24時間家庭血圧計

この記事の目的
日本には100種類以上の降圧薬があります。その中からあなたに最適な降圧薬を見つけ出すお手伝いをします。
血圧のコントロールがうまくいくと夜間頻尿が治ります。血圧と腎臓に深い関係があるからです。
日本で一番売れている高血圧のくすりはアムロジピンです。アムロジピンは良いくすりですが、一方短所もあります。私のかかりつけ医はニフェジピンを推奨します。
降圧薬には他にも高齢者に評判の良いカンデサルタンなど、良いくすりがたくさんあります。
それらのくすりを試していたら、夜間頻尿が治りました。その経緯を紹介したいと思います。


ニフェジピンL錠
以前の私は、典型的な朝型高血圧でした。
冬の朝など、寒いトイレに行くと血圧が急上昇し、排尿中に測ってみると、180mmHgを超えていたりして心配になりました。
朝型高血圧は心筋梗塞のリスクが高いので注意が必要です。


そこで、ある朝、トイレに行く前に、くすりを飲んでみることにしてみました。
血圧測定のルールは起床1時間以内で、薬を飲む前とされていますから、トイレ前にくすりを飲むのはルール違反です。しかし、とにかく、試してみることにしました。
その結果、左図のようになりました。なんとその日から、私の朝型高血圧が治ってしまったのです。
降圧薬は血圧が上がってから飲むよりも、上がる前に飲む方が効果があるようです。


持続時間
朝型高血圧が治ったので、気を良くして少し勉強してみました。
降圧薬には、実にたくさんの種類があります。くすりの作用や持続時間、副作用など、100種類以上もくすりがあるそうです。
私が処方されていたくすりは、持続時間が短いニフェジピンL錠でしたから、かかりつけ医に相談して、長時間型のニフェジピンCR錠に変更してもらいました。
この薬は、錠剤が2層構造になっていて、2層目が12時間後に溶け出してくるものです。


ニフェジピンCR錠
左図は、ニフェジピンCR錠を飲み始めた翌日の血圧パターンです。
就寝前にニフェジピンCR錠を飲むと、翌日の15時ころに持続時間が切れるので、その頃から血圧が上昇しはじめ、盛んにトイレに行きます。
昼間のトイレが多くなると、夜のトイレが減るので夜間頻尿が改善されて好都合です。


利尿薬を併用
ニフェジピンCR錠の持続時間は16時間とやや短いので、これを補うために利尿薬(フルイトラン)を飲んでみました。
その結果が、左図の血圧パターンです。この血圧パターンは就寝中の血圧が低く、昼間の血圧がやや高い理想的なパターンです。
この血圧パターンが1ヶ月続きました。


アムロジピン
アムロジピンは日本で一番よく売れている降圧薬です。
アムロジピン は持続時間が36時間と長いので、朝飲んでも夜飲んでもかまわないという便利なくすりです。
持続時間が36時間ということは、別の見方をすると、薬の成分が24時間で排出しきれません。
つまり、薬効成分が排泄しきれず、少しずつ蓄積されていくことになります。
このため、私のかかりつけ医はアムロジピンの処方に否定的です。

アムロジピン5mgは、飲んでみると、最初はあまり効かない感じでした。
ところが、服用をつづけていると10日目から突然効き始めました。
左図は、10日目の血圧パターンです。9日間に成分の蓄積が生じたようで、血圧が低いままです。
このパターンを、血圧が安定していると見ることもできますが、一方で昼間の血圧が低くすぎています。
血圧が低すぎると、尿があまり出なくなりますし、脳梗塞のリスクが増します。
アムロジピンは、確かに良い薬ですが、メリハリのある血圧パターンが得られないようでした。



カンデサルタン

ネット情報で、ARB系降圧薬と利尿薬の組み合わせが高齢者に好評との情報を見つけました。
腎臓は糸球体フィルターで血液の濾過をして尿を作りますが、フィルターで濾過するためには60mmHg以上の血圧差が必要です。
この血圧差を得るために、腎臓はレニンという物質を分泌しますが、カンデサルタンはこのレニンの働きを抑えて血圧を下げます。
そのため、カンデサルタンを飲むと血圧も下がりますが、尿の出方も抑えられます。
カンデサルタンの持続時間は11時間で、夜飲むと朝までの尿が抑えられます。高齢者に評判が良いのは当然です。

ネット情報のとおりに、朝フルイトラン、夜カンデサルタンの組み合わせで飲んでみました。
その結果、左図のようになりました。
カンデサルタンは降圧力が弱く、私の場合は、血圧がほとんど下がりませんでした。
ところが、驚いたことに、その3日間は、夜間トイレに一度も行かなかったのです。
尿を作るために、腎臓がせっかく分泌したレニンの作用をカンデサルタンが抑えたために尿が作られなかったようです。夜の尿量がはっきりと減少しました。

カンデサルタンを飲むと、夜の尿量が減り、朝までぐっすりと眠れます。それは良いのですが、血圧が下がらないので困ります。
カンデサルタンを2錠に増量してみましたが、あまり変わりませんでした。ARB系は増量しても効果が少なく、他剤併用が良いとされています。
そこで、カンデサルタンとニフェジピンCR錠の組み合わせで飲んでみました。
その結果、左図のように血圧が抑えられました。

利尿薬をフルイトランからフロセミドに変えてみました。
フロセミドの利尿作用はフルイトランよりも強力です。朝飲むと1時間おきにトイレに行きます。
午前中に尿をたっぷり出しておくと、夜間の尿レートが昼間の半分以下になり、朝までぐっすり眠れます。
これで、良い血圧パターンが得られるようになりました。



早朝高血圧 もう1つの原因
尿を我慢すると血圧が上がると言われます。なぜ、血圧があがるのでしょうか?
膀胱の蓄尿システムは、主に交感神経でコントロールされていますが、ホルモン系も関わっています。
尿を我慢すると血圧が上がる理由を説明できるのはホルモン系の方で、次のように働きます。
膀胱壁にセンサーがあり、尿がたまって膀胱壁が伸びるたびに電気信号が発生します。この信号が尿道括約筋に伝わって収縮するのですが、同時に脳にも伝わります。
脳はこの信号を受けると、副腎髄質にノルアドレナリンを分泌するよう指令を出します。ノルアドレナリンには、尿道括約筋を収縮させる作用があり、これによって尿もれを防ぎます。
ところが、ノルアドレナリンは血圧上昇の作用もありますから、膀胱壁が伸びるごとに血圧が上昇することになります。尿を我慢すると、血圧が上がるのはこのノルアドレナリンのせいです。
もしも、夜の尿量を減らすことができれば、ノルアドレナリンが少なくなり、血圧が上がらなくなります。 逆にいえば、夜間多尿が早朝高血圧の原因でもあるのです。


夜間多尿の治し方
夜の尿を減らせば、夜間頻尿と早朝高血圧が治ります。そのためには、
・利尿薬を飲んで昼間の尿量を増やす。
・カンデサルタンを飲んで夜の尿量をへらす。


尿レート
尿レートという指標を用いると、利尿薬やカンデサルタンの効果を視覚化できます。
尿レートとは、腎臓で作られる尿の1時間あたりの量です。つぎのようにして計算します。
たとえば、朝一番の排尿量が200mlで、前夜の最終排尿が8時間前だったとすると、就寝中の尿レートは 200÷8 = 25 ml です。

一般に、健康な成人男性の1日の尿量は約1,200mlです。これを24時間で割ると、50mlになります。
つまり、成人男性の昼間の尿レートは50mlで、夜間はその半分の尿レートになるのが普通です。

もしも、夜間の尿レートが昼間と変わらない人は、8時間の睡眠中の尿量が50 x 8 = 400mlとなるので、夜中にトイレに1回起きることになります。
もしも、この人が夜間の尿を昼間の半分にできれば、8時間の睡眠で25 x 8 = 200mlとなり、朝までぐっすりと眠れることになります。
つまり、夜の尿レートを昼間の半分にできると、夜間頻尿が治ります。

左図は私が夜間頻尿だったころの尿レートをグラフにしたものです。
この図では、昼間の尿レートの方が少なく、夜の尿レートの方が大きくなっています。私の夜間頻尿は、これが原因でした。
就寝時にカンデルサンを服用すると、夜間の尿レートが20ml程度になりました。
カンデサルタンを飲むと、夜の尿レートがはっきりと減少します。

利尿薬をフルイトランからフロセミドに変えてみました。フロセミドは強力な利尿薬です。
朝フロセミドを飲むと、1時間おきにトイレに行きます。多いときには、1時間あたりの尿量が700mlにもなりました。
午前中の尿量が多くなると、夜の尿量が減り、夜間頻尿がはっきりと改善できました。
カンデサルタンとフロセミドの組み合わせが、私にとっては最適の組み合わせのようです。


膀胱トレーニング
ネット情報によると、膀胱トレーニングには2つの方法があります。
・1つは、尿意に関係なく、一定時間ごとにトイレに行き、その間隔を5分ずつ延ばして行く方法です。
・もう1つの方法は、トイレに行きたくなったとき、我慢する時間を5分ずつ延ばして行く方法です。

膀胱トレーニングで、もしも、膀胱を大きくすることができれば、トイレの回数が減るはずです。
ところが、実際に実行してみると、尿意は努力すればするほど意識にのぼり、かえってトイレが近くなったりします。私の場合は、この方法はどちらも失敗でしたが、ある日、もっと良い方法を見つけました。

私たちの膀胱は、朝目覚めたときが最も大きくなっています。
この満タン状態の膀胱をできるだけ長く続けることこそが、もっとも効果的なトレーニングになります。
具体的には、朝目覚めたときに、ベッドの中でぐずぐずするだけでよいのです。

それから、夜中に目が覚めたら血圧を測りましょう。もしも、血圧が130mmHgを超えていたらトイレに行きます。
もしも、血圧が低ければ、夢を見ただけですから、トイレに行かないで眠ります。トイレに行かなければ、朝の膀胱をもっと大きくできます。

夜中にトイレに行かない、朝のベッドの中でぐずぐずする、この2つを守ると効果的なトレーニングができます。
私の朝の尿量は、それまでは最高が340mlでしたが、今は520mlになり、時には650mlを超えることがあります。
朝の大きくなった膀胱をできるだけ長くキープする。これが、もっとも効果的なトレーニング法です。


ディップ比

正常な人の睡眠中の血圧は、昼間よりも10〜20%ほど低くなるのが普通です。夜の血圧の低下率をつぎの式で計算します。
ディップ比 = (日中の血圧 - 夜の血圧) / 日中の血圧

夜の血圧が下がらない人は、調査によると、心肥大、左室機能低下、脳梗塞が進行していることが多いとのことです。
昔は、高血圧の目安は年齢+90 とされていました。当時の日本人の死因のトップは脳出血でしたが、1960年代に高血圧の診断基準が引き下げられた結果、脳出血の死亡率が低下しました。その代わりに、脳梗塞が起こりやすくなり、死亡率が4倍も増加しました。
血圧は高すぎるのも良くありませんが、下げすぎにも注意が必要です。


24時間血圧グラフ
血圧のディップ比を知るには、朝夕2回の血圧だけでなく、昼と夜のチェックも必要です。
たとえば、アムロジピンの場合、蓄積がすすむと昼間の血圧が下がりますから、ディップ比がゼロに近づきます。しかし、朝夕2回のチェックではそのことがわかりません。
カンデサルタンの場合も、朝夕2回のチェックだけでは就寝中の血圧が高いことがわかりません。血圧は朝夕だけでなく、昼と夜の血圧のチェックも必要です。ただし、睡眠中の血圧は測れませんから、夜の血圧は目が覚めたときにだけ測ります。
左のグラフは、24時間分の血圧が揃うまで、過去にさかのぼって集計したものです。
左図で、Reach 19日となっているのは、19日目に24時間分の血圧が揃ったという意味です。
血圧は、1日に100回測るよりも、19日間で100回測る方が信頼性が高くなります。


ダウンロード

ここで使用した24時間家庭血圧計アプリを無償で提供します。
http://www6.plala.or.jp/yamaski/soft/boso240.zip