YOMODA YASHIKI





僕は甘いキスを続けながら、虎徹さんの身体をゆっくりと撫でる。
ちゃぷ。
綺麗な脚と太腿。
僕の大好きななだらかな曲線の腰。
ちゃぷ。
お湯の抵抗も楽しい。お湯の中でも虎徹さんの肌は滑らかで触り心地がいい。
手の平をお臍の辺りからじわりと撫で上げていくと、虎徹さんの身体の力が少しずつ抜けていった。
「…ぁ…」
ちゃぷ、ちゃぷん。
両方の胸を手の平でかすめるようにして撫でる。
「…あっ、そこ…、やめ…っ」
ちゃぷっ。
「どこ?」
僕は小さく尖った虎徹さんの乳首を少しだけ強く摘まんだ。
「…んっ!お前…っ、さっき何もしないって…!」
「気が変わりました」
ぬけぬけとそう言う僕の顔を、虎徹さんが振り返って睨みつける。
「バニー…っ!」
「だって、こんな魅力的な身体を前に、我慢なんてできませんよ。僕、若いですから」
本日二度目の自己中的言い訳だ。でも、虎徹さんも本当はとっくに覚悟してくれているはずだ。
どんな約束をしていようが、本気であなたが嫌だと思えば、さっさと湯船から出ているだろう。
この遠回しな許可は、虎徹さんが僕を愛してくれている証拠だ。ついつい顔がほころんでしまう。
「こ…の、バカバニー…っ!」
 ほら、悪態をつく声までが甘い。
調子に乗った僕は、湯船の中の虎徹さんの股間に手をやり、じんわりと握りこむ。
それは、僕が触る前からすでに形を変え、硬くなっていた。なんのかんの言いつつ、虎徹さんはちゃんと感じてくれている。
 虎徹さんの陰茎を片手で擦りながら、もう片方の手で陰嚢を下からお湯をぶつけるようにして揺すってみた。
「ふあっ…!」
「これ、気持ちいいですか?」
「あ、遊ぶな…っ!…アッ!」
虎徹さんの声が上ずる。どうやら良いらしい。
僕はそのまま、普段とは違うお湯の抵抗を使ったやり方で、虎徹さんの性器を愛撫した。
虎徹さんが感じて身をよじる度、ちゃぷちゃぷと、音がするのも楽しい。
「…あ…、は…っ!」
虎徹さんの吐息まじりの喘ぎ声が、バスルームに反響して、予想していたよりもずっと大きく聞こえる。
―――すごい。いやらしい。
こんなに『お風呂エッチ』が興奮するものだったとは知らなかった。
もったいない。もっと早くにやっておけば良かった。
ベッドルームよりここは照度が高いため、赤黒い虎徹さんの性器が湯船の中だというのに、いつもよりはっきりと見える。
お湯の中に揺らめく、色の濃い尖った乳首もいやらしい。
のぼせたわけでもないのに、鼻血が出そうだ。
「…ふっ…ん、あ、ああっ」
鼓膜を刺激するエコーのかかった艶めかしい声に、虎徹さんの身体に密着した僕の分身がさらに反応した。
「…あっ、バニー…、お前、また大きくなったぞ…」
「そんなこと言って煽らないでください」
早く挿れたくなってしまう。まだ全然準備をしていないのに。
僕は前の愛撫を続けながら、じわりと虎徹さんの秘部に中指を差し入れる。
「…あっ!」
お湯の中で身体の芯まで温もったせいか、そこはすでに柔らかく、すんなりと奥まで入った。抵抗がなさそうなので、そのままゆっくりと抜き差しをすると、虎徹さんが大きくかぶりを振った。
「や…やめっ…!」
「こうした方が気持ちいいでしょう?前も大きくなっていますよ」
僕はかまわず指をもう一本増やした。
その拍子にお湯が中に入ってしまったのか、虎徹さんがぶるっと身体を大きく震わした。
「あ…熱っ…!や、め」
 虎徹さんの後ろは充分に柔らかい。このカンジなら、このまま挿れても平気そうだ。
僕は、身体の位置を少しずらして、自身のペニスの切っ先を虎徹さんの後孔に突き立てた。

「そ、れ以上はダメ…だ、バニー」
急に虎徹さんが振り返り、僕の動きを止めた。
「まだ充分じゃありませんでした?なら、もっとじっくりほぐして…」
「違う…違うんだよ」
虎徹さんは、はあ、と大きく息をつくと、恥ずかしそうに言った。
「お湯ってそれほど潤滑良くないから、このまま中で挿れるとお互い痛いかもしんない…」
「ああ、なら、ジェルを使いますね」
「いや…、そういうの使っても、湯の中じゃすぐ流れちまうから…」
「……それは、過去の経験から?」
僕の質問に、虎徹さんは罰が悪そうに、だが、正直に答えてくれた。
「ごめん…。でも、若い頃一回試したきりで…その…結局未遂だったし…」
「……」
ああ、僕はまた奥さんに嫉妬している。
どうしようもないことだし、みっともないことだと思うのに、それでも、こんな風に虎徹さんの過去のことを知ると胸がぎゅうっと苦しくなる。
虎徹さんも僕に悪いと思っているらしく、普段からなるべく奥さんの話題をさけて、僕の子供のような独占欲を刺激しないよう、大人の気遣いをしてくれている。
でも、虎徹さんの心の大事な部分に、あの美しく優しい素敵な奥さんが今も住んでいると知らされるのは、今の虎徹さんを丸ごと愛しているつもりでも、苦しくなるのだ。
こんな時、僕はつくづく自分が男で良かったと思う。
もし、自分が女だったら、虎徹さんの心の中でことごとく比べられてしまっただろうから。
料理をしても、SEXをしても、すべてあんな完璧な女性と比べられたら辛い。どんなに頑張ったって負けてしまう。
そして、こんなことくらいですぐ動揺する精神的にもろい情けない人間なんて、比較にもならないだろう。
すっかり沈んでしまった僕を心配して、虎徹さんが唇に優しくキスを落とした。
「バニー、悪かった。
な、もう風呂はやめとこう。のぼせちまうかもしんないし。
そのかわり俺、ベッドでサービスするから、な?」
優しい虎徹さんは、僕を甘やかす。
「……僕とは、ここで最後までしてください」
奥さんと最後までしなかったのなら、この僕と。
僕は、自分でも呆れるほど子供で我儘だった。
「それがバニーの望み?」
「はい…」
虎徹さんは眉を下げて、観念したように笑った。
「そっか。仕方ねえなぁ。のぼせそうになったら上がるぞ」
ねえ、気がついています?
あなたがそんな風に甘やかすから、僕がどんどん我儘になるんですよ。


虎徹さんは、湯船の中でザバッと立ち上がった。
そうして、向こう側のバスタブの端に手をつき、僕の方にぐっとお尻を突き出した。
「お湯の外で挿れたら、たぶん大丈夫だから…」
てっきりバスタブから出て、シャワーブースで立ったままするのだと思っていたのに、想定外だった。
なんて格好だ。まるで女豹のポーズだ。
濡れた身体がしなり、なだらかな曲線を描いている。大事な部分が丸見えの、とんでもないアングルだ。
そんな恥ずかしい姿態を見せつけているくせに、真っ赤な顔で恥ずかしそうにこちらを見上げるなんて、この人はそんな技をどこで覚えてきたんだろうか?
「こ…虎徹さん…!」
「ジェル、用意してんだろ?使ってくれ」
僕は慌ててバスタブ近くに置いておいたジェルを手に取り、虎徹さんの秘部に塗り込んだ。
こんな色っぽい虎徹さんを前にして、そう長く我慢なんてできるわけがない。僕は挿れる前に暴発してしまわないか気が気でなかった。
指で中を掻き回すようにすると、虎徹さんの足が震える。
「…んっ…も、いいから…」
早く、と全身でせがまれている。
 僕は急いで自身の欲望を虎徹さんの身体に埋めこんだ。
「アァ…ッ!」
ひときわ高い声がバスルームに反響する。
「虎徹さんの中、熱いです…っ!」
虎徹さんの身体の中が熱く、柔らかい。内部全体がうねっているような感じだった。
「あ、ああっ、お前も…熱…っ、ア!」
「…ううっ!」
虎徹さんの中があまりに気持ち良すぎて、僕は不覚にも一分近くで達ってしまった。
「…っ、す、すみません、虎徹さん…」
「ははっ…、いいよ。どうせバニーちゃんは、一回じゃ終わらねえだろ?」
虎徹さんは貫かれたままの体勢で、僕の方を見て笑った。
そうして前を向き直り、自分のお腹の方を見てポツリと言う。
「はぁ…熱…っ、今日のバニーの…、精液まで熱いのな…」
――なんてことを言うんだろう、この人は!
僕は、ぐっと虎徹さんの腰を掴んだ。
「あ、あれ?バニーちゃん、もうでかくなった…?」
「そんなこと言われたら当然ですよ!僕、若いんで!」
僕は復活したそのままの勢いで、ガツガツと勢いよく腰を打ちつけた。
「わっ!やめ…っ!激しすぎ…っ!」
パンパンと、肉がぶつかる音も、互いの身体が濡れているため、いつもより大きく聞こえる。
僕が腰を動かす度、二人の身体が浸かった部分のお湯が、ザブザブと音を立てる。
「あ!ア、アアッ、はぁっ、んーっ!」
そこへ甲高くなった虎徹さんの喘ぎ声も加わり、いろんな音が反響して、バスルームはとんでもなくいやらしい空間となった。
虎徹さんもそう思ったのだろう、慌てて自分の口を片手でふさいだ。
「…ふ…、んんっ」
「虎徹さん、ダメです。ここで口を塞いだりしたら、酸欠になっちゃいますよ」
僕が虎徹さんの手を外すと、真っ赤な顔をした虎徹さんが、こちらを睨みつけて言った。
「声、エコーがかかって、恥ずかしいんだよっ」
 それがいいのに。
ああ、でも、恥ずかしがる虎徹さんも可愛い…っ!
僕は、ぎゅうっと虎徹さんの身体を抱きしめた。
「可愛いな…。虎徹さん、自分のエッチな声に感じちゃったんですか?」
調子に乗った僕の言葉に、虎徹さんが呆れたように言う。
「バニー…、それ、おっさんくさいぞ…」
「いいんですよ。僕がおじさんくさいくらいで、ちょうどつりあいがとれるでしょう?」
僕は、とびっきりの笑顔でそう言って、虎徹さんの頬にキスを落とした。
そうして、また腰を前後に動かし始めると、ぐぐっと虎徹さんの中が僕を締めつけてきた。
虎徹さんがイきそうになっている証拠だ。
僕は後ろから虎徹さんのペニスを擦りながら、角度を変えて虎徹さんの良いところに打ちつけるようにした。
虎徹さんの息が荒い。
「あ、バニーっ、ああっ!」
虎徹さんが気持ち良さそうな声をあげて達した。
「…あ…」
虎徹さんの身体の力が抜け、そのままずるずると後ろに倒れこんでしまった。
そうすると、虎徹さんを後ろから抱えた最初の体勢になった。いわゆる背面座位だ。
「はー、はー、はー…」
虎徹さんの息が整うのを待って、ゆっくりとピストンを開始する。
「虎徹さん、もう少しだけ、僕につきあってくださいね」
僕が虎徹さんの中に出した精液が潤滑剤になったのか、お湯の中でも結合部がスムーズに動く。
湯船でちゃぷちゃぷとピストンを繰り返すのは、ずいぶんと楽だった。浮力のおかげで、虎徹さんの身体を持ち上げるのも軽い。
「あ、あ、あ」
虎徹さんの声が甘い。僕は、胸元や股間を愛撫しながら、耳元で囁く。
「虎徹さん、好きです…」
「あ……、ばにぃ…」
 虎徹さんが顔を後ろに向けて、僕の唇に軽くキスをする。
 この体勢だと、ディープキスが難しい。
それを残念に思っていると、虎徹さんも同じことを考えたのだろうか、唇をとがらせてボソリと言った。
「俺、やっぱり、こっちがいい…」
そうして虎徹さんは、僕自身を身体に埋め込んだまま、身体を180度回転させて、僕の方に向き直った。
「う…、んん…っ!」
虎徹さんがぐるっと回った瞬間、ぎゅっと捻じられるように締め付けられ、危うく達してしまいそうになる。
「こ!虎徹さん、何を…っ?」
僕は驚いたのと下半身の刺激で、上ずった声を上げた。
「はは…っ、お湯の中ってのも、いいな。入れたまま回んの、楽にできたぞ…」
はぁはぁと荒い息を吐きながら、虎徹さんはなんでもないように笑った。
今日の虎徹さんは予想外のことばかりで、参ってしまう。
そして、虎徹さんは僕の首に両手を回して、リップ音のする可愛いキスをした。
「こうやって、バニーの顔、見える方がいいんだ…」
「…虎徹さん…っ!」
僕達はそのままむしゃぶりつくようにキスをして、湯船の中で第二ラウンドを開始したのだ。





僕達は今、完全に脱力状態にある。
燃えた…。
そして、燃え尽きた…。
めちゃめちゃ興奮して、互いに三回ずつイった。
たとえようもない解放感の後は、だる重くなった二人分の身体が待っていた。
僕達はなんとか這うようにしてバスタブの外に出たものの、脱力したまま、バスルームの床に素っ裸で大の字になって寝ころんでいる。
天井を見上げながら、くらくらした頭で会話した。
「…僕、最後の締めとして、SEXした後は虎徹さんの身体をソープで綺麗に洗ってあげる計画だったんですが…今日はちょっと、無理そうです…」
「うん、俺も、のぼせそう…つーか、倒れそう…いや、俺達、もう倒れてんじゃね?これ…」
僕達は二人で大きな溜息をついた。
「お風呂エッチって、意外と体力使うものだったんですね…」
「ああ、知んなかったな…」
そのまま寝てしまってはまずいので、僕達は互いに支え合って身体を起こし、足を引きずるようにしてバスルームから出た。
そのまま一気にベッドルームへ…と思った時、無情にもPDAからコール音が鳴り響く。
『ボンジュール、ヒーロー』
アニエスさんのきびきびした声に、僕達は同時に頭を抱えた。

「なんてこった…!」
「なんてことだ…!」

その後、出動したタイガー&バーナビーは、二人とも近年まれに見るぐだぐだ具合で、転んだり、穴に落ちたりと、みっともない姿をTV画面に晒してノーポイントという、最悪の成績を残してしまった。後でロイズさんにこっぴどく叱られてしまったのは、当然のことだろう。
睡魔と戦いながらロイズさんの説教を聞いた後、てっきり虎徹さんから「お前が風呂場であんなことするから」と、責められると思っていたのに、何も言われなかった。
虎徹さんは一言、目の下に大きなクマをつけた疲れきった顔で、「帰ったら、すぐ寝よう…」と、ぼそりと云っただけだ。
これは案外虎徹さんも、「お風呂エッチ」を気に入ってくれたのかもしれない。それなら二度目、三度目のチャンスだってある。
僕は虎徹さんに見えないよう、密かにガッツポーズをとった。





後日、休憩中のオフィスで、僕は何でもない風に虎徹さんに話しかけた。
「虎徹さん、あれから僕、調べたんですが、『ローション風呂』というものが、世の中にはあるそうです」
「ローション風呂?」
「はい、専用のローションをお風呂に入れるとお湯全部がローションのようにとろとろになるそうで…ぬるぬるして気持ちいいそうですよ。
一度、試してみませんか?」
僕は、にっこり笑って虎徹さんの返事を待った。
虎徹さんは帽子で顔を隠して口をとがらせながら、それでもはっきりと答えてくれた。

「次の日が休みなら、一回くらい試してもいいかな…」





おしまい!