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   自民党県議団 代表質問 平成15年9月26日(金)   

   9月19日(金)に開会した9月議会は26日(金)、自民党県議団代表質問で口火をきりました。
以下にその質問と知事及び教育長の答弁要旨を記載します。

 


  自民党県議団質問内容 麻生渡知事 答弁要旨

[知事の政治姿勢について]

 これより質問に入りますが、冒頭まず、知事の政治姿勢として、先に本県を襲った局所的な集中豪雨災害と、その対策についてお聞きします。

 今回の災害では、県下で御笠川、遠賀川、宇美川が氾濫したのをはじめ、県下各地で山崩れやがけ崩れに見舞われ、この結果、死者一人、負傷者十一人が出たほか、道路の寸断、田畑の埋没など、土木施設や農業施設が甚大な被害を受けました。床上浸水、床下浸水は最大時、二十九市町の六千七百戸に及ぶなど、被害額は現在までに判明している分だけでも、総額約三百十九億円に及んでいると聞いています。

 わが会派は直ちに会派独自で復旧対策本部を設置し、現地視察を行ったのをはじめ、知事にも災害復旧のため四項目からなる申し入れを行いましたが、被災者の心中を察するとき、思い余るものがあります。

 ところで今回の災害を振り返ってみますと、これは単に自然災害なのか疑念が残るところであります。それは麻生知事が日頃から県下の危機管理体制には万全を期していると強調されていたのとは裏腹に、御笠川改修工事の遅延や情報提供の遅れ、そして災害当日、防災担当の幹部職員三人がそろって不在であったことなどが災害を契機に、はからずも明らかになり、県の危機管理意識の欠如を露呈しているからでありました。

 「今回の災害は天災ではなく人災だ」と声を大にして県の責任を求める県民も多数います。

 九州の玄関として知られるJR博多駅前一帯がまたも広範囲にわたって水浸しとなった光景を目にし、多くの機能が麻痺した時、本当に戦慄と虚しさを覚えたものでした。

 ギガビットハイウェイ構想の実現をはじめ知事は先端情報技術を駆使したIT社会の構築には並々ならぬ手腕と力量を発揮されて参りました。これはこれで評価すべきことですが、道路や河川整備など従来の社会基盤整備についてはいかがだったでしょうか。

 高度情報社会もまた、こうした従来型のしっかり社会基盤整備のうえに成立していることを、この際、改めて肝に銘じておいて頂きたいものであります。

 そこでまず、今回の災害への対応に当たって、県政全体の最高責任者である知事自身はどのような反省と責任を感じておられるのか、見解をお聞きします。

 また、平成三年の台風十七号、十九号によって本県が被害を受けた際、わが会派が中心となって県の防災体制の不備を追求し、その議論の結果、県当局は消防防災課を当時の民生部から総務部に移管し、更に二人次長制を引いて一人を災害対策長に任命しましたが、いつの間にか、その職が消滅しています。この際、経緯についても明確に説明願います。

 そもそも、わが会派は、六月議会において、「県の組織機構、指示命令系統などの面から危機管理体制の抜本的な再編強化の必要性」を指摘しました。

 現在の消防防災課を中心とした体制だけでは、どうしても連絡調整業務が中心となり、緊急事態に臨んで強力な指示命令系統が欠如し、関係部局の責任の押し付け合いが起こることは明らかだと憂慮したからでありました。

 また、危機対応への専門的な能力の向上を目的として、自衛隊との人事交流や自衛隊OBの雇用など提言し、また、別途知事にも申し入れ、強く要請しています。

 しかし、これらの課題に対して、知事は「危機管理体制の再編・強化を図っていきたい」「自衛隊との一層の協力関係を築く中で、そのノウハウを活用していきたい」と抽象的な答弁にとどまっていました。その結果が今回の事態であります。

 この際、今回の不手際や怠慢を深刻に受け止め、危機管理の体制やシステムの見直しに着手されたものと思いますが、今後どのように危機管理体制の抜本的な見直しを行うのか、自衛隊との人事交流について気合いのこもった取り組み方針を含め、その基本的考え方、具体的な手立て、そして実施スケジュールについて、県民が納得いく所見を求めます。

 次に、具体的な災害復旧対策についてであります。

 まず第一に、御笠川については二度も同じ災害を繰り返しているわけですから、改修については予想最大水量はもとより、流域の開発のあり方等も含め、抜本的見直しが迫られています。このためには、庁内だけにとどまらず、外部の学者等を含めた協議会を設置し、改めて改修計画の再検討が必要だと考えますので、知事の所見を求めます。

 次に、床上・床下浸水等の一般家庭被災者への災害援護貸付金制度についてでありますが、一日も早い復旧を期して、この際希望者には公費で利子を負担すべきだと判断します。貸付制度の現状の説明と併せて、知事の勇断を求めます。

 次に、今回の災害では県民の貴重な財産ともいうべき遺跡や建築物などの文化財も被害を受け、復旧問題が大きな関心を呼んでいます。

 とりわけ飯塚市の嘉穂劇場は江戸期の歌舞伎様式を今に伝える芝居小屋として貴重な建築物であるにとどまらず、大衆芸能のメッカとして広く全国に知られ、筑豊のシンボルとして地域の活性化に大きな影響を与えてきた、いわば生きた文化財です。

 それだけに、先に中央の有名な芸能人たちも飯塚市に集い「劇場の灯を消すな」とチャリティーオークションを開くなど、支援の輪は地元から全国に広がっていますが、ここは地元の県として率先して劇場の復興に支援の手を差しのべるべきだと思います。

 また、太宰府市や大野城市などにまたがった四王寺山に位置する国指定の重要史跡「大野城跡」の大規模な石垣崩壊も非常に気がかりなところです。

 こうした文化財の復旧について知事の特段の抱負を求めておきます。

 次に災害に際しては常に言われることですが、災害復旧のために迅速かつ手厚い財政援助が受けられると言われている激甚災害の指定基準が大変厳しく、被災自治体の悩みになっています。

 激甚災害の指定に当たっては、基準の緩和と追加指定が受けられるよう県議会としても先に意見書を早期採択しましたが、知事としても国に対し積極的に働きかけられることを強く求め、見解をお聞きするところです。











 政治姿勢の二点目は、合理化による雇用削減等で地域経済に深刻な影響が心配されている、三井鉱山に対しての産業再生機構の支援問題についてであります。

 もとより、産業再生機構の支援決定そのものは、企業再生に向けた取組の第一歩であり、本来は歓迎されるべきことかもしれません。

 しかしながら、再生のためには、三井鉱山全体を含む関係会社での不採算部門の整理と従業員のリストラが避けられず、再生計画に対して手をこまねいていたならば、地域経済が深刻な影響を受けることは明らかです。

 例えば、とくに関係企業が多い大牟田市では、三井鉱山再建に伴うリストラなどが閉山後のまちづくりに大きなダメージを与えることが懸念されます。

 また、筑豊地域田川市には三井鉱山の子会社三井鉱山セメントがありますが、既に撤退方針が示されているため、雇用不安の問題とともに、このセメント会社の輸送に収入の二割近くを頼っていた平成筑豊鉄道の経営問題にまで飛び火しています。

 また、この地区では香春太平洋セメントが解散を決めており、三井鉱山セメント部門の撤退と併せて、田川市郡にとってはダブルパンチを受けかねない状況といえます。

 そこで知事としては、今回の問題をどのように認識されているのか、また、懸念されている深刻な地域経済への影響について、県として十分把握されているのかどうか、また、その対応については今後どのような対策を講じていかれるのか、率直かつ明快な答弁をお聞かせ下さい。

 次に、知事の政治姿勢として最後に、いわゆる県立病院改革についてお聞きしておきます。

 この問題については、昨年の行政改革審議会の答申以来既に一年が経過しました。

 こうした中で、知事は先の六月議会におけるわが党の代表質問に対し、五つの県立病院のうち四病院については民間に移譲し、特別な事情下にある太宰府病院については公設民営の方向で検討している、と一定の方向性だけは示されています。

 しかしながら、具体的な方策については、今年秋頃までに策定する改革計画に委ねて、今日まで先送りされてきました。

 この間、各病院の所在地域では「県立病院は廃止される」という誤った情報も飛びかい患者数が減少しているという極めて深刻な話も聞いています。

 これ以上改革が遅れると病院機能や職員のやる気も低下して、県立病院改革全体に悪影響を及ぼす事態に陥りかねないと、私たちは心配しています。

 改革には慎重さが勿論必要ですが、判断を誤ることなく時期を迎えたならば、果敢にそして速やかに断行しなければ到底実現するものではありません。

 そして、私たちは県民に対して、県立病院改革についての具体的方策を示す時期は、もうタイムリミットを迎えていると判断しています。この機を逃したら、改革は不可能になるのではないかと考えています。

 そこで、まず第一に、改革計画はいつまでにまとめあげられるのですか。そして、その基本的考え方、各病院毎の改革実施時期はいつになるのでありましょうか。

 次に、改革に当たっての大きな課題は、地域医療の維持と更なる向上の点にあります。

 これまでにも再三指摘してきたことですが、県立病院の改革が地域医療の後退を招くようなものであったならば、地域住民の協力は得られないわけですから、県が責任をもって相手先の選定と混乱の医療機能を引き継いでいかなければなりませんが、この点についてはどのように対応されようとしているのでしょうか。

 更に、県立病院職員の処遇も重大な課題であります。

 知事は、「職員がこれまでに培ってきた専門的な知識・技術が活用されるような方向で進める」とされていますが、具体的にはどのような取り組みをされ、今後進められようとしているのでしょうか。

 最後に、今回の県立病院改革は、都道府県レベルとしては初めてのケースであり、病院をもった自治体には少なからぬ影響を与えるものと注目されています。

 県立病院改革の先駆けとなることについては、それなりの使命と責任を伴うものでありますが、知事はこのことをどのように理解されているのでしょうか。

 また、さらにこの際、保健所と福祉事務所の統廃合問題について言及しておきます。

 この問題も本県にとっては大変重要な課題でありました。現在、形式的には十四の保健福祉環境事業所に再編整備され、行政サービスのワンストップ化に向けて、機能充実が図られているようですが、一部ではまだまだ形式と実態の乖離は否めず、県民に多大な不便を与えているようです。ワンストップサービスは、機能が一個所に集中されてこそ発揮されるのであり、機能が散在していては望むべくもありません。

 現状と最終的な実現の目途について知事の明快なる見解を求めます。

 以上の五点について、知事の決意の程を含めた明確な方針をお示し願いまして、政治姿勢についての質問を終わります。


 



今回の災害への対応に当たっての知事自身の反省と責任について

 県下に甚大な被害をもたらした今回の集中豪雨に際し、災害警戒本部の責任ある職員の対応が不適切であったことは、残念なことであり、私としても、県民の皆様に対し、大変申し訳なく思っております。
 しっかりとした防災体制を確立するために、直ちに、人事の刷新を図るとともに、災害警戒本部内での連絡体制のあり方や、被害状況集約の迅速化、災害警戒本部の設置基準の見直し指示し、その一部は既に実行しているところであります。
 引き続き、災害対策本部等の体制の見直しや市町村等との連絡体制の点検や見直しを行うとともに、災害復旧に、県の総力を挙げて取り組んで生きたいと考えております。












危機管理体制の抜本的な見直しについて


 風水害、事故災害、テロ災害等様々な危機事象に迅速かつ的確に対応していくため、市町村や防災関係機関とともに、具体的な災害を想定した防災訓練や図上訓練を実施するとともに、相互の情報の共有化を進め、連携の強化を図っているところであります。
 また、自衛隊とは、組織対組織の連携を密にしながら、自衛隊の持つ高い能力を引き出していくという形での協力体制を構築していくことが必要ではないかと考えております。人事交流のあり方については、今後、研究して参りたいと考えております。












今回の災害を踏まえた御笠川の治水対策について

 御笠川については、平成11年の洪水後、河川激甚災害対策特別緊急事業の進捗に努めてきましたが、七月十九日の集中豪雨により、再び大規模な浸水被害が発生したことは、誠に残念な思いであります。今回の雨量は、記録的なもので、御笠川の流量が前回を大きく上回ったことから、事業計画の見直しについて国土交通省と鋭意、協議を重ねております。
 また、近年の局所的集中豪雨の発生状況を考慮すれば、想定を越えた洪水への備えとして河川改修のみならず、流出抑制のための流域対策や土地利用規制の他、水防・避難連絡体制の強化など、幅広い視野での対策が必要であると認識しております。そこで、国、県、関係自治体及び学識者で構成する「七・十九浸水対策連絡協議会」をこの八月九日に設置し、これらの総合的な対策について検討を行っているところであります。

災害援護資金貸付制度について

 この制度は、被災者の方々の住居の建て直しや生活支援のために、市町村を窓口として、三百五十万円を限度に、法定利率三パーセントで貸付を行うものでありまして、現在のところ約二百五十件の申込がなされております。
 県といたしましても、被災者の方々の負担を軽減するため、市町村の利子助成額の二分の一を補助する制度を、新たに創設することといたしております。

嘉穂劇場の復興支援について

 嘉穂劇場は筑豊のシンボルであり、また全国からも劇場復興の大きな期待が寄せられており、復旧が急がれるところであります。
 このため、地元において「嘉穂劇場復旧委員会」が立ち上げられ、県も参画いたしております。復旧にはおよそ3億円を要するといわれており、委員会ではまず募金活動を行うことが申し合わされました。
 この募金活動で十分な資金が集まることを期待しておりますが、それだけでは不足する場合、公的にどのような支援の方法があるのか、並行して研究して参りたいと考えております。

国指定文化財の災害復旧について

 国の特別史跡である大野城跡等につきましては、長い歴史を経て現存する本県の貴重な文化遺産であり、今回の被災は誠に残念であります。
 現在教育委員会とも相談し、その復旧方策について、国や地元自治体と協議を進めており、できるだけ早く元の姿に戻るよう、努力してまいります。

激甚災害の指定基準の緩和について

 農地等の災害復旧事業につきましては、九月五日に激甚災害に指定されたところですが、公共土木施設等についても甚大な被害を受けており、その早期復旧を強力に推進する必要があります。
 このため、本県といたしましても、指定基準の緩和について、九州地方知事会など様々な機会を通じて、ねばり強く働きかけて参りたいと考えております。

三井鉱山に対しての産業再生機構の支援問題の認識について

 去る九月一日に三井鉱山株式会社等に対し、産業再生機構が再生支援の決定をいたしました。
 この支援決定によって、債務超過に陥った三井鉱山株式会社が法的な整理などの最悪の事態ではなく、産業再生機構の支援により再生に向けた取り組みが始まることについては一定の評価をしております。

地域経済への影響と今後の対策について

 現在、伝えられている再生計画では、エネルギー関連事業及び機械関連事業をコア事業として発展を図る一方、セメント等の事業からは早期撤退を図るとともに、関係会社の整理統合を推進し、グループ経営の効率化が図られます。
 整理統合に伴う雇用、地場中小企業、平成筑豊鉄道等に対する影響が懸念されます。
 当面、必要な対策としては、従業員の再就職支援等の雇用対策をはじめ、関連企業や取引中小企業に対する金融支援・新たな取引のあっせんなどが考えられます。
 県としましては、再生計画の動向を注視し、庁内に対応を検討する組織を設けるとともに、地元自治体をはじめ関係機関と連携しながら、対策に万全を期してまいります。

県立病院改革計画の策定時期と各病院毎の実施時期について

 県立病院の問題についてでございますが、昨年の9月に行政改革審議会から答申を受けました。この答申を一つの大きな基といたしまして、これまで具体的な改革方針を検討してまいりました。そして県直営という現在の経営形態ではなかなか抜本的な改革ということは困難であるという風に判断をいたしまして、太宰府病院につきましては公設民営化、その他の4つの病院については民間移譲を骨格とした改革計画これを今策定をいたしておりまして、これにつきましては近日中に策定を終えたいと考えております。
 またご質問の具体的な改革の実施の時期でございます。
 これにつきましては、各病院の施設の状況、経営状況などを総合的に勘案をいたしまして、太宰府、朝倉、遠賀の病院につきましては平成17年度の春の実施を目標といたしまして、残るこの柳川、嘉穂病院につきましては3つの先行する3病院の改革の進行状況も勘案しながら具体的な移譲の時期を判断をしたいと考えております。


地域医療の維持と更なる向上について

 このような県立病院改革を行います場合に、地域医療がどうなっていくのかということについてのいろんな心配があるわけでございます。
改革を進めるにあたりましても地域医療の維持・向上がその後も図られるということが重要であるという風に考えております。
このような考え方の基に、これまで主としてその地域で県立病院が担当してきました医療につきましては、診療機能の維持・向上が期待できます医療機関へ移譲していくということになりまして、これを引き継いでいこうという考えでございます。これによりまして地域医療の確保をしてまいる考えでございます。
したがいまして、今後移譲先を選定するに当たりましては、このような視点を入れていく必要がございます。この点をしっかり検討しますために、外部の有識者の助言をいただく必要があるという風に考えておりまして、このような助言をいただく仕組みにつきましても作りまして、適切に対処してまいりたいと考えております。

改革に伴う職員処遇について

改革に伴います職員の処遇の問題についてでございます。
県立病院改革に伴います職員処遇、非常に大きな問題でございますが、基本的にはこれまでの専門的な知識、技術をそれぞれ皆さん持っておられますが、これを活用していくという観点に立ってやってまいりたいと思います。
同職種での異動、移譲先などへの再就職を斡旋をしていく、あるいは移譲先への出向派遣というような方法によりまして、雇用の確保に努めていきたいと考えております。並行いたしまして、退職手当の優遇処置についても検討してまいりたいと考えております。

県立病院改革にあたっての使命と責任について

 県立病院改革についての、本県だけではなくて全国的な意義ということについての認識についてご質問ございました。
 県立病院改革、福岡県の場合には、基本は民間移譲だと、という方針で今対処いたしております。この病院問題をそれぞれの自治体がどういう風に対処していくのか。多くの場合には、非常に経営的にも難しい問題を抱えているわけでございますが、これは、それぞれの各自治体の状況において、自ら判断をすべきものと考えております。
 本県の場合には、今申し上げましたように、民間の医療施設がずっと整備をされてきております。県全体としてみますと、医療供給体制が、量的にもまた質的にも非常に高まってきておるということでございまして、県立病院という形で、私どもが医療サービスを提供するという意義が、あるいは役割、これが薄くなってきておるという実態、更に病院の経営状況が、極めて深刻な状況にあるということでございます。
 このために、どうしても抜本的な改革を進めていく必要があるという風に判断いたしまして、今申し上げました方向で改革計画を作り、着実に実施をしていく、改革の実現に全力を尽くしてまいる考えでございます。

[今後の県財政運営について]

 

  それではこれより福岡県政がかかえる当面の重要課題について、具体的にお聞きして参ります。

 まず最初に財政問題についてであります。

 知事は、先の議会において、財政の中期的収支見通しに関する我が会派の代表質問において、「今の段階で中期の収支見通しの全項目にわたり詳細な見直しを行うことは適当でない」と明言され、その理由として三位一体改革による交付税や国庫補助負担金などの予測が困難なことを一番の理由にされました。

  確かに、三位一体改革を現段階で中期財政見通しに反映させることはほとんど不可能でありましょう。我々もそんな無理を要求しているわけではありません。

  問題は、知事が中期的収支見通しの意味をどれだけ真摯に認識しているかであります。中期的な収支見通しは、単なる第三者的な予測ではありません。「財政構造改革プラン」の中に位置づけられていることからも明らかなように、その収支不足をいかなる改革措置によって埋め合わせるのかという県当局の極めて実践的な指針であり、知事の行財政改革の断行に対する姿勢を問うものであります。

  知事は、「今年度の県税の減収が計画期間の十八年度まで影響するものと試算すると、平成十八年度の三基金の残高は三百億円程度に減少する見込みであるが、一方で、財政構造改革プランの二つの目標、これについては変更せずに着実に達成する方向で考えている」とまるで他人事のように答えておられます。

 本当にそうでしょうか。

  プランの目標は、十八年度までに、「特例的な県債発行から脱却する」ことと「三基金の減少に歯止めをかける」ことですから、形式上は確かに知事の言われるとおりになるのかもしれません。しかし、当初のプランでは十八年度末において五百億円(四百八十二億円)近い基金を残し、今後増やしていこうとする計画ではなかったのですか。当初の見込みから約二百億円近くも減少していながら、その後上向くのだから計画の達成だなどというのは非常に無責任な答弁ではないでしょうか。端数の問題で済ますことのできる額ではないでしょう。

  特例債にしても、十八年度までに四百八十億円の発行に止めることが計画の本質であり、いくら発行しても十八年度にゼロになればよいというものではないでしょう。

  さらに、当初のプランでは本年度から実施する予定であった調整手当のさらなる引下げや国を上回る退職手当の見直しが職員組合の反対からいまだ実現されていないことを私たちは知っています。歳入だけでなく、歳出面、しかも改革措置においても計画と実績との齟齬が生じてきているのです。

  問題は、三位一体改革が予定されている現下の不透明さにあるのではなく、今後一層の行財政改革を進めようとするとき、その内容や規模を決めるに当たって利害関係者が共通認識とすべき財政状況の実態、客観的な事実関係として議論のスタート台が極めて不透明、あやふやなものになっているところにあるのです。財政構造改革の枠組みがぐらつき始めているのです。この点を知事は理解されているのでしょうか。

  これでは、「財政環境が悪化している。今後も事業の一層の見直し、職員給与の抑制などの新たな改革措置を講じなければならないと考えている」などと勇ましいことを言われても、職員団体をはじめ痛みを受けなければならない関係者の理解や協力は到底得られないのではないですか。

  そこで、本年度プラン通りに改革措置を講じることができなかった項目としてどのようなものがあるのか、また後年度に与える影響額はどの程度なのか、改めてお尋ねします。

  また、関係者が共有すべき議論の出発点として明確な中期的収支見通しがないまま、すなわち修正されないまま、どのようにして関係者の理解と協力を得、今後新たな改革措置を追加、実行していこうとされるのか、知事の明快なる答弁を求めます。

 

 次に、知事は先の六月議会で本年度予算に計上した県税収入の確保について自信のほどを示されました。最近、株価が一時、一万一千円台を記録するなど回復基調にあるとはいえ、一方、長期金利が上昇するなど景気の動向が依然不透明でデフレ傾向にも歯止めがかかっていない状況を考えますと、少し楽観的すぎるのではないかという気持ちもいたします。

  財務省では、ここ数年、毎年度の税収見積もりが実績を下回り大きな食い違いを引き起こしている事態を重く受け止め、その是正を図るため、民間コンサルタントのノウハウを活用するとともに、これまでの大企業中心の聞き取りに加えて、各地域の企業からも業績見通しの聞き取りを始めるやに聞いております。新聞報道によりますと、企業の経理部門に本業の収益見通しを聞くだけでなく、経営企画部門などにリストラの状況や方針を確かめ、特別損益も含めた企業業績を予想していく考えのようであります。

  こうした状況は本県においても同様であります。実際、十四年度の予算においては、総額二百五十億円に及ぶ減額補正を行っております。

  特に、県税は、法人事業税をはじめ法人関係税のウェイトが極めて高いため、その税収予測の精度を向上させることは緊急の課題であると考えます。

  そこでまず、本年度の当初予算に計上した税収確保について、六月議会当時とその見通しに変更はないのか改めて確認させていただくとともに、法人関係税の税収を見込むに当たって、現在どのような手法で企業業績や業況の聞き取り、把握を行っているのか説明願います。

  また、昨年度に見られたような実績と予算の食い違いを極力縮小するためにも、聞き取りの精度を向上させる必要があると考えますが、国税当局との連携を含め、知事の基本的な方針をお尋ねします。

  さらに、県税の中期的な見通しに当たっては、国の指標だけに依存しない県独自の推計手法を確立することが重要であります。今後、三位一体改革の進展に伴い県税収入の歳入に占める割合が高まれば、こうした要請は一段と高まることは明らかであります。推計手法の研究調査に向けて、専門家による検討会の設置や所要の予算措置など具体的な実行に向けて早速取り組むべきだと考えますが、知事の見解を求めます。

  ところで、平成十六年度以降、資本金一億円以上の大企業に対する事業税について外形標準課税が導入されることになっており、本県でも今議会に県税条例の改正案が提出されています。これまでの法人所得に対する課税の場合には、税務署に提出された法人税関係の申告書の写しをもらえばほとんど自動的に適正な課税額の確認ができたわけでありますが、今後は、法人税関係の書類だけでは足りず、従業員に対する給与費はじめ企業のいわゆる付加価値額の実態などについて、県税事務所が直接企業に立ち入り、その会計・経理の中身を自ら調査し、申告税額の適正さを確認するなどの作業が必要になります。

  そういう意味では、県税は、この外形標準課税の導入によって初めて真の意味での自主財源を獲得し得たことになるのでありますが、緊急かつ最も重大な当面の課題はいうまでもなく、企業会計・企業経理のノウハウに精通し、課税業務を的確に遂行できる能力をもった税務職員の養成であります。

 そこで、このようなノウハウをすでに身につけ、直ちに外形課税に対応できる税務職員が現在どの程度いるのか、また今後、外形課税の実施までの限られた期間においてどのような基本方針のもと、どの程度の数の職員の育成を図る計画なのか、知事の基本的な考え方をお聞きします。

 






本年度、財政構造改革プランどおりに改革措置を講じることができなかった項目と後年度に与える影響額について

 平成十五年度は、既存の事務事業の見直しや外郭団体の統廃合等抜本的見直し、あるいは、県税収入の確保や県有財産の処分等による財政収入の確保等の各種の改革措置に取り組んでおりますが、このうち、事務事業の見直しや県有財産の処分などにおいて、計画を上回る改革措置を実施することにより、プランの目標どおりの改革効果を達成したところであります。
 一方、調整手当の支給率の引き下げや退職時の特別昇給制度の見直しは、平成十四年度における給与の減額改定の経緯もあり、現時点では実施に至っておりませんが、できるだけ早く実施できるよう、関係者と協議を進めているところであります。




中期的収支見通しの修正と新たな改革措置の追加、実行について

 本年度の県税収入見込みを基に今後の財政を考えますと、財政構造改革プランにおける改革措置に加え、更なる措置を講じる必要があると考えております。
 これらの具体的内容を決定するためには、県税収入や三位一体改革の動向を見極める必要があると考えておりますが、事務事業の見直しによる歳出削減や土地売却による財政収入の確保などについては、既に取り組みの強化を進めております。
 人件費の抑制につきましては、昨日出された人事委員会の勧告が、昨年度に引き続く給与の引き下げという厳しい内容となっていることも勘案の上、その取扱いについて検討してまいりたいと考えております。
 








本年度の税収見通しについて


 本年度の県税収入につきましては、八月末現在の調定実績が前年同月比で九十九・二パーセントとほぼ昨年並みの水準で推移しております。
 今後の見通しにつきましては、主要企業の申告状況等を見極める必要がありますが、現状で推移しますと当初予算の確保はできるものと考えております。







法人関係税に関する現在の税収見込みの手法とその精度の向上策について


 法人関係税の税収見込みは、税収実績や各種の経済指標等を基に見込み、特に税収の四割以上を占めている主要企業に対しては、聞き取り調査により、企業の業績見込みや税収動向の把握を行っております。
 今後さらに税収見込みの精度が高まるよう聞き取り調査の対象の拡大や調査内容の充実を図ってまいる考えであります。









中期的収支見通しにおける県税収入の推計手法について


 中期的収支見通しにおける県税収入の推計につきましては国全体の経済動向の見通しに加え、本県固有の産業構造など経済の状況も加味しながら研究する必要があります。
 具体的な推計方法について専門家の意見も参考にするなど研究を進めてまいりたいと考えております。




外形標準課税への現在の対応状況及び今後の対応策について


 外形標準課税は平成十六年四月一日以後に開始する事業年度から適用され、具体的な調査業務は平成十七年度から行うものであり、その対象は八百社程度であります。
 これまでも職員の企業会計に関する専門的知識の習得に努めているところでありますが、今後さらに、調査体制の充実強化や職員に対する実践的研修、調査マニュアルの作成などに積極的に取り組み、調査業務に支障のないよう努めてまいる考えであります。

[産業廃棄物行政のあり方について]

 

 次に産廃行政について六月議会に引き続きお尋ねします。

 まず第一点は、昨年四月に策定された「福岡県産業廃棄物処理計画」に基づく進行管理についてであります。

 この計画は平成十四年度から十七年度までの五年間の中期計画で、「本計画に掲げた数値目標等を具体的に実現していくためには、目標値の達成状況など計画の進捗管理を的確に把握し点検評価する必要がある」と述べられています。

 また、産業廃棄物については、特に全庁的組織である福岡県産業廃棄物対策推進会議を中心に推進していくものとするとされているところであります。果たして、この計画のように現実の産廃行政において、的確に進行管理が行われているのでしょうか。

 そこでまず、処理計画に基づく進行管理について、また、推進会議の位置付けについて、知事の明快なる見解をお聞きします。

 次に、RDF発電問題についてであります。麻生知事の特段の肝いりで建設された大牟田RDF発電所は、焼却灰や飛灰をリサイクルするため埋立を必要としない発電施設ということでありましたが、リサイクル技術の遅れから埋立処分を始めたと聞いております。

 このRDF発電施設については、三重県で死亡事故まで発生し、大きな社会問題ともなっていますだけに、その安全性とともになぜ埋立処分を必要としているのか、その原因、また、RDF発電構想については、技術的にどこか大きな瑕疵があったのではないかと心配する向きもありますので、具体的に説明願います。

 次に、公共関与の埋立処分場問題についてであります。久山町の公共関与による処分場が計画通りに五年間で閉鎖され、新宮町における公共関与の処分場計画が撤回されたことから、県としての公共関与の処分場計画は、当面白紙となってしまいました。

 確かに水道施設の上部に位置する山間部における処分場建設は、あまりにも問題が大きすぎて無理と考えざるを得ませんが、一方で、いずれ既設の最終処分場が満杯になることが確実に予想されているのでありますから、山間部を除外した、例えば海面埋立等による新しい処分場を必要とすることは間違いありません。

 そこで、新たな公共関与による埋立処分場建設計画を進めることが県政にとっても重大な課題となっていると判断しますので、知事の所信をお聞きします。





 次に、産廃行政に係る優良業者育成支援策についてであります。先に、本県では不適正処理防止条例が施行されました。この条例は、いわゆる監視と指導による適正化推進であり、これはこれなりに評価されるところであります。

 しかしながら、指導や監視だけでは、いわゆるモグラたたきに終わることも懸念され、産廃行政の前進が期待できないのではないかと心配する声も絶えません。

 こうした中で、本県の産廃業界においては、不法投棄のシステム開発など自主努力によって新しい方策を立ち上げようとする動きが見られます。

 先に新聞等でも報道されたように、通信衛星を使った不法投棄の監視システムづくりや各業者の許可状況や事業内容をデータベース化して、県民や排出事業者がいつでも分かるようなシステムづくりと取り組んでいることなどであります。

 これは業界や業者の自主的取り組みとして極めて画期的なことであり、県行政としてこれを支援し政策誘導できるならば、福岡型の新しい環境政策になりうるのではないかと私は期待しているところであります。

 そこで、まずこの業界自らの監視システムづくりをはじめとした取り組みについて、県はどのような認識と評価をし、支援についてはいかに考えているのか、また、データベース化については、県を含めた県下四つの政令許可機関の支援と協力が必要となりますが、対応についてお聞きします。

 

 

廃棄物処理計画の進行管理について

 廃棄物処理計画の着実な推進を図るためには、具体的に掲げた数値目標の達成状況を把握し、点検・評価することが重要であります。
 そこで、本県の産業廃棄物の発生量の約八十パーセントを占めます多量排出事業者の実績などをもとに計画の数値目標の達成状況を把握することとしております。
 これらの結果を踏まえ、全庁的な組織として本年度から新たに機能を強化しました環境対策協議会において、廃棄物処理計画の進捗状況を点検・評価し進行管理の推進を図っていきたいと考えております。



焼却灰の埋立処分について


 RDF焼却灰につきましては、関係者でリサイクルを基本にいろいろな研究開発を進めてまいりましたが、実用化には今しばらく時間を要する状況にあります。
 このため、現在のところ応急的に埋立処分されていますが、適正で安定的な灰処理が実現されるよう、できるだけ早い時期に見通しをつけたいと考えています。

RDFの安全性について
 
 大牟田リサイクル発電所につきましては、電源開発株式会社及び川崎重工業株式会社の実証プラントにおきまして、十分な実証試験を経て建設されています。
 特に、RDFの管理につきましては、厳格な搬入基準を定めているだけでなく、貯蔵サイロの温度等の二十四時間監視体制をとっており、また、異常時の対策にも万全を期しているところです。
 今般、サイロ内の温度上昇及び搬出コンベアにおける発煙という事態が発生しましたが、速やかに不活性ガスを封入するなどの安全対策を講じたところであります。
 今後とも発電所の安全な運転を第一義として取り組むよう、県としましても強力に指導してまいりたいと考えています。

公共関与による産業廃棄物最終処分場の確保について

 最終処分場の設置につきましては、施設に対する住民の不安感、廃棄物処理法の改正による基準の強化等、民間による新設が困難な状況となっております。その結果、中長期的には最終処分場の容量不足を迎えることが予測されます。
 このような中、産業廃棄物の適正処理を確保するためには、公共関与による最終処分場が必要であると認識しております。
 県といたしましては、廃棄物の発生を抑制し、資源化減量化を進めることにより、最終処分量の削減を図るとともに、国において検討されている広域的廃棄物処理センター構想の動向を見ながら、その確保について、今後一定の方向性を見いだしてまいりたいと考えております。

民間の不法投棄監視システムづくり及びデータベース化に対する支援につい

 八月から県内のNPO法人が、GPSやICタグを利用した不法投棄監視システムの試験運用を開始しております。
 このシステムは、排出事業者、収集運搬業者、処理業者が参加することによって、いままで十分に行えなかった産業廃棄物の運搬・処理の過程を追跡することが可能となり、不法投棄の防止に有効であると認識いたしております。
 県としましては、民間との役割分担を踏まえ、システムの普及について、県の支援のあり方を検討して参る所存であります。
 また、許可業者の事業内容などのデータベース化につきましては、適正処理を確保する上で有効な取組であります。
 このため、関係団体とも協議を行っており、県としましても、必要な支援をして参ります。


[農政問題について]

 

 次に農政問題についてお聞きします。 

 先にメキシコにおいて、WTO第五回閣僚会議が開催され、このなかで米国が関税上限案を主張するなどして、我が国の米生産がまさに掛け値なしで、大打撃を受けかねない厳しい状況に直面していたことはご承知の通りであります。

 勿論、WTO交渉そのものはすぐれて国と国の問題であり、政府間の交渉ではあります。しかしながら、問題がコメのことでありますから、地方だからといって放置できないことは当然であります。

 我が国がこうした内容の宣言案に同意できるはずがありません。

 交渉は決裂し、当面持ち帰りにはなっていますが、政府としてはいずれ決着をつけなければいけないことは過去の経緯からみて明らかであります。今後の推移によっては、国産米と輸入米との間で価格差がなくなる厳しい事態が予想されます。

 また、コメ以外でも小麦や乳製品など比較的高い関税に守られている品目にも大きな影響が考えられます。

 そこで福岡県としても、政府に対して、我が国が主張すべきことは主張して、基本方針を崩さず、米国等の農業先進国に対し、強い姿勢を求めることが必要なことと考えますので、知事の所信をお聞かせください。

 次に本県農業の当面する重要課題について、先に発表された県農業白書にそって何点か指摘しておきます。

 このほど明らかにされた農業白書を読みますと、本県農業において新たな傾向がますます顕著になっております。

 それは本県農業の中心が、水田率が他県に比べ高いなかで、その水田の過半をコメ作りが占めていながら、既に三十年を経過した相次ぐ生産調整のなかで、生産額は園芸作物を大きく下回り、全国有数の園芸産地になっていること。しかし、その園芸作物は野菜が中心であり、果樹については一向に元気がありません。

 次に食料自給率向上のため、全国的に飼料用稲の作付け拡大が呼びかけられ、推進されていますが、本県においてはまだ進まず、今後の大きな課題になっています。

 また、学校給食における地元農産物の提供についても、その実績については評価できるほどには拡大していません。

 都市化が進み、環境対策がただでさえ経営を圧迫してきた畜産農家については、新たに発生したBSE問題とその後遺症で、肉用・乳用ともにその飼養農家が大幅に減少しています。また残った農家といえども、多額に借り入れた資金の返済に追われ、経営が極めて厳しく、本県の今後の酪農振興を極めて心細いものにしています。

 いくつか課題を申し述べましたが、最も気がかりなのはやはりコメの問題であり、また、畜産農家に対する経営対策であります。

 先ほど述べましたように生産調整により、生産量、生産額とも大きく減少して参りましたが、コメは何といってもほとんどの農家で作られている本県にとっては基幹作物であります。

 今、平成二十二年度を目標に、水田農業政策の抜本的改革が進められておりますが、きちんと動きをとらえ、地域自らが考え、活路を見いだしていかないと、気がつけば水田は荒れ放題という事態を招きかねません。

 県では、今年度、県下の全集落に対して今後の水田農業についての意向調査を実施しているとのことですが、意向調査をすることが目的で終わってしまっては何もなりません。

 意向調査の結果を踏まえて、県として今後の水田農業の振興のため、何をどのようにしていくのか、また、畜産農家については、現在借り入れている資金についての償還延長等の支援策が、目下緊急の課題だと思いますので、併せて知事の明快な答弁を求めます。



WTO農業交渉について

 今回のWTO農業交渉では、米国などの農産物輸出国は、全ての関税に上限を設けることを主張しておりました。
 この内容で決着すると、コメなどの関税が大幅に引き下げられ、本県の農業においても深刻な影響を及ぼします。
 今回は、先進国と途上国との利害の対立により合意には至りませんでしたが、県としましては、農業の持つ多面的機能への配慮、食料安全保障の確保など、我が国の提案に沿った交渉を進めるよう、引き続き要望して参ります。



































BSE資金にかかる畜産農家の支援について


 BSE対応資金につきましては、本年の十一月以降、元金の償還が始まることとなっておりますが、償還が困難な農家も見受けられます。
 これらの農家に対しましては、償還期間の延長を図るため、既設の長期低利の負債整理資金や国が本年度新たに創設した借り換え資金を活用し、経営の維持、安定が図られるよう努めて参ります。



集落意向調査を踏まえた今後の水田農業振興について


 県としましては、意向調査の結果に基づき、各地域で産地づくりの方向や担い手を明確化したビジョンづくりが年度内に行われるよう、担い手モデルを作成するとともに、農業改良普及センター等による支援チームを編成し、市町村を指導して参ります。
 さらに、そのビジョンに基づき、経営感覚に優れた担い手の育成や地域の特色を活かした売れる米づくり、高品質な麦・大豆づくり等を推進し、本県水田農業の振興を図って参ります。




[教育問題について]

 

 次に教育問題に移りますが、最初は小中学校における学級編制の問題についてお尋ねします。

  この問題については、これまでも種々の議論がなされてきたところであります。これに対し県の方針は、国の定数改善計画の趣旨を踏まえ、学級規模については現行の編制基準を維持しつつ、教科の特性や児童生徒の実態に応じて少人数指導等を実施していくことにとどまっておりました。我々もまたそうした県の方針を理解して参りました。

  三十人あるいは三十五人といった少人数学級編制の教育的効果については、現在もなお明確な結論が出ておりません。このような状況の下で、県独自で莫大な財政負担を伴う一律的な制度変更を行うことは妥当とは言えず、抜本的に変更する理由は当面見当たらないと判断してきたためであります。

  ところが、本年四月に国の運用方針が改められ、法の枠内で学級編制の一層の弾力的な取り扱いができるようになりました。例えば、各都道府県の判断により、国の定めた標準を下回る学級編制基準を定めることが可能になったことなどであります。

  現在、ダイナミックとは申せませんが、社会は着実に地方分権に向かって流れています。教育の分野においても、地方が自ら創意工夫し、学級編制を弾力化することは、当該市町村にとっては地方分権の推進に資するのみならず、県にとっても少人数学級編制の教育効果を検証する先導的な試みとして意味があるのではないでしょうか。

  ちなみに、他県の学級編制の弾力化に対する取組をみてみますと、平成十五年度では三十の都道府県において何らかの学級編制の弾力化が実施されております。

  このような状況の変化を踏まえますと、本県としても、これまでと全く同じ方針を踏襲するだけでいいのか、何らかの対応を検討すべき時期に来ているのではないかと考えるのであります。

  そこで、本県でも市町村の意志を尊重した学級編制の弾力的な運営に踏み出す考えはないのか、また、そのためには、県がまず国が定めた学級編制基準の弾力的運営について、その見解を明らかにする必要があると思いますので、併せて教育長の明確な答弁を求めます。

  次は子どもたちの「心の問題」についてであります。

  最近の僅かの間だけでも、長崎では十二歳の中学一年生が加害者である幼児殺害事件。沖縄では中学生が被害者であり加害者であった集団暴行事件。さらに東京都では、小学校六年生の女児四人が「いいアルバイトがある」と誘われ、マンションに四日間監禁されるなど、子どもたちが心をなくし、またどこかに心を置き忘れてしまったのではないか、と思わせるような事件が相次いで起きました。本当に心を痛めさせられる時代になり、心配でならないところです。

  ところで、文部科学省では十八億円もの大金を投じて、「心のノート」を作成し小・中学生に配布していることを知り、早速県教委から現物を見せてもらいました。

  日常生活の中の基本的な生活習慣の定着や夢や希望を持って生きる生き方、自然や社会、友達、人間の大切さなどについて自ら学習できるとともに、家庭や地域と連携しながら学習を進める構成になっています。私自身読んでみて子ども達に正しく生きる力をつけさせるうえで、地道なものだけに大変有意義な教材ではないか、と理解を深めたところでした。

  ところが、巨費を投入して作成され、かつ大変有意義と思われるこの教材が、学校で十分活用されていないと聞き及び、誠に遺憾、残念な気持ちでいっぱいであります。思うに「心のノート」に対する認識の低さや教職員の道徳教育に対するアレルギー、すなわち道徳教育に対する根強い反発がその要因ではないかと察するものでありますが、いかがでしょうか。

 教職員の側には依然として「道徳」という言葉にアレルギーと反発があり、「心のノート」がどんなにすばらしい内容であっても、これを取り扱わないという道徳アレルギーが残っている。また、文部科学省の作成であるため、これを官制道徳教育の押しつけとみなして拒否している。このような話を聞かないでもありません。

  そして、そのようなことが事実だとし、かつ教職員組合によってもし組織的に行われているとするならば、これは学校長や市町村教委、そして県教委の指導力が問われる重大な問題でもあります。

  そこでまず、本県における「心のノート」の活用状況について、私が指摘したような事実の有無も含めて、その実情を詳細に説明頂きたいと思います。次に、県教委としてこの「心のノート」についての評価を示して頂き、学校現場での活用については、具体的にどのように指導して来られたのか。とりわけ、このノートは本来、家庭に持ち帰らせるべき狙いをもって作成配布なされたと仄聞していますが、学校保管の状態になっているところが多いことを知り、驚いています。このことについても今後どう指導されていくのか、併せて見解をお示し願います。

  また、いずれにしましてもこの「心のノート」問題は、道徳教育のあり方と深い関わりをもっているわけでありますから、今後の本県における道徳教育推進方針と、またそこでの「心のノート」の活用方針について、教育長の見解をお示し願います。

 

  さて私はこの代表質問の最後に、本県が抱える三つの県立大学の再編成整備の問題について、お聞きしておきたいと思います。

 この問題について、我が会派は、これまでもたびたび、単位互換制度の導入や三大学の再編整備のあり方などを取り上げ、知事の見解を質してまいりました。

  特に、再編整備については、急速に進む少子化の中、他大学の統合再編の進展状況などの実例を詳しく挙げながら、県当局が早急に取り組むべき課題であることを強く指摘して参りました。

  平成十三年二月の我が会派の代表質問では、麻生知事は、「県立三大学間で協議会を組織し、地域貢献、産業連携などの機能充実、大学間の連携方策について協議を進めている」ことを表明され、さらに「他の大学での再編統合の動きも視野に入れて、今後の県立大学のあり方について、幅広い観点から大学と協議検討を進め、本県の大学が魅力ある大学となるよう取り組んでいく」旨答弁されております。

  しかし、その後、どのような検討を重ねられ、どのような具体的成果を出されたのでしょう。知事答弁から二年半以上が経過しているのです。

  そんな中、県当局は、去る七月二十九日、「県立大学独立行政法人化改革検討委員会」を発足され、三大学の独立行政法人化、大学の経営・大学の質の確保の視点に立った改革方策、三大学の今後の方向について検討に着手されました。また、八月二十五日には第二回の検討委員会も開催されています。

  しかし、これまで二回の委員会に、過去二年半にわたって検討されてきた県当局としての検討結果や具体的な成果が議論のたたき台として提出されたようには聞いておりません。

  そもそも平成十四年の当初予算に県立大学の改革を検討する委員会の設置経費が計上されていたにもかかわらず、県当局はこの予算を全く執行せず、不要額として流しています。そして改めて、本年度当初予算に計上し直し、ようやく今回の検討委員会の発足に到っているのです。

  検討委員会を発足させるにしても、それ以前に県民や県議会に対して説明責任を果たすべきことがあるのではないですか。

  いうまでもないことですが、知事が表明されていた「地域貢献、産業連携などの機能の充実、大学間の連携方策」についての協議会の検討結果や「今後の県立大学のあり方」についての大学との協議結果であります。

  これらの点についての何らの情報提供や説明の履行がないまま、二年半も経過して、それも前年度の予算を未執行にした上、唐突に改革検討委員会の発足はないでありましょう。

  そこでまず、これまでの三大学の協議会における検討結果や、県と大学で協議を重ねられてきた今後の大学のあり方についての実りある成果をまず明らかにしていただきたいと思います。

  また、検討委員会の設置運営経費が十四年度当初予算に計上されていたにもかかわらず、それがなぜ執行されなかったのか、明快な説明を願います。

  さらに、これまでの大学等との協議結果と、今回発足した委員会の今後の検討内容とがどのような関係にあるのか、貴重な税金を投入して無用な重複審議に陥ることがないのか、納得のいく説明を願います。

  さらに、今回設置した改革検討委員会について何点かお尋ねします。

  まず、委員会の名称であります。委員会としては、独立行政法人化だけでなく、県立三大学の今後の方向については、場合によっては、県立病院同様に、私立への移譲といったことも決して選択肢として考えられないことではありません。こうした大胆な方策も審議の重要な柱であるはずですが、なぜ名称が「独立行政法人化改革」なのでしょうか。

  そもそも、大学を独立行政法人化することについては、国立大学の独立行政法人化が法制化されたとはいえ、県立大学については義務化されたわけではありません。

  しかし、委員会設置要綱を見ても、委員会の使命のトップに「県立三大学の独立行政法人化」が掲げられていることから、知事は県立大学の独立行政法人化を決断していると容易に判断できるわけでありますが、いかがでありましょう。

  そこで、三大学の将来像について青写真も示さぬまま、独立化すべしと決断された根拠は何か、詳細かつ客観的な証拠を示して説明願います。

  最後に、こうした批判に耐え得るだけの青写真が出来ているなら、それを県民、県議会の前に明らかにすべきであります。

  我が会派がこれまで提起してきた県立三大学の再編整備についての考え方を含め、知事の基本的な改革構想を明らかにするよう求めます。


 






(教育長答弁)
学級編成の弾力的運営について

 今回の国の運用方針の変更は、地方の判断の下に学級編成の弾力的運営を認め、各地の実情に即した教育を推進しようとするものであり、地方分権の趣旨にも添うものであると考えます。
 このため、県といたしましては、現行の四〇人学級の基本的枠組は維持しつつ、市町村の主体的意思を尊重する観点から、市町村が、配当された定数を有効活用しあるいは独自に非常勤講師等を雇用するなどの方法で、学級編成の弾力的な運営ができるよう、制度改善を進めて参る考えであります。






(教育長答弁)
「心のノート」の活用状況について 

 「心のノート」は、昨年文部科学省が作成し、全国の小中学生に配布した冊子であり、児童生徒が様々な場面で、道徳的な価値や生き方に関わる気づきなどを記録し、主体的に道徳性を育むための教材であります。
 配付以来、各種研修会等で効果的活用の指導を行い、少なくとも一度は活用した学校は小学校で九割、中学校で八割となっております。
 しかし、教職員の意識の違い等により、各教科、特別活動、家庭での対話などにおける広くかつ日常的な活用については、学校間・地域間の格差が見られる状況にあります。







(教育長答弁)
「心のノート」の評価と今後の活用について 

 「心のノート」は、道徳教育が大切にしている生命を尊重する心や、物事の善悪を判断する力などを児童生徒の日常生活の中で育むことができ、大きな意義を有するものであります。
 今日の児童生徒をめぐる様々な問題を考えると、そのより一層の活用を図っていかなければならないと考えます。
 今後は、こうした「心のノート」の意義について、すべての教職員の理解と強力を得るとともに、全教育活動を通して積極的な活用が図られるよう指導の徹底を図って参りたいと考えております。













(教育長答弁)
道徳教育の推進について 

 道徳教育は、児童生徒の豊かな人間性を育む重要な教育活動との認識のもと、従前から積極的に取り組んで参りました。
 しかしながら、共感を伴った理解となっていない、或いは、学んだことが実践と結びついていない等の状況が未だ見られます。
 そこで、今後は、これまでも取り組んできました心に響く道徳の時間の指導や体験活動による感性を揺さぶる道徳教育の充実に加え、「心のノート」の教材としての役割を明確にしながら、家庭や地域社会と連携を図り、児童生徒の内面に根ざした道徳性を育成するよう努めて参りたいと考えております。
























三大学とのこれまでの協議結果及びその成果について

 県立三大学との間では、他大学との連携や自己点検・評価の仕組み、地域貢献、ITの活用などについて協議、意見交換を行ってきたところです。
 その結果、学生による授業評価の実施、第三者機関による外部評価の実施、産学連携のための窓口の設置、研究費の競争枠の導入、個人業績評価制度の導入など、一定の成果を挙げてきたと考えております。









十四年度に予定していた検討委員会の設置が本年度になったことについて


 県立大学の改革は大きな課題であり、平成十四年度に外部有識者による検討を開始することとしておりました。
 しかしながら、国で検討が進められていた全ての公立大学に大きな影響を及ぼす独立行政法人化の仕組みが中々判明せず、そのまま議論しても、有用かつ深い議論ができないと判断し、十四年度の設置を見送ったものであります。
 今年の七月になってようやく地方独立行政法人法が制定され、公立大学法人の仕組みも示されたので、検討委員会を発足させたところです。









これまでの大学との協議結果と検討委員会との関係について

 これまでの協議結果による大学の改革への取組み状況や将来に向けた考え方については、各大学の学長から報告を行い、それを踏まえて検討委員会で議論がなされているところであります。









独立行政法人化は既に決めているのか


 県立三大学は、国立大学とは規模や資源など運営基盤が大きく違うことから、国立大学が法人化するからそれに倣えばよいということにはならないと考えます。
 検討委員会では、独立行政法人化を前提とした議論ではなく、大学の今後の改革方策と法人化のメリット・デメリットを検討し、改革を進める上で法人化は活用できるのかどうか、できるとすれば、どのような条件を満たした上で行うべきなのか、検討しているところです。





県立三大学の再編整備を含めた改革構想について


 県立三大学の今後につきましては、少子化が進む中、いかに質が高く、競争力ある大学にしていくかということが重要と考えております。
 三大学の再編整備については、改革を実現するための手段として、有効、必要であるのかどうか、外部有識者による検討委員会の意見も聞いて、三大学の基本的な改革の方向を定めてまいりたいと考えております。

 

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