「僕は・・・」

リリス。

「ここは・・・」

ジオフロント。

「初号機・・・一体誰が」

碇ゲンドウ。

開けた視界に白い羽をはばたく鎧の天使たち。

「あれは・・・エヴァ?」

仮面の7つの目は青空を見上げる。

「僕は・・・僕って何なんだ?
一体どうなっちゃったって云うんだ?」



驚愕する老人。

「あれは・・・なんと云うことだ」

キールの驚愕。

「リリス・・・まさか・・・アダムとの融合を果たしたと云うのか!」

出現する石板の声。

「リリスに魂が宿るとは」

「破壊しなければ」

「我々にはもはや神は必要無い」

「我々が神なのだ」



「・・・シンジか・・・」

ゲンドウの笑み。

「・・・いや、あれは僕だ・・・」
















 


 



最終話
A-PART


















発令所の加持。
新鮮な空気にマスクを外す。
ミサトの傍らでメインモニターを眺める。

「リリス・・・レイが融合したのか?」

「なにそれ?どう云うこと?」

ミサトの訝しむ顔。

「アダムとリリスはお互いに補完しあう存在なんだ。アダムにひとの意思・・・魂をそそぎ込むことが出来るのはリリスしかいないんだよ。ガフの部屋を開いてね・・・」

ミサトに向き直る。

「そしてリリスに魂をそそぎ込むことが出来るのはアダムだけなんだ」

「・・・レイが・・・なんで」

「・・・綾波レイはね、アダムなんだよ。多分オリジナルのね」

「え・・・」

「彼女はダミーシステムとして開発されたアダムのクローンだったんだが、すべてを破壊されてしまったらしい今、ドイツから俺が持ってきたオリジナルである可能性が高いんだ」

「その通りよ・・・」

ふたりが振り返ると、金色の髪と冷たい微笑みが白衣を纏う。

「よおおっ、リッちゃん。久しぶり」

「相変わらずね加持君。あれから元気だった?」

ミサトが睨む。

「あれからって?」

苦笑い。

「・・・いやあ、さっきは云わなかったけど、通りすがりの金髪のお姉様のおかげで命拾いしてね・・・」

「・・・じゃあ、リツコが・・・」

「違うわ。あのひとに云われたからよ」

薬指を見る。

「リツコ・・・その指輪・・・」

微笑み。

「わたしたち、バカみたいね。たったこれだけの絆なのに・・・」

その瞳に光る涙。

「もうすぐ失なわれてしまうのに」

その視線の先には、スクリーンに映る初号機。

「リツコ・・まさか初号機パイロットは・・」

顔を覆う手にかかる金色の髪。

「あのひと・・・死ぬ気よ」



リリスへと槍が閃く。
風を切り、落ちる。
投擲したと同時に、天使たちは天に昇る。
産まれた星に還る。
その翼をはためかせ、青空に消えて行く。
槍はその切先をリリスのコアへと向け、稲妻の如く走る。

「シンジ!」

初号機のATフィールドがそれを阻む。

が。

みしみしと浸食されていく。

「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」

槍は初号機へと切先を変え、その壁を犯す。

「畜生!」

ついには破る。

「畜生!畜生!畜生!」

初号機のコアへ深々と沈んで行く。

「ああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」



「初号機、パイロット生命維持に問題発生!脾臓破裂の危険性が有ります!」

マコトの声にリツコは顔を覆ったまま動かない。

「もういい・・・もうやめて・・・あなた」

と、突然、ディスプレイを凝視したシゲルが

「これは・・・初号機から・・・翼が!」

「初号機から、強力なATフィールドの発生を確認!・・・いや、そんな生易しいものじゃないぞ・・・」

驚愕するマコトにミサトはつぶやく。

「あの翼・・・セカンド・インパクト・・・」

冬月は呆然と

「ガフの部屋が開いてしまう・・・」



















暗黒
















「シンジ」

「・・・父さん?」

「・・・シンジ・・・行け」

「・・・何で?・・・判らないよ・・・
一体どうなってるんだよ!」

「あの悪魔どもを月へ行かしてはならん。
サード・インパクトを起させてはならんのだ」

「何で・・・何で僕なの・・・」

「お前以外には無理だからな・・・」

「何で僕なんだよ!
他の僕を使えばいいじゃないか!」

「・・・シンジ・・・」

「判ってるんだよ・・・
僕も綾波と同じなんだろ・・・」

「・・・違う」

「違うもんか!同じ『チルドレン』なんだろ!
アスカも!トウジも!」

「・・・シンジ、お前は人間だ」

「判るもんか」

「お前は人間なんだ。これだけは信じろ」

「・・・・」

「そしてわたしの息子だ」

「・・・ウソだ」

「ウソでは無い、シンジ・・・
お前はわたしとユイの子だ。代わりはいない」

「・・・・」

「シンジ、
親とは、誰がお前を産んだかではない・・・」

「・・・・」

「誰がお前を愛したかだ」

「父さん・・・」

「シンジ・・・わたしを越えて行け
・・・クッ・・・」

「・・・父さん?」

「わたしに構うな。行くんだ」

「でも・・・」

「死など恐れるに足らん」

「そんな」

「いいかシンジ。
失ったものの為に死など考えるな。
それは産まれて来なかったのと同じことだ」

「・・・父さん」

「失ったものの為にしなければいけないこと、
それは生きることだ。そして・・・」

「・・・・」

「もし、死を選ぶのであれば、
生きているものの為、
お前の愛するものの為にこそ死んで行け
・・・うっくっ・・・」

「・・・父さん!」

「・・・判ったな・・・シンジ・・・」

「・・・判ったよ・・・父さん」

「そうか・・・」

「もうこれ以上失うのはイヤなんだ・・・
僕の好きなひとたちを・・・」

「シンジ・・・」

「何・・・父さん・・・」

「・・・すまなかったな・・・シンジ・・・」

「父さん・・・僕、産まれてきて、良かった」

「そうか・・・行け」

「うん、父さん」



















初号機の拘束具の隙間から、
びたびたとLCLが溢れ出る。

まるで抜け殻のようにがしゃがしゃと崩れる。

ATフィールドの輝きはリリスを包みこむ。

揺らめくかげろうに初号機の翼は沈み、
そしていつか、リリスの背中に
純白の羽毛を散らし、
陽光にはばたく翼が現われる。

空を見上げ、力のみなぎる風を起こすと、
光に包まれたまま、その足は土を離れた。


















「ユイ・・・」

「もういいの?」

「もういいんだ。
もう怖くないんだ。シンジが」

「そう・・・よかったわね」



















「いた!」

宙空を8人の天使を追う悪魔。
すでに地球がその輝きを宇宙の闇に放つ天空。
見上げると宝石のような星々が青に透ける。
天使たちは邪悪なものに気付くと、それを取り囲むようにぐるりと円を描く。
その一人に掴みかかる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ATフィールドの干渉で空間が揺らめく。
天使の鎧の肩から輝くナイフのきらめきが迫り出す。
脇腹をかすめると、ばさりと翼に顔が当たる。
背中からその胴体を抱え込む。

「くくくくくくくく」

力を込めると、鎧が潰れ、とくとくとした内臓の蠢きと、その体温にめり込む。
苦しみに体を反らす相手のよだれが散る。
ナイフは狂ったように空を切る。
突然、抱える袋の中味がせり上がったと思うと、真紅の血液が顔から噴き出した。
ナイフを奪うと、相手の頭を抱え込み、喉に水平に切れ目を入れ、そのまま首を折った。
首から舌がぶらりと覗く。

手を放すと、それは空を漂い始める高度だった。

「来い!来い!来い!・・・お前らを行かすわけには行かないんだ!」

なおも取り囲み、円を描くヒト。
ナイフを持ち直す悪魔。
突然、円はその中心に向かって収束した。

「畜生!畜生!畜生!」

頭、胴、足、腕、手、すべてを抱え込まれ、ナイフもままならず、その無防備な腹をさらすと、ひとりがゆっくりとした動作で肩からナイフを取り出した。

そして。

腕を押さえていたヒトの目に深々と刺した。

「?!」

自由になった腕で切りつける。
飛沫く血煙であたりは鮮やかに染まる。
いつしか、ふたりになっていた。
返り血に濡れながら、お互いを見つめる。

「君は・・・」

鎧は地球に落とされて行った。
そして、全裸の少年は翼をはためかせ、その仮面を外す。

「!」

にこりと微笑む。

「やあ、待っていたよ、シンジ君」

リリスの仮面が落ちて、
にこやかな少年が現われた。
















「カヲル君・・・ここにいたんだ・・・」

















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