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八丈島旅日記


 

Hachijo Island, JPN

 

ミーハーな鳥見に終始して、ライフリストを増やすことには然程執着して来なかった自分だが、ある程度リストが増えてくるとやはり欲が出てきて、これまであまり興味がなかった鳥でも見たくなるのが人の性。迷鳥の類いを別にすれば、ウミツバメ類とアホウドリ類が未開拓領域。八丈航路でこれらの鳥を2,3種見て、伊豆諸島の固有種であるアカコッコとイイジマムシクイ、それに固有亜種のオオストーンヤマガラを見ようと金曜の9時過ぎに職場から竹芝桟橋に直行。カンムリウミスズメとの遭遇にも秘かに期待。

(24/May) 早朝4時半に、まもなく三宅島に入港とのアナウンスで起床。4時40分にデッキに出る。硫黄臭が鼻につき、まだ火山活動が続いているのを実感する。海上には全く鳥影なし。後方に見覚えのある形の島が見える。この前の”野鳥”にカンムリウミスズメの繁殖地として写真入りで紹介されていた島だ。帰路に期待しよう。三宅港に入って、セグロカモメ、ウミネコ、アオサギを目にする。一時帰島の方々を降ろして直ぐに御蔵島に向けて出港。直ぐにオオミズナギドリが見えてくる。北海道で見た海面を黒く埋め尽くす様な大群ではないが、次から次と途切れることなく飛んでくる。30分して御蔵島が目前に大きく見えてきた頃、船が大きく揺れ出したので、鳥見を断念して船室に戻る。御蔵島には何とか入港できたようだが、出港後さらに大きく揺れる。御蔵島周辺ではフェリー上からもイルカが観察できるらしいが、とてもデッキにでる余裕はない。酔い止めを服用していなかったら、今が頃青色吐息の状態だったろう。2時間睡眠後、大きな揺れで目覚める。何かに捕まらないと歩けない程の揺れだ。最上階のデッキに出るが鳥の姿はないので直ぐに客室に戻る。高波のため、底土港には入港できなかった様で、少しおくれて八重根港に入港する。下船しているとセグロカモメが目の前を飛んで行くので、目で追うと、埠頭の先に黒い鳥が何羽か浮いている。何かわからないが、これは間違いなく初見の鳥に違いないと意気込みカメラの準備をして近付くと、ハシボソミズナギドリだった。ちょっとがっかり。でも、陸上から見るのは初めての経験で、じっくり観察できた。

始めに都立八丈植物公園に向かう。ヒヨドリがやたら目につく。ギャアギャア鳴く声は同じだが、囀りは普段聞き慣れたものとは微妙に違い、はじめなんの声かわからなかった。方言の違いが大きいようだ。展望広場のある小山でアカコッコの飛ぶ姿を一瞬目にする。ビジターセンターの前の林でアカコッコの囀りをはじめて聞く。姿も目にするが、これも一瞬だった。台湾産のキョンという小さな鹿が飼育されている動物舎に行き、数枚撮影する。隣りのオリのホオジロカンムリズルとインドクジャクのド派手の顔を撮影後、わき道のトレールを歩く。トラツグミとアカコッコを一瞬目にするが、見やすいところに止まってくれるのはヒヨドリとキジバトだけ。ビジターセンター脇のループ状トレール沿いの枝にアカコッコが10秒程止まる。今日初めてのシャッターチャンスだったがものにできず。双眼鏡ではしっかり観察できた。公園の入り口付近でウグイスとモズを撮影し、アカコッコとカラスバトの飛翔姿を見て午前の探鳥を終える。

午後はホタル水路に向かう。途中、アカコッコ、ヤマガラを目にするが撮影できず。農作業のおじさんに何を撮っているのか聞かれ鳥だと答えると、畑を耕しているとイソヒヨドリがヒナのための虫を獲りに来ると教えてくれた。普段海の近くにいるイソヒヨドリが畑にくるのはこの時期だけだそうだ。畑を見渡すがイソヒヨドリの姿は見えない。ホタル水路ではゴイサギ、チュウサギ、ウグイスを撮影する。鴨川沿いに上流に10分も登ると苔むした岩が並ぶ沢へと変わり、急に里山から深山の雰囲気へと変わる。真上では小鳥が盛んに囀っている。恐らくイイジマムシクイの声だろうと見当がついたが、全く見えない。ライフリストに加えることが出来ないまま終わるのかと諦めかけた時、見えるところに出てきてくれた。双眼鏡で追いかけるのが精一杯で、撮影はできなかった。(モスケ)ミソサザイと(タネ)コマドリの囀りも聞こえてくるが姿は見えない。沢に下りてきてくれるのを期待してしばらく待つが駄目だった。カラスバトの鳴き声もたまに聞こえてくるが、枝葉に隠れて見えない。飛ぶ姿を2度目にしただけだった。ホタル水路に引き返し、畑と水田でアマサギ3羽とヨシゴイ1羽を見る。さらに数十メートル歩いたところで、別のアマサギ4羽が自分の近付く気配で飛ぶ。もう1羽別のサギも一緒だ。アカガシラサギだ。昨日、東京港野鳥公園に出現したとの情報が入っていたので、こっちに来ていなければ、今日は間違いなくそっちに出かけていただろう。数年前の7月に同じ東京港野鳥公園で見た個体はあまり綺麗な夏羽ではなかったが、この個体は完璧な夏羽だ。アカガシラサギにしてもヤツガシラやにしても、日本海側のルート程メジャーではないが、伊豆諸島から伊豆半島から東京湾と言う確固たるルートの存在を実感する。舞い降りた畑の方に慎重に近づき、十二分に距離を取って観察する。しかし、この個体は警戒心が強い様で直に飛び去ってしまう。一緒にいたアマサギ達は逃げない距離だったのだが・・・。飛翔姿を数枚撮影出来ただけだった。残念。その後、三脚を倒してカメラのマウントを壊してしまう。他のカメラは持ってきていない。おまけに撮りかけのフィルムが飛び出てしまう。最悪!

4時過ぎに民宿にチェックイン。住宅地だが、家と家の間隔は相当あり、八丈富士の裾野で緑豊か。部屋からカラスバトの声が聞こえたので、双眼鏡を持って周囲を散策。近くでアカコッコを見るが、またして一瞬。その後、八丈を南北に貫く幹線道路沿いの低木にアカコッコが飛んできて止まるのを目撃する。5分くらい丸見えの状態でいてくれたのでじっくり観察出来た。カメラを壊してしまったのが、悔やまれる。八丈のアカコッコの数は思ったよりずっと多いようだ。夕食の新鮮な刺し身だけが、この日の唯一の救い。

(25/May)早朝、宿の周囲を散策する。キジバト、ヒヨドリ、イソヒヨドリは電線等見やすいところにいっぱい止まっているが、ホトトギス、コジュケイなどは声だけで、なかなか姿は見えない。八重根漁港に行くが、セグロカモメ、ウミネコ、ウミウのみ。隣の八重根港のフェリー埠頭では、昨日同様ハシボソミズナギドリが浮いていた。地味な鳥だが、頭を海面に突っ込んで餌を探す時の翼の上げ方が絵になる。残念。近くの岩場でキアシシギを見て引き上げる。

十時過ぎに八重根港から出港。海はべた凪状態。島の反対側の底土港にフェリーが入港出来なかったのが信じられない。カンムリウミスズメの繁殖地でもある八丈小島の周囲を注意してみるが、見えるのはカモメ類と島の上の山羊のみ。八丈小島の横を通り過ぎると急に波が高くなって来たので探鳥を諦め船室で寝る。台風3号のバカ野郎!船の揺れが少なくなり、デッキに出るともう目前に房総半島があった。30分ぐらいずっと注意して観察するが、ミズナギドリばかりで、ウミツバメ類やウミスズメ類はまったく見えない。諦めて船室に入る。もっと粘ればきっと何かでたのだろうが・・・。

(以上でこの項おわり)