、計上見送り、地方移管などと宣告されました。
 いわゆる「仕分け人」たちは、その影響を直接被る地方の疲弊した実情、地方の意向や不安をどの程度理解し、真摯に受けとめているのでしょうか。
 それぞれ相応の背景や理由があってつくられてきた事業であります。問題を有すると同時にその意義もあるはずです。制度が複雑で専門的見地から慎重な評価が必要な事業も多いでしょう。国民感覚は大切ですが、様々な経緯を背負った事業の要・不要を幅広い観点から慎重に吟味することもなく、高々一時間程度の議論、しかも居丈高な相手にはしやべらせぬ仕分けでの場で、簡単に片づけ去ってよいものでしょうか。
 もともと俎上にあげられた四百四十九の事業がどのようにして選択されたのか、その選考プロセスは全くブラックボックスであります。スーパーコンピューターの研究開発費に関連し、なぜ、世界一を目指さなければいけないのか、二位ではなぜだめなのか、と声高に叫んで、国民の失笑を買った仕分け人もいました。この女性仕分け人は、かつて本県教育庁を調査で訪れた際「おだまりなさい」と本県職員の説明を中途でさえぎったことでも有名な人物です。
 このように仕分け作業は、新政権の強権的・独善的体質、集権的政治手法を白日に曝したものであり、人民裁判、公開処刑などと非難されたのも宜なるかなと思います。
 こんな体質で本当に「地域主権」など実現できるのでしょうか。
 本県の半導体やガンワクチン研究開発事業に重大な支障をもたらしかねない「地域科学技術振興・産学官連携事業」の計画年度中途での廃止の仕分けになったことについては、「将来への洞察を欠いている」として全国32道府県の知事とともに厳しく抗議されたようですが、仕分けの影響は何も科学技術予算関係にはとどまらないはずです。そこで今回の事業仕分けについて知事として、どのような見解をもたけているのか、理不尽な廃止や予算削減については、断固として対応すべきです。科学技術以外の本県への影響の説明も含め、知事の率直な見解をお聞きします。
 事業仕分けは政府の最終決定ではないとされてはいるものの、藤井財務大臣は「仕分けの結果は真摯に受け止めて予算編成に反映させる」と明言しています。
 交付税に限らず、仮に仕分けどおり予算編成される事態になれば、本県はもとより地方財政全体への影響は誠に甚大であると予想されます。どう対応すべきか、早急な論点整理と迅速・果敢な戦略が求められます。
 論点の所在について知事の基本的な考えをお聞きするとともに、これから佳境に入る政府の予算編成にどのように働きかける方針なのか明らかに願います。
 さらに、指摘しなければならない問題は、自治体等の政府与党への陳情活動に対する干渉であります。
 民主党は、自治体や業界団体の政府への陳情は受け付けず、地元県連を経由し党幹事長室に窓口を一本化する方針を決めたと聞きます。都道府県知事や市町村長は、「民主党詣で」をし、党本部に事前の説明あるいは伺いを立てなければ、政府に陳情できないようであります。
 地方分権の時代、地方行政の責任者として首長や議会が中央省庁に直接、意見を述べまた要請する、そのやり方について党を通せと妨げられ、いちいちなぜ干渉を受けなければならないのでしょうか。
 直接政府に折衝できない実態が本当なら極めて憂慮すべき事態であります。独裁国家も顔負けの恐怖政治そのものであります。
 事実はどうか、その確認と併せ、新たな陳情ルートが実際どのようなもので、本県ではどのように対応されているのか、まず正確な状況を説明ください。
 既に地方からは、岡山県知事のように地元民主党県連の制止を振り切って、単独で省庁に会うと言明する事態も招き、地方の声をしっかり受け止めることができるのか、風通しが悪くなる、敷居が高くなる、といった様々な批判の声が高まっています。
 知事は、先月十六日、小沢民主党幹事長に陳情され、その際、新たな陳情システムについて話合いが持たれたようであります。
 こんな一方的・強権的陳情システムに当然、抗議されたと存じますが如何ですか。この点も含め、知事は民主党の新しい陳情システムをどのように評価されているのか、率直な感想をおたずねします。
 こんな一党独裁的な政治手法を強引に推し進めながら、同時に地域主権をいくら叫んでみても、一体誰が本気にするでしょうか。
 民主主義国家において尋常ならざる事態が生起しているのであります。
 知事はこの相矛盾する新政権の政治姿勢について、違和感を持たれないのですか。心中、どんな折り合いを付けておられるのか、是非ともお聞かせ頂きたく存じます。


(地方分権改革について)


 新政権の体質について


 新政権は、政治主導による政策形成、決定を目指すため、脱官僚を掲げ、事務次官会議を廃止し、政務三役による会議を設置するなど、新たな体制を作りました。
 政権発足後間もない時期であり、試行錯誤しながら政治主導を確立しようという段階であると思っております。 











 事業仕分けの本県への影響について

 事業仕分け結果において、地方に関連する主なものとして、地域科学技術振興・産学官連携事業の廃止をはじめ、地方交付税制度、農道整備事業、下水道事業、医師確保や救急・周産期対策に係るもの等が見直すこととされました。
 これらについては、政府の予算編成作業が本格化する中で、具体的な取扱いが検討されていくこととなりますが、その際は、地域経済の実態や地方の財政状況を十分踏まえて判断される必要があると考えております。
  








 事業仕分けの論点整理と対応について

 今回の事業仕分けは、予算の有効な使い方や無駄の排除を目的として行われた新しいやり方であり、一定の効果は挙げつつあると考えております。
 しかし、検証時間が短かったことに加え、科学技術の政策など一部には、日本の将来についての洞察を欠いていたり、あるいは地方の実情について十分に理解がされていないものもありました。このような点については、是正されていく必要があると考えております。 










 民主党の陳情ルートへの対応について

 民主党は、自治体関係者等に陳情ルートについて、民主党としての考え方を出しております。
 一方で、国の方では、国と地方の協議の場を法制化するなど積極的に協議を行おうとしております。
 地方の抱える問題は多様であり、政策あるいは制度設計については、地方の実態に合った形で作り上げていく必要がありますので、知事会活動等を通じて、幅広く政府と協議を行ってまいりたいと考えております。
  









 民主党の陳情システムの評価について

 政策や制度の枠組みについては、国と地方の協議の場を活用し、また、具体的な政策については関係省庁と政策協議をしていく必要があると考えております。
 このような多様な政策提言のルートは、地方の実態に合った国政が行われるためには不可欠であります。










 新政権の政治姿勢について

 新政権では、早いスピードで政権公約を実現しようとしておりますが、実現にあたっては、地方の意見を聞くということが、極めて重要であり、国と地方の協議の場などを活用することが必要であると考えております。


 さて次に、子育て支援対策の一環として、保育所における看護師配置の拡充等についてただします。
 今、保育所、園に子どもを授ける保護者にとっての悩みのひとつは、看護師が配置されていない保育所や保育園が多く、子供たちが発熱をはじめ、身体の変調を訴えた場合、勤務中にもかかわらず保護者が呼び戻されるケース多いこと、と聞いています。
 これでは保育所に子どもを預けている保護者にとっては、いつ呼び出されるかもしれないという不安をいつもかかえていなければならず、安心して働くこともできません。
 女性の社会進出の妨げともなり、男女共同参加社会の実現を阻害する原因にもなっている、と指摘する関係者も少なくありません。
 そこで今、保育所にとっては看護士の配置は、保護者に安心して子どもを預けてもらうための喫緊の課題となっているところでありますが、現状はまだまだの状況にあるようです。
 平成一〇年四月の旧厚生省児童家庭局長通知により、乳児六人以上を預かる保育所について看護師を配置した場合には一人に限って保育士定数として取り扱うことされておりますが、問題は五人以下については、特に規定がないことであります。
 乳児五人以下の保育所については、たとえ看護師を配置しても、保育士定数に算入することができないため、保育所側の財政的負担が大きいわけであります。
 このことが保育所における看護師配置を遅らせている大きな原因となっているようです。
 また、保育士の定数の一部として看護師を配置したところについても、保育所運営費は看護師ではなく保育士の単価が適用されます。 従って差額については、保育所側の財源負担になっていることが看護師配置を遅らせる原因の一端になっていることがようです。
 そこで私たちは、看護師配置を促進するうえで今最も望まれることは、保育士配置基準を見直して乳児の数にかかわらず、配置したところについては全て定数に取り扱えるようにすることではないか、と判断しこれまでも論議していきました。
 また、現に看護師を配置している保育所の運営費については配置実態を踏まえて保育士単価ではなく看護師単価が適用されることが、今後看護師配置を促進させる要因のひとつになると判断しているところであります。
 そこで以上、私が指摘しました点について、県としてどのように考えられているのか、直ちに国に対して強く要望され、実現を図られるべきでありますが、その見解をお示しください。
 また、国の方で運営費の増額が図られるまでの間、看護師と保育士との単価の格差については県で支援し、保育所側の負担を軽減してやるべき、と考えるところですが、知事の見解と決意のほどをお聞かせ願います。

(子育て支援対策について)

 保育所への看護師配置の促進と県の支援について
 

 保育所が看護師を配置しても、受入乳児が五人以下の場合には、国庫負担金の基礎となる保育士定数に算入できないことなど、国が全国一律に基準を決めているため、地域の保育ニーズに十分に対応できないということが問題です。

 保育所の設置・運営が、地域の実情に応じて実施できるよう、国による義務付け・枠付けを見直し、保育所設備や職員配置の決定権を、財源を含めて、保育の実施主体である市町村に移譲すべきであると考えております。

 県としては、看護師の配置について、こうした権限移譲の実現を求める中で、検討して参りたいと考えております。


 次に中小企業に対する金融等の支援対策について尋ねます。
 昨年九月のリーマンショック以降、金融資本市場の危機とそれによって引き起こされた世界同時不況の中で、大変厳しい経済状況が続いています。
 私共の自民党麻生前政権は、日本経済を再び成長路線に乗せようと、二〇年度一次補正の「緊急総合対策」から二十一年度補正の「経済危機対策」まで四度にわたる経済対策を実施しました。鉱工業生産指数は七ヶ月連続で前月を上回り、輸出は持ち直しの動きが見られるなど景気にわずかに持ち直しの動きがあるのは、これらの対策の効果が現れてきたものと理解してきました。
 ところが八月末の政権交代で生まれた民主党鳩山政権は、二十一年度補正予算の執行を強硬に停止するなど、景気回復の取り組みに水を差すような動きを行っています。
 過日、アメリカが本年最高の株価を記録しました。これまでなら直ちに連動するわが国の株価が、依然八千円台で低迷しているのは、こうした政府の無策が市場に反映しているからに他なりません。また先日、十四年ぶりに円が外国為替市場で八十四円台を記録しました。このところの急激な円急騰は、過日よりの財務大臣の不用意な円高容認発言が原因ともみられ、伝えられている景気のデフレ基調は、まさに「民主デフレ」でもあります。
 新政権の経済政策は、子ども手当や高校の実質無償化、高速道路の無料化など、家計支援の主要政策を通じて、「可処分所得を増やし内需を拡大する。」こととしています。
 しかし、家計への直接給付は貯蓄に回る可能性が極めて高く、どれだけ消費拡大につながるか全く疑問であります。経済全体を上向かせていく明確な成長戦略には全く成り得ていない、と私は断言します。
 これ以外にも、新政権の進めている施策を見ますと、これからの景気の先行きに不安を抱かざるを得ません。
 ムダな事業を削ると言えば、国民には極めて耳障り良く聞こえますが、仕事を減らし売上を減らして企業活動を停滞させているのが、民主党の景気や経済政策であります。
 一例をあげます。現在、中小企業全体の倒産件数が減少している中にあって、建設業は反対に増加しています。これなど、まさに公共工事の削減などが大きな影響を及ぼしているためであります。経済活力を失わせるような始末では、まったく本末転倒であります。
 そこで今、中小企業が直面している最大の経営課題は、仕事の確保ということであります。
 商工会議所や金融機関などが最近公表した県内中小企業の景況調査においても「売上高DI」は実績、見通しとも依然として過去の景気後退期を下回るかつてない低い水準にとどまっていることは、当然、ご承知のことでしょう。
 金融面で下支えしている間に、中小企業の売り上げを回復させない限り、中小企業が生き残っていくことは不可能であります。
 そこで、中小企業の仕事の確保に向け、県としてどのように支援していくのか。具体的には私たちとしては、小さな事業を間断なく各地域で打つこと、いわばコマ切れ的に発注することが地域経済の支えと振興に、最も効果的な方策だと思っていますが、併せて知事の見解をお示し願います。
 さらに、例年のことではありますが、これから資金需要の高まる年末、年度末を控える中で、当面は中小企業を資金面でしっかり支援していくことが必要であることは論を待たないところであります。
 そこで、この点について、県はどのように取り組む考えなのか、方策について知事にお尋ねします。
 ところで中小企業問題に関連しこの際、田川地域における工業用水道事業について一言言及しておきます。
 現在、中小企業基盤整備機構は田川市で田川工業用水道事業を運営していますが、国の行政改革に伴う法改正により、平成二十六年度からは中小機構において工業用水道事業の運営ができなくなります。
 そこで整備機構は、地元、田川市をはじめこの事業主体の譲渡先について、既に検討に入っているようですが、田川市は、財政事情などを理由に、事業の引き受けを断念した、と聞いています。
 また、民間企業に対する譲渡では、受水企業の方が安定供給面から不安を抱き反対の意向を示しているとも聞いています。
 こうしたことから田川地域の受水企業の間では、操業の基本条件である工業用水の確保について、早くも不安の声が出ているところであります。これらの企業は、県や市町村挙げての企業誘致等に応じて立地し、地元での雇用を創出し、地域の経済を支えてきました。
 工業用水の安定供給が維持されなければ、企業の存続自体が危ぶまれ、多くの従業員が職を失い、地域を疲弊させる事態を招きかねません。こうしたなか、過日、地元自治体や受水企業から知事に対し、県で工業用水事業を引き受けて欲しい旨の強い要望があった、と聞いています。
 工業用水を受水している企業が、一日でも早く安心して経営に専念できるよう、田川工水の運営についてこの際、県の明確な方針を明らかにすべきであります。
 そこで知事にお伺いします。まず、田川市の対応を踏まえ、具体的に県はどのように対応していく所存なのか、また仮に県が引き受けるとすれば、その時期はいつ頃か、併せてお答え願います。
 

(中小企業への支援対策について)


 中小企業の受注確保と売り上げ向上について

 まず、官公需の面において、県公共事業の上半期前倒し発注や補正予算による下半期の事業量確保に加え、中小企業者に配慮した分離・分割発注の推進、テレビ・パソコン等の地域中小企業者への優先発注などの受注確保対策に取り組んでおります。
 さらに、地域商品券の発行支援による商店街振興、デザイン刷新による売れる商品づくり、インターネット通販を活用した国内外への販路拡大等、中小企業の売り上げ向上のための総合的な対策を推進しているところであります。







 中小企業に対する金融支援について

 県はこれまでも、制度融資全体で過去最大となる四千七百億円の融資枠を確保するなど、中小企業の金融円滑化を図ってまいりました。
 今後、資金需要が高まる年末、年度末を控えていることから、売り上げ減少中の中小企業を支援する「緊急経済対策資金」の融資枠を当初の二倍となる二千億円に拡大したところです。
 こうしたことに加え、元金返済の最長二年間の猶予とこれに併せた返済期限の延長を認めることにより、資金量確保と返済負担軽減の両面で万全の対策を講じたところであります。








 田川工業用水道事業について

 中小企業基盤整備機構が運営しております田 川工業用水道事業につきましては、承継先が決 まらず、存続が危ぶまれております。
 県といたしましては、地元への工業用水の安 定供給並びに田川地域の将来の発展を図るため、 当事業の継続が必要であると考えております。
 このため、施設の改修の実施及び供給地域の 拡大など、承継の条件について詰めの作業を行 っており、これらの条件整備が終了次第、県と して引き受けることにしております。
 また、施設の譲渡日は、平成二十六年三月三 十一日を予定しております。




 次に農政問題について伺います。
 今年の水稲の作況は、大きな台風の襲来がなかったこともあり、平年並みで無事に米の収穫を終え、先月は昔ながらに県下各地において、五穀豊穣を感謝するいろんな行事が行われたと聞いています。
 農業は、先人たちの優れた技術とたゆみない努力によって、今日の「瑞穂の国」と言われる日本の基盤が形づくられたものであり、営々と今日まで営まれてきました。
 そして、食料供給のみならず、水源の涵養や国土保全など、国民に計り知れない恵みをもたらしてきたことは、私が改めて語るまでもなく、この議会において先人が数限りなく述べられてこられたものと思います。
 我々は、国民の財産ともいえる水田農業を次世代に引き継いでいくことが使命であり、そのためには、地域の水田を将来にわたって任せられる農家を育成するために、水田農業の体質強化を図ることが必要と考えています。
 こうした中、新政権は来年度から麦・大豆・畜産など多くの農畜産物に先駆け、米だけを前倒しして戸別所得補償制度のモデル事業を実施する予定のようです。この補償制度は民主党が八月の総選挙に際して公約していたもののひとつで、我々としては最も厳しく批判してきた政策でありました。
 これは、モデル事業とはいえ、平成二十三年度から本格実施する戸別所得補償制度の骨格をなすものと考えられます。
 新聞情報によると、対象とする農家は、水稲共済に加入しているすべての農家としているようです。水稲共済は、米と麦を合わせた作付面積が、十アール以上の農家であれば加入できます。
 これは、これまでの経営所得安定対策が、四ヘクタール以上の認定農業者か、二十ヘクタール以上の集落営農組織を対象としていたのに比べると大幅な要件の緩和で、対象者数の増加が見込まれます。
 今回、政府の進めようとしている政策は、「零細な農業構造の温存」であり、典型的なバラマキ政策であります。
 今回のモデル事業を見ると、水田農業の将来をどのようにしていこうと考えているのかが分かりません。水田農業の将来展望が全く描かれていないまま現金給付だけをやろうとしているに過ぎない、といえます。
 今、本県農業も日本農業と同じく大きな問題に直面しております。
 その一つは、農業者の高齢化の進行です。
 現在、農業就業人口に占める六十五才以上の割合は半分以上と、十年前と比較して約十五ポイント増加し、また農業就業人口は十年前に比べ約二割減少しております。このまま、さらに高齢化が進めば、だれが将来の水田農業を担っていくのか甚だ心配です。
 また、現場からは、高齢の農家が地域に安心してまかせられる相手がいれば預けたいけど、作ってくれる人がいないと聞き及んでいます。このような中、民主党のいう所得補償政策がどのような意味を持つのでしょうか。
 農業崩壊を一層進めることにはなっても課題の解決にはまったくつながりません。
 この政策を進めることで、国民に安定して食料を供給してきた水田農業本来の役割を果たせなくなることは、まったく間違いない事実だと断言するところであります。
 そこで、知事に伺います。本県の水田農業が持続的に発展していくために、知事自身はどのような展望を持ち、それとどう取り組んでいかれるのでしょうか。見解をお聞かせ願います。
 先の九月議会において、戸別所得補償制度についてわが会派の質問に答えて、知事も「販売する農家全てが対象となることは、これまで取り組んできた集落営農組織の育成に大きな支障が出る懸念がある。」と答えています。
 我々も、水田経営所得安定対策から戸別所得補償制度へと大きく制度が転換するなかで、対象者が拡大することにより、集落営農組織からの離脱者が出るなど、その運営に支障が出る恐れがあると考えています。
 将来の水田農業を支えて行く農業者や組織育てるために、これまで各地域で、地道に取り組んできた動きが止まってしまうのではないかと心配しております。
 地域の水田農業を支えていくためには、担い手の育成がこれからも変わらぬ喫緊の課題と考えます。
 そこで新政権による戸別所得保障政策について、この政策が今後のわが国の農業振興に誤ったものである、という認識を含め、今日もなお我々と同じ考えに立っておられるのかどうか。確認を求めるとともに、水田農業の振興に最も欠かせぬ担い手の育成について、具体的にどのような取組が必要と考えられるのか知事に伺います。
 次に園芸農業の振興について伺います。
 県は、普及指導センターを通じた技術指導とともに、平成四年から四期に渡り「高収益型園芸産地育成事業」を実施し、施設や機械の整備を通じて、産地育成を進めてこられました。この第四期事業が今年度で最終年度を迎えることになります。
 本事業での園芸用の施設整備は、当初こそ個人資産の形成に対する補助ではないか、との外部からの批判も一部にはありました。
 しかし、本事業を継続してきたからこそ、県の農業産出額が減少する中にあって、園芸関係の占める割合は、平成四年当時四十九パーセントであったのが、平成十九年には五十八パーセントと伸びております。
 また、事業に取り組んだ農家からは、「規模拡大する際の後押しとなった」「新規品目を導入し、新たな経営部門として確立するきっかけとなった」など高い評価を聞きます。 このように「高収益型園芸産地育成事業」は、本県農業の振興にも大きく貢献しております。
 しかし、イチゴやナスなどの主要産地においても、生産者の高齢化が進みつつあると聞きます。主要産地の世代別の構成割合は、六十歳以上が約三分の一、五十代が約三分の一、四十代以下は約三分の一以下とのことです。 県農業全体の高齢化の割合よりは低いものの、今のうちに産地の体質強化に向けた対策を講じることが必要です。
 本県園芸農業の生産力を維持・強化し、競争力を確保するため、例えば、新年度からの第五期の高収益事業のなかで、将来に目を向けた施策を取り入れるなど、積極的な展開が重要であると考えます。
 そこで、知事にこの高収益事業の新たな展開について、どのような抱負を抱いておられるのか、その所信のほどを明確にお示し願います。
 

(農政問題について)

 水田農業の持続的発展のための展望と取組について

 高齢化が進み、農作業を担う農業者が減少する中、水田農業の担い手は、永続性のある個別大規模農家と、法人化された組織が中心となる生産構造の実現が必要であると考えております。
  県の農業・農村振興基本計画では、これら担 い手が水田面積の六割の農作業を担うことを目標としており、農地の貸し借りや農作業の受委託の促進により農作業の集約化を進めるととも に、米・麦・大豆(こめ むぎ だいず)に加え、野菜 やいちじくなどを導入した経営の複合化に取り組んで参ります。
    

     













 戸別所得補償制度への認識と担い手育成の具体的取組について

 制度の対象者が、当初の「全ての販売農家」から「水稲共済加入者」に変わっておりますが、依然として集落営農組織の育成に大きな支障が生じる懸念は残っております。
  県としましては、各組織の課題と発展方向を示した指針に基づき、人材育成と経営改善を進め、法人組織の育成に引き続き取り組んで参ります。
さらに、制度の変更に伴い、地域で生じる課 題への適切な対応策を講じるために、農家の意 向を把握することが必要と考えております。
  















 高収益型園芸事業の新たな展開について

 県では、収益性が高い園芸農業への転換を進めるため本事業を実施しており、規模拡大が進むよう認定農業者個人を対象としたほか、燃油高騰に対応し省エネ施設単体でも対象とするなど、その時々の施策目的に合わせ、採択要件の見直しを行って参りました。
 園芸産地においても他品目同様、高齢化の進行や価格の低迷などの課題を抱えており、これらに適切に対応できるよう見直してまいる必要があると考えております。
 

 次に教育問題についてお聞きします。
 新政権が、学力テストの趣旨や導入の経緯、成果を充分検証することなく、抽出調査に早々に切り替えたことは誠に遺憾なことであります。
 そこで、先の決算特別委員会において、我が会派の議員が相次いでこの件についてただしたところですが、その際教育長は、国が抽出調査の意向を示す中、県内全域で悉皆調査を行う方針を示しています。
 改めて悉皆調査の必要性とともにその実施の決意について明確な答弁を求めます。
 元々本県では、国に先立ち、平成十六年から四県で統一学力テストを実施しています。
 そこで、国がやらないのなら本県が全国に呼びかけて、四十七都道府県で一斉に悉皆調査をやる。これだと、事実上の全国一斉学力テストとなるわけであります。是非、本県で音頭をとったらいかがですか。強く勧めるところでありますが、これに対する教育長の見解をお伺いします。
 この学力調査については、抽出調査に変わることによる約二十一億円の予算の削減ばかりが表に出ていますが、実際のところ学力テストに反対をしているのが教職員組合などであることは周知のところであります。
 自分たちの今までの指導の在り方が子ともたちの学力向上に結びついていなかったことが明らかになることを恐れているため、とは多くの人たちが指摘するところです。
 現在、新政権の足下の覚束ない政権運営により、多方面に影響が出ていて、今後の推移が極めて憂慮されるところです。
 特に教育については、「国家百年の大計」といわれるように、確固たる理念の下、たゆみない営みの中で推し進められるべきものです。
 こうした観点も含めて県教委の今後の学力向上の取り組みの考え方について良識ある見解をお伺いします。

 次に教員養成と免許制度の見直しについてお伺いします。
新聞報道などによると、新政権は、平成二十二年度から教員免許制度の抜本的な見直しに着手するとしています。
 現在、教員免許については、大学や短大における一定の教職課程を修了することで取得できるようになっており、多くの人に門戸が広く開かれております。これを、教職大学院での二年間の修了を要件とし、教員養成課程を六年に延長するとともに、教育実習も一年かけて実施するという考えを新政権は打ち出しています。また、導入されたばかりの教員免許更新制度についても、採用後十年程度の教員に対して、一年間程度の教職大学院での研修を受け、専門免許状の取得を義務付けることで、免許更新制度自体は廃止しようとしているようです。
 これに対し早くも大学関係者や学校現場など地方の教育関係者から大変懸念する声が上がっていることからも明らかなように、これまでの我が国の教員養成の在り方を根本から否定するものであり、我々としても極めて問題が大きいと言わざるを得ません。
 一例をあげるならば、現在、本県でも年間一万人近くが教員免許状を取得しているようですが、教職大学院は福岡教育大学が僅かな学生の募集を行っているだけで、受け皿は、全く整備されていないのが実情のようであります。
 加えて言うならば、実際に教員採用試験に合格する平均年齢ですが、今でさえ本県平均で小学校二十五.四歳、中学校二十八.四歳、高等学校二十八.九歳と大学卒業から三年から七年かけて合格している現状のようです。
 でありますから、六年の養成課程になるとますますその弊害は明らかであります。鈴木副大臣は、六年にすればより強固な意志を持った人物が教員を目指すと言っているようですが、見識違いも甚だしく、養成課程が伸びれば伸びるほど、金銭的な負担の増加も伴い、教員を目指そうとしても意欲を削がれるのが目に見えて明らかであります。
 また、教員免許更新制度の廃止にしてもその成果を十分検証しないまま、教職員組合等の要求を受け入れ、逆に学校現場で中心的な活躍を担わなければならない中堅教員の時期に、一年間も学校現場を離れ、教職大学院で研修を行うことの効果には疑問を抱かざるを得ません。
 さらに言えば、「日教組の政策集」の中には、「教員養成カリキュラムに人権・平和・環境などを必修教科として位置付けること」という記載があり、つまり新政権の構想は、いわゆる組合的発想を持った採用候補者を育てることに他ならないのではと強く危惧するところであります。
 そこで県教委として新政権の教育養成構想についてどう評価するのか、教員養成の正しいあり方とともに、教育長の見解を求めます。
 また、教員採用試験との関係、いわゆる指導力不足教員の対応にどのような影響が予想されるのか、さらに教員免許更新制の廃止による影響も併せて教育長の考えをお伺いします。

 最後に新規高校卒業者等の就職状況についてお尋ねします。先月初めに来春卒業予定の高校生の就職状況が発表され、大変深刻な状況が明らかになっています。
 福岡県では、今年の十月末時点で、企業の求人数は、九,三九一人と前年同期比で四〇.七%マイナス、就職内定率も五一.三%と同じく一三.〇%マイナスという非常に厳しい状況であります。今後の経済情勢によっては、就職内定者の内定取り消しも出てこないとも限らないところです。
 学校現場の徹底したてこ入れを期待するとともに、行政当局も今以上に徹底した支援策を行わなければならないと考えます。
 県教委及び私学振興局は、どのような就職対策を行っているのか、現状を伺うとともに、こうした厳しい雇用状況であればさらに取り組みを強化すべきと考えますが、知事及び教育長の見解をお伺いします。
また同じように大学卒業者の就職状況についても、県下の状況と、どのような対策が打たれているのか知事の見解を求めます。

   教 育 長 答 弁

(教育問題について)


 悉皆による学力調査の必要性と実施の決意につ
いて

 全国学力テストの意義は、実際に現場で学力向上の任に当たる各学校が、これまでの教育の成果を個別に検証し、授業改善に取り組む努力を促すことにあります。そのためには、個々の学校等の状況を把握できる悉皆での定点観測が不可欠であり、これにより各学校が教育の成果に責任を持つ体制を構築することが重要です。
 これまで三回の悉皆調査で、こうした積極的な学校の姿勢が生まれてきており、今後とも各市町村に働きかけながら、悉皆による学力調査が継続できるよう取り組んで参ります。

 


 悉皆調査実施の呼びかけについて

 現在、国では全国学力・学習状況調査の具体的な実施方法・内容について検討が進められており、今後、こうした国の動向を注視して参りますが、現段階で、本県と同様悉皆による調査の必要性を表明している県等が多くあることから、全国都道府県教育長協議会の場等を利用して、そうした県等と連絡を取り合って参りたいと考えております。

 
 今後の学力向上の取組について

 次代を担う子どもの教育は、「国家百年の計」に基づいて、次代の国民に責任の持てる安定的で持続可能なものでなければなりません。
 そのため、学力向上については、生涯学び続けることのできる基礎基本の徹底や、学ぶ意欲を引き出す魅力ある授業の推進に努めるとともに、こうした取組の成果を各学校が常に検証し、不断の改善につなげていく活力ある学校教育活動の実践が不可欠であると考えております。今後とも、こうした内容を骨子とした学力向上新戦略の効果的な推進に努力して参ります。



 教員養成の在り方について

 教員養成につきましては、子どもに対する教育的愛情、教育公務員としての良識と使命感を持った人材を確保することが肝要であり、こうした基本的資質があれば、高度の学歴がなくても、実際の職場経験を真剣に積み重ねることで、立派な教員に成長すると考えております。
 そこで、教員養成課程の高学歴化については、専門性の向上などの効果は期待できますが、教職大学院の整備や志望者の経済的負担、教育実習の受け入れ体制などの様々な問題があると考えております。



 教員採用試験との関係その他の影響について

 本県の場合、今後大量退職・大量採用時代を迎えることとなり、教員養成の高学歴化が志願者の一層の減少を招き、優秀な人材確保に困難を来すと危惧しているところです。
 また、免許更新制については、時代の進展にあわせ知識技術の刷新が必要であるという意識がようやく定着しつつある中で、これが廃止されることは遺憾なことであると考えています。
 したがって、今後は教職員の資質能力の向上方策について、より一層の充実改善を図るとともに、指導力不足教員についても、その認定の厳格化や、立ち直り支援の充実強化等に努める必要があると考えております。




 私立高等学校新規卒業者の就職対策について

 今年度は、私立高校へ就職指導員を配置し、新規の求人開拓や就職希望生徒の指導などに当たっているところです。
また、県内経済団体を通じた企業への求人要請や合同面談会を開催するなどの対策を講じているところです。
 今後とも、私立高校に対し、あらゆる機会を捉え、就職希望生徒の就職に万全を期すよう要請するとともに、企業に対しても、新規高卒者の採用枠の拡大を要請してまいります。




 県立高等学校新規卒業者の就職対策について

 これまで、学校を挙げての求人開拓や経済団体への求人要請などの従来の取組のより一層の強化に加え、新たに配置した就職指導員による新規求人開拓や就職指導の充実に取り組んで参りました。また、先般、福岡労働局と連携し未内定生徒を対象とした企業との合同面談会を開催するなど、様々な対策を講じているところです。
 今後は、関係機関との連携を一層強化し、未内定生徒一人一人の状況を踏まえた求人開拓を行うなど、内定率の向上に向けて、全力で取り組んで参りたいと考えております。


 
    知 事 答 弁

(教育問題について)
 新規大学卒業者の就職状況と対策について


 十月末では前年と比べ求人数が大幅に減少し、就職内定率は四十二・二%と昨年を九・八ポイント下回る状況です。
  そのため、若者しごとサポートセンターにおいて、就職先の視野を広げるための個別相談、大学に出向いての就職活動セミナー、企業との出会いの場となる合同会社説明会を開催しています。
  今後さらに、合同会社説明会を開催するとともに、企業に対しては、経済団体を通じて、新規採用枠の拡大を要請してまいります。

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