おわりとはじまりと。(R指定)


それからは瞬く間に日々が過ぎていった。
梱包しながら、間取りを考える無心。
それを微笑ましそうに見守りながら、ローンの契約書と
睨めっこしている若人。
無心と若人の未来予想図がもうすぐ現実のものとなろうとしていた。
いつか遠くない未来と思っていた夢が手の届く距離にまで近づいて・・・。

「ふぅ、オシマイっと。」
若人は最後のダンボールのテープを止め終わると一息ついた。
カレンダーに印付けられた引越し予定日がいよいよ明日に迫っていて、
今日が、ここで過ごす最後の夜だった。

「今日で、ここもお別れかぁ・・・。」
無心は名残惜しいように、部屋の窓から夕焼け空を眺めていた。
「そういえば、出会ってからもう半年になるんだもんなぁ。」
と若人。
二人は出会ってからの日々に想いを巡らせていた。
いつのまにか無心の隣に若人がいて、優しく無心の肩を抱き寄せた。
「色々、あったよなぁ・・・。」

・・・大雨の日に、傘も差さずに公園で泣いていた無心。
心配して家に連れ帰ったあと、泣きじゃくるように若人に抱きついて嗚咽をもらした無心。
若人は優しく無心の頭を撫で続けた。若人は無邪気な無心に惹かれていき、
無心はいつも見守っていてくれる若人の存在を自分の中で大きくしていった。

二人が愛し合うようになるには時間なんて必要じゃなかった。
まるで、お互いが欠けては壊れてしまうように二人はお互いを想う様になっていって
そうして、結ばれた。

「お前がさ、急に同棲しようなんて言い出したのはこういう理由があったからなのか?」
若人は無心の声で、ふいに現実に引き戻された。無心の顔を見て笑みがこぼれる。
「そうだ。駄目だったか?」
こういう若人のぶっきらぼうな言い方が、無心は嫌いではなかった。拍子抜けするくらいに
簡単に、自分の嬉しくなるようなことをやってのけるから。
「いいや、そうじゃない・・・そうじゃないんだ。でも・・・。」
無心は、若人の肩に添えられた手を自分の胸の前に回させて、しがみつくようにして言った。
「幸せすぎて、恐いんだ。」
ばかだな、と若人は無心の頭を自分のほうへ引き寄せると、無心のひたいに、瞼に、
頬にも首筋にも、無心の体の震えが止まるまでゆっくりと何度も接吻(キス)した。
「お前が、好きだから。一緒に居たいからこうしたんだ。何も心配しなくていい。」
そして、最後に無心の唇を塞いだ。

「はぁっ、・・・んっ。」
無心の唇に舌を挿し入れ、貪欲に貪った。最初は苦手だった無心も今では、若人の
こうした攻めにも応じられるようになっていた。
ピチャッっという音が荷物の無くなった部屋に響く。

若人は無心の唇を塞ぎながら、首筋を小指でなぞり、耳の外側を人差し指でなぞった。
「ひゃっ、あっ、ひ・・・ひどいよ若人。」
「相変わらず、耳が弱いんだな。」

クスクスと若人が笑う。
「それっ。」
若人は無心を抱きしめたまま、自分が下になって布団に倒れこんだ。
無心が心地良い重みとなって若人に伝わっていく。

「こっちはどうかな?」
と、若人は無心の秘所に手を伸ばした。暖かくて屹立した感触が若人に伝わる。
「感じてるじゃないか。正直だな。」
「だって、若人が僕に・・・あんなことするから・・・。」
と無心は頬を赤く染めながら、小さい声で言った。
でも、若人だって・・・。
無心も若人のその部分を指でなぞった。
「・・・熱いよ。」
若人はその腕を掴むと、直接触れさせるように無心の手を導いた。
「じゃあ・・・してくれるか?いつもみたいに。」
と同意とも強制ともとれる言い方を無心にした。
「うん、いいよ・・・若人。」
無心は、衣服からそれを引っ張り出すと舌を這わせた。
小さい舌が熱い若人自身を刺激する。
先端から線をなぞるように無心の舌が動き、
そして無心の手があらゆる処を刺激する。
「んっ、ああっ、いいぞ、無心。ぅぅっ。」
若人もその快楽には絶えがたく、身を捩じらせては足の爪先を奮わせた。
パクッっと、イタズラのように無心はそれを咥えると
舌を絡めていった。
いつも思うけど、水酸化ナトリウムのような味がするな、とふいに無心は
くだらない事を考えると、またその作業に没頭した。

数分して、若人は限界に近づいているのを感じた。
「無心、俺・・・もう・・・。」
っといつになくか細げな声で鳴く若人。
無心も、そんな若人で感じていた。
頬が紅潮し、一心不乱に擦り上げる。

「駄目だっ、・・・無心っ。」
若人は無心の中に己を解き放った。

無心は零れそうなそれを全て嚥下すると、
微笑みながら若人に言った。
「若人って、そういう時だけはかわいいのな。」
若人は真っ赤になって、うつむいた。
「それは、今夜寝かさなくても良いってことか?」
と若人はようやく、それだけ言った。

この家で過ごす、最後の夜がこうして更けていく。
そして、明日からはまた新しい毎日が始まるのだ。

若人に抱きしめられながら、無心は言った。
「・・・若人、愛してる。」

「何か言ったか?無心。」
「・・・えっ?、何も。」
なんか、気恥ずかしい事を言ったような気がして、
無心はもう一度言うことをははばかった。

俺もだ、無心。愛してる・・・。と若人は心の中で言った。


その2 fin