野生図鑑 鳥を訪ねて南へ北へ
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BRAZIL 旅行記

Sep/'02


 
ROAD TO BRAZIL
 

鳥見をはじめるずっと以前から、オオアリクイやカピバラが棲む世界最大の湿原パンタナール、ジャガーやアナコンダが棲むアンゾンの大密林、そしてゴールデンライオンタマリン等の猿が棲む大西洋岸の森林などブラジルに対する憧れはあった。が、旅行費用が馬鹿高い上に、地球の真裏の国なので往復するだけでも3〜4日必要なので手が出なかった。しかし、中米のコスタリカに行ってコンゴウインコやオオハシ類、ハチドリ類を見てからは、ブラジルへの想いは膨らむばかりだ。コスタリカではベニヘラサギ、アメリカトキコウ、ヒロハシサギをそれぞれ1個体のみ見ることができたが、これらの水鳥が群翔ぶパンタナールを想像すると、もう我慢できなくなった。しかし日本からのパッケージ旅行の値段は自分が満足できる内容(パンタナール、アマゾン、イグアスの滝を訪れる)のものでは61-2万円くらい、パンタナールのみのものでも40万円台の後半ぐらいで、問題外だった。現地の旅行会社の英語ツアーを利用すればもっと安く上がるのではないかと考え、日系の旅行会社の日本支店に見積りを依頼すると、アマゾンの奥地の保護区も希望したこともあり、60万を越えてしまった。次に、イギリスやアメリカの会社が催行しているパンタナールとアマゾンを訪れる探鳥ツアーのサンパウロ合流料金+航空券代を調べると10万程安くなって50万位で行けることが判明したが、まだ高い。やはりブラジルの会社に直接頼む以外にないと考え、インターネットでいろいろ検索したが、英語での検索では情報がなかなか集まらず、といってポルトガル語の辞書を借りて来て調べるだけの気力もない。結局、一番参考になったのは”FAT BIRDER"(世界各地の探鳥記を集めたイギリスのウエブサイト)だった。複数のレポートに出てきたブラウリオというガイドが優秀そうなので調べたところ、彼がガイドする”Pantanal Bird Club”のPantanal & Chapada tourとCristalino Reserve (アマゾンの支流の支流であるCristalino川流域の保護区)tourプラス航空券代で40万ちょっとで行けることが判り、清水の舞台から飛び降りるつもりで思い切って参加することにした。ほとんどのブラジルの探鳥記にはリオとサンパウロの中間にあるItatiaia国立公園での探鳥のことが書かれており、ハチドリ等がいっぱいいる素晴らしい所らしいとわかるとどうしても行きたくなった。アマゾンの奥に棲むウアカリ(真っ赤な顔の猿)、リオの近郊の保護区にいるゴールデンライオンタマリン(金色の猿)、鳥類も豊富だというイグアスの滝との天秤にかけ、結局、ブラジル旅行の最後に1泊2日の強行軍でイタチアイア国立公園に行くことにする。コスタリカのモンテベルデのロッジでは部屋の窓から餌台にくるハチドリを堪能できたが、探鳥記の著者たちが宿泊したイタチアイアのHotel Ypeもホテルにいながらにして探鳥できるところらしいので、予約のメールを出すが梨の礫。しょうがないので、探鳥記の著者たちが皆、宿泊はしなかったが探鳥に訪れて良いところだったと書いているHotel Simonを予約する。

 Day0  成田からLA経由で丸1日以上かけてサンパウロに到着。Tシャツ1枚では寒く、関税を通過するとすぐに長そでを羽織る。現地通貨のレアルを手に入れようと空港内のATMに行くが、英語の説明への切り替えのボタンがない。いろいろな国を旅行しているが初めての経験だ。スペルからボタン操作の意味を類推しようと試みる。4社のATMが並んでいたが結局どれからも引き出せなかった。旅行の時は最低限の現金しか持たず、不足したらその都度ATMから引きだすようにしているので、日本円で1万円程度と米ドルで500ドルしか持っていない。この旅最初の小トラブルだ。カード払いのできるところでは極力カードを使うようにすれば、なんとかなるだろう。空港の本屋に入り、鳥と動物の図鑑を探すがない。英語の旅行ガイドを物色するが、役立ちそうなものはない。US$100札を使ってポルトガル語と英語の両方で説明がかかれていた国立公園のガイドブックを買う。店員のお姉さんにいやな顔をされるが、これでレアルが手に入ったので、カフェで一休み。自分の便のゲートを確認するためにモニターで探すと自分の便には行き先が5つも付いている。パンタナールの南の玄関口、カンポグラジを経由して、自分の目的地である北の玄関、クイアバに到着後、さらに首都ブラジリアなど3ヶ所を経由してサンパウロへ戻るらしい。サンパウロから3時間ちょっとでマットグロッソ州の州都クイアバに着く。上空から見た感じでは郊外には高層マンション等もあるかなり大きな町のようだ。その割には空港はこじんまりしていて、information desk も見当たらないし、付近の地図もない。今日のホテルの場所は空港から3ブロックの所としか聞いていない。空港の玄関を出て右に行こうか左へ行こうかと思案していると、タクシーの運ちゃんたちが寄ってきてセントロへ行くのかときくので、ホテルの名を言うと親切に行き方を教えてくれた。もっとも彼らの言うことは一言も判らなかったのだけど、手振りだけで理解できた。感謝。空港から300メートルの道をホテルに向かう。サンパウロと緯度ではそう変わらないのに、一転して強烈な暑さだ。チェックインしようとするが、フロントのお兄さんの言うことが全く理解できず、思わず"アイ・ドント・スピーク・ポルトギース”と言ってしまった。これが今日二つ目の小トラブルの素。スペイン語は大丈夫かと聞かれ、だめだと答えると、英語ができる者がもう少しで戻るからと言われ(かってにそう言っていると想像しているだけだが)、最後に”ジャスト・モーメント”と言われたので、冷房の効いたロビーでクールダウンをかねて待つことにする。その間にも7,8人のイカツイおじさんばかりの1団がチェックインして、カップルがチェックアウトした。みんな大きな釣竿用のケースを持っている。鳥バカのみならず、釣りばかにとっても、パンタナールはパラダイスなのだ。開高健のオーパ・オーパの世界だ(ちょっと古すぎるか?)。フロントが一段落着いたようなので、近付いて行くと、手でも少し待ってくれと合図される。このままではいつまで待たされるか判らないので、ポルトガル語会話の本を取り出し、”私はフクダです。日本人です。予約してあります。”と言うフレーズを読み上げると、”ブラウリオのところのツアーか?”と聞かれ、”そうだ”と答えるとすぐに部屋に通された。ブラジルでは私の下手な英語はまったく役立たず、カタカナ表記の会話本を読み上げた方がずっと賢明であることを学んだのが今日の唯一の収穫だ。そういえば、パリの小さなホテルに行ったときもこれと同じようなことがあったっけ。

 
PANTANAL
 

, Blue-tufted Starthroat、ハチドリ4種が現れ、歓声が上がるが、動きが速く、1人だけ高倍率のレンズで追っている私だけが付いてゆけずストレスがたまる。交通量は少ないが時折背後を高速で自家用車やトラックが走ってゆくので落ち着かない。上空を、Southern Crested Cara-cara, Black Vulture, Savanna Hawkの猛禽類とToco Toucan(オニオオハシ)が飛び、証拠写真を撮る。道の反対側の樹にGolden-chevroned Parakeetが止まる。今度は順光なのでまともな写真をゲットしてここでの探鳥を終了。

 

朝、チェクアウトしているところにガイドのブラウリオが近付いて来て、自己紹介のあと、今回の旅の同行者を紹介してくれた。シカゴから来たMr. W.C. & Mrs. C.C.御夫妻、ミネソタから来たMさんとKさんの女性二人組。4人の双眼鏡を見ただけでシリアス・バーダーであるあることがわかった。私の双眼鏡もそれなりのちゃんとしたものであるが、彼らの双眼鏡は私の4-5倍くらいのお値段の高級品ばかりだ。WCさんとMさんが一眼レフを肩から掛けていたが、撮影が主ではないようだ。フィールド・スコープやビデオカメラを持っている人もいない。4人とも双眼鏡で見ることのみに集中する正統派のバーダーのようだ。この米国のシリアス・バーダー4人と日本のカメラマン1人、それにガイドのブラウリオとドライバーのアルマーニオの7人でパンタナールへ向け7時に出発。車中では、主にC.C.さんとM&Kさんが会話して、時折私に話しが振られる形で、自己紹介第二段が行われる。今回が南米初旅行の私以外は、南米諸国をいろいろ廻られているようだ。4にとも日本にも複数回行ったことがあると言う。C.C.さんに日本では何処に行ったか訪ねると、北海道や九州を縦断するかたちで探鳥して廻ったとのこと。それに軽井沢や舳倉島にも行ったと聞き、京都等の答えを予想していた私は開いた口が塞がらない。MさんとKさんの見た鳥の数は2千台の後半、私の3倍強。Cさん御夫妻には聞きそびれたが、それ以上であることは間違いない。とんでもない強者たちと一緒になったものである。わたしはと言えば、探鳥ツアーなるものに参加するのは今回が初めて、いや国内の探鳥会にも一度も参加したことがないのである。

 車は何処までもまっすぐにのびるハイウエイを進む。道の両側には牧場が広がり、牛やアマサギ、それにロバに乗ったカーボーイ等、いかにも南米といった風景が広がる。牧場には無数の蟻塚がそびえ立っている。南米には、アリドリをはじめ、アリモズ、アリミソサザイ、アリツグミ、アリヤイロチョウなどアリの付く鳥が百種類以上いるのもうなずける。もっとも、後日ブラウリオから聞いた話では、この中で本当にアリを食べるのはAntbirds類だけということだが。クイアバを出て1時間半、最初の探鳥地に到着。ハイウエイ脇の樹の花にハチドリがくるということだ。第一号はLittle Woodpecker。逆光で輪郭のみを撮影。双眼鏡では辛うじて緑色の身体と頭の赤がわかる。Fork-tailed Woodnymph, White-tailed Goldenthroat, Glittering-throated Emerald