自民党県議団質問内容
年の瀬の十二月県議会を迎え、忙しさを増して参りました。まして、来春四月の統一地方選挙も余すところ四ヶ月後に迫り、あわただしさの感を一層強くするところであります。
このことは我々と任期をともにする知事におかれましても同じ状況ではないか、と感じているところです。
昨年二月、全国知事会長に就任以来、今日まで地方分権確立のため全国自治体の先頭に立ち、奮闘されてきました。「闘う知事会」を踏襲されながらも、これを更に発展させ「行動し、成果を勝ち取る知事会」の会長にふさわしい活躍だとみなしています。
今、わが国の地方自治制度は、道州制に向けて大きく舵を切り始めているようですが、明治以来の大改革だけに今後の課題が山積しているといえます。
こうした時、九州道の実現を期す九州各県の政治、経済をはじめ各分野の関係者からは、全国知事会長として、また、九州各県のリーダーとして麻生知事の手腕と力量に大きな期待が寄せられていると聞いているところであります。
また、第三期麻生県政の四年間、そして、平成七年以来の過去三期十二年間にわたって手がけられた福岡県政を政策面から検証してみましても、高い評価が与えられる、と判断しています。
とりわけ、北部九州自動車百万台生産拠点推進構想の実現とこれを上回る新たな構想の策定やギガビットハイウェイ構想などIT戦略の展開や自動車産業の振興は、他都道府県の追随を許さないものだとみなしています。
また、高収益型園芸産地育成事業、「農の恵み」事業の展開等、農政分野においても本県独自の政策を展開し、実質的な環境支払いの実施は、地方農業行政における先駆的な試みでありました。
また、今日なお高く評価され、特筆されるべきと考えていますのは、平成八年暮れに発覚した本県における旅費、食料費の不正支出に対する厳正厳格なる対応でありました。
すなわち、知事自身の長期にわたる報酬減額を含め、六十一億円という巨額の返還により、この問題にわが福岡県が現在、完全に終止符を打っているなかで、今日もなお他県の一部が類似の問題で世論の厳しい糾弾にさらされていることに思いをはせた時、まさに適切なる措置だったと考えています。
そこで、私たちのこうした政策面での評価をまず明らかにして、次のことについて率直に伺います。
今日、知事ご自身、四選出馬について強い意志を持っているやに仄聞(そくぶん)いたしております。
また、県社会福祉団体の総会や県下町村会長の会合において、立候補決意を促す要請もあったと聞いています。時期も迫って参りました、この際、この県議会を通じて県民にその抱負を明らかにされんことを冒頭まず知事の政治姿勢としてただしておきます。
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麻生渡知事 答弁要旨
(知事の政治姿勢について)
知事選挙に向けた抱負について
私は、知事に就任して以来、「公正と奉仕」を基本姿勢とし、県議会をはじめ県民の皆様の深い御理解と御協力を賜りながら、県政運営に全力をあげて参りました。
自由民主党県議団の皆様から、これまでの県政運営の評価を高く位置づけていただいたことは、誠に有り難く、また嬉しいことであります。
来春の知事選挙への対応につきましては、多くの県民の皆様から要請をいただいております。いろいろな皆様の御意見を踏まえ、真摯かつ誠 意を持って十分に検討し、できる限り早い時期に私の決意を明らかにいたしたいと考えております。
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最初に、行財政改革についてであります。
行財政改革の推進については、我が会派はこれまで繰り返しその重要性を指摘し、そのこともあって本県における行財政改革の取組は麻生知事就任以前と比較すると大幅に進んだ面もあるかと認識しております。
引き続き行財政改革の取組の灯を絶やさないためにも、指摘すべき点については厳しく指摘してまいりたいと思います。
まず、新しい行革大綱の策定状況についてであります。この件については二月、六月、九月の代表質問でも取り上げ、その取組を加速させるよう求めたところであります。
六月議会の我が会派の代表質問に対し、知事は、行政改革審議会を近いうちに設置して取組を進める旨の答弁をされておりますが、新しい行政改革審議会はいつ設置され、これまで何回審議を重ねてこられているのでしょうか。
来年度から新たな行革大綱をスタートされるのですから、十二月のこの時期には相当の議論の積み重ねがなされていると思いますが、まず明確なご答弁をお願いします。
次に行革大綱と密接に関連する新しい財政改革プランについてお尋ねします。
現在の財政構造改革プランは、本年度までとなっているところですが、先の二月議会でも、知事自らがお認めになったように、現在の計画の目標を達成することは非常に困難になっているところであります。
新たな計画では、当然これまでの財政構造改革プランの反省を踏まえたものとしなければならないと考えるわけでありますが、こうしたことを踏まえ、新たな財政改革プランでは、どのような目標を設定しようとされているのか。
これまでは、安定的な財政運営を行うため、三基金からの取り崩しを行わないこと、特例的県債の発行に依存しないこと、の二つの目標を掲げていたところですが、これらの目標は維持するのでしょうか。
目先を変えて新たな目標を設定することも結構ですが、それでは、これまでの計画は何だったのかと言いたくなるところですが、知事のお考えはいかがでしょうか。
安定的な財政運営のためには、地方交付税の確保が不可欠であります。このため、麻生知事は全国知事会長として、全地方自治体に必要な地方交付税の総額確保に努力されていると伺っております。一方で、本県としての交付税の確保に向けた努力はどうなっているのでしょうか。
この点について、まず、いわゆる新型交付税についてお尋ねします。
複雑な交付税算定の仕組みについて、人口と面積で算定する方式を大幅に導入するというこの改革について、都道府県での影響額は、最大でも十億円程度との報道も目にしているところですが、本県への影響額をどの程度と考えておられるのか、まず確認します。
次に、先の安倍総理の所信表明演説において触れられた、「頑張る地方応援プログラム」についてお伺いします。
このプログラムは、地場産品のブランド化や少子化対策、企業誘致など、頑張る地方自治体に対し、地方交付税で支援をするものと聞いております。
すでに、総務省では地方からの提案募集を行い、ヒアリングなども行われていると聞いておりますが、本県ならびに県内の市町村からは、どのような提案を行っているのでしょうか。県としては当然、速やかな対応をされたと思いますが、現在までの経過も含め本県の実情を施策に反映すべく、具体的にどのような取組をされたのかお答えください。
また、これに関連して、各自治体の行政改革の取組状況を交付税の算定に反映する仕組みがすでに導入されていると聞いております。行革努力の少ない自治体の交付税を減額して、行革に頑張っている自治体に配分する仕組みであるとのことです。これまで、麻生知事はさまざまな行革に取り組まれたと自負しておられますが、本県における本年度の交付税算定上のプラス効果はどの程度のものだったのかお答えください。
次に、我が会派がたびたび指摘してきました職員互助会の問題についてお尋ねします。
十八年度当初予算において、職員互助会への公費支出をゼロとしている都道府県は、すでに十団体となっていると聞いておりますが、本県では依然として巨額の公費が支出されております。
行革の必要性が叫ばれて久しい中、公費負担をゼロとするのはすでに世の趨勢と考えますが、公費負担ゼロに向けた知事の強い姿勢を伺います。
なお、この際、本年度の税収見込みについて、お聞きします。
現在の景気回復基調から判断すると、当初予算額をかなり上回る税収を確保できるのではないかと考えますが、現時点でどの程度の増収を見込んでいるのか、総額とともに法人事業税における好調な業種も併せてお示し願います。 |
(行財政改革方針について)
行政改革審議会について
行政改革については、庁内で、見直すべき事務事業や組織機構のあり方など、今後の課題について検討を行ってきており、十一月には、新たな行政改革審議会の委員を委嘱し、初回の審議会を開催したところです。
今後、審議会を毎月開催し、庁内で検討した課題などを中心に十分な審議をいただいた上で、来年度の早い時期に答申をいただきたいと考えております。
新たな財政計画の目標について
本県では、これまで五ヵ年の改革期間中、歳出削減努力を積み重ね、財政構造改革プランの計画額を大きく上回る結果を出しました。しかし、歳入面では、地方交付税等が大幅に削減されるなど、想定外の要因によって、目標の達成が困難となったところであります。
この経験に鑑み、十九年度以降の新たな財政計画の目標の策定にあたっては、今後の地方交付税改革の状況も十分勘案し、中長期的に持続可能な財政構造を構築するという観点から検討してまいりたいと考えております。
新型交付税導入の影響について
新型交付税については、国において制度設計中であり、現段階で、県や市町村への影響額を示すことは困難でありますが、今回の見直しは、算定の簡素化を図るものであり、現実の財政運営に支障が生じないよう変動額を最小限にとどめることになっております。
頑張る地方応援プログラムに係る県及び市町村の対応について
本年十月末、総務省から、この制度の企画立案の参考とするため、地方において頑張っている独自の取組等について情報提供の依頼がありました。
このため、子育て支援、青少年アンビシャス運動、自動車生産拠点化など、県では九十件の提案を行ったところです。また、市町村では、少子化対策をはじめ七十五件の提案を行っています。
併せて、制度設計においては地域の実情を踏まえ、自主性を尊重する形で検討されるよう提案したところです。
交付税算定における行政改革努力の反映について
平成十七年度より、歳出削減や徴税強化の取り組みを反映する行革インセンティブ算定が導入されており、今年度の本県の基準財政需要額は、約一億円増加したところであります。
職員互助会への公費助成について
福利厚生の効果的な実施を図る観点から、互助会事業へ公費助成を行っておりますが、昨今の社会的諸条件の変化を踏まえ、これまで補助対象事業の見直しを行い、公費負担を平成十六年度二億五千七百万円から平成十八年度一億百万円へと、大幅な縮減を行ってまいりました。
現在、来年度に向けて、互助会事業に対する公費助成について、さらなる削減を検討しているところであります。
本年度の税収見込みについて
本年度の税収につきましては、景気の回復を 反映して、鉄鋼業・自動車関連などの製造業や 銀行業などを中心に主力の法人事業税が好調で あり、現在の実績状況から見ると、全体で当初 予算を約百五十億円程度上回るものと見込んで おります。
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次に、本県の交通体系整備についてお聞きします。
本県を取り巻く交通体系は、陸、海、空ともに、この十年間で大きく変化しています。例えば、「新北九州空港」の開港や「福岡市営地下鉄七隈線」の開業、九州新幹線鹿児島ルートの「博多―船小屋」間の着工等大いに前進したもの、また、福岡市中心部の渋滞や福岡空港、博多港や北九州港の連携による中枢港湾等、今後解決すべき課題も多々あると考えております。
個別の事業ごとに見て参りますと、まず、九州新幹線鹿児島ルートでは、策定時において未着工区間であった「博多―船小屋」間も工事着工し、平成二十二年度末の完成に向かって大きく前進しております。
また、これと合わせJR博多駅の改修工事も着工され、順調に工事は進展しており、今後の九州全域の浮揚に大きな効果を発揮すると期待されます。
その他の軌道系については、民間鉄道、第三セクター鉄道、JRとも乗客数が当時から減少の傾向となっています。福岡市近郊においては、西日本鉄道宮地岳線の一部区間についての廃止の届出がなされたところであります。
また、本年の梅雨豪雨により、旧国鉄からの転換路線であります甘木鉄道が被災し、現在、復旧の途上にありますが、県内の他の3セク鉄道も決して楽観できる状況にはないと思っております。このことなどから、西鉄小郡駅と甘木鉄道小郡駅を一体化すればより多くの住民に乗ってもらえるのではないかと思います。
また、JR九州についても、基幹的路線においては堅調であると聞いておりますが、地方路線においては、少子高齢化やモータリゼーション進展の影響を受け、厳しい経営状況が続いているようです。このため、先の九月議会において私たちは、JR九州に対する旧国鉄からの承継特例、三島特例の税制措置について延長を求める意見書を県議会で採択し、国に提出したところであります。
一方、福岡市営地下鉄については、平成十七年に地下鉄三号七隈線が開業いたしましたが、乗降客が思ったほど伸びず、苦戦していると聞いております。このことについては、例えば、より効果的な延伸を具体化させればもっと利便性が向上するのではないか、また、地下鉄二号線についても、福岡空港駅から福北ゆたか線への接続が出来ればより多くの方々にとって便利になるのではないか、と接続を望む声が、かつてより根強くあります。
次に道路網の整備です。本年度から東九州自動車道の建設促進が大きく動き出したことは喜ばしいことであり、京築地方の今後の活性化に大きく資すると思われます。
また、県南においては、有明海沿岸道路が完成に向かって大きく歩を進めているところであります。
しかしながら、県都である福岡市内の状況を見ますと、市内は慢性的な交通渋滞にあり、特に都市高速で市内中心部へ入る際の渋滞は極めて懸念すべき状況で、その解決の一つの方策として福岡都市高速一号線と五号線の早期連結や福岡東環状道路の早期完成が期待されております。
また、国土交通省においては、かねてから社会実験中でありました、サービスエリアやパーキングエリアを活用したスマートインターチェンジについて、本年七月に「スマートインターチェンジ制度実施要綱」を定め、本県においても十月一日に須恵パーキングではスマートインターチェンジが本格運用されたところであります。
九州でただ一箇所設置された須恵スマートインターチェンジは利用者が全国有数の多さで、少ない投資で大きな効果が上がっていると聞いております。県内では、まだこの一箇所しか設置がなされていないようです。現在、九州自動車道、鳥栖―久留米間にはインターが存在しないため、インター建設を望む声が多く、当面基山パーキングエリアにこのスマートインター設置を望む声が澎湃(ほうはい)として沸き起こっています。
次に空港問題についてであります。
本年三月に念願の新北九州空港が開港し、現在は、貨物便専用のギャラクシーエアラインが乗り入れるなど今後の需要増加に大きな期待を持てる状況と聞いておりますが、利用者増のためには新空港への交通ネットワークが必要ではないかと思われます。
例えば現在福岡市と行橋市を結ぶ国道二〇一号線の整備が進められておりますが、筑豊地域、京築地域の浮揚を図るためにも、これらの道路整備を活用した新たな高速交通機関の整備が必要と考えられます。
いずれにいたしましても、近年の本県の交通体系については、現行ビジョン策定時には想定できなかった変化や新たな事態が出現しています。従って、現実を見据え将来に向かった大胆な交通体系の整備促進が必要と考えております。
ところで、本県の広域的交通体系の整備のあり方を示すものとして「ふくおか新世紀交通ビジョン」が策定されていますが、既に策定から八年を経過し、早急なるビジョンの改定が求められているのではないでしょうか。 知事の見解をお聞かせ下さい。
次に、課題とその解決について、いろいろと提言いたしましたが、私たちがとりわけ重要に感じますのは、少ない投資で大きな効果を挙げ得ると考えているスマートインターについて九州自動車道、筑紫野―久留米間のパーキングエリアに設置が実現するよう県として積極的に取り組んで頂きたい、ということであります。
また、福岡市と行橋市を結ぶ国道二〇一号については、旧産炭地筑豊振興の観点から、これを活用した新たな高速交通機関の導入と整備を新ビジョン策定のなかで本格的に検討して頂きたい。とこのように考えるわけですが、以上二点について、知事の踏み込んだ決意のほどをお示し願います。
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(県下の交通網整備について)
ふくおか新世紀交通ビジョンの改定について
このビジョンは、ふくおか新世紀計画の交通部門を支える個別計画として、県内の交通体系整備の方向性を示すもので、平成二十二年度を目標年次とするものです。
策定以来八年が経過し、新北九州空港の開港や九州新幹線鹿児島ルートの全線着工、さらには東九州自動車道の工事着手など、交通を取り巻く状況は大きく変化しております。
このため、来年度に現行ビジョンの成果を検証し、その上に立って新しい交通ビジョンについて検討して参りたいと考えております。
筑紫野・鳥栖間のスマートインターチェンジの設置について
スマートインターチェンジは、従来に比べ少ない費用で、サービスエリアやパーキングエリアに設置する、ETC専用のインターチェンジであります。
県としましては、本年七月の制度化を受け、筑紫野・鳥栖間も含め、費用対効果など総合的な見地から設置の可能性について検討して参りたいと考えております。
筑豊地域振興のための総合的な交通体系について
筑豊地域の振興にあたっては、産業基盤の整備や生活利便性の向上などが重要であることから、道路整備を始めとする交通体系の充実に努めて参りました。
今後は、新ビジョン策定のなかで、既存の交通や高速交通など、筑豊地域の総合的な交通体系について研究を進めて参ります。
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次に障害者福祉についてお聞きします。
障害者が地域で安心して暮らせる社会の実現を目指して「障害者自立支援法」が本年四月施行されました。この法律では身体、知的、精神の障害種別による縦割りの問題や地域間によるサービス提供の不均衡などいわゆる横割りの諸課題を解決するために、サービス提供の仕組みとしての三障害の統一化やサービス提供主体を市町村に一元化するなどにより、障害者福祉の充実や、一層の推進を図る、とされています。
しかしながら、法施行後今日まで障害者や関係者の声を聞いてみますと、利用者負担の著しい増加と負担感の圧迫が強く指摘されています。
また障害程度区分の認定に係る障害特性の反映が十分でないため、障害の実態と程度認定にギャップがありすぎるのではないかなどの問題点が訴えられています。
もっとも、国においても、既にこれらの問題点を十分に把握してその対応策を検討し、与党合意により是正措置のための補正予算も組まれるとも聞いているところではありますが、障害者福祉施策が大きな変革期を迎えている時期だけに現状と今後が大変気がかりで懸念されるところであります。
そこで、身体、知的、精神の三障害を統一し、同じサービスを提供するために創設された今回の障害者自立支援法が、その目的を達成するために、また、他の二障害に比べて遅れている精神障害者の在宅福祉サービス等の向上のため、何点か伺います。
まず今回新たに導入された障害者の心身の状況を判定する障害程度区分の認定結果を見ると、精神障害者と知的障害者の一次判定の二次判定における区分変更率が高くなっており、福岡県の調査では、精神障害者の区分変更率は四一.六%と特に高くなっております。
障害程度区分認定における調査項目を、精神障害者の特性に応じた内容に見直する必要があるのではないでしょうか。見解を示して下さい。
次に、精神障害者の社会復帰についてであります。
現在、県内の精神科病院には二万四百四十七人の方が入院され、一万三千九百三十二人の方が一年以上の長期入院患者のようだと聞いております。
これに対し国は平成二十四年度までに地域の「受け入れ条件が整えば退院可能な精神障害者」約七万人の入院の解消を目指すとしていると聞いております。
この国の方針を達成するためには、退院可能な患者の退院促進を図り、精神障害者が自立して生活するため、地域生活移行や就労支援といった新たな課題に対応したサービス提供、要するに地域のあたたかい受け皿を早急に整える必要があることは言うまでもありません。
しかしながら、私たちがみるところ、地域での受け皿となる福祉基盤が不足しているため精神科病院で受けざるを得ない状況があり、それが長期入院患者数となっているのが現実の姿ではないでしょうか。
精神障害者社会復帰施設の入所定員はグループホームを含めても、六百五十二人でです。長期入院患者が時間をかけて地域生活に移行する、また、日中活動が困難となった障害者を受け入れる安心、安全な生活の場の確保など、その生活支援の仕組みを整備することによって、精神障害者とその家族が地域生活に移行することへの不安を払拭することが必要であります。
明らかに不足する精神障害者の社会復帰施設等の基盤整備について、一体、どのように取り組まれようとするのか方針をお答え下さい。
次に、精神障害者が地域で生活しながら就労や訓練を受けるためには、バスや電車など公共交通機関の移動手段を特に必要としています。それだけにこうした交通手段利用についての経済的な支援が特に重要なことと考えられます。
このような中、本年十月からは精神障害者の手帳にも写真が貼付されるようになり、本人確認も確実・容易に行われるようになったと聞き及んでいるところであります。
本人確認の道が拓けたことにより、運賃割引制度導入の障害はめっきり減ったと判断されます。
一万三千三百八十九人の精神障害者保健福祉手帳所持者の運賃割引について、身体障害者手帳や療育手帳の所持者と同様に手帳を提示することにより運賃が半額となるよう、本人確認を理由に、今日なお割引を実施させていないJRや西鉄などの公共交通機関にさらに強力に働きかけていくべき、と考えますので実現に向け、知事の力強い考えをお聞かせ下さい。
ところで、平成十年度から福岡県精神科救急医療システムを立ち上げ、平日夜間と休日に福岡県メディカルセンターの精神科救急情報センターに窓口の相談職員をおき、緊急に入院や医療が必要な方の相談に応じているようです。
しかし、運用開始以来八年が経過し、相談件数は年々増加し、年間約二千五百件となっています。このため一件当たりの相談時間もやむを得ず平均三十分程度にとどめるなど、適確な救急医療に十分に対応しきれない等の問題が発生しているようであります。
精神科救急医療システムの核ともなる相談窓口のことです。ぜひ早急に相談員の増員を図るべきだと考えます。知事のお考えをお聞かせ下さい。
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(障害者福祉について)
障害程度区分の認定について
一次判定後に市町村審査会で変更になる割合は、三障害の中で精神障害者が最も大きくなっております。
このため、現在の調査項目では、障害特性が反映されにくいと認識しており、調査項目など判定基準の見直しについて、引き続き国に対し提言して参ります。
精神障害者の社会復帰施設の整備について
これまで精神障害者の自立や社会参加を促進する観点から、施設の整備を図ってきたところであります。
今般、国において、平成二十四年度までに約七万人の退院可能な精神障害者の入院解消を目指すことが示されております。
県においては、今後、実態の把握に努めるとともに、関係機関と十分協議をして、必要な体制の整備について検討して参ります。
精神障害者に対する運賃割引の適用について
精神障害者についても、他の障害者と同様、運賃割引の対象にするよう、これまでもJR等に要望してきたところであります。
本年十月から、精神障害者保健福祉手帳にも写真を貼るようになり、本人確認が容易になったことから、精神障害者に対する運賃割引の適用について、さらに強くJR等に働きかけて参ります。
精神科救急医療システムの充実について
県においては、休日や夜間における精神科救急に迅速に対応するため、平成十年度から、精神科救急情報センターを設置し、緊急入院が必要な方の受け入れ病院の紹介や調整等を行っているところであります。
しかしながら、近年、情報センターの相談件数が増加するとともに、特定の時間帯に相談が集中していることから、今後、情報センターの相談体制の充実を図る必要があると考えております。
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次に農政問題についてただします。
先般、本年産の米の作況が公表され、本県は「七十六」という戦後三番目の不作でありました。本県における農産物の年間産出額は、二千二百億円から二千三百億円の間で推移していますが、米は平年作だと五百億円程度であります。七十六という作況は、平年の四分の三しか採れていないということですので、今年の産出額は米だけで百億円以上減少したことになります。
米の価格が年々下がり稲作農家の経営は誠に厳しいものがありますが、そういった中で収量も大幅に減少することは、まさに追い打ちをかけられたことになり、米で生計を立てている農家はたまったものではありません。
台風という自然災害が原因であるとしても、何とかならないのかと思うのは農家の心情であります。
減収の大きい農家に対する救済策はどうなっているのか積極的に支援の方策を講ずべきべきだと考えますので知事にその考えをお伺いします。
また、今年の作況は地域によって相当な差があ
り、特に私の地元、県南地域の被害が大きかったようです。南筑後地域では、未曾有の台風災害で戦後最悪となった平成三年のときと同じ「五十六」となっています。減収の大きな要因は九月の台風十三号で稲の倒伏が広範囲に発生し、その後の生育不良をもたらしたとされています。
通常、台風通過に伴い大きな被害が発生する家屋や河川の被害も、この台風十三号では少なく、大きな台風との印象が少なかっただけに意外な気がします。改めて自然災害と向き合っていかなければならない農業の厳しさ、難しさを痛感する次第です。
この台風十三号では、強風で吹き上げられた海水が水田に降り注ぐ、いわゆる「塩害」が有明海沿岸地域を中心にかつ海岸から遠く離れたいわば内陸地域にまで発生したことが被害を多くしていると思います。
もちろん堤防を高くすればある程度防げるかもしれませんが、現実的な対処方法ではありません。
そこで塩分に強い稲の生物学的品種改良等も含めた稲塩害対策、並びに作柄が安定する対策について県はどのように講じていくのかお伺いします。
本県は、農業産出額では野菜が米を抜き、トップの座を占めているものの、米を基本として農業を営んでいる農家の数は圧倒的に多いようです。
収益性だけを考えて経営判断をするならば、野菜や花などの園芸が有利であるとしても、地域を守る貢献度という観点では、米に勝るものはありません。本県の米つくりが今後とも維持されていくことは、農業の持つ多面的な機能・効用を守っていくことにも通じると思います。
県民が一年間に消費する米の量は、三十万トンと言われていますが、いざというときに、せめて米だけでも県民全てに供給できる力を持ち続けることが農政の重要な役割だと思います。
近年、耕作放棄地が増える中で、はたして必要な農地や農家が確保できているのか、心配になってしまいます。
県は、「食育」の取り組みの中で地産地消を進めていますが、仮に米の生産調整がなかったとして、県民が一年間に消費する三十万トンを供給できる力を本県は持っているのでしょうか。知事にお伺いします。
ところで、最近、景気の回復が確かなものとなったと言われていますが、経済状況が良くなれば当然のごとく新たな開発が予想されるところであります。
七万ヘクタールといわれる県内の水田も、十年前には七万六千ヘクタールが存在していました。景気低迷期にあったなかでも僅かここ十年で六千ヘクタールの水田が消滅したことになります。
交通アクセスがよく開発費用も比較的少ない平坦地で開発が進むことは、我々としては是認しがたいことであります。とはいえ経済合理主義のはびこる今日このままでは、最後に残るのは、開発の波の弱い中山間地域だけということにならないでしょうか。本当に心配されるところであります。
しかしその中山間地域においても、農家の高齢化は平坦地域に比べ進んでいます。
米づくりが続いているからこそ人が住み、集落が維持されていることは間違いありません。効率的とは言えない農地が多い中で、精一杯おいしい米づくりを続けている農家の営みが今後とも続けられるためには、生産性だけで判断できる問題ではないと思います。
中山間地域における農業の位置付けと振興方策について、知事の考えをお伺いします。
次に、いわゆる鳥インフルエンザ対策についてであります。
先月二十三日に韓国全羅北道益山(イクサン)市の養鶏場で鳥インフルエンザの発生が確認されました。全国の国際空港や港湾などで韓国からの入国者の靴底の消毒などの防疫処置や韓国からの家きん、家きん肉等の輸入を一時停止する措置等がとられたと聞いていますが、私たちとしては、一昨年に我が国では七十九年ぶりに起きた国内での鳥インフルエンザの不安がよみがえって参ります。そこで知事にお尋ねします。発生予防のためにどのような対策をとっておられるのかお聞かせください。
また、万が一県内で鳥インフルエンザが発生した場合、県内の養鶏農家は壊滅的な打撃を受けることが予想されます。危機管理体制は万全なのか、その対応状況をお聞かせ下さい。
また、この際、狂犬病予防対策について、ただしておきます。先にフィリピンからの帰国者に狂犬病の発症が確認されています。
外国での感染とはいえ、我が国での狂犬病の発見は三十六年ぶりだけに深刻な不安を県民に与えているところであります。海外からの感染動物の侵入防止を図るための輸入検疫の強化を図るとともに国内飼育動物の発生予防対策を徹底することにより、狂犬病侵入時のまん延防止に備えることが最も緊要と考えていますが、現状は飼い犬が順次増加しているなか、登録は五割、予防注射の実施は実に四割以下にとどまっているなど、極めて心配な状況にあるといえます。
県としてどのような対応、対策を考えておられるのか、方針をお示し下さい。
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(農政問題について)
減収の大きい農家に対する救済策について
水稲の農業共済制度において、収穫量の減少に加えて、品質低下分を加味する損害評価の特例措置を国に対し要望してきており、先般、その適用が承認されたところであります。
現在、県では、農業共済組合に対し、農家へ共済金を年内に支払うよう指導しているところであります。
塩害対策も含めた米の作柄安定対策について
塩害に強い品種の研究開発は、長い年月と労力・費用を必要とすることから、大学で研究されてはおりますが、都道府県段階では取り組んでいる例はありません。
県としましては、水管理などの技術的対応の徹底と併せて、ヒノヒカリとつくしろまんを組み合わせるなど品種構成に幅を持たせ、自然災害に対する被害分散・回避に努めて参る考えです。
本県の持つ米の生産能力について
県民一人当たりが一年間に六十キログラムを消費するとして、三十万トンの生産に必要な水田は六万ヘクタールであり、園芸用ハウスや耕作放棄地などの存在を考慮しても面的には確保されております。
また、本県生産実績の二十万トンの九割は販売農家が担っていることから、生産力は十分維持されていると考えております。
中山間地域における農業の位置づけと振興方策について
中山間地域では、おいしい米をはじめ品質の良い農産物が生産されており、農業は重要な産業として地域経済を支えるだけでなく、景観や県土保全に重要な役割を果たしております。
県では、中山間地域の米づくりを拡大するため、米の生産目標数量を平坦地域と調整する取り組みを行っております。
今後とも中山間地域の立地条件を活かし、夏場の冷涼な気候を活用した野菜や昼と夜の温度差を利用した花など、様々な農業経営が展開されますよう、支援して参る考えです。
韓国の鳥インフルエンザ発生に伴う本県の予防対策について
野鳥の侵入防止や鶏舎内外の清掃・消毒の実施のほか、異常な鶏の早期発見と早期通報について周知徹底を図るとともに、市町村の広報誌等を活用して、愛玩用の鶏の飼育者に対しても同様の注意喚起を行っております。
また、本病の早期発見を目的に、県下五か所の家畜保健衛生所で定期的にウイルス検査や抗体検査を実施しています。
鳥インフルエンザ発生時の危機管理体制とその対応状況について
関係部署からなる対策連絡会議において、初動防疫などに関する業務分担を決めており、発生時には直ちに対策本部を設置し、まん延防止のほか、県民への速やかな情報提供に努めることとしています。
また、万一の際に迅速・円滑な防疫措置を行うため、各家畜保健衛生所ごとに、関係機関を交え、机上防疫演習を開催しています。
狂犬病予防対策について
狂犬病予防の最も重要な対策は、犬の登録と予防注射であります。
しかし、約半世紀にわたって国内で狂犬病の発生がないことや室内犬の増加等により、犬の登録率と予防注射の接種率は低調な状況にあると推定されています。
今回の外国での感染事例を踏まえ、今後とも、狂犬病予防対策の重要性について、市町村、獣医師会等と連携しながら、広報誌等による啓発の一層の充実に努めてまいります。
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次に、水産行政についてただします。
我が故郷柳川は、町中を掘割が縦横に巡り、詩情豊かな街であります。そして有明海の恵まれた水産資源を活用して、ノリ養殖業をはじめアサリ、タイラギ等の漁業が盛んであり、地域の基幹産業となっています。
この恵まれた自然環境、水産資源の宝庫である有明海を次の世代に継承するため、いわゆる有明海特別措置法が平成十四年に制定され、早や四年が経過しようとしております。
この間、県は有明海再生のために潮流や貧酸素水塊など海域の調査や、沿岸の他県にはない規模での覆砂事業の実施など様々な対策を、地元と一体となり取り組んでこられました。その結果、平成十六年以降ノリ養殖は安定し、十六年、十七年と百五十億円余の生産をあげ、十七年は全国二位にまで復活しました。品質面ではまぎれもなく日本一だと私は自負しております。
本年三月には、国内外の産地間競争に打ち勝つ体制をつくるため、同じ地域に二つあったノリ共販漁連が合併し、福岡海苔共販漁連が発足しました。
いよいよ「福岡のり」のブランドで広く全国に向かって知名度の向上を図り、日本一の産地となるべく生産者とスクラムを組み、取り組んでいく時期だと思っております。
そこで、先ず今年度のノリ養殖生産の現状についてお伺いします。また、「福岡のり」の知名度向上を含めた販売戦略をどう進めていかれるのか知事の考えをお聞かせ下さい。
一方、ノリと並ぶ重要な水産資源でありますアサリは、昔は「アサリは湧いてくる。」と言っていたほど大量に漁獲され、有明海の豊かさを象徴するものでありました。また、有明海のアサリは、殻からあふれんばかりに身入りが良く、とても美味しいと高い評価を得ております。
しかしながら、アサリの漁獲量は昭和五十八年の約五万八千トンをピークに減少し、平成元年には約七百トン、十三年には約三百トンにまで年々減少し、その対策として稚貝を放流されたことは記憶に新しいところであります。
こうしたなか、昨年来、覆砂を行った漁場を中心に、歩けばザクザクとなるほどアサリが大量に発生しております。漁場には数多くの漁船が出漁しており、本県の有明海に久々に活気あふれる漁業の風景が帰ってきております。今年度は五千トンを越える漁獲量が期待されており、有明海再生が直実に進んでいると喜んでいるところであります。
このように、有明海特別措置法に基づき、積極的に取り組んできた覆砂事業は有明海の再生に大きな成果を上げています。
ちなみに、本県における平成十二年度から十七年度の覆砂面積は、五百ヘクタールを越えております。これを他県と比較すると、他県では数十ヘクタールの規模となっております。このことからも、いかに本県が積極的に有明海の再生に取り組んできたかが伺えます。
とりわけ、有明海特別措置法制定後は、国の優遇措置もあり、大規模に事業を実施されております。
しかしながら、この法律は施行の日から五年以内に必要な見直しを行うよう定められています。
この見直しの中で、折角、有明海特別措置法で講じられている国の優遇措置が廃止され、県の事業規模が縮小されるのではないかという不安を、地元の漁業関係者は抱いております。
そこで、覆砂のように漁業者がその効果を実感できる事業はもちろんのこと、有明海の再生に向けて必要なものは、しっかりと継続されるべきであると思いますが、知事の考えをお聞かせ下さい。
また、このような事業の成果を国に対し、情報発信を行っていくことも重要であると思いますが、この点も併せてお聞かせ下さい。
次に漁協問題についてお尋ねします。
漁業は、国民に対する水産物を供給するという重要な役割を担っていることを踏まえ、漁協や漁業者に様々な公的支援がなされています。このため、県は、漁協合併を促し、真の漁業者だけで組織されるよう、組合員資格の実態調査と漁協の常例検査でその内容を確認するという厳格な姿勢で臨まれておられます。このような県の姿勢を見て、今まで全くと言ってよいほど動きのなかった地域で、合併が実現するなどの効果が現れています。また、組合員の減少に伴い、自主的に解散した漁協もあります。そこでお尋ねします。県は、このような取組を毎年実施していくべきだと考えますが、知事の考えをお聞かせください。
また、県がこのように厳格な姿勢に反発し、県の指導や命令に従わない漁協も現れるのではないか。現に一部ではトラブルも起きているようですが、県はどのような姿勢で臨まれるのか、知事のお考えをお聞かせください。
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(水産問題について)
今年のノリ養殖の現状について
今年は、十月に水温が高く、雨が少なかったことから、秋芽ノリの生産について心配したところですが、十一月には海況が安定し、初回の入札では、平年並みの一億五千万枚が生産されました。
現在、海況は良好であり、ノリは順調に生育しております。
「福岡のり」の販売戦略について
「福岡のり」が国内外の競争に打ち勝つためには、まず、高品質な福岡固有のブランドを確立し、のりの差別化を図ることが最も重要であります。
そのためには、全量が入札会において販売されている現在の方法を見直し、共販漁連自らが「福岡のり」をブランド化して販売する新たな仕組み作りが必要であると考えております。
県としましては、共販漁連による「福岡のり」のPR活動や自主的な販売の取り組みに対し、積極的に支援を行ってまいります。
有明海再生対策について
これまで、有明海特別措置法に基づく「県の再生計画」に沿って、覆砂による海域環境の改善や水産資源の回復などに努めております。その結果、ノリ生産の安定やアサリ稚貝の大量発生などの成果が現れております。
このような成果につきましては、様々な機会をとらえ、国に対しその内容を伝えているところであります。
さらに、法の見直しにあたっては、本県が実施している有明海再生に必要な覆砂事業や調査などが引き続き行えるよう、国に要請しているところであります。
漁協の組合員資格実態調査と検査の継続実施について
漁協は、漁業者の負託に応えるため、真の漁業者のみで構成され、適正に運営されなければなりません。
そのためには、漁協自らが組合員の資格審査を毎年実施していくことが重要であります。
県としましては、引き続き組合員の資格審査結果の報告を求め、その内容について厳格に検査して参ります。
県の指導や命令に従わない漁協への対応について
このような漁協の役員は、法令を遵守し、漁協のために忠実に職務を遂行する責務を果たしておりません。
県としましては、水産業協同組合法の定めにより、役員改選などの行政処分や罰則の適用など、厳格に対応して参りたいと考えております。
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教育問題についてお尋ねします。
全国でいじめと、これを原因としたとみられる子供の自殺が後を絶たない中、本件においても先々月、朝倉郡筑前町においてはっきりといじめが原因であるとの遺書を残して、中学二年生がなくなるという痛ましい事件が起きています。
若く、未来のある命が失われたことはまさに痛恨の極みでありました。二度とこのようなこのような事件が起きぬように県民を挙げて取り組むべきとの考えを新たにしているところであります。
子どもたちに命の大切さについて実感がなく、人を中傷する言葉として「死ね」や「消えろ」等の言葉が横行する現実がいったいどこに原因しているのか、このことについて的確にとらえることが、今最も求められていることではないでしょうか。
いじめの問題は、単に学校教育だけの課題ではなく、子どもたちを取り巻く社会の問題であり、学校教育の在り方はもちろん子どもたちを見守る家庭や地域社会の在り方、命や心の教育の在り方、学校を設置する教育委員会の在り方など、幅広い観点からの議論と解決に向けた取組が必要と考えるものです。
このような中、既に県教育委員会において「福岡県いじめ問題防止対策本部」を組織し、今後のいじめ問題に対する総合的な取組の検討がなされていると聞いております。しかしながら、先程指摘しましたように、幅広い観点から議論するためには、教育委員会内部のみでの論議では、いじめの問題についての効果的な取組を具現化することは難しいのではと危惧するところです。
そこで、教育長にお伺いします。まずは、二度とこのような痛ましい事件を起こさないために、現在、どのような取組を行っているのかお伺いします。
また、いじめの問題を幅広く、多様な観点から検討した上で、実効性のある対策を立てることが必要と考えますが、今後、この問題にどのように取り組んでいくのか、教育長の決意のほどをお聞かせください。
次に、高校での未履修問題についてお尋ねします。
当初、このような教育現場にあるまじき「非教育的」な事例は、ごく一部の県の特別なケースであろうと考えられておりました。しかしながら、問題は、その後、全国に燎原の火のごとき広がりを見せ、文部科学省の発表によれば、熊本県を除く四十六都道府県の公私立あわせ膨大な数の高校で同様の問題が発覚しています。
そして、誠に残念なことではありますが、本県もこの中に含まれ、県立高校六校二千三百四十人、私立高校十七校六千百六十三人の未履修の状況が明らかにされています。
内容は、学校により若干異なるものの、必履修科目である世界史や日本史を履修せずに、受験に有利な科目の授業に振り替えていたというものです。各学校は、毎年県へ提出するカリキュラム上は、学習指導要領どおり必履修教科・科目の授業を行うよう装いながら、実際には、密かにこれと異なる授業を行っていたこと。さらに驚くことに、一部の学校ではこの偽りのカリキュラムの信憑性を高めるため、必要のない教科書まで購入させていたと言うことであります。
生徒の進路を実現させてやりたいという親心に似た学校の気持ちは分からない訳ではありません。しかし、正しい親心とは目的のために何をやっても良いということは勿論まったく関係ありません。
この問題の発覚により、今後、生徒たちは改めて学習指導要領に定められた必履修科目の授業を受けなければならない訳です。二年生以下の場合はまだしも、受験を控えた三年生にとって、最後の追い込みに入るこの時期の履修は、代替方法としてのレポート提出など幾分は緩和措置が認められているものの大きな負担になるはずです。
そこでお尋ねします。まず、そもそも、今回の問題が起こった原因や背景の分析と総括についてどのような所見をもたれているのか。
次に、今後、再発防止に向け、県ではチェック体制を強化するとのことですが、一方で、県立高校では校長の裁量幅を広げ、自主的、創造的な教育活動を推進するというこれまでの県教委の方針に反することにもなりかねません。
また、私立高校については、各校が建学の精神に則りこれまで取り組んできた自由な教育活動へ影響を及ぼすのではないかと危惧するものでありますが、この点をどのように考えておられるのか。
また、この未履修問題に関連し、本県では私立中高一貫型学校における単位互換の問題が起きています。
マスコミ報道によりますと、問題を指摘された学校では、これまで中学時代に高校の単位をとることを教育の先取りとして、学校の特色としてきたところのようです。
もし、明治学園が中高一貫型であって法的に認められた本当の中高一貫校でないため、としたらこれまで黙認してきた影響には極めて大きいものがあると考えています。
本県で中高一貫校と認められているのは県立三校だけのはずです。ですから、明治学園と同じ問題を抱えた私学は他に沢山ありそうです。
今後どう取り扱うのか。この実態と対応も含め、一体これまで問題を指摘せずに今回、履修を認めない、と県私学当局が判断したのは、どのような理由によるものなのか、その経過も含め説明下さい。
以上三点について、知事及び教育長の答弁を求めます。
さて教育問題の最後に、これまでわが会派が取り上げてきた学力テスト問題についてただしておきます。
十月二十三日、本県の学力実態調査が、四県での統一学力テストとして、中学二年生と小学五年生の全ての児童生徒を対象に県下の全市町村で実施されました。
ところで、国においても、来年の四月、中学三年生と小学六年生の児童生徒を対象に「全国的な学力調査」を実施することとしているようです。
そこでお聞きしますが、調査対象となる学年や教科が異なるようですが、国の全国学力調査が行われることに伴い、これまで実施してきた本県の統一テストとの関係はどうなるのでしょうか。今後の対応についてお伺いします。
ところで、今回の国の学力調査では、市町村教育委員会が主な参加主体と聞いております。言ってみれば市町村教委の判断で参加、不参加は決められることになります。そこで、他県の一部では、画一的な教育につながるとして参加を保留している市もあるようです。
本県では、「全国的な学力調査」の意義や目的等を踏まえて、もれなく参加し、不参加の市町村が出ることのないよう、県が強く指導力を発揮して、県下全ての児童生徒が参加できるように取り組むべきと考えますが、既に全市町村の参加についての意向を確認しているかどうかも含め、教育長の見解を求めます。 |
(教育問題について)
(教育長答弁)
筑前町の事件後の県教委の取組状況について
事件発生後徹底した原因究明を筑前町に指導するとともに、全市町村に対して、いじめの問題に関する取組の総点検や、いじめの早期発見・早期対応の在り方等に関する取組の徹底を指導したところであります。
また、全庁的に取り組むため、いじめ防止対策本部を設置し、「いじめ早期発見・指導の手引」の改訂を進めるとともに、子どもたちや保護者等に、命の大切さ等を訴える緊急アピールを行っております。
さらに、緊急市町村教育長会議を開催し、いじめの問題へのきめ細かな対応の徹底について具体的な指導を行ったところであります。
今後の県教育委員会の取組と決意について
現在、いじめ防止対策本部において、いじめ早期発見・指導の在り方、いじめの問題に適切に対応できる教員の育成、いじめ根絶に向けた学校・家庭・地域社会が連携した施策、いじめを生まない学校づくり等について、具体策の検討を進めているところであります。
今後は、学識経験者、相談機関関係者、保護者代表などで組織する「県いじめ問題対策検討会議」を年内に設置し、専門的な立場からの幅広い議論のもと、総合的な対策を講じ、二度と痛ましい事件が起きないよう全力で取り組む決意であります。
(知事答弁)
未履修問題の原因・背景と総括について
大学入試と高校での必修科目とにズレがあることや、ゆとり教育による授業時間数の減少もその要因にあるのではないかと考えております。
今回の問題では、多くの生徒に負担をかける結果となりましたが、この機会に、高校では、一定の単位を取れば卒業できるという、いわゆる単位制を採っているわけですが、その中で共通に必ず学ぶべきものはどこまで必要かについて検討し、学習指導要領も必修科目について検討すべきであると考えます。
(教育長答弁)
未履修問題の原因・背景と総括について
今回の問題は、進学実績の向上を願う保護者、県民の期待を背景とする学校間競争の中で、大学入試と指導要領のズレや学校週五日制による授業時数の減少などの要因と、学校の法令遵守意識の不足等が相まって、発生したものと考えております。
このことにより、生徒、特に受験を控えた三年生に負担をかけることとなったばかりでなく、学校自らがルール違反を犯すことで、生徒に対し教育的な悪影響を与え、ひいては、県立高校教育に対する県民の信頼を損なう結果となり、大変遺憾であると考えております。
(知事答弁)
チェック体制の強化と私学の教育活動への影響について
私立学校の教育課程については、これを生徒や保護者に明らかにすることが必要であります。
このため、再発防止に向けては、自ら定めた教育課程どおり授業が行われているか、学校内でしっかりチェックできる体制を整えていただくことを基本に考えております。
私立学校においては、学習指導要領の中で創意工夫をしながら、特色ある教育を行っていただくことが必要であると考えております。
(教育長答弁)
チェック体制の強化と学校裁量について
今後、各学校に対し、校内チェック機能の徹底を指導するとともに、監督機関である教育委員会としては、提出されたカリキュラム等の書類審査のみならず、授業の状況を実際に学校で確認するなど、再発防止に向けた取組を強化することとしております。
しかしながら、この取組は、あくまで、法令等の遵守すべき事項についての確認を行うものであり、これまで進めてきた各学校の権限と責任の範囲を拡大し、自主的な教育活動を促進するという基本方針については、引き続き堅持して参る考えであります。
(知事答弁)
学則で明示した科目と実際の授業との食い違いについて
中高一貫教育を行う場合には、中学校、高等学校の六年間を通した計画的な教育を行う教育課程を編成し、あらかじめ生徒や保護者にわかるよう、学則に明示しておく必要があります。
今回の事案については、学則に定めた教育課程と異なる授業が行われていたことから、このような問題が生じたもので、今後こうしたことのないよう指導して参りたいと考えております。
(教育長答弁)
本県の学力実態調査の在り方について
学力実態調査は、市町村や各学校が児童生徒の学力の定着状況を正確に把握し、その結果の分析のもと、学力向上に向けた施策や事業の展開等を行い、保護者や地域住民に対して、教育の結果責任を果たす上で重要であり、毎年実施することが必要と考えております。
このため、本県としては、独自の学力実態調査を実施してきたところであり、今後は、これまでの調査を踏まえつつ、調査対象学年を国に合わせるとともに、国が行わない教科を実施する方向で検討しているところであります。
市町村の全国的な学力調査への参加について
国が行う学力調査の目的は、義務教育の機会均等とその水準の維持向上を目指し、各教育委員会や学校が自ら学力向上の取組の改善を図ることにあり、その趣旨を実現するためには国の学力調査への全市町村の参加が重要であると考えております。
現在のところ、不参加の意向を示す市町村はなく、県としましても、全ての市町村が参加するよう、今後とも指導に努めて参る考えであります。 |
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