野生図鑑 鳥を訪ねて南へ北へ
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Hong Kong, 2nd


 

2004 3/12-14

 

 

 Mai Po (米埔)自然保護区を再度訪れたいと半年以上前から準備を始める。前回の訪問では観察小屋から水際までの距離が満潮時でも数百mもあったので、今回は予想潮位を調べてから訪問日を決めることにした。ほとんどの日は昼間の満潮時の潮位が夜間のそれより1m近く低く、この数十センチの差が海水の先端の位置を1キロ以上遠くにしている。干潟の冬鳥が近くで観察出来そうな期間は3回(それぞれ2,3日間)しかないことが分かり、この日程に決めた。夏の終わりに無料特典航空券をゲットし、続いて香港の農業・漁業・自然保護局にMai Po自然保護区への立ち入り許可証(Entry permit)の発行申請、保護区の管理・運営をしている WWF HKにFCA permit(国境のフェンスを越えて立ち入り禁止区域内に特別に立ち入る為の許可証)の交付申請を秋までに済ます。後は昨年問題になったSARSが再流行しないことだけを願って出発の日を待つ。幸いSARSの再流行はなさそうだと喜んでいると、2月の始めに香港の農・漁業・自然保護局から手紙が届く。1月末から鳥インフルエンザの感染防止のため米埔自然保護区を閉鎖したことと、米埔に限らず香港全土でバードウォッチングを自粛するように書かれていた。双眼鏡やスコープで鳥を見ていて人に感染するとは思えないが、90年代後半に大きな被害を受け、昨年はSARSで打撃を受けた香港政府が過敏な対応をとるのも理解出来る。そのすぐ後に届いたWWF HKからのメールには閉鎖は2月末までとの予想が書かれていたので、それに期待して待つことにする。しかし、3月上旬にWWF HKから再び届いたメールには米埔再開のめどが立たないのでFCA permitはキャンセルにするから、他の場所でバーディングしてくれ、他のバーディングスポットのことで質問があったら喜んで受けると書いてあった。ショック! 特典航空券の変更可能な出発日は発券の日から1年間なので、来冬まで延期するのは無理だ。早々と用意したのが裏目に出た。しかし、メールの文面から他の場所でのバーディングは差し支えないようなのでそのまま出発することにする。

3/12(金) 空港からバスとタクシーを乗り継ぎ、Tsim Bei Tsuiに直行する。 ここは"Deep Bay"の西の端でちょうど米埔の反対側にあたる。駐車場のある岬の上とそこから下に降りた所の2ヶ所からスコープで鳥を探すが、見えたのはダイシャクだけだった。去年来た時は距離はあったがもっと色々な鳥が見えたのだが。去年の経験から海側を見渡せるのはこの2ヶ所だけなのがわかっていたので、国境のフェンス沿いの道を海とは反対側のマングローブ林(ラグーン)を探鳥しながら進むことにする。ここで一番数が多い鳥ハッカチョウでまずはカメラテスト。その後、カササギ、クビワムクドリ、Magpie Robin、Yellow-belied Prinia、キジバト、シロハラクイナ、メジロ、ノビタキ、コウラウン、ダイサギ、アオサギ、アカガシラサギ、クロツラヘラサギなどをみる。昨年よくアオショウビンが止っていた遠くの杭を見るとヤマショウビンが止っていたのでデジスコで撮影後、しばらく観察する。養豚場へ入って行く道の電線に別のヤマショウビンが止っていたので近付いて一眼レフで撮影する。これまで自分が見てきたなかで最も近かったが、最も汚い個体だった。昨年生まれた個体なのであろう、嘴は先端部分だけが赤く、背中(翼)もほとんど真っ黒で、胸にもまだ黒い羽毛が少し残っていた。綺麗になったら再会しようと一方的に約束して奥の養豚場の方へ向かう。左手の養殖池の横の枝には昨年アオショウビンがよく止っていたので探すが、カワセミ1のみ。奥の養殖池の(鳥よけのための?)ロープにアオショウビンが飛んで来て止るのが見えたが、その手前のロープにカワウやサギ類がいっぱい止っていたので、彼らを飛ばさないで近付くのは無理だと思い先へ進む。養豚場の前では昨年ムネアカタヒバリやツメナガセキレイ等多くの鳥を見ているが、今回は1種類も見れなかった。フェンス沿いの道に戻り、来た道を少し戻って見ることにする。ラグーンを見渡せる場所が数十メートルおきにあり、そこを覗く時には鳥を飛ばさない様に細心の注意が必要なのだが、あまりにも真ん前に止っている時はどうしようもない。目の前の杭に止っていたヤマショウビンが驚いて奥の方へ飛んで行ってしまった。逃がした獲物は大きいというが、この日見た中で一番綺麗な個体だった。ラグーンのずーと奥のほうで餌をとるために飛び回るのが見えたが近くに来る気配はない。そのうち遠くの杭に別の個体が止っているのに気付いたので、スコープでしばらく観察する。その後、フェンス沿いの道を出発点とは反対の方へ進む。正面に天水圍の超高層マンション群が見える地点で道を左に90度折れ進むとまた養殖池が並ぶ地域に出て、クビワガラス、アマサギ、オウチュウ、カオグロガビチョウ、アオショウビン、カワセミ等を見る。タイワンハクセキレイがいたので撮影する。香港のハクセキレイはホオジロハクセキレイが一番多く、タイワンハクセキレイははじめて見た。この日見たアカガシラサギのなかで唯一頭の赤い個体を見つけるがカメラを向けて飛ばしてしまう。昨年と同じ天水圍のHOTELにチェックイン。昨年は一泊5500円程度だったが、今年は1000円以上値上がりしていた。

3/13(土)当初の予定ではTai Po Kau 森林公園にforest birdを見に行くつもりだったが、昨夜気がかわり九龍半島を挟んでMai Poとは反対側にあるStarling inlet(入り江)へ行くことにする。ここにも干潟があるらしいので、Mai Poで見るはずだった鳥のうち、カッショクペリカンは無理にしても、オニアジサシやソリハシセイタカシギ等にはもしかして会えるかもしれないという淡い希望の方がSunbirdやFlowerpecker、Minivet等のカラフルな鳥の魅力に勝ってしまった。しかし二階建てバスとミニバスを乗り継いで目的地に到着すると干潟は全て海水に覆われていて淡い期待はすぐに打ち砕かれた。陸側の村Luk Kengで探鳥することにする。Mai Po やTsim Bei Tsuiと比べたら雀の涙ほどの大きさのマングローブ林と大きな釣り堀の周りを探鳥するがクビワムクドリやSpotted Dove、サギ類等、よく見かける鳥以外には出会わなかった。釣り堀の奥に広がる養殖池の方へ行こうとしたが、ハイキングの若者の賑やかな列がずっと続いていたのでやめにして、隣村のNam Chungまで海岸沿いの道を歩くことにする。サギ類の他、カワウ、(ニシ)トビ、ハジロカイツブリ等を見てNam Chung村に到着。この村にも釣り堀があったが、その奥には養殖池を中心とした小さな農村が山の麓に向かって広がっていた。養殖池を一つ一つ見てゆくことにする。水が抜かれて泥の底が見えている池にはツバメがいっぱい飛んでいた。他にもハマシギ、コチドリ、ホオジロハクセキレイ、キセキレイ、シマアオジ、ビンズイ、マミジロタヒバリ、ムネアカタヒバリ等の鳥が見られた。さらに奥の方の池へ行くとハッカチョウの群れやタカサゴモズ、アカガシラサギ等がいた。ミサゴが巨大な魚を鷲掴みにして目の前を低空で飛んでゆく。人間に慣れているのかMagpie Robinが間近まで寄ってくる。よく見かける鳥だが、あらためて近くで見るとかわいい。一番奥の池の隅に3羽のPied Kingfisher(ヒメヤマセミ)が止っているのを見つけるが遠い。何とか近付く方法がないかとルートハンティングを試みるが、諦めて遠くから眺めることにする。バスに荷物をいっぱい抱えて乗るのが嫌だったのでスコープは部屋に置いてきてしまった。そのうちに1羽のアオショウビンも近くにやって来た。4羽一緒の写真を何枚か撮るがあまりにも小さい。30分程経ってヒメヤマセミが飛び去ったので、彼らが降りた辺りへ移動することにした。直に養豚場の奥の池の畔に3羽で止っているのを見つける。間に小さな川と豚舎を挟んでの観察なので今度も遠い。中国語が話せたら豚舎で作業している人にお願いして、橋を渡り豚舎の横を通って対岸に回り込んで観察したいところだが・・・。結局その場でまた30分以上観察する。その後、川沿いの土手を村の入り口の方へ戻った所でお昼にする。ここが香港とはとても思えないような長閑な農村風景である。背後の山の方からは人の声がかすかに聞こえてくる。双眼鏡で覗くと人の列が見える。Luk Keng村からのハイキングコースになっているのであろう。早出のハイカー達が下山してきて三々五々目の前の道を通って行く。しばらくするとヒメヤマセミが飛んできて養殖池で魚を捕まえてすぐに飛び去って行く。その後も20〜30おきにヒメヤマセミが単独で飛んで来ては魚を捕まえて去って行く。なかなか近くには来てくれないが、それでも対岸のロープに止ったり、飛んでいるところを何とか証拠写真程度は撮影できた。夕方までヒメヤセミを何度も堪能する。ホオジロハクセキレイ、セジロタヒバリ、Masked Bunting等の他の鳥も近くにやって来てくれた。

3/14(日)早朝、Tsim Bei Tsuiにもう一度、ヤマショウビンを見に行く。こちらの狙い通りの杭にはなかなか止ってくれないが、それでも昨日よりは近い杭に止ってくれた。チェックアウト後、ホテルのシャトルバスでTsim Sha Tsuiに向かい、九龍公園を訪れる。日本の冬の公園でクロジやトラツグミが見易いのと同様、コルリなどのシャイな冬鳥が見易いらしい。フラミンゴやハクチョウがそれぞれ数種類ずつ飼われている百鳥湖?とかいう池に行くと、鉄柵の1m位外側にロープが張り巡らされていた。これも鳥インフルエンザの感染を防ぐ為の措置らしい。柵の内側では完全防備の職員が池の周りの木々を消毒していた。池には他にオシドリ、アメリカオシ等のカモが10種近く飼われていた。ツクシガモやアカハシハジロ等どの個体も驚くほど綺麗だ。消毒・洗浄受けているのかもしれない。野生でこんな綺麗な色の写真を撮るのは難しいだろうし、多くの場合飼育個体は野生個体より汚れている等と思いながら一通り撮影する。野生のカワセミやアオショウビンもいると聞いていたので探すが見つからない。野生種はGreater Coucal、Spotted Dove、ゴイサギぐらいか。それにカゴ抜けインコが2種。公園の木々にはCrested Bulbul、Magpie Robin、Koel、クビワムクドリ、カオグロガビチョウ等が見易かった。公園の隅の小山の様な所に行くと、HwameiGrey Thrush(クロツグミ)が下草の間を餌をさがして動き回っていた。クロツグミは時折コンクリートの階段の上に上がって辺りを見回している。400ミリズームレンズを300ミリ以下にしないと撮影出来ないほどの近さだ。夏の日本の山では考えられない。他にChestnut-tailed Starlingやクロウタドリ等を見て駆け足の香港旅行を終える。

帰国して数日後にWWF HK よりMai Po自然保護区再開のメールが届く。Mai Poで採取された500羽の野鳥の血液サンプルは全て陰性だったそうである。

 

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