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Hong Kong 旅日記


 

DAY01

 

 

 かねてよりの念願だった香港のMai Po (米埔)自然保護区にこの冬こそは絶対に行くぞと決意し、5ヶ月以上前から準備に取り掛かる。香港自体は金曜に思い立って土曜に出発するのも可能なほど気軽に行ける観光地ではあるが、Mai Poを個人で訪れるには面倒な手続きに時間を要する(WWF Hong Kongのホームページ参照)ので、これまで二の足を踏んできた。まず冬鳥のベストシーズンである2月に休みを1日だけとり土日・祝日とあわせて4日間の旅行を計画し、マイレージ無料特典航空券を10月の頭
にゲットする。次に香港の農業・漁業・自然保護局(直訳)に必要書類のコピーを添えた手紙を送り、Mai Po自然保護区への立ち入り許可証(Entry permit)の発行を願い出る。同時に保護区の管理・運営をしている WWF HKに入会申込のファックスを入れる。上記の許可証・会員証が11月末迄にそろい、今度はFCA permitの交付申請を行う。FCA permitとは、国境のフェンスを越えて立ち入り禁止区域内にある干潟に特別に立ち入る為の許可証のことで、WWF HKを通して警察に申請を行う。年末にWWF HKから手紙が届き、申請手続きを行ったので訪問日までには許可書が発行されているはずだからから、当日保護区のギフトショップで手数料を支払いFCA permitを受け取れとのこと。準備万端で新年を迎えるが、仕事の都合で計画は暗礁に・・・。このままでは諦めがつかないので、2月末〜3月頭に日程を変更する。しかし、土日を間に挟んだ日程では飛行機は既に満席状態。仕方がないのでキャンセル待ちに望みをかけ、
2つの許可証の日程変更を願い出る。出発の3日前迄に上記3つの算段がつき、 出発の運びとなる。
 私が夏休みにアラスカ、ボルネオ、アマゾン等辺境の地に鳥見に出掛けていることを知っている職場の同僚たちは皆、”えぇー、香港に鳥を見にいくんですか?あんな高層ビルだらけの所に鳥なんかいるんですか?”と怪訝な顔をするが、香港は知る人ぞ知る魅力いっぱいの探鳥地なのである。私のお目当ての第一は、ソリハシセイタカシギとヒメヤマセミ。ソリハシセイタカシギは写真を一目見た時から、その優雅な姿の虜になってしまった。谷津に来たのは自分が鳥見を始める前だったし、博多湾に来た時にはすぐにでも駆けつけようと思ったが距離が相当あると聞いて思いとどまり、去年波崎に来たときは東京を留守にしていて悔し涙をのんだ、自分にとっては憧れの鳥なのだ。ヒメヤマセミは、その分布域は広いが、実際の生息地に出掛けるのは初めて。お目当ての第二は、これまで満足できる写真が撮れていないヤマショウビン&アオショウビンの青や赤が鮮やかに出た写真を撮ること。Pelicans、Storks、 Ibises類との出会いにも期待が膨らむ。その他に、(日本のとは別亜種の) Blue Rock Thrush 、
Violet Whistling Thrush、Orange-headed Thrush、Blue Throat (オガワコマドリ)や、ムクドリ類、セキレイ類、タヒバリ類、等森林や田園地帯での探鳥も楽しみだ。
 空港からタクシーに乗り込み、期待に胸躍らせてマイポーに直行する。 運転手は英語がわからなかったが、漢字で書かれた行き先をプリントして来て良かった。新界(New Territory)地区に林立する超高層アパート群を車窓から眺めながら高速を30分程走り、下に降り数分走った所で、手振りで右か左かどっちだと聞かれるが、私に聞かれても困る。何処かに携帯で電話して場所を聞いて直ぐにわかったようだ。程なくしてマイポー保護区駐車場への入口をしめす標識が見えて来て、そこを曲がって砂利道に入ると急にのどかな田園風景に変わる。道の両側にはFish Pond(エビ?の養殖池)が広がり、サギ類やツバメの姿が目につく。500メートル程走った所で、池の脇の電線に止っているヒメヤマセミが目に飛び込んでくる。ほんの1秒程であったが正面からみた感じは日本のヤマセミとそっくりだったが、近付くタクシーに警戒して飛び去る後ろ姿は白い斑点のある”黒い鳥”という印象を受けた。のっけからの西の横綱登場で期待はピークに達し、3時20分に到着。駐車場に隣接するWWF HKのギフトショップで受付を済ますと直ぐにカメラの準備に取り掛かる。その間にも、駐車場の周りの木々からは何処かで聞いた覚えのある鳥の声が何種類も聞こえてくる。声の主は、シロガシラ、カササギ、Oriental Magpie Robin、、ハッカチョウ、等。バンのいる池と駐車場の間の道を入って行くと、左手には養殖池、右手の保護区にはマングローブ林が広がっていた。100メートル弱進んだ所に、自然保護局の事務所があり、そこでEntry Permitのバーコードをスキャンしてもらい保護区の中へ入る。もらった地図を見ると、保護区の南東の端にある事務所からトレイルが保護区と養殖池の間を東西に真直ぐに2キロ程続いている。更にそこから北の方向にある海岸線に向かって、マングローブ林の中を何本もトレイルがはしっており、10ヶ所ぐらいの観察小屋が点在している。その先遥か1キロに国境のフェンスが東西に続き、更にその先に広がるマングローブ林の中の浮橋を500メートル程進んだ所に干潟を観察出来る小屋が2つある。事務所の閉まる5時迄に戻る様に念を押されたので、マングローブ林を奥へ進むのは断念して、今日は保護区の大体の感じを把握することを第一目標にして、西へ進む。私の近付く気配に真っ白で頭と背中だけが灰色がかった鳥が飛び立つ。最初は何か全くわからなかったが、 少し後で飛び立った1羽がマングローブの樹上にとまり、アカガシラサギとわかる。よく見ると樹上に20メートルおきに1羽ぐらいの割合で点々とアカガシラサギが見える。養殖池の周りのワイヤー上にもいる。どの個体もまだ完全な冬羽だった。水路に沿った木の上には凄い数のカワウがとまっている。国内でもあちこちで鵜のねぐらを見たが、こんな凄いのは初めてだ。おそらく数千羽の単位だろう。最初の3階建ての観察小屋を覗くと、目の前には大きな”潮入りの池”が広がっていたが、水はほとんど引いてしまっていて、最奥に大きな水たまり程度の水が残っていてサギ類が集まっていた。二番目の観察小屋も同様な状況だった。小屋を出て少し歩いたところで、マングローブの間を飛ぶアオショウビンを目撃する。更に進むと左手にはフェンスで囲われたカモ池と”学習センター”があり、右手には水草の茂った沼があった。沼の上に木道があったので歩いてみる。いたのはバンだけだったが、アオショウビンが翔んできて葉の落ちた木の枝にとまってくれた。観察しやすい絶好の場所だったが、カメラの調子がおかしい。カメラを弄くり回しているうちに翔び去ってしまう。そこから数十メートルの所の木にこの日2つ目のライファー、クビワムクドリが3羽とまっていた。三脚にスコープを付け替え、デジタルカメラで撮影を試みるが、デジスコ初体験の自分には上手くいかないので、観察に専念する。目の周りの黄色がきれいだ。時間が来たので引き返すことにすが、帰路、養殖池でカワセミを何匹も目撃する。帰りのタクシーではヒメヤマセミに注意して何時でも撮影出来る体制でいるが、留守だった。今日はマイポー自然保護区内にある宿泊施設に泊まりたかったのだが、生憎満室のため代わりに紹介された近くの街のホテルに宿泊する。

(以下、次ページに続く)