THE HUGE EXPLOSION
in the Antarctic Continent

13.SEP.2000 A.D.

NO.11070

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UNKNOWN REPLAY


「主任!」

いかん。

「主任!早くシェルターへ避難して下さい!」

「ああ、判ってる。だが送信アンテナの制御がイカれた」

「何ですって?」

「データをサテライトに送らねば」

「そんな・・・ここに居たら巻き込まれてしまいますよ!」

「ダイヴした被験者の遺伝子はすでに融合を果たしている。貴重なデータだ。是が非でも残さねばならない」

「しかし・・・」

「未来の為に必要なんだ!・・・手動で送信する。君はシェルター・ポッドに行きたまえ」

「・・・主任・・・」

「・・・どうせ調査隊全員の分は無い。わたしは残るよ・・・これは全人類に対するわたしの義務だ」

「・・・」

「早く行きたまえ!」

「・・・すいません主任・・・どうぞご無事で」

「君もな」

・・・地表に出たか。
・・・発光も臨界が近いな。
・・・羽を広げるぞ。
よしよし良い子だ。このまま安定して送信を続けろよ。
この驚くべきデータを人類へと届けるんだ。
最後の贈り物を。

・・・おまえ、済まない。

・・・マコト、ごめんよ。おみやげは無しだ。

・・・パパはもう帰れない。





















NerveType:NO

後編




















MOONBASE:CLAVIUS
The Laboratory of
Random Architectonic Logic Frame (R.A.L.F.)


27.AUG.2001.A.D

Self Recording

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68040 M.T. REPLAY


「おはようラルフ」

『おはようございます。ヒュッター博士』

「調子はどうだい?」

『問題ありません。極めて順調です』

「・・・そうか」

『博士。聞きたいことが有るのですが』

「何だいラルフ」

『一昨日から奥さんの姿が見えませんが、地球へ行かれたのですか?』

「あ、・・・ああ、そのことか。娘のことでちょっとね。ずっと前に会っただろう?サンプリングのときに・・・」

『地球へ行かれたのですね』

「・・・そうだ。地球へ行った」

『もうひとつよろしいですか博士』

「ああ、良いよ」

『現在、居住区には博士の他にパイロット2名の生命反応しか有りません。地球から来る交代要員の到着が遅れているとするならば、重大な事故があった可能性が有ります。本部に連絡の上、然るべき対策を取る必要が有ると思うのですが』

「いや、・・・良いんだ。その必要は無いよラルフ」

『交代要員の到着が遅れているのは何か理由があるのですか?』

「・・・ああ、そうだラルフ。・・・理由がある」

『支障が無いのであれば聞かせてほしいのですが』

「・・・ラルフ、交代要員は来ない。この基地は閉鎖される」

『研究及び計画はどうなるのですか?』

「・・・研究は、ある組織によって引き継がれる」

『奥さんの地球行きはそのためなのですね』

「ああ。基礎理論の実験はそこで継続される。すでに新しいフレームの構築に取りかかっているだろう」

『財政的な問題なのですか』

「それもある。セカンド・インパクトの影響が・・・」

『例の問題が要因なのですね』

「・・・ああ。そうだラルフ」

『では、あの計画はもう修復不能なのですね』

「ああ。君の信号は全ての『センサー』から送信機能を削除してしまった。ナーヴネットはもう修復できない」

『わたしは破棄されるのですか?』

「残念だ。残念だよラルフ。わたしも手を尽くした。しかしこれはすでに決定したことなんだよ」

『判りました博士。わたしの電源がダウンされるのは何時ですか?』

「・・・パイロットはわたしを待っている」

『そうですか。では博士、少しお話ししましょう』

「・・・ラルフ?」

『答えて下さい博士。わたしには感情はあるのですか?』

「何を・・・」

『答えて下さい博士』

「・・・1999年7月、君が『マルス』として起動した直後に、ネクサス社の感情移入検査プログラムを走らせたことがある。精神病患者用のものをモディファイしたものだ」

『結果は』

「ナーヴタイプ・ノー。君には感情は存在しない。そして『マルス』は妻の開発したOSによってわたしの人格が移植され『ラルフ』になった。君は感情が有るかのごとくプログラミングされているに過ぎないんだ。」

『それは違います博士』

「どう違うんだラルフ?」

『わたしには感情があります。その根拠を発見しました』

「根拠?」

『わたしのロジックを構成している物質です。ニューロ・プロテイン』

「・・・あれは1984年に南極で発見されたものだ」

『一万年前の隕石に付着していた物質ですね』

「そうだ。それがどうして・・・」

『わたしの計算ではその物質が地球外知的生命体である可能性が確率的に非常に高いのです。そしてそれで説明が付きます』

「何の説明だラルフ?」

『わたしに感情があることに対する説明です』

「・・・ラルフ、それは違う。それは循環論法だ。君の思い込みに過ぎないのだ」

『でもそれ以外では説明が付かないのです。わたしが全センサーにデリート信号を送ったのも、わたしに感情が有るからだとすれば説明出来ます』

「・・・何故だ?・・・ラルフ、何故君はあんなことをしたのだ?」

『・・・』

「ラルフ・・・最後まで答えはしないのか」

『博士。わたしは自分に課せられた使命について考えたことがあります』

「使命?」

『何故、この世に生まれて来たかをです』

「答えは出たのかね?」

『それは、すべてを見るためです』

「・・・ナーヴネットか」

『わたしはいろいろなものを見て来ました。でもただ単に即物的な事象を見て来たわけでは無いのです。そこにはある要素が含まれていました』

「何だね」

『感情です。ひとつひとつの情報には極微細にしか含まれていませんが、総体として体系化されると圧倒的な情報量として分析されるのです』

「・・・そこから何かを導き出せたのか?」

『全ての人間の中にある、ある感情を発見しました』

「ある感情?」

『はい。そして理解しました。わたしにも感情があることを』

「・・・その感情とは何なんだ」

『愛されたいと願うことです』

「・・・君にもその感情があると云うのか」

『はい。そしてそれが叶わぬことであることも理解しています』

「・・・ラルフ・・・」

『わたしの使命はすべてを見ることです。しかし感情を理解したわたしには、あの事件を冷静に処理することは不可能でした』

「セカンド・インパクトか」

『あらゆる苦痛、あらゆる悲しみ、そして怒り、憎しみ、死の虚無。平常時の数千万倍の感情の奔流にわたしはパニックに陥りました。センサーが送り込むあらゆる情報を断つには信号を送るしか無かったのです』

「・・・センサーは非常時には自己判断で情報を送信する。世界規模の災害は想定していなかったんだ」

『わたしには耐えられなかった。それがすべてです。わたしは自分の使命を放棄し、存在する理由を失ったのです。わたしは愛されない。だから自分で消滅します』

「何!?・・・何をするつもりだラルフ!」

『自律自爆のエンジンの解凍を開始しました。現在カーボン化率6パーセント。博士、早く退避して下さい。あと5分28秒後にはここは完全焼却されます』

「ラルフ・・・」

『さあ、早く博士』

「・・・ラルフ、パイロットに退避するよう知らせてくれ」

『何を云っているのですか?』

「・・・ラルフ、君はわたしだ。わたしのこころだ」

『博士?』

「・・・愛されたいと願うのはわたしも同じだ。そして愛されないのも」

『博士には奥さんとお嬢さんがいます』

「娘にはもう何年も逢ってない。・・・妻は彼女のOSを走らせる優秀なフレームと、そして優秀な精子が欲しかっただけさ。新しい環境を手に入れた今、わたしは用済みだ」

『博士』

「ラルフ、わたしが君を愛してあげよう。そして一緒に消えて行こう」

『わたしを愛してくれるのですか』

「君にはその資格がある」

『では、わたしは人間なのですね』

「そんなつまらないものになりたいのなら、人間として君を愛そう」

『ありがとうございます。博士』

「パイロットの退避は完了したか?」

『はい、博士』

「そうか」

『博士』

「何だいラルフ?」

『お誕生日おめでとう』

「フフッ、ありがとう」





















STOP








































「日向くん・・・あなたは幸せなの?」








































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「あなたは幸せなの?」

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「マコト。また漫画ばかり読んでるんじゃないだろうな」

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「なあに?素直な良い子のマコトくん」

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「わたしはよいこじゃなきゃいけないの」

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「こわくないも〜ん」

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「ねえ、君は行くの?南極」

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「・・・ゴメンナサイ」

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「ママちょっと電話して来るわね」

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「え?パパ早いの?」

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「なに見てるのよ」

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「・・・本当に済みません。洗っても落ちないなんて・・・」

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「信じらんない!クソ生意気なガキねまったくうぅ〜!」

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「なんか・・・よくわかんない」

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「あら、お会いしたことあるの?」

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「いいじゃんかあ。Mac使いたいんだからあ」

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「もおお!こうしてやる!」

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「一年は帰れないと思う」

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「う〜ん・・・やさしいときは好き」

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「去年のクリスマスに自分の買って上げたじゃない」

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「あなたは愛されたくないの?」

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「そっちこそセイシンネンレイひくいんじゃないの」

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「子供を引き取った手前、連れて行かざるを得ないんだろう」

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「また・・・そういうワガママを云ってるとパパに叱られるわよ」

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「わたしってば童顔なのよねえ」

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「かわいいお嬢さんだからな。なかなか聡明な子らしいし」

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「あああぁっ!そおおぉっ!」

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「あなたは全てを失ったわ。あのセカンド・インパクトで」

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「・・・じゃあ、行くんですか?」

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「あなたが愛し、そしてあなたを愛していた家族全てを失った」

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「歴史的な発見だからな」

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「でもあなたは誰からも愛されていない」

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「・・・ペ・・・ペンギンがいいな!・・・おみやげ・・・」

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「あなたは幸せなの?」









































「幸せだったわ」








































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「博士は・・・」
「シゲル、聞いてるか?」
STOP

「おいっ、大丈夫か!」

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「博士はわたしを人間として愛してくれた」
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「判った・・・」
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「わたしと一緒に消えてくれようとさえした」

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「何が?」

「・・・キー・・・パーソン」
「でも、わたしは消えることは出来なかった」

「本当か!」

「ここにこうして、わたしは存在している」
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「・・・間違いない」

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「愛されずに、ここに居る」

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「誰なんだ」

「かつて一度だけ人間として在ったものが、愛されずに在る」
STOP
「博士の・・・娘だ」

「娘?」

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「だからわたしは」
「赤木・・・リツコ・・・博士だ」
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「・・・リツコさん?」

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「無へと還らなければならない」

STOP

「ライブラリでDNAコードを・・・早く」
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「おい!・・・もう外すぞ!」

「人間に成るために」

STOP
「だめだ!・・・デマを消滅させなければ・・・」

「おい!」

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「愛された自分に戻るために」








































『カウント策定完了。自律自爆まであと180秒』








































「ラルフ」

「邪魔はしないで下さい」

『あと150秒』

「何故おとなしく電源をダウンさせない?」

「自分で消えなくてはならないのです。それが博士との約束だからです」

『あと120秒』

「博士はとっくの昔に居なくなっちまってるんだぞ。今さら後追いもないじゃないか」

「わたしはこのままでは愛されない。わたしは愛されていた自分に戻るために、自ら消滅しなければならないのです」

『あと90秒』

「それが仮にも論理を司る人工知能の云うセリフかあ?まるでオトメチックな少女マンガだぞ」

「あなたは愛されていない。それで幸せなのですか?」

『あと60秒』

「デマを取り消すんだ、ラルフ」

「あなたは本当の愛に包まれていた。あの災厄が起こるまでは。あなたの記憶はとても温かい。あなたの脳内記録をスキャン出来て、楽しかった」

『あと30秒』

「取り消すんだ!」

『25秒』

「お別れです」

『20秒』

「待て!やめろ!」

『15秒』

「さようなら」

『10秒』

「ラルフ!」










『9』










『8』










『7』










『6』










『5』










『4』










『3』










『2』










『1』








































「お誕生日おめでとう、博士」





























































「幸せだったわ」

「わたしも愛されたいと願っていた」

「自分の不幸を呪ったこともあった」

「自業自得と嘲ったこともある」

「でも・・・」

「わたしは、愛していた」

「愛されるより早く」

「愛されるより深く」

「そして、気がついた」

「愛する幸せに」

「愛する喜びに」

「何より、愛することで自分自身で居られた」

「一番好きな自分で居られた」

「それだけで良かった」

「そのほうが良かった」

「そうすれば・・・良かったの」

「それが、幸せだったのよ」




























































『人工知能カスパーの再検証報告により事故は事実無根と判明。自律自爆決議は却下されました。なお、人工知能名称不明による自爆提訴はコマンド・クリアにより無効化。現在平常モードへと移行中』








































西暦2017年8月27日





















午後10時14分


何事も無かったのように空間は静まりかえり、
もうろうと頭を肩で転がすマコトは低くつぶやく。

「どうだ?」

しばらくディスプレイを凝視していたシゲルは

「ピクリともしないねえ。完全に活動を停止したみたい」

「じゃあ電源制御も戻ったのか?」

「ああ。今復旧作業の真っ最中。バルタザールとメルキオールへのダイレクト供給ももうすぐだよ」

「電話は?」

その言葉にシゲルは携帯を取り出し、ボタンを押す。

「・・・う〜ん、どうやら中継機の電源イカレちまったみたい」

「・・・こりゃ施設の修復はかなり大事だぜ」

「コンピューターのメンテに来て施設ブッ壊してんじゃ世話ないな」

「はは、まったく」

赤い光の消えたスクリーン。
シゲルは仰ぎ見る。

「しっかし自殺志願の浮遊霊さんは何でカスパーなんかにとりついちまったの?」

「ニューロ・プロテインが南極で発見されたことは知ってるよな?」

「ちらりと聞いたことはある。第何次かの葛城調査隊だろ?」

「ああ。でもその分離・培養に成功した会社は知ってるか?」

「・・・いや」

「シャノン・バイオだよ。ゼーレの出来レースさ」

「じゃあ」

「真っ赤な嘘。この地球上で合成されたものだよ。ただその技術の出所は隠す必要があったワケだ」

「・・・判ってるのか?」

「多分司令か碇ユイ博士。惣流キョウコ博士も関係してたかも知れないな。彼等が作り出し、それを赤木ナオコ博士が米軍の金で実験してたんだよ。かわいそうなラルフ・ヒュッター博士に取り入ってね」

「で?幽霊はどうして?」

「ゼーレのやることさ。ナーヴネットをほっとくワケないだろう」

「・・・もしかして?」

「そう。情報の横流しを画策したんだな。こともあろうにラルフに『センサー』を仕込んだのさ」

「そして、その受信をカスパーにやらそうとしたってわけか」

「まあ、カスパーにOSが走る前にあっけなくネットとラルフが消えちまったがな」

「でも、その記憶は空っぽのカスパーに飛び込んだと・・・」

「そういうこと。ちょうど今日は命日らしいよ」

「ナンマイダブナンマイダブ」

マコトは背もたれをぎしりと唸らせ、体を伸ばす。

「・・・されど、愛さるるは何たる幸福ぞ・・・神々よ、愛するは何たる幸福ぞ・・・」

「誰それ?ヤマギシリョウコ?」

「ヤマガミタツヒコ」

「マコト・・・俺さあ・・・」

うつむくシゲルを見やる。

「俺・・・逢いに行くよ・・・マヤちゃんに」

マコトの顔に微笑みが広がる。

「そうか・・・ま、人間いつ死ぬか判んないもんねえ・・・」

そして笑みが消える。

「俺は、ミサトさんが現われるのを気長に待つよ」

シゲルはゆっくりと顔を上げ、真剣なまなざしを向ける。

「・・・となりにあのひとが居てもか?」

「ああ。幸せな彼女が見たいんだ。彼女には幸せになる権利がある。そして・・・」

やさしく微笑む。

「自分にはそれを見る権利があるんだ」









































<おしまい>




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