目次 1.【運動なしのダイエットだけでは体脂肪が落とせないというのは本当か?】 2.【筋肉が分解されるダイエットとは】 3.【運動中の筋肉の燃料】 4.【体脂肪を分解したい】 5.【運動と空腹】 6.【さて、どのように運動するのが良いか】 【運動なしのダイエットだけでは体脂肪が落とせないというのは本当か?】 ![]() さて、それではそうすれば良いかは自明です。次のどちらかです。 1.消費カロリーを増やす 2.摂取カロリーを減らす 摂取カロリーを減らすのは無理だから、消費カロリーを増やすやり方でやってみ よう、と考えるのが人情です。 そこで、代謝を高めるサプリメントだとか、エステだとかが流行ります。また、 消費カロリーを増やす、最も確実な方法は運動だと、誰もが思いつきます。ですが、どの方法も案外上手くいきません。これにはいくつかの理由があります。 まず、運動で消費されるエネルギーは、1時間ジョギングをしてもせいぜい大き めのショートケーキ1個分、2時間のエステのコースでも缶ジュース1本分なの に、たいていのひとは、今日はこんなにがんばったのだから、といって食事制限 を甘くしてしまう事です。 “脂肪を燃やす”サプリメントの類に至っては、食べ過ぎた言い訳 の為にとっているような人が多いのではないでしょうか? また、筋肉を鍛えて基礎代謝量の高い身体を作れば、寝ている間にもエネルギー を消費できる、と考えて筋トレに励むひとたちがいます。良い考え方ですが、週 3回以上の運動を習慣化 しない限り、筋肉量は維持できません。 食欲は、身体に蓄えられている総エネルギー量ではなく、その日その時間のエネ ルギー収支によって調節されています。 どんな方法によっても、エネルギー消費 が増えた分だけ余計にお腹が空きますから、エネルギー消費を高めるやり方が食 事制限より簡単なはずは無いのです。 正しいダイエットなしで、運動だけによって減量し、それを支持できると言う考 え方は、MLのメンバーの皆さんはほぼ皆あきらめています。 成功者の意見は、 “標準体重よりかなり多くて減量が必要なひとは、正しく、十分な食事をとり、 食欲の感じかたをリセットして、摂取カロリーをコントロールができるようにな るまで、運動を取り入れるべきで無い” と言う点で、一致しています。 ですが、ある程度Dietが成功し、からだが軽くなると、皆取りつかれたように 運動をはじめます。時間の許す人はジムに行き、忙しいひとは通勤ウォーク、あ るいは休日のウォーキング、ジョギング。半年ほどすると、ランニングホリック 病と呼ばれる状態になり、市民マラソンにエントリーしてしまう人が後をたちま せん。(著者もそのひとりです。昨年とうとうハーフマラソン完走しました ☆(*^.^*))…・”やせるため”に歯を食いしばってノルマをこなす運動は、苦 しいだけですが、気の向いた時、競争やノルマを考えずに楽しむスポーツが本来 こんなに楽しいものだったなんて! と、昔運動部だった人もそうでないひと も、再発見します。 ダイエットもそうですが、運動は苦しいもの、がんばるもの、と言うイメージを 捨てましょう。 人間は究極の所、絶対に、自分の好きなこと、心地よい事しかやらない、という 前提を受け入れましょう。 同意される方だけ次へお進みください。 ◆◆◆ 【筋肉が分解されるダイエットとは】 ![]() ”体重を減らしたければ、摂取カロリーを消費カロリー以下に抑える” もう一歩踏み込みます。 摂取カロリーが消費カロリーを下回った状態で、足りないエネルギーはどこから 供給されるのでしょうか?…・ それは体脂肪か、筋肉です。 理想的なダイエットというとき、私たちは、筋肉や重要な臓器重量を減らすこと なく、できれば体脂肪だけを減らしたいと考えています。 どうするべきでしょうか? 同じようにエネルギーが足りないとき、脂肪が分解されるのはどういう場合で、 筋肉が分解されるのはどういう場合でしょうか。 ”サキコ理論”の中に書かせていただいたことですが、体の中にはどうしても、 脂肪酸ではなくグルコースを必要とする組織があります。血糖値は維持されなけ ればなりません。また、体脂肪は分解されても二度と グルコースになることは ありません。そこで、著しい糖質の摂取不足が続くとき、体は、グルコースを供 給するためにタンパク質(筋肉)を分解し始めます。タンパク質やアミノ酸を十 分取っていれば、大丈夫ではないか?と考える方があると思いますが、だめで す。 タンパク質の代謝はやや複雑なので、ここではふれませんが、低血糖状態 が続くと、体は、アナボリック(蛋白合成、筋肉増進)の状態ではなく、カタボ リック (筋肉減少、蛋白質分解)な状態に代謝モードが変わります。特殊なホ ルモン剤を用 いれば話は別ですが、ここへいくら反応基質であるアミノ酸を供 給しても、筋肉分解は止まりません。 ですから、筋肉、あるいはlean body mass (LBM) = 除脂肪体重を減らさない ためには、 まず、最低限の糖質は摂取し、血糖値と、肝臓のグリコーゲンタン クのストックを維持しなければなりません。過剰な糖質はインスリンの作用下 で、体脂肪合成にまわされますので、一度に食べ過ぎることのないように、ま た、何度にも分けて食べる、グリセミック指数の低い食品や、野菜を一緒に食べ るなどの工夫をしてインスリンの分泌を避けることが得策です。糖質の所要量は 余ってもいけないし、足りなくてもいけない、まさにダイエットの核心です。 余談ですが、美容のために、標準体重よりさらにやせようとする女性の中に は、Diet5にしたがって基礎代謝量程度以上を食べていても、元気がなくなって とてもお腹が空く人がいます。女性の体には(年齢により)22-25%くらいの体脂 肪率を維持しようとする強いメカニズムが働いていますから、このあたりの値を 下回ると、エネルギーのバランスがマイナスであっても、脂肪の分解にストップ がかかり、また、空腹感を刺激します。そこで、通常は脂肪酸を利用できる臓器 までもが糖質を使うことになると、低血糖状態に傾き、元気がなくなり、お腹が 空くのです。あとでさらに強い、”甘いもの”への欲求が起こり、ダイエットは 台無しになってしまいます。後に過食症のきっかけになることもあります。 繰り返しますが、ダイエットが順調に進むのは、糖質不足がなく、かつ 脂肪が 必要なだけ分解されている 状態のときです。 一般に、体重が標準体重よりかな り大きい人、体脂肪率が高い(男性で25%、女性で30%以上)人は、Diet5にした がって食べれば、強い空腹を感じることなく、糖質と、総カロリーの制限をする ことができ、それだけで順調に体脂肪率を減らすことが出来ます。ところが、ほ とんどの人はどこかで“下げ止まり“を経験します。どこで下げ止るかは、人に よって大きく異なりますが、おおむね標準体重、標準体脂肪率の数値の範囲内で 起こります。まるで生まれつきの理想体重というのが定められているように感じ ます。そこからさらに減量をしようとすると、食欲のコントロールが、それまで よりとても難しくなります。ここに至って、皆、もっと積極的に体脂肪を減ら し、ただ体重を減らすだけではなく、メリハリの効いたボディメイクに取り掛か ろう、と考え始めます。方法は、運動と、エステです。 次に、いよいよ、筋肉の運動が、ダイエット中の人にもたらす効果を考えましょ う。 【運動中の筋肉の燃料】 ![]() 運動中の筋肉が利用する主な燃料のタンクと、それぞれの燃料の特徴は次の通り です. @脂肪酸: 食物から供給されるほか、脂肪細胞の分解によって作られる。血液 によっても運ばれるが、筋肉内にも脂肪は蓄えられている。筋肉では基本的に、 グリコーゲンよりも利用されやすい。供給速度にリミットがあってパワーの必要 な運動のエネルギー需要を全部まかなうことは出来ないが、安静時の骨格筋や心 筋の燃料はほとんど脂肪酸である。脂肪酸の燃焼はすべてが有酸素的反応であ る。 A筋肉内のグリコーゲン: エネルギー需要が高まったとき筋肉が手っ取り早く 利用できるエネルギー。 トレーニングの有無によるが、全部で1000kcalくら い、筋細胞内に蓄えられている。 グリコーゲンは分解されグルコースの代謝物として燃焼される。 グリコーゲンの利用には無酸素的利用と有酸素的利用がある。グリコーゲンを有 酸素的に利用した場合、脂肪酸を同じ酸素量で燃やしたときよりも、多くのエネ ルギーが得られるので、パワーがでる。 B血液中のグルコース: 主に肝臓が血糖値を調節しながら供給している。空腹 時には肝臓内のグリコーゲンを分解して作る。しかしその量は少量で、筋肉の運 動のような大きなエネルギーをまかなうことはできない. 一般に、ダイエットの為には空腹時に20分以上の有酸素運動をすると、体脂肪が 効果的に燃えると書かれています。どうしてでしょうか。その説明は、こうです : 運動をはじめると、初めは、筋肉への血流、すなわち酸素と燃料である脂肪酸の 供給が十分でないので、筋肉は、筋肉の中に蓄えられているグリコーゲンを燃料 として使います。ところが、時間が経って筋肉への血流が増加するにつれて燃料 のうち脂肪酸の比率が高まってきます。鍛え方によりますが、心臓の動きが活発 になり、筋肉に十分な酸素と燃料を供給できる状態になるのに、ジョギングやサ イクリングをはじめてから15分から20分かかります。 脂肪酸、グリコーゲンの比率は、運動の強度によっても変わります。運動選手で ない人が、緩やかなジョギング中、筋肉が使っている燃料のうち脂肪酸の比率は 約50%です。走る速度を速めると、グリコーゲンの比率が高くなります。脂肪酸 の供給や、燃焼速度には限度があるのに対し、グリコーゲンは筋肉の中に蓄えら れていてすばやく利用できるので、枯渇するまで制限なく使えるからです。一流 のマラソン選手では、レース中もグリコーゲンの比率が70%くらいあるそうで す。レースの時には、心臓が運ぶ、限りのある酸素を有効に使うため、グリコー ゲンの比率を高くして走る方が得なのです。 また、脂肪の燃焼には、たっぷりの酸素が必要です。軽いジョギングの途中で、 急にダッシュしたりすると、酸素の供給が追いつかなくなり、少ない酸素で大き なエネルギーを取り出すための燃料として、グリコーゲンが無酸素的に使われる ことになります。このような燃料の使い方は、排気量の大きいスポーツカーのよ うなもので、大きなパワーが出来ますが、燃費が悪く、燃料を浪費し、長時間続 けることは出来ません。100mの選手は、100mすべてをグリコーゲンの無酸素的利 用によって走りますが、マラソン選手は、限りあるグリコーゲンタンクを有効利 用するために、けしてダッシュはぜす、有酸素的利用によって、ちょうどレース の間に使い切るように走るペースを配分します。 私たちのカラダはこのように、情況におおじてエネルギーの燃料タンクを使い分 けている事が理解できます。ところで、その運動強度の目安は何で知ることがで きるでしょうか?…それは運動中の心拍数です。 【体脂肪を分解したい】 ![]() 2. 単位時間あたりの消費エネルギーが大きいのは、インターバル走や、筋ト レ、競泳、など、グリコーゲンタンクを利用するような強度のある運動です。ま たこの場合も、脂肪酸が利用されないわけではありません。ところで、運動時に グリコーゲンのタンクから燃料を使った場合、脂肪量を減少させる事はできない のでしょうか。そんなはずはありません。この問題を考えるために、次に、エネ ルギーが回復する時のことを考えてみましょう。運動の後で食事をすると、炭水 化物は真っ先に筋グリコーゲンの補充に使われます。次に肝臓、脂肪に順に補充 されます。ヨーイドンで、取り込み速度の早い順です。運動時にグリコーゲンを 使った比率が高ければ、その補充に多く使われて脂肪に回る分は少なくなり、脂 肪酸を使った比率が高ければグリコーゲンの補充に使われる分は少なくて脂肪に 補充される分が多くなるはずです。この考え方によると、運動の燃料が脂肪酸で あったかグリコーゲンであったかは、エネルギー収支=脂肪量(筋肉の量が変化し ない時)には影響がないことになります。 3. まとめると、運動による効果を考えるときは、総消費カロリーと同時に、そ の燃料として、グリコーゲン(糖質)を使ったか、脂肪酸を使ったかも考慮する 必要があります。なぜならダイエット中の人は、食事ごとの糖質の摂取をぎりぎ りに抑えているので、運動で糖質を消費した後では食事をしても、筋肉にグル コースを取られてしまって、肝臓のグリコーゲンタンクを補充されず、すぐにお 腹がすいてしまうかもしれないからです。このような場合は、栄養中の脂肪を減 らして炭水化物を増やす必要があります。 【運動と空腹】 ![]() 同じような運動をしても、トレーニングを積んだ人のからだでは、脂肪酸の供給 体制も燃焼効率も上昇し、脂肪酸の利用比率が上がっているのです。涼しい顔を してさっさと走っていき、あんまり腹も減らない、まるでエネルギーを節約して いるように見えますが、これは燃料として脂肪酸を使えるひとのからだの特徴で す。消費エネルギーは同じでも、楽そうに見えます。 【さて、どのように運動するのが良いか】 なんでも好きなことをはじめてください。決まりはありませんが、ダイエットを 台無しにしないためにいくつかの注意があります。 ![]() 2. 起床後朝食前や、空腹時は、はじめ元気がでませんが、脂肪の分解には最適 のコンディションです。ゆっくり、できれば長い時間運動しましょう。強い運動 の出来ない人は、食べ過ぎないことと、食前の散歩が最適です。 3. 食後の運動はパワーがでますので、筋肉を増やしたい人に最適です、また、 インスリンの高いときに運動すると、糖質が脂肪細胞に吸い込まれるのを防ぎ、 筋肉が吸収してくれます。食後30分から1時間、胃を落ち着かせてから、筋ト レ、エアロバイクなどはどうでしょうか? 4. 筋グリコーゲンをたくさん使うような強い運動をたくさんしたときは、2時間く らいし、血糖値が下がってくるころを見計らってタイミングよく食事をする必要 があります。思い切って炭水化物をたっぷり摂りましょう、お腹がすきすぎて、 カロリーオーバーにならないように気をつけましょう。また、ジムに行った日と行 かなかった日に、食べる量をはっきり区別しましょう。 5. 消費カロリーをすべてマイナスにしようとおもわないようにしましょう。そ れができるのは、100%脂肪酸を燃料にしたときだけですが、そんな運動はほとん どありません。 |