野生図鑑 鳥を訪ねて南へ北へ
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韓国・冬


 

Korea, Winter

 

(12/20-23)年末で期限切れのマイルを使い、天皇誕生日の前日に1日休暇をとり、韓国に4日間の鳥見に出掛けることにした。第一の御目当ては日没時の数万羽のトモエガモの大飛翔を見ること。トモエガモはこれまで北陸で見た20-30羽が最高である。第二の御目当ては毎年国内に飛来の話は耳にするが、軍資金や時間の都合で見に行けなかった珍鳥(Black Stork, Eurasian Black Vulture, Scaly-sided Merganser, Upland Buzzard, etc.)を数種類見ることである。これらの鳥は韓国でもやはり珍鳥であるが、日本よりは見れる確率は高い。計画段階でScaly-sided Merganserの定期的飛来地は昨シーズンは定着しなかったと聞き、候補地から外した。Eurasian Black Vulture, Upland Buzzardを見るのに最適の北朝鮮国境の非武装地帯近郊も諸般の事情により断念する。仁川(ソウル)より入り、金海(プサン)より出る行程を立てる。
12/20 (土)Suwon(水原)、Sosan(瑞山)この旅で唯一の観光に城壁都市水原の見物に出かける。長安門から八達門まで1時間弱歩いて城壁を4/5周する。寒さで耳がちぎれそうだ。北海道の真冬並の寒さだ。川は完全に凍結し、子供がその上で遊んでいる。鳥もハトとカササギ以外目に付かないし、寒くて探す余裕もなくひたすら歩く。城壁の外には大きな大聖堂がそびえ立ち、東洋の古城とのミスマッチが実にいい。その後、韓国屈指の探鳥地 Sosanへ。湾には日本でも御馴染みのカモ類、カモメ類、カイツブリ類が、田んぼにはヒシクイの群れが見える。幹線道路沿いからのサーチを終え、一番西側の比較的小規模の干拓地の農道をまわるが、ヒシクイの小さな群れとサギ類がいただけだったので、一度幹線道路に出てその東隣の広大な干拓地へ入ろうとする。しかし、農道の入口で警備員に止められる。ハングル語がまったく出来ない自分が、英単語交じりのハングルでの説明を聞いて理解した(と勝手に思い込んでるだけ)のは、この広大な干拓地は全て某大財閥の管理地で、Sosan の町にある事務所に行って許可証をもらって来なければ入れないということだった。(自分の理解が正しければ)韓国では財閥が大規模農業もやっているのかと感心するが、こんなことは予め知った上でやって来るのが当然なのだ!目の前から奥に何キロも続く広大な農地にはいかにも鳥が沢山いそうである。2週間前の情報ではBlack Stork, Eurasian Black Vulture, Chinease Gray Shrike等の目撃情報に加え、超大物の未確認情報もあり、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にする。東側の干拓地は入ってもよさそうだったので(ここも本当は許可証が必要なのかも?)、農道を奥に進む。刈り取り後の牧草地と田にはヒシクイの群れがいっぱい降りていた。凄い数で、日本の飛来地より遥かに多い。広大な干拓地を財閥が一手に管理することで、結果的に渡り鳥にとっての絶好の環境が維持されているのが実感できた。マガンの数は思ったよりずっと少なくヒシクイの2,3%に過ぎないのではないか?ヒシクイの大群の中に時折、身体が二回り程小さく体色もずっと薄くみえるヒシクイ?の数羽の群れが見える。亜種ヒメヒシクイか?(ヒメヒシクイの写真を見たことは無いし特徴の記述も読んだことがないのでわからないが・・・)ガンの群れを小一時間サーチしてまわって、見つけたレア雁はカリガネ1羽だけだった。ここにはアカツクシガモの数百羽の群れも毎年やって来ると言うことだったが、見つけることは出来なかった。唯一の救いは、コウノトリ2羽を堪能
出来たこと。 一ヶ所だけムシロで出来た観察用ののぞき穴が設置されていたので覗いて見ると白い大型の鳥が6羽寝ていた。感じでヘラサギspとわかるが、全く顔を上げてくれなかった。湾の小さな中洲にはオナガガモがびっしり。

12/21 (日)Mokpo(木浦)、Haenam(海南) 朝食後、ホテルの裏手にある儒達山(228m)の6合目あたりまで登る。大陸の固有種に会えないかと期待するが、途中出会ったのはカササギとシラコバト以外は日本でもポピュラーな種ばかりだった(キジバト、ヒヨドリ、ツグミ、シジュウカラ、ジョウビタキ)。リスを見ながらのんびりしているとミヤマホオジロのペアが来てくれた。今シーズン初見、これで満足して下山することにする。途中、ハチジョウツグミが1羽、ツグミの群れに混ざっているのを見てホテルに戻る。ホテルのある木浦の旧市街、高層アパートの立つ新市街を抜けると直に海南群に入り、車窓には田園風景が広がる。45分程で目的地、Kochonnam Lakeに到着。湖の方へ別れる道を30m程入ると詰め所の様な小屋があり、おじさんから渡り鳥のパンフレットを貰う。道路脇の土手の直ぐ前の湖にマガモとトモエガモが見えたので写真を撮ろうとすると、おじさんがもっと奥に行けとも凄い数がいるから早く行けと追い立てられる。300m程行くと他に1台自動車が止り湖を見ている人たちがいたので、自分そこで車を降り土手に上がる。物凄い数のトモエガモの群れが浮かんでいる。ハングル文字は読めないが、パンフレットで一番数が多いのが30,000だから、おそらくこれがトモエの飛来数であろう。国内でもそうだが、トモエは一番臆病なので再奥にかたまっている。それでも、一番手前の方にいる個体はデジスコだとアップで撮れそうなので、準備に取掛る。その間にさらに2台の自動車がやって来た。ツアイスでアップのオスの顔を拝んだ後、撮影に移ろうとするとトモエが一斉に飛び立ち始めた。行楽客が面白がって、大声を張り上げてカモを飛ばして喜んでいた。やられた。こんなことなら最初のポイントで撮影しておけばよかった。トモエガモの大群は葦の中に飛び込んだり、さらにずっと遠くの湖面に着水してしまった。大声を上げていた3人組の1人が近付いて来たので、どうやって止めるように伝えようか考えていると、向こうも直ぐにこちらがハングル語がわからないことを悟った様だ。親切にも、ジェスチャーで自分が石を投げてカモを飛ばしてやるから、お前はそれを写真に撮れと勧めてくれる。それだけは止めてくれる様に、何とかジェスチャーで説得するとわかってくれた様子で、走り去る。夕暮れ時にえさ場に向かうトモエの大飛翔を撮影してこそ意味があるし、見て感動するのだし、そのために自分は遥々韓国まで来たのだ。湖と反対側の田んぼを双眼鏡でサーチしながら進む。小鳥(おそらくホオジロ類かタ
ヒバリ類であろう)は無視して大型の鳥を探すが、サギ類や雁類すらまったく見えな
い。猛禽もノスリが2個体のみでハイチュウやオオノスリなどは見当たらない。途中
の小さな川の氷の上にカルガモとマガモの群れがいたぐらい。前日のSosanでもそうだが、カルガモは200羽くらいの群れをつくっている。日本
ではなかなか御目にかかれない光景だが、これが本来の姿なのだろう。湖の反対側にまわり、トモエが近くに見える場所がないか探すが、葦に邪魔されて見えない。此処と同程度の規模の湖沼は日本にも沢山あるが、周囲にこれだけの葦原が残っている所は少ない。えさ場と同様、トモエが飛来するための重要なファクターであることを実感する。田んぼ側ではコウライキジを何羽か見つけたが、写真は撮らせてもらえず、湖を後にしてもう少し奥の田んぼへ移動する。こちらも水路でコガモ、ホシハジロ、コサギを見た以外は、ノスリ、アオサギのみ。途中出会った農家の方がボデイーランゲージで教えてくれたところによると、どうやら数日前にハンターが入り鳥はみんな移動してしまった様だ。海岸の方へ出ると、ちょうど干潮時で目の前の小島まで干潟が広がっていた。その背後にあるはずのチンドは靄ってよくみえないが、歌にある海割れが起こり得る地形であることが納得される。干潟にはツクシガモ点々と見え、その奥にヘラシギが6羽寝ている。韓国にはまだまだヘラシギが多いことを実感する。
日本ではクロツラより少ないぐらいなのに。夕刻のトモエの大飛翔までいたいのはやまやまだが、夜の移動はきついのでここで探鳥終了、明日の夕方に期待する。
 12/22 Sunchon Bay(順天湾)、Joonam Reservoir(江南貯水池)
順天市街地から20分程で順天湾に着く。干潟状の湾の手前に広い葦原が広がっていて、鳥見人にはつらいが、鳥達には格好の住処となっている。ズグロカモメが餌を捕っている以外鳥は見えない。少し見通しがきく地点まで移動すると、葦原の間を泳ぐカモ類(マガモ、カルガモ、ホシハジロ、コガモ)が見える。葦原のなかからカモの鳴く声が聞こえてくるので、相当数いることがわかる。遠くの干潟をスコープで覗くと無数のツクシガモと少数のハクチョウ(遠すぎて種はわからず)が見える。ツル類は見当たらなかったが、そのうち3羽のナベヅルが飛んで行くのが目に入る。ナベヅルは、日本から来ている自分には珍しくはないが、ここは韓国で唯一ナベヅルが毎年定期的に越冬している場所で、いわばここのスター・バードといえる。会わずして帰
る訳にはいかないのでほっとする。電線にはタヒバリが止っていた。葦の上ではシベリアジュリンがさえずっていた。やっとライファーを1つゲット。道路が行き止まりになっている地点まで行き、イタチ?とダルマエナガに会う。ダルマエナガは20羽強の群れで盛んに餌をついばんでいた。シマエナガの色違いの様な感じでかわいい20分ぐらいじっと見ていた。帰り道で田んぼに降りていたナベヅルを2家族見てスンチョンを後にする。

高速を移動の途中に休憩に立ち寄ったサービスエリアを出たところで、道路脇の木にオオノスリが止まっているのを見る。カメラをしまった後や止まることが出来ない時に限って、大物が出る。

3時過ぎに江南貯水池に到着。予め仕入れていた情報通り土手の上に観察塔が見える。土手の上に100人くらいの幼稚園児がいて、みんな真っ赤なサンタクロースの衣装を着ている。壮観な眺めだ。自分は土手の下の田んぼを先に見ることにする。田んぼの外れに学習センター(ネイチャーセンター)の様な建物が建設中だった。近くにマガンの群れが降りていたので、スコープで観察する。ヒシクイ2羽、キジバト、タゲリが混ざっていた。少し移動して、ジョウビタキやタヒバリを見る。カササギが10羽くらい群れていて絵になる光景に出会うが、カメラを向けて飛ばれしまう。ハイチュウやクロハゲワシ等の猛禽を探すが見当たらない。猛禽には時期が早すぎて、厳冬期にならないと韓国北部から移動してこないのかも?園児達が幼稚園バスの方へ移動したので貯水池の土手に上ってみるが、一目で失望に変わる。貯水池は一面氷に覆われていた。ずーと奥の方にガンが数百羽と白鳥が7羽くら
い氷上にかたまっているが、遠くてスコープで見ても種はわからない。また近くの部分的に少し氷が割れた水面にオカヨシガモ、トモエガモ等カモが8種類ほど(いずれも少数)見えるだけ。おそらく異常寒波が到来したのであろう、期待していたトモエの大群はどこかに移動してしまったようだ。 こんなことなら昨日のコチョンナム湖で夕方まで粘ればよかった。木の枝に魚をくわえたカワセミが15分ぐらいじっと止っていて、その後やっと餌を飲み込んだ。そこの真下だけ氷が割れている部分がある。カワセミの木の背後で、突然ツルの鳴き声がした。今まで葦に隠れ気付かなかったが、マナヅルの親子がいた。4時を過ぎるとマガン、ヒシクイの群れが幾つも上空を飛んで行く。ベンチに座り、近くの木に止っている別のカワセミやすぐ足下で餌をついばむダルマエナガを眺めながら夕暮れを待つが、やはりトモエの大飛翔は見られなかった。帰り道、隣の東板貯水池を覗く。白鳥やヘラサギ、ヒシクイが江南貯水池よりもずっと多い。失敗した。明るいうちにこっちに来ればよかった。東板池からの帰路、トモエガモの50〜100羽の群れが飛んで行くのを2度見てこの日の探鳥終了。

12/22 Tonban Reservoir(東板貯水池)、Upo Marsh(牛浦沼)、Nakutongan?(洛東江)
朝食後、 東板貯水池に向かう。池は一面氷に覆われていて、昨日見た白鳥やヘラサギもいない。池の奥の氷上にマガモ等のカモの群れが、さらにその奥にガンの群れが見える。群れと離れたところにぽつんと2羽だけ大きなガンがいた。スコープで確かめるとサカツラガンだった。1羽が氷の中に閉じこめられ、もう1羽が傍らの氷上で付き添っているようだ。ホオジロ&ミヤマホオジロを見て、北へ1時間程行った牛浦沼へ向かう。途中、マガン、ヒシクイを何度も目にする。牛浦沼も完全に凍結していた。奥の方にカモ&ガンがかたまっていて、そこだけが彼らの体温で凍っていない。ツクシガモが多いのが江南や東板と少し違う点か?カモの間をかき分ける様にして3羽のヘラシギが餌を捕っていた。ずっと離れた氷上でオジロワシが食事中でカラスがおこぼれを狙っている。何をしているのか、タゲリも氷上をちょこちょこ歩いている。ここにもミヤマホオジロがいた。沼の周りのトレイルをずーと歩いていけば反対側の鳥に近い方へ行けそうだったが、時間がないので引き返す。この旅最後の探鳥に釜山の西を流れる洛東江の中洲へ立ち寄る。ここもソウルの漢江とならんで渡り鳥の越冬地として有名な場所らしいが、工事中で奥の方の草地には入れなかった。徒歩では行けそうだったが、時間がなくまたしても断念して、30分間スコープでカモメのサーチに専念する。お目当てはなかなか見つからないが、コオリガモがいた。最後の最後に頭のてっぺんが平らなゴビズキンカモメを見つけてフィナーレ。いつか夏羽の頭巾を見てみたいものだ。予期せぬ寒波や時間不足のため、目的の第1位から第3位まで(数万羽のトモエガモの飛翔、Black Stork, Eurasian Black Vulture)をことごとくはずす悲惨な結果に終わったが、日本よりはまだ大分ましな状況にある韓国の越冬地の様子を体感でき、ライファーも4つゲット出来たのでよしとしよう。

(以上で、この項おわり)