自民党県議団質問内容
二十一世紀に入って三年目となりました。本年もやがて終わろうとしています。二〇〇三年という数字だけを見るならば、何の変哲もない年のようでありましたが、実に重要な節目の年でありました。
江戸に幕府が築かれ、幕藩政治が始まった年から、今年がちょうど四〇〇年。
以後、わが国は鎖国を続け、世界との交流を閉ざしてきましたが、その鎖国にピリオドを打ち、開国のきっかけとなったのは、今年から一五〇年前のいわゆるペルリーの来航でありました。
さらにいえば、ライト兄弟が飛行機を発明し、人間が初めて空を飛んだ年から数えて、今年は一〇〇年目でした。
節目として例をあげるならば、枚挙に暇がありません。これは決して偶然ではないはずです。
このように歴史的に重要な節目の年の最後の県議会で代表質問を行えることを光栄に思い、ただ今より通告に従い、質問に入ります。
まず最初に、財政問題としての、来年度の県予算編成方針についてであります。
知事は、去る十月二十一日の定例記者会見において、来年度の当初予算編成の基本方針を発表されております。
その方針の中で、知事は、第一に、来年度においても引き続き行財政改革を推進すること、第二に、三位一体改革に対応した事務事業の見直し作業を行うこと、第三に、活力ある福岡県をつくるため新規施策を積極的に進めることを強調されています。
そこでまず、現時点において、どの程度の財源不足を予想されているのか、また、来年度の行財政改革において、現時点でどのような重点項目と効果を見込んでおられるのか、厳しい財政状況の中、予算編成方針を出された以上、当然ある程度の目安は持っておられると思いますので、明らかに願います。
また、三位一体改革の行方は、今まさに来年度政府予算原案作成に向け大詰めを迎えつつあるわけですが、この改革に対応した事務事業の見直し作業とは、何を意味してるのか、また具体的にどのような見直しを行おうとしているのか、わかりやすく説明願います。
関連して、正念場を迎えつつある三位一体改革の実現を図るため、年末に向けて本県としてどのような活動を展開するお考えなのか、その戦略と決意をお聞きします。
と申しますのも、地方自治体にとって、地方基幹税の強化と併せ、地方交付税の財源保障機能の堅持は、欠くことの出来ない重大ポイントであります。
しかしながら、分権推進会議においても経済界から提言された唐突で欠陥だらけの「地方共同税」構想ひとつをとっても、地方交付税の重要な意味を理解している経済人がどれだけいるのか、誠に心もとないのであります。
知事は、東京、大阪などにおいても、有力企業の会長や社長などと頻繁に懇談をもたれているようですが、地方交付税の財源保障機能の重要性について、理解と協力を求められたことがありますか。前向きな取り組みを期待して知事の見解を求めます。
また、知事が参加する「地方分権研究会」の中心人物、榊原英資氏が先の総選挙のさなか、民主党が発表したシャドウーキャビネットのなかで財務大臣候補になったことは、記憶に新しいところでした。
特定の政治色が着いてしまった分権研究会に、福岡県知事として積極的に関わることはもはや問題が多いと考えますが、いかがでしょうか。今後、どうされるつもりなのか、知事の率直な見解をお聞きします。
さて、知事は、来年度の新規施策の財源として、三十億円の枠を用意されていることを明らかにされています。これは、昨年度、本年度に引き続き同額であります。「財政構造改革プラン」の基礎となっている、平成十八年度までの県税収入見通しに大幅な狂いが生じている現在、これまでと同額で健全財政を維持できるのでしょうか。
一方、公共事業関係については、国庫補助事業は三%、単独事業は五%の削減を早々と明確に打ち出されています。
そこで、来年度の新規施策の財源をこれまでと同額に設定された根拠がどこにあるか。公共事業削滅による捻出財源規模の見通しやその捻出額が新規施策の財源枠に一部充てられているのか、新規施策枠に公共事業が含まれるのかなど、両者の関係も含め明快なる答弁を求めます。
また、わが国の景気にようやく薄日がさし始めたこの時期に、公共事業費削減が本当に適当なのか、三%、五%の削減率の理由も含め知事の基本的な考え方をお聞きします。
次に、それが仮にやむを得ないものだとしても、生活密着型公共事業の重要性などを踏まえると、単に削減で済むことではあり得ません。同時に人件費など経常経費の無駄を洗い出すべきであります。
しかしながら、人件費について知事は、「抑制には既に限界がある」かのような発言を記者会見で早々とされていることは、まったく納得できないところです。
一例を挙げます。本県の現業職の職員総数は他県に比較して多いと聞いています。また、給与水準も国家公務員と比較して著しく高いとの指摘もあります。まず、これらの実態を具体的な数値で明らかにし、削減に取り組むことが先決だと考えますが、いかがでしょうか。現業職の今後のあり方について、その総数や給与水準も含め、知事の基本的な考え方をお尋ねします。
なお、六月議会の代表質問において、我が会派は、条例定数と配置定数の乖離を指摘しました。知事は、「配置定数と条例定数の差を極力縮小するということで定数条例の削減を図りたい」と答弁されましたが、その時期を明言されておられません。
また、あらかじめ将来の定数を条例に規定する手法の導入について、何ら答弁頂いていないような気がします。来年度の予算編成に向けて作業を開始されたばかりの重要な時期に当たりますので、再度知事の明快な答弁を求めます。
次に、知事は、来年度の予算編成に向けて政策会議を開催し、各部の重要施策についてヒアリングをされたと聞いています。
既に、他県の例を見ても、重要な政策的経費を除き予算を各部に枠で配分し、各部はその枠の範囲内で自由に事業の取捨選択を行う方式をとる団体が増えていると聞きます。
そこで、知事は、来年度の予算編成のシステムについて、どのような改革を図られたのかお尋ねします。
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麻生渡知事 答弁要旨
(県の行財政問題について)
1 三位一体改革
三位一体改革による国庫補助負担金の廃止等に伴う事務事業の見直しについて
国庫補助負担金の廃止・縮減が行われる事業につきましては、今後の予算編成過程において、事業の必要性、緊急性、内容、費用対効果等について改めて検討を行い、今後とも県が実施すべきものについては、その再構築を図り、県の自主事業として推進してまいりたいと考えております。
三位一体改革の実現のための年末に向けての活動について
国においては、来年度の予算編成に当たり、一兆円を目標とした国庫補助負担金の廃止、縮減をはじめとする三位一体の改革の検討がまさに正念場を迎えているところであります。
このような状況を受けまして、先日、地方六団体として、改革案が地方の自由度の拡大につながるものとなるよう緊急に要望活動を行ったところであり、また、私自身もあらゆる機会をとらえ、要請を行っているところであります。
今後とも、本来の地方分権に資するような改革となるよう、国に対して、強く働きかけてまいります。
地方交付税に係る経済人への働きかけについて
地方交付税の財源保障機能の重要性やその確保については、これまでも、知事として、あるいは九州地方知事会長として、各方面に働きかけてきたところであり、また、財界人に対しても、様々な機会を捉え、理解を求めているところであります。
地方分権研究会に対する今後の関わりについて
地方分権研究会は地方自らの知恵と意思によって、今直面している課題解決に向けた具体的方策を検討し、そして行動することを目的にしています。八県知事のほか、学界や経済界から、広く力を結集し活動を行っており、榊原教授もそのメンバーの一人であります。
真の分権社会の確立に向けて、研究会の活動は有意義であり、今後とも研究会メンバーと力を合わせていきたいと考えております。
2 来年度の予算編成方針と財源問題
来年度の財源不足と行財政改革について
平成十六年度の県財政の見通しについては、三位一体改革の影響や県税収入の動向などを見極める必要があり、現段階で来年度の収支を具体的に明らかにすることは困難であります。
しかしながら、財政状況は引き続き厳しいものと認識しておりますので、平成十六年度の当初予算の編成に当たっては、財政構造改革プランに基づき、事務事業の再構築、アウトソーシングの推進等による職員定数の削減、外郭団体の統廃合などを重点項目として取り組むこととしております。
来年度の新規施策の財源約三十億円の根拠について
新規・重点化枠につきましては、豊かな県民生活と県勢の発展基盤の構築に資する施策を積極的に推進するために活用するものであり、本年夏に実施した事業再点検により、現行プランを上回る節減見込額が得られたことを踏まえ、一般財源ベースで約三十億円と設定したものであります。
なお、公共事業については、その財源の多くに県債が充当されており、将来の公債費負担という観点から、これらとは別途の取り扱いをしているものであります。
景気への配慮と公共事業費削減について
地域経済の発展のために計画的な社会資本整備を進めることは重要であると認識しておりますが、県債残高の累増や将来の公債費負担などを考えれば、財政の健全性を確保することも重要であると考えております。
平成十六年度の公共事業費の予算要求基準においては、国の概算要求基準等を参考に、国庫補助事業にあっては、県全体として前年度予算の九十七%の範囲内とし、単独事業にあっては、前年度予算の九十五%の範囲内とする要求枠を設定したところであります。
一方で、災害関連事業なとの県の重点施策に選定されたプロジェクト事業など政策的観点から緊急に取り組む必要がある事業については、別枠といたしております。
現業職員の定数及び給与水準について
現業職員の給与水準については、国の給与実態調査を基に試算すると全国二十二位となっており、平均的な水準にあると考えております。
知事部局における現業職員の定数については、出先機関の統廃合や業務の民間委託などにより、この十年間で二百四十人の削減を行い、七百五十七人となっております。
今後ともアウトソーシング推進計画に基づく削減や組織・事務事業の見直しなどを行い適正配置に努めて参る考えであります。
条例定数と配置定数について
条例定数については、配置定数との差を極力縮小する方向で削減する方針であり、平成十六年二月議会で条例を改正する考えであります。
改正の手法については、あらかじめ削減目標を条例化することも考えられますが、市町村合併の進展など不確定な要素を見極める必要があり、将来の定数を現時点での条例で確定することは現実には困難な面もあります。
したがって、本県では、財政構造改革プランに具体的な目標を掲げることによって、着実に定数削減を進めているところです。
来年度の予算編成過程における改革について
重点施策につきましては、政策会議における議論が効果的・効率的に事業化につながるように、事業構築の段階から、現場の実情等を反映させるべく、各部の意見を十分に聞きながら予算を編成してまいります。
一方で、経常的管理経費については、より執行の実態に即して弾力的な予算編成ができるよう、全て枠配分方式に切りかえたところであります。
本県の経済状況と今後の動向について
本県の経済状況につきましては、個人消費は横ばいで推移しておりますが、輸出は増加基調で生産も上昇の動きがみられるなど全体としては緩やかな改善の動きが続いております。
また、県内経済の先行きにつきましては、アメリカ経済が回復する中、景気は上向きの動きが続くものと期待されますが、株価や為替レートの動向などには十分留意する必要があると考えております。
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次に予算編成にあたっての肝心の歳入、つまりは税収見通しであります。
最近の本県の経済状況と今後の動向がどのようなものになると判断して、来年度の税収を展望されているのか、今年度の県税収入見通しとともに、その基本的な認識をお尋ねいたします。
次にいま、個人住民税の滞納が大きな問題になっております。その徴収率の回復なくして県税に対する信頼碓保や徴収実績の向上はありえないと考えます。最近数年の徴収状況についてお聞きするとともに、どのような徴収率の向上対策を講じておられるのかお尋ねします。
個人住民税については、この税が県税分も含めて市町村によって徴収されるため、先進的な自治体では、県と市町村で特別の徴収機構を設定している例や、県職員を市町村に派遣して一体となって滞納処分に取り組む例など、様々な工夫を凝らしていると聞きます。
県税収入が大幅に落ち込む中、本県においても、既存の体制を前提とした対策だけにとどまらず、これらの先進事例を参考に、県と市町村が一体となって新たに思い切った特別の体制の整備や納税者の利便性を考慮して、電気、ガス等の公共料金の支払いは既に例がみられるコンビニエンスストアー等を活用するなどの必要があると考えます。
また、県では、平成十一年度以降、自動車税の滞納処分を強化するなど、徴収率の向上に努められてきましたが、これまでにどのような成果が上がっているのか併せて知事の見解をお尋ねします。
財政問題の第二点は、県債発行問題についてであります。
県では、来る十二月十一日、昨年度に引き続きミニ公募債、通称「うぐいす債」を五十億円発行されるとのことであります。そこでまず、その概要、昨年との相違、売れ行き見通しについてお聞きします。
また、知事は去る十月十日の記者会見で、このミニ公募債について「今後大きくしていく方向になる」と見通しを語っておられます。
ところで、県債の多様化を図る一つとして、地方債の共同発行があります。公募地方債発行団体二十七団体が協議し、本年度から本格的に開始されたばかりであります。初年度は八千四百七十億円、うち福岡県は二百億円の規模で発行されると聞いております。
共同発行は発行団体の連帯債務となるため、当初予算で八千四百七十億円の債務負担行為を措置し、県議会としても、これを同意した経緯がありました。国では来年度以降もその規模を拡大する方向に誘導したい意向とも聞いております。
ところがこうした経緯にもかかわらず、知事は早々と「共同発行債は出来るだけ比率を下げていこうという動きにしている」と記者会見で今後の方針を明言されたと聞いています。
これは、巨額の債務負担行為を了承した県議会を軽視するものであり、また、他団体との信義にも悖るものではないでしょうか。
勿論、本県単独での発行の方が有利であれば共同発行に拘泥する必要がないことはいうまでもないところです。
知事は県債の発行についてどのような基本方針を持っておられるのか。また、地方債の共同発行のメリット・デメリットをどのように認識されて今回の発言となっているのか、その真意を伺うとともに、今後の県債発行政策の中で、当面共同発行をどのように位置づけていくのか、金融情勢によっては規模を拡大することも含め、知事の考え方をお尋ねします。
また、この県債の共同発行のように僅かの期間に早くも方針転換したのではないか、と県民に思わせるような例は、他にもみられるところです。
今議会に提案される補正予算のなかで「元気フクオカ」と名づけた中小企業資金供給新システムづくりのための損失補填額二億円が債務負担として計上されています。
確か昨年にも新金融システムを発足させられたはずですが、昨年実施分と今年度とではどこがどう違うのでしょうか。
新しい「元気フクオカ」なるもののシステムづくりは、果たして昨年の新金融システムの総括のうえで立ちあげられようとしているのでしょうか。
中小企業にすれば円滑な資金供給があれば要はいいことでしょうが、行政の継続性から考えれば、問題なしとは言えないはずです。
一年で別の新しい金融システムづくりに踏み切った真意と予想されるその効果についてこの際知事の詳細な説明を求めておきます。 次に、国は、地方債の財源として政府資金の縮小を図る方針を打ち出しております。こうしたことから市場の信頼を得られなければ、財源手当のための地方債発行が難しくなるという厳しい状況に直面することも予想されるのであります。
市場の信頼を得るためには、旧来の表面的な財政分析手法に止まることなく、普通会計と企業会計、あるいは外郭団体との連結決算、さらにきめ細かなバランスシートや事業別コスト計算書の作成など企業会計手法を導入した公会計づくりが不可欠であります。
そこでまず、財政運営への企業会計手法の導入として、どのような取り組みをされてきたのか、その実績と効果について知事の見解をお聞きするとともに、市場関係者の本県財政に対する理解と信頼を得るに有効なものとして、今後どのような新しい手法を開発されようとしているのか、知事の基本的な考え方と併せお尋ねします。
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税収見通しについて
本年度の県税収入については、十月現在の調定実績が前年同月比で九十九パーセント程度で推移しております。
今後については、法人関係税の申告を見極める必要がありますが、現在の傾向が続くことを前提とすると、本年度当初予算を三十億円程度上回る見込みであります。
また、来年度については、今後の経済動向とともに、現在議論が進められている三位一体改革やこれに伴う税制改正の動きを見ながら判断する必要があると考えております。
個人県民税対策について
最近における個人県民税の徴収率は、九十二パーセント前後で推移いたしております。
これまで、市町村職員を対象とした徴収技術の基礎研修を行うほか、一部の市町村について滞納処分に関する助言・指導を行うなどの対策に取り組んでまいりました。
今後は県内全市町村との共同での実践的な研修を実施するとともに、そのフォローアップとしての実務指導を行うなどさらに対策の充実に努めてまいります。
自動車税対策について
これまで県税収入の確保のために自動車税を中心に、土曜、日曜の訪問催告や夜間の電話催告のほか、差押え等を含む徴収の強化に取り組んでまいりました。
その結果、平成十一年度末に二百二十億円以上あった滞納額を平成十四年度末には二百六億円にまで圧縮したところです。
今後、徴収面の強化だけでなく、コンビニエンスストアでも納税できるよう納税しやすい環境の整備に努めてまいりたいと考えております。
「うぐいす債」について
これは、県民の皆様に安全・有利な資産運用方法を提供し、購入を通じて、県政への参加意識を高めていただくとともに、県の資産調達方法の多様化を図るための個人向け公募債であります。
発行総額は五十億円、購入限度額は一人五百万円以内となっております。
昨年度との主な相違点は、充当する施設等を、昨年度から引き続き充当しますアジア学術・文化交流センターのほか、新北九州空港及び九州新幹線としております。
利回りにつきましては、十二月に発行されます国債の利回り等を参考に十二月十日に発表する予定です。
販売見通しについては、これまでの県の広報誌に加え、新聞、テレビや雑誌などを活用した広報活動に取り組んできたところであり、昨年同様、完売できるものと考えております。
県債発行の基本方針について
地方債資金については、国に財政投融資改革の流れの中で、政府資金の減少が見込まれることから、今後は、広く市場から資金を調達する市場公募債のウエイトを高めていく必要があります。
個別発行は、地方公共団体が自己責任の原則に基づき発行するもので、地方分権を進める上で、市場公募債本来の発行形態であると考えており、本県では、その市場評価を高めるため、IR活動に積極的に取り組んでいるところであります。
一方、共同発行は、発行規模の大型化による発行条件の改善に資することなどのメリットがあります。
今後とも、より安定的で有利な資金調達を行うため、金融情勢を踏まえながら、個別発行及び共同発行を活用していきたいと考えております。
昨年度実施の新金融システムの総括について
昨年新金融システムを実施した時期は、金融機関の自己資本比率低下等によって、中小企業金融が縮小する傾向にありました。
このため、貸付債権を証券化してオフバランスする方法をとったものであります。
これによって、約百四十億円の融資を実行することができました。
このシステムについては、県内中小企業にとって資金調達の多様化が図られ、円滑な資金供給がなされたという点で意義があったものと考えております。
「元気フクオカ資金」創設の背景とその効果について
「元気フクオカ資金」は、担保主義の金融から業績評価に基づく金融への移行を目指して、県、地場金融機関及び信用保証協会が一定のリスクを分担する「アライアンス・バンキング方式」のもとで取り組むものであります。
CRDを利用した新たな保証審査システムを採用するとともに、地場金融機関が持つ既存のノウハウも十分に活用することで、業績評価を迅速に行い、無担保・第三者保証無しの資金を供給できる点が大きな特徴と考えております。
財政運営への企業会計手法の導入について
本県では、平成十二年度以降、バランスシートや行政コスト計算書等による企業会計的決算分析を導入してまいっております。
これらについては、投資家向けの説明会でも活用することによって、金融市場関係者の理解が深まっていると考えております。
企業会計的決算分析手法の個別の事業分野への導入等については、それを適用すべき分野やその活用手法など、検討すべき様々な課題があり、慎重に対応すべきものと考えております。
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次に、行政改革についてお尋ねします。
我が会派は、平成十一年六月議会の代表質問において、当時の「行政システム改革推進室」のあり方について重要な指摘を行いました。
新しい福岡県の自治を確立していく中心的な役割を担う組織として、この「室」の拡充を強く求め、県の機構改革の推進、行政評価や企業会計手法の導入、市町村への権限移譲、さらに職員の意識改革など地方分権を推進するための総合的な行政改革に積極的に取り組む必要性について、幅広い観点から問題の提起でありました。このことは、それ以後機会あるごとに提起してきました。
それから三年。昨年十一月に行政経営企画課を新設されたことは、まさに我が会派の提言を正面から受け止められたものとして、行政改革の推進に果たす役割を大いに期待してきました。ところが、今日までの取り組みと、その成果は如何でありましょうか。
これらのプロセスを全体としてマネジメントする「戦略型行政システム」の構築は、行政改革の中心的なテーマのひとつだったはずです。
またこれを、具体化する手段として「重点組織目標制度」の確立は、職員の意識改革を進める上からも極めて重要な課題であると考えます。
知事は六月議会で「今後、部ごとの目標を設定することにより、それぞれの職員が組織の課題解決に参加する。これにより、仕事についてやる気を持つように進める」と答弁されています。
しかし、本年度予算が成立して約半年、早くも翌年度の予算編成が議論され始めたこの時期になってもなお、制度をどのように運用していくのか具体的な方針や仕組みが公表されないのは、一体どういう事情なのでしょうか。具体的に説明願います。
また、知事は「業績などが適切に反映されるような人事給与制度の導入に当たっては、同時に公正で多角的な評価制度をつくつていくことが必要」だと答弁され、「平成十八年度の全面実施をめどに、管理職から順次施行を行っていく」方針を表明されています。
しかしながら、今日まで、知事や当局にその導入・確立に向けて積極的な姿勢が見られないのは、いかなる理由によるのでしよう。
新しいことへの挑戦が、何らの摩擦や抵抗を引き起こすことなくスムーズに進むはずがありません。すべては試行錯誤であります。職員の抵抗感や実施に際して生じる些細な問題を恐れていては、到底改革など望めません。 そこで、改めて、「戦略型行政システム」の構築に込められた知事の行政哲学とその内容を、県民に対して分かりやすく説明頂くとともに、新しい人事評価制度の進め方についての具体的なスケジュールをお尋ねします。
なお、今回の行政改革では、県税事務所の再編、庁内分権の推進、人材育成ビジョンの策定、審議会等の整理合理化などが課題としてあげられ、本年春頃までに素案なりが示される予定になっているものも多かったと記憶していますが、現在どのような進捗状況にあるのか、私どもには一向に分からないのであります。議会に対して実行を約束されているこれらの事項について、これまでの取組状況や、いつまでに公表されるのか明らかにするよう求めます。
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3 行政改革など
重点組織目標制度の具体的な方針や仕組みについて
職員の積極的な業務遂行や意識改革のためには、所属する組織の目標を共有し、その共通した目標のもとにそれぞれの職員が担当業務に取り組むことが重要であります。
昨年度は、各部において試行を行ったところでありますが、目標設定のあり方など運用の方法について詰める必要がありますので、さらに検討を進めております。
「戦略型行政システム」における行政哲学とその内容について
戦略型行政システムは、その構成として、各年度の重点施策について議論を行い施策の方向付けを行う政策会議、その政策の効果や進捗状況を評価する行政評価、組織の目標を共有し職員の積極的な業務遂行や意識改革を進める重点組織目標の三本柱からなるものであり、これらを機能的に運用することにより、各年度の戦略的な政策を形成し、効率的な実行を図るものであります。
新しい人事評価制度の進め方と具体的なスケジュールについて
業績等が適切に反映される新たな人事給与制度の導入に当たりましては、何よりも、その前提として、公正で多角的な評価制度を確立する必要があります。
このため、現在、評価の手続きや評価項目、評価基準等について検討を進めているところであり、平成十八年度の全面実施を目処に、管理職から順次、試行を行っていきたいと考えております。
行政改革の取組状況について
今回の行政改革の取組みのうち、審議会等の整理合理化については、現在の百二十四の設置機関中八機関の削減等を内容とする計画を策定済みであります。
県税事務所の再編にあたっては、厳しい経済情勢を踏まえ、事務の効率化だけでなく県民サービスの面や税収確保の視点からの検討も必要となっており、現在その作業を進めているところです。
庁内分権については、事務の効率化を図るため、来年度予算から経常的経費の全額を枠配分することとしたほか、本庁から出先機関への権限委譲など可能なものから順次実施しているところです。
人材育成ビジョンについては、国における公務員制度改革を踏まえて策定することといたしておりますが、すでに人事評価制度の確立や職員研修体系の再構築など、主要な課題について検討を進めているところです。
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それでは次に、福岡空港問題についてお伺いします。
先月の十三日に、福岡空港調査委員会が立ち上がりました。国の方では既に調査が開始されていたようですが、地元でも、これから調査が始められることになったわけです。
考えてみますと、昭和の終わりから平成の今日まで、実に十五・六年間かけて、やっと福岡空港問題がスタートしたととれなくもありません。なぜなら、この十五・六年間、実に様々な試行錯誤を繰り返してきたからであります。
九州国際空港議論がありました。九州各県それぞれの思惑があり、なかなか議論がまとまらないため、ワイズメン会議に裁定を仰いだにもかかわらず、その後の各県の不協和音で不調に終わり、結局は国にゲタを預けた格好になりました。九州は一つではなく、まさに「九州は一つ一つでした」とワイズメンの座長にも揶揄される始末でした。
一方で、福岡空港がこのままでは対応できなくなるのではという心配があることから、その対応策として、県、福岡市、経済界、また、我々県議会も新空港建設を!ということで国に働きかけを行ってきたことは間違いないところです。
しかし、この福岡空港をどうするのかという問題に対しては、多くの意見がありましたし、今日も引きずって、結論を出さないままでした。
現空港の改良でなんとか対応できないのか。 新北九州空港や佐賀空港との連携策ではどうか。
いや、現空港にもう1本滑走路を造ればいいじゃないか。
いやいや、これからの時代を考えるとき、新空港建設でないと対応できないのではないか。そうした議論です。
こうした事情を察してか、昨年末の国の審議会答申では、今申し上げたような対応策について、原点に返って、もう一度検証していこう、ということになったと理解しています。 そして、その場合、福岡空港が果たしている役割を考えたとき、確かに国が設置し管理する空港ではあるが、地域にとって極めて重大な問題でもあることなので、県民、市民の声を十分に聞きながら、取り組む必要があるんじゃないですか、というのが審議会答申だと考えます。
そこで、知事にお伺いします。
新たな出発点にたった今、福岡空港問題に対する取り組みの基本的考え方を披瀝頂きたいと思います。
次に、調査についてでありますが、今日まで積み上げてきた調査結果は一体どのように取り扱われるのか率直なところ重複の感が否めませんので、忌憚のない見解をお示し願います。
次に、現在の福岡空港はあまりにも過密化しているため、容量限界を心配し、新空港建設につながっているわけですが、世界には福岡空港以上の過密空港が多数存在し、そこでは健全に運営されているとも聞いています。
運営手法、つまりは民間空港であるため、それが可能なようです。この際、発想の転換を図り、民間空港化も検討すべき時期を迎えているのではないかとも考えますので、知事の抱負を併せてお聞かせ願います。
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(空港問題について)
福岡空港問題に対する取組の基本的考え方について
福岡空港問題については、この空港が地域の社会・経済に果たしている役割の重要性や将来への影響の大きさなどを考えますと、今後、地元としても十分、国と連携協力して総合的な調査を進めて参る必要があると考えています。
そして、この調査を進めるに当たっては、公正・中立的立場で透明性を確保しながら進めていくことが重要であると考え、有識者で構成する地元の調査機関として、去る十一月に福岡空港調査委員会を設立したところです。
また、調査は、県民等と情報を共有し、その意見を反映させながら進めていくことが極めて重要でありますので、現在、情報提供、意見収集のあり方について、専門家の意見を聞きながら検討を行っております。
今年度末に取りまとめる具体案に従い、パブリック・インボルブメントを実施しながら調査を進め、地域・県民にとって最善の方策が得られるよう、努めて参ります。
これまでの調査の取扱いについて
今年度から実施する福岡空港の総合的な調査は、福岡空港問題に国が初めて取り組むものであり、我が国全体の航空政策や管制技術などの専門技術的観点を取り入れながら、地域と連携協力して進める調査です。
これまで、地元において収集・蓄積したデータや調査結果につきましては、今後の調査においてもできるだけこれを活用し、効率的かつ効果的に進めて参りたいと考えております。
空港の民営化について
今後、総合的な調査において、現空港の有効活用や新空港の建設等の抜本策を検討するにあたっては、イギリスなどの諸外国や我が国でも成田空港において進められている空港の民営化や、民間活力の活用という視点も重要であると考えております。
従って、今後、調査を進めていく中で、その点も視野に入れた検討が行われるものと考えております。
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次に、農業問題についてお聞きします。
新しい米政策改革大綱に基づく初めての、いわゆる米の生産調整面積全国枠が、去る十一月 日に政府から示され、各県ともこれからJAごと、市町村ごとに数量配分作業が始まりますが、農業者から聞こえてくるのは、ひたすら不安の声であります。
米政策改革大綱を受けて、平成十六年度から生産・流通制度の大幅な見直し、担い手に対する経営安定対策の創設などの改革が実施されることになっていますが、こうした中で、米の生産調整については、約三十年続いた「米をつくらない面積」の配分方式から「米の生産目標数量」の配分方式へと変更されることで、農家には「どこが、どう違ってくるのか」と、まず戸惑いがあります。
次に、生産調整助成制度については、「産地づくり推進交付金制度」を創設して、これまでの国による一律的な助成制度を改めて、地域の特色を生かした水田農業の展開を支援するとされています。
一見、大変立派そうに聞こえて参ります。しかし、実際はどうでしょうか。わが国農政は、、基本方針がよく変わることから、「猫の目農政」と言われて、その都度、農家に不安をかもしてきましたが、今回のように不安を招いたことが過去にあったでしょうか。
とりわけ、水田農業が農業生産の基幹であった本県においては、これまでの生産調整政策において、麦・大豆の本作に向けた取り組みを積極的に指導し拡大に努めてきました。 また、稲を飼育用作物に転作する農家も増えています。産地では、今後も継続して麦・大豆の生産に励むつもりです。
しかしながら、これまで同様に麦・大豆を転作作物として作った場合に、果たして、米政策改革大綱に基づく「産地づくり交付金」がもらえるのか、もらえてもわずかではないのか、こうした不安の声が絶えないなかでは、農家が将来の農家経営に自信を持てるはずがありません。
そこでまず、今、米政策改革大綱に基づく具体的な政策の実施を目の前にして、農家が抱える不安について、知事はどのように認識されているのか、まず所見をお聞かせ下さい。
次に、我々県議会はこのような農家の不安を先見し、今年の六月県議会で「米政策改革大綱に基づく新たな水田農業政策の充実を求める意見書」を国に提出し、財源確保や財政支援など格別の配慮を求めてきたところですが、県行政としては、我々県議会の動きと呼応してどのような行動をとってこられたのか、具体的にお示し下さい。
次に、具体的には「産地づくり交付金」についてであります。
先程も述べましたように、個々の農家にどの程度の額が支払われるのか未だ分かっていません。また、市町村ごと、農協ごとに交付金の配分の仕方が変わりますので、同じ大豆を作っても、市町村が違えば貰える額も異なり、道一つ隔てて金額に差がつくことになります。市町村や農協が独自性を発揮できることは、ある意味地方分権を進める上で喜ばしいことかもしれませんが、農家はかえって戸惑いを感じるのではないでしょうか。
条件が同じような地域においては、同じような額が支払われるのが望ましいと考えますし、当然、県内で格差が生じることがないように、県として指導すべきではないかと思います。地方分権というのは、個々の農家に格差を生じさせることとは違います。知事の考えをお聞かせ下さい。
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(農政問題について)
米政策改革に対する農家の不安解消について
来年度からの新たな米政策への円滑な移行を進めるため、関係情報を積極的に提供し、農家の不安解消に努めているところであります。
また、地域の話し合いにより、転作作物として何を重点に進めるのか、また、その助成単価をどうするか等を定めた水田農業ビジョンが早期に作成され、農業者への説明が適切に実施されるよう支援して参ります。
なお、農家の一番の関心事である十六年度米の生産目標数量や交付予定額については、年内に市町村に示す予定です。
米政策改革に対する国への働きかけについて
県としましては、麦・大豆の本作化に配慮した交付金の配分をはじめ、転作作物の生産・流通対策や担い手対策、新たな米政策の推進経費の十分な予算の確保等を強く国に要望してきたところです。
今後ともあらゆる機会を通じ、関係施策の充実などを国に要望して参ります。
産地づくり交付金の県内格差について
十六年度からの新たな米政策においては、地域自らが助成金のメニューや単価を決めることが可能となりますが、どのように決定してよいかと、戸惑っている市町村も見られます。
このため、県としては担い手の育成や地域振興作物の生産拡大など、地域づくりを進めるための具的で判り易い交付金の使途の事例を示しながら、市町村・農協を指導して参ります。
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次に、福岡県漁業の中で大きな位置を占めています、有明海のノリ問題についてただします。
またぞろ、赤ぐされ病によると見られるノリ不作が連日のようにマスコミで報道され、本県をはじめ佐賀、熊本の入札会も極めて不調で、関係者は心痛の極みであろうと思っています。
平成十二年のことですから、もう三年も前になりますが、有明海のノリが大凶作に見舞われたことは、私たち福岡県の内陸部に住んでいる者にとっても、大変記憶に新しいところであり、それだけに、今後の推移が本当に気がかりになるところであります。
漁業者は、今後の冷凍網での養殖に生活を賭けられているようですが、もし、この冷凍網も不作に終わると再び大変な事態を招くことが予想されます。
そこでまず第一に、現在の不作の要因と生産状況、また、今後の冷凍網での生育見通し、特にこのことについては、有明海に注ぐ河川からの栄養塩がカギになると伝えられていますので、万が一漁場で栄養塩が不足するような事態が生じた時には、これまで同様に速やかに措置を講じて日向神ダムからの緊急放流が必要となるわけですが、その用意があるのかどうかをお聞きします。
次に、この際ですから関連で何点かお聞きしておきますが、まず第一は本県ノリ養殖漁業において悪しき慣行であったノリ小間、いわゆる貸借問題です。
三年前の大凶作をきっかけに、県は本格的にこの適正化と取り組み、実際にノリ養殖を手がけている現業者だけにしか、ノリ小間の配分が行われないよう徹底した行政指導を進められたと聞いていますが、今日現状はどうなっているのか。農業に例えるならば、かつてのような不在地主が本当に解消されたのかどうか、数字を示して的確に説明願います。
次に、本県の有明海ノリ養殖業において顕著なことは、ノリ小間が極めて密植状態にあることで、これは隣県の佐賀県漁場に比べて際だっていると言われてきました。
今回の赤ぐされ病が広がった要因のひとつに、この密植が考えられるだけに、ノリ小間の貸借問題同様に県の強い行政指導による改善が求められますが、取り組みについて方針をお示し願います。
また、こうした問題は県が行政指導に乗り出すまでもなく、本来的、一義的には漁業者自身の問題であることは、論を待たないところでしょうが、そのためには、有明海沿岸の漁協再編を進めて、単協の組織力を強化すべきであります。
現在県では、農協同様に県全体の漁協再編を進められ、有明地区外では進行しつつある中で、どうしてこの地区では再編が進まないのか。ノリ小間の適正化が進めば、現状のままでは漁協としての存立さえ危ぶまれるところもあると聞いています。それだけに、その要因等も含めて、県の有明海漁協再編方針を説明願います。
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(有明海のノリ問題について)
現在の不作の要因と生産状況及び冷凍網の生産見通しについて
今年の秋芽網生産は、十一月初めからの高温多雨により、あかぐされ病が例年に比べ重度にまん延したため、大幅に減少し、平年の二割程度で終了しております。
冷凍網生産は、十二月三日から開始されており、現在の海況条件としては、栄養塩は十分であり、プランクトンも極めて少なく、水温も平年にもどりつつあるなど、ノリは順調に生育しております。
今度とも、海況の状況把握に努め、適切な養殖管理を指導することにより、冷凍網生産が順調に行われるよう努めて参りたいと考えております。
日向神ダムの緊急放流への対応について
日向神ダムからの緊急放流につきましては、去る十月末に六十六万トンの放流を実施したところであります。
今後とも、ダムの貯留状況や海況の状況を見極めながら、関係者の理解を得た上で、効果的に放流できるよう努めて参ります。
ノリ漁場配分の適正化の現状について
ノリ漁場の配分につきましては、約千五百の休業者に配分されていました約九千の小間について、今漁期から全て現業者に配分され、不適正な状況が解消されております。
県としましては、小間の配分状況をデータベース化し、今後とも管理を徹底して参りたいと考えております。
ノリ養殖漁場の改善策について
あかぐされ病等の対策や品質の良いノリ生産を行うためには、密植状態を解消することが必要と考えております。
県としましては、来年度の漁場計画策定において、減柵による潮通しの確保等、漁場の改善を進め、漁家経営の安定が図られるよう指導して参りたいと考えております。
有明海区の漁協再編方針について
有明海区の漁協再編については、これまで永年にわたるノリ漁場の不適正な配分などの諸要因から、取組みが進んでいない状態でありました。
このたび、ノリ漁場配分の適正化が図られたことにより、再編の阻害要因が解消されたため、漁協再編の気運が高まっております。
県としましては、有明海の漁業振興と漁協経営の安定を図るために、今後とも、有明海区の漁協再編に積極的に取り組んで参る所存であります。
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次に教育問題についてお尋ねします。
本県の教育界は、不幸なことに過去長期にわたり対立と混乱を極めて参りました。
公正中立であるべき教育が、偏ったイデオロギーを持つ教職員集団によってゆがめられてきたことがその大きな原因でした。今日では、労使紛争も影をひそめ、労使対立がないという観点での「教育正常化」という意味では、かつてに比較して、大幅に改善されたと多くの人が認識しています。
しかしながら、この「正常化」なるものは、多分に県教委と教組との関係改善、とりわけ教組の方針転換、つまりは校長の職員会議での位置づけ、学習指導要領の法的拘束力などの是認などによりもたらされたものでありまして、外見的にとどまっています。
学校現場の内実を子細に見ると、かつてより、より一層陰湿、密室化し、問題はまだまだ山積されています。
例えば、九月の県議会で我が会派が指摘した「心のノート」問題ひとつをとってみても、「倫理」、「道徳」教育に今なお疑問を呈する教職員によって、児童生徒に配付されずに放置されていたことが、このことを裏付けていると言えます。
また、人権感覚のかけらもない教師の非常識な言動によって、子どもの心に取り返しのつかない深い傷を負わせたり、ジェンダーフリーという名のもとに行き過ぎた男女平等教育を行い、社会常識に反する過激な実態がまかり通るなど、その例を挙げていたらきりがありません。
このことは、突き詰めていくと本県における学校教育活動での管理職の問題であります。県教委と教組の関係改善が図られても、学校現場における校長、教頭、主任と教師の関係、つまりは管理態勢が確立されているかどうか。学校を司どる校長のもとで教頭、主任がこれを補佐してしっかりとした学校運営がなされているか。いないから、このような問題が随所で散見されると判断せざるを得ません。
このような状況を放置するならば、今後ますます規範意識に乏しい子ども達が増え、郷土愛、祖国愛を知らず、民族としての自覚と誇りもない子ども達が増えていくことは目に見えています。
今、アジアは隣りの中国、韓国を始め多くの国々が目覚ましい発展を遂げつつありますが、その原因らしきものを考えると、子ども達に民族としての自覚と規範意識が満ちあふれているということではないでしょうか。 これは教育の違いとも言えると思いますし、我が国に於いては最終的には、教育基本法の問題が大きいと考えざるを得ません。 そこで、県教委にお尋ねします。
現在の本県学校教育活動の管理状況をどう認識しておられるのか、すなわち県や市町村教育員会の推進する教育行政施策や管理職の学校経営方針は個々の教職員まで適正に浸透しているのか、その認識をお示し願います。 また、それが未だ不十分ということであるとすれば、対応策をどう考えておられるのか。仮にその原因が組織管理の問題であるとするならば、例えば東京都が独自の管理職制度を設置しているように、本県においても県単独の新たな組織管理制度を構築することも一方法ではないかと考えますが、その点も含めて教育長の見解をお示しいただきたい。
そして、改めて教育基本法の改正について教育長の見解をお聞きしておきます。
次に、今後の養護学校高等部の受入れの在り方についてお尋ねいたします。
県立の知的障害養護学校高等部の設置の経緯を振り返ってみますと、昭和五十二年に直方養護学校に設置され、昭和五十五年には筑後養護学校、五十八年には小郡養護学校に、また六十二年には福岡高等学園に、さらに平成五年には北九州高等学園を順次設置し、障害のある生徒の高等部への進学ニーズに対応されてきた経緯があります。
しかしながら、近年、子どもたちの数が減る中にもかかわらず、養護学校に在籍する子どもたちの数は増える傾向にあるとともに、在籍する子どもの障害の重度重複化、多様化が進むなど、障害児教育を取り巻く状況にも大きな変化が見られると聞いているところであります。
例えば、直方養護の高等部を見てみましても、高等部のない北筑前、川崎、嘉穂及び築城養護の四校から進学希望者が集まっており、小学部、中学部、高等部の児童生徒数の概ね四分の三程度が高等部の生徒であるというマンモス化が生じているようです。
実際、これら地域の子どもたちが進学するに当たっては、直方養護は遠隔地であるため、進学を希望する生徒達の多くは寄宿舎生活や、長い時間通学バスに乗って登校しており、寄宿舎での生活が難しい生徒や、通学が困難な生徒は進学を諦めるケースもあると聞いています。
こうしたことから、子どもたちがより身近な地域で教育を受けることができるよう新たな高等部の在り方を考えていくことが極めて重要な時期を迎えていると考えます。
そこで、県におきましては、障害のある子どもたちの進路と高等部教育の充実を図る観点から、知的障害のある生徒を受け入れる養護学校高等部の設置についてどのようにお考えか、教育長にお尋ねいたします。
教育問題の最後に、学級編制の弾力化についてお尋ねします。この問題については、教育活動の基礎的条件をなすものであり、県民の関心も高いので、わが会派としては九月議会に引き続き質問をさせていただきます。
九月議会において、教育長は『市町村の主体的意思を尊重する点から、市町村が配当された定数を有効活用することや独自に非常勤講師を雇用するなどの方法で学級編制の弾力化が可能になるよう制度改善を進める』との答弁がなされたところです。
ところが、最近の新聞報道によりますと、国はこうした措置を更に一歩進め、国の加配定数の一部を使って、小中学校の「少人数学級」を実現できるような途を開く方針であると聞いています。もしこれが事実であるとすれば、地域や各学校の実情に応じた教育を推進するうえで、大変意義があるものと考えられますが、教育長はこの国の方針に対して、県教育委員会としてどのように対応していくつもりなのか、お尋ねいたします。
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−教育長答弁−
(学校の管理体制について)
本県の学校教育においては、学習指導要領をはじめとする教育の基本方針や、校長の経営方針はおおむね教職員に浸透しているものと認識しております。しかしながら、一部には御指摘のような不適正な実態も残念ながら存在しております。
これは最終的には公教育に従事する者としての自覚の問題であり、この観点から今後、適正な学校自己評価や人事評価制度の導入により、教職員の意識改革と管理職の管理能力の向上を図って参る考えであります。
また、学校の組織体制につきましては、本県では主任制度がある程度有効に機能している実態がありますので、今後、その機能化を一層推進することにより、適正な学校運営を確保して参る考えであります。
なお、東京都のような独自の管理組織については、他県の実施状況や効果等を見守りながら研究して参りたいと考えております。
(教育基本法の改正について)
法制定から半世紀以上を経過し、子どもや教育を取り巻く状況が大きく変化したことに鑑み、本年3月の中教審答申では、21世紀を切り拓く心豊かで逞しい日本人の育成を目指す観点から、同法を改正する必要性が示されております。
教育の在り方は、国民一人一人の生き方に直結するとともに、国や社会の発展の基礎を作る大変重要な問題であります。従いまして、その根本法である同法の見直しについては、幅広い国民的合意の下に検討が進められる必要があると考えております。このため、県教育委員会といたしましても、この度の論議が更に広く県民に浸透するよう努めて参る所存であります。
(養護学校高等部について)
養護学校の高等部では、卒業後の社会生活に必要な力を培い、積極的に社会参加・自立を促す教育を推進してきており、これまで高等部に進学を希望する生徒については、いずれかの高等部に入学できるよう適切な受入れを図ってきたところです。
しかしながら、高等部教育についての理解の促進や特殊学級の増加等を背景として近年進学ニーズが増大している状況にあります。
このため、高等部教育の充実やその適正規模・適正配置について、県民各界各層の御意見をおうかがいしながら、検討を進めていく必要があると考えております。
(学級編成の弾力化について)
今回の文部科学省の学級再編の弾力化に関する方針は、各都道府県において、国の加配定数の一部を活用して少人数学級に関する研究を実施できるというものであります。
これを受けまして本県では、小学校低学年の学級規模が大きな学校のうち、希望する学校において、少人数学級についての研究を計画して参る考えであります。
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さてそれでは最後に、今県下各地域の自治体間で大詰めを迎えています市町村合併についてお伺いします。
最近の報道によりますと、市町村合併の条件をめぐる話し合いがつかず、協議会が解散したり、一部の市町村が離脱したり、また一方で、合併協議が難航し正念場を迎えている協議会も見られるなど、市町村合併は先行き不透明感を呈しております。
とりわけ私どもが危惧していることは、予想されたことではありましたが、合併市町村の議員定数の問題であります。
法定協議会の中で、安易に合併特例法に定める在任特例を採用し、現行の市町村議員定数のまま県に合併決定を求める自治体がかなり出てきそうな気配がします。
今日、議員定数をめぐって県民世論が極めて厳しい中で、なかには県議会定数をも上回る膨大な議員数を、暫定的とはいえそのまま残して、県に合併決定のゲタを預けられても、県としてその対応に困ることは目に見えています。また、それを議決する立場の県議会として見識を問われることになります。
こうした事態を避け、市町村合併が関係住民の祝福のもとでスタートできるようにするためにも、文字どおり知事が力強いリーダーシップを発揮し、事前に調整すべきではないでしょうか。
知事は今年の六月議会で、合併問題について、「必要だと思う場合には、踏み込んだ形で助言する」と答えられていますが、この議員定数問題こそ、知事の指導性と力量が問われる問題だと受けとめています。
そこで、このまま推移すると、最終的に県内の市町村数はどれくらいになると見込まれているのか、現在の進捗状況を踏まえて、その見通しを説明頂くとともに、議員定数の問題をめぐって危惧するような状況に陥らないよう、県知事の指導性発揮について、その決意の程をお示し頂きたいと思います。
以上で自由民主党県議団を代表しての、私の質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。
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(その他県政一般について)
合併市町村数の見通しと市町村議員の定数について
現在、本県内においては、法定の合併協議会が十五地域、任意の合併協議会が三地域、さらに研究会が一地域で設置されており、県内の約七割強の七十一市町村が十九地域において、具体的な枠組で合併の議論を進めている状況にあります。
この動向から推測しますと、大変流動的ではありますが、順調にいけば県内の市町村数は現在の約半数近くになるものと見込まれます。
次に、合併後の市町村の議員定数についてですが、いわゆる在任特例は、合併を円滑に促進するために、合併特例法において認められたものです。在任特例を採用しますと合併後の過渡期に地域の声が届きやすくなる一方、議会関係経費が嵩むこととなります。
このため、在任特例を採用するかどうかは合併協議を行う各地域において住民の意向を踏まえつつ決定されるべきものであり、住民に対する十分な情報提供がなされることが重要であると考えております。
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