臭作

   時は1998年始め。時代はDOSからWindowsへ順調にシフトしていて、エロゲもWindows版の新作タイトルが出揃ってきた頃。そんな中、DOS時代に一世を風靡したelfは旧作のリメイク版ばかりをひたすらリリースしていて新作などは一切なし。DOSの頃は半年に一回は新作が出てたのに最近のelfはどうしちゃったの?って感じだったんですよ。そこへ久々の新作のリリースが!しかもelf初のWindows版新作タイトル!その名も「臭作」。
   …は?何?臭作?これ、遺作の続編かなにか?ってかまた鬼畜系なの?ちょっと待って。俺は鬼畜系は好きじゃないんだよ!出来るだけ避けて通るんだよ!つーか、普通はんなもんスルーだよ!スルー!…でもなぁ、elfだしなぁ、前作の遺作もあれはあれで面白かったしなぁ、ハズレっていこともないだろうなぁ、なんて思いながらがら買ってきたんですよ。

   この「臭作」の主人公の臭作が「遺作」の主人公の遺作と容姿がそっくりなのはどうでもいいとして(実は遺作の弟らしいですが)、肝心なのは内容ですよ内容。

   この臭作は音楽女学院の寮の管理人になりすまして、空きあらば寮の至る所にビデオやカメラを仕掛けて盗撮して、それをネタに学院生たちを脅してあんな事やこんなことをやってしまうですが、なんつーかホントに鬼畜系ですな。その行動期間は3日間。全員を落とすのが目的、ってやっぱ鬼畜系ですな。ああ、なんかelfのイメージが崩れてく。
   ところが。ゲームを始めてみるとこれが面白いのなんのって!いや、待て。別に趣味が変わった訳じゃないぞ!鬼畜好きになった訳じゃないぞ!だけどな、このゲームってシステムがいいのよ!システムが!凄く良く出来てるのよ!各キャラのタイムチャートを見ながら、脅すためのネタが撮れるようにカメラをいかに仕掛けるかとか、仕掛けたカメラを回収して次に何処に仕掛けるかとか、効率よく行動する方法を見つけるのが楽しいっていうか。カメラを回収してちゃんと脅せるようなネタが撮れてた時なんか思わずガッツポーズしちゃったりしてな!「出木杉君ってことじゃねぇか」(<臭作っぽく)なんて言ったりしながらな!しかもそれでうまく落とせた時の喜びと言ったら!この達成感といったらもう!逆に落とし損ねた時なんか「ガキ共め、俺の美学を踏みにじりやがって」(<臭作っぽく)なんつって悔しがったりしてな!いや、だから趣味が変わった訳じゃないんだって!

   ただの鬼畜ゲーじゃなくてこうやってシステム面で楽しませるところなんか、さすがはelfですな!


   そんな感じでプレイして、ほぼ全員落とせたし、あとは最後の目の前にいる絵里を落としたら終わり!…って思ったらここで終わりじゃないんですよね。elfの伝統というか、恒例のシナリオ2週目があるんですよ。

   2週目は自分が臭作になっていかに落とすか、じゃなくて、今度はいかに落とさせないようにするかなんです。つまり、この2週目は1週目で落とせない絵里と臭作じゃない臭作(プレイヤーと精神が入れ替わった臭作)で行動するんですが、その時にいかに本物の臭作の意志を阻止するかなんですよ。でね、このシナリオの後半がね、グッと来るんですよね。もう泣けるのなんのって!目頭にきたね!スゲー感動したね!クライマックスの部分なんかね、思わずディスプレイに手のひらを合わせたね(伏線)!ヤベェよ!思わず泣いちゃったじゃないかよ!鬼畜ゲーなのによ!つーか、鬼畜系で感動ってアリなんですか?アリなんですかあああああああああああああ?

   とまあ、本当にただの鬼畜ゲーで終わらせないあたりが、ああ、やっぱ老舗のelfだなぁと思わせるような一作でした。


   …それにしても臭作さん、3日間不眠不休で15分間隔でヤり続けるなんて凄いよね。