怪物と闘う者は、自らも怪物とならぬ様にこころせよ。

汝が久しく深淵を見入る時、深淵もまた汝を見入るのである。

ニーチェ
































細く開いた窓から、湿った風がレースの模様を揺らす。
日常に敷き詰められる音。
雨の、午後。

「・・・・」

窓際のベッドから白い空を眺める、青い瞳。
ぼんやりした、少女の、顔。
やや艶を落した紅い髪が、枕に埋まる頭を縁取る。
力無く伸びた手が、緩やかに風の隙間を閉める。
茹ったカラダ。
重いパジャマ。

「・・・遅い・・・シンジ・・・」

自らのコトバで、顔は急激に険しくなる。
汗ばんだ額に手の甲を当てる。

「病人を寂しがらせるなんて・・・とんでも無いわよ・・・」

しぼんだ声は部屋に漂い、消える。

「帰って来たらヒドイ目に遭わせて・・・」

がたりと、玄関のドアが開く音。

「ごめんアスカーっ!買い物して来たら、ちょっと遅くなっちゃってーっ!」

声を聞いた途端、ぱあっと表情に光が訪れる。
どさりとレジ袋を置く音を合図に、寝室のドアが開く。

「どう?具合は・・・熱は下がった?」

現れた少年の心配顔。

「お・・・遅かった・・・じゃない」

戻された少女の不機嫌顔。

「ご、ごめん・・・」

雨の匂いがする制服がベッドに腰掛け、不機嫌な額に手を伸ばす。

「・・・まだ下がらないみたいだね・・・」

溜息の手から伝わる、ひんやりとした、涙が出る程の、安らぎ。

「・・・そ、そんな、手じゃ判らないわよっ」

くぐもった声は、絞り出る。

「え?・・・あ、ごめん。今体温計を・・・」

「違うわよ。・・・あんたの体温と比べなきゃ」

「ぼ・・・僕の?」

「ほら」

横に逸らされた視線の上。
熱っぽい手は、そっと自分の前髪を掻き上げる。
汗ばんだ、色づいた、肌色。

「・・・その、つまり、おでこと、おでこで、計るの・・・かな?」

もじもじと下を向いた少年は、ちらりと見やる。

「何よ。恥ずかしがること無いでしょ」

「・・・うん、それは・・・そうだけど・・・」

「・・・あたしたち、夫婦なんだから」































v
げりをん VS エヴァンゲリオン






























「うーん・・・」

額をゆっくりと離すと、赤ら顔から努めて冷静な声。

「・・・や、やっぱり、熱は下がってないみたい、だね・・・」

「もう一回計ってよ」

「何回計っても同じだよ」

「もう一回ぃ〜っ。・・・んしょっ、と」

「ア、アスカ・・・」

半身が起きあがる。

「ほぅらぁ〜、・・・は・や・くっ」

「はあ・・・判ったよ・・・」

肩をそっと抱き、瞳を閉じた顔に額を近づける。
肌に感じる体温。
普段より濃い、甘い体臭。
こつんと、触れる。

「う〜ん・・・アスカ、やっぱり・・・んんっ!?」

両側から頬を掴まれると、云いかけた云葉を舌に押し戻される。

「んんっ!・・・んぐっ・・・むんっ・・・」

「んっ・・・ん・・・んん・・・」

くちゅりくちゅりと、唾液の粒がざらついた肉の間で転がる。
つつと、口の端からこぼれ落ちる。

「んっ・・・ぷはっ!」

うっとりとした顔から、何とか口を外す。
たらりとふたりの間に垂れ下がる、粘液の糸。

「ア・・・アスカぁ・・・」

人さし指にからめ捕ったそれを、ぺろりと舐めながら

「ん・・・うふふっ。粘膜感染で、うつしてやろうかと思って」

「ビョーキなんだから、あまりこう云うことは・・・」

「なによお〜。良いでしょキスぐらい。ビョーキで心細くてサビしくて可哀そーな妻を放っぽって、自分だけノンキに学校行ってからに」

「一緒に休んだら夫婦だってバレちゃうから、行けって云ったのはアスカじゃないかぁ〜」

「帰りもまっすぐ帰って来ないで。どこほっつき歩いてたのよっ」

「そ、それは買い物と、その・・・あ、そうだ」

制服のシャツの胸ポケットから、ピルケースを取り出す。

「か、帰りにネルフに呼ばれて。そしたらリツコさんがクスリくれたんだよ」

「あたしがビョーキだってこと知ってたの?」

「うん。いわゆる風邪だろうけど、僕たちはワクチン注射受けてるから、ウィルス性じゃないって」

「リツコがわざわざクスリを・・・」

「近々メオトゲリオンの新装備のテストが有るから、早く治して欲しい、って」

「・・・はんっ、単にあたしがパイロットだから心配してるだけ、ってことね」

「まあ、そう云わずにさ・・・」

苦笑しながら、ケースを開ける。

「しょうがないわね。まだ湯冷まし有ったかしら・・・」

「それがね、アスカ・・・」

大振りで、やや尖った白い錠剤を取り出す。

「これ、座薬・・・なんだって・・・」

「・・・ザヤク?」

「つまりその・・・お、お尻の穴に・・・入れるんだよ」

青い瞳が見開かれる。

「ええっ!?・・・お、おし・・・そんな、イヤよっ!」

「それが一番効くんだって・・・ねえアスカ、早く治そうよ。僕も、アスカには早く治って欲しいから・・・」

「でも、そんな・・・お尻に・・・入れるなんて・・・」

「何でも無いって。すぐ溶けて、吸収されちゃうんだって。痛くも何とも無いからって」

「でも・・・」

「ね、アスカ。そうすれば熱も下がるから。・・・じゃあ、果物でも剥いてくるね」

立ち上がろうとする袖を掴む。

「?・・・アスカ?」

俯いた声。

「・・・て、手伝って、よ」

「え?」

「座薬・・・入れるの手伝ってよ」

「え・・・ええっ!?」

「・・・な、何よ。恥ずかしがること無い・・・でしょ・・・」

「・・・う、うん、・・・それは・・・そうだけど・・・」

「・・・あたしたち、夫婦、・・・なんだから・・・」

視線を合わせず布団を捲り上げると、身体を返して四つんばいになる。

「んしょっ・・・いつものカンジで良いわよね?」

「い・・・いつも・・・って・・・」

「・・・・」

お互いの赤面を見ない。

「そ、それじゃ・・・脱がすよ・・・」

「い・・・いいわよ・・・」

ピンクのストライプのパジャマ。
汗で湿っぽいそのズボンのゴムに手を掛けると、ゆっくりと下ろす。

「な・・・何だか、エッチ・・・ね・・・」

現れた白いショーツも汗に濡れ、皺んでいる。
体温に載せて、甘い体臭が漂う。

「・・・つ、次はパンツを」

「じ、実況しなくて良いわよ。ほら、早く・・・」

ふるふると、腰が揺れる。
ごくりと、咽喉が鳴る。

「うん、じゃあ・・・」

「あ・・・ん・・・」

蒸された素肌に、外気を感じる。

「ぬ・・・脱がした・・・から・・・」

布は、僅か性器を隠す高さで止まる。
艶やかに汗ばんだ白い臀部が、視界を埋め尽くす。

「じゃあ、早く、・・・い、入れちゃって・・・」

「うん・・・」

そっと両の肉を掴むと、ゆっくりと広げる。

「あ、あんまり広げちゃ・・・」

「だって、穴が、・・・見えないから・・・」

「あ、穴とか、・・・云わないでよぉ・・・」

「ご、ごめん・・・」

濡れ光る、僅かに色素の沈んだ、その器官。
錠剤の先端をそっとあてがう。

「ん・・・入らないや・・・アスカ、もっと力を抜いてみて」

「そ、そんなこと云ったって・・・判んないわよ・・・」

「その、いつもみたいに、さ・・・」

「い・・・いつもって・・・」

「あ、いやその」

お互いの赤面を見ない。

「その、つまり、リラックスして・・・」

「い、いつもは・・・」

しぼんだ声。

「いつもは、・・・あんたが舐めてくれるから・・・」

「・・・・」

「・・・シンジ・・・?」

少しづつ、鼻先を近づける。
濃密な体臭に、神経が酔い始める。

「あ・・・あんたまさか・・・」

舌先が、触れる。

「きゃんっ!」

「んっ・・・あむんっ・・・くちゅっ・・・んちゅううっ・・・」

「やめてシンジっ!汚いよ・・・あ、あたし、お風呂入ってないぃっ」

「んむ・・・すごい、アスカ・・・いつもよりすごい濃い味がする・・・アスカの味が・・・」

「いやあ、やめてよ・・・んっ・・・んんっ・・・ああっ・・・」

恥辱の涙が頬を伝わると共に、両足がぶるぶると震えだす。
ざらざらとした生き物が、熱の谷間をぬるぬると濡らす。

「・・・すごい・・・すごいよ・・・アスカ・・・」

腰を抱え込むと、顔を完全に尻に埋める。

「ああっ!いやぁっ!舌、入れないでっ!・・・汚い・・・汚いぃっ!」

「あんむ・・・んちゅうんむぅ・・・すぐぉい・・・すぐぉい・・・」

くぐもった声のつぶやきが繰り返される。

「ああっ!」

内股をなで回していた手が、ショーツをヒザまで下ろす。
火照り、膨らんだ淫裂の肉の襞を擦る。

「シ、シンジ・・・そ、そっちは・・・」

だらだらと、滴が掌を汚す。
そこから立ち上がった指が二本、熱い溝にねじ込まれる。

「はああっ!・・・シンジぃっ!何考えてるのよおっ!・・・イクよおっ!イッちゃうよおっ!!」

力の入らない腕はくずおれて、枕を抱え込む。

「はっ・・・くっ・・・はああああああっ!!!!」

抱きかかえた腰が、痙攣する。
舌を掴む窄まりが、千切らんばかりに収縮する。

「んんっ、んふっ・・・イッた?アスカ・・・ぬむっ・・・」

引き抜いた舌は谷間に沿って滑り降り、濡れふやけた器官の粘液を拭う。

「んっ、はぁはぁ・・・シ、シンジ・・・あんた、何・・・考えてるのよ・・・」

恨めしそうな視線が振り向く。
にこやかな視線が受け止める。

「もう力入らないでしょ」

「そのためだけに・・・気をやらしたの?」

「ごめん」

「バカ」

「・・・でも、ほら、もう良いみたいだよ」

脱力した穴は、ひくひくと内側の肉色さえ見せている。

「じゃあ、入れるね・・・」

「え?・・・あんっ・・・」

すぽりと、何の抵抗も無く錠剤は消える。

「・・・ちょっと効き過ぎたかなあ・・・」

指で、少し押し込む。

「・・・ひ、ひゃっ、あ、ああんっ!!・・・す、すごい・・・び、敏感になってる・・・みたい・・・んんっ!!」

「・・・・」

ゆっくりと、指を出し入れしてみる。

「いやあっ!・・・シンジ、なんか、ヘン・・・なんかヘンっ!!」

「・・・・」

指をくわえ込み、小刻みに震える尻を映す瞳の奥。
暗い何かが首をもたげる。

「・・・・」

「はあはあ・・・シンジ?」

突然、くちゅくちゅと、激しく指を出し入れする。

「ああっ!いやあっ!やめて・・・はああっ!!」

白い液体が滲み出る。

「ああ、アスカ、溶け出しちゃってるよ?・・・お尻、閉じなきゃ」

「だめえ・・・力が入らない・・・」

「これじゃあ薬が流れ出ちゃうなあ・・・」

ずぼりと、指を引き抜く。

「はあんっ!」

中指と人さし指で薬液の滴を掬うと、乱暴に突っ込む。

「ああああっ!・・・いやあっ!」

「ダメだよアスカ。お尻の穴閉じないと。薬効かないよ」

指先に感じる、腸壁のざらざらとした感触。
指の腹をそっと押し当てると、そのまま小刻みに撫で擦る。

「ああっ!シ、シンジっ、ダメっ!・・・そんなのダメえぇっ!!!」

「どうしたのアスカ?」

「またイッちゃう・・・あたしだけイッちゃう・・・イヤ・・・そんなのイヤぁっ!」

変形する程抱き締められた枕から、擦れた泣き声が響く。
その髪の毛の中に耳を見つけると、優しく囁く。

「・・・どうして欲しい?アスカ」

逡巡であろう、一瞬の沈黙。
伏せられた顔の、コトバ。

「・・・入れて。シンジので塞いで。一緒に・・・イッて・・・」

身体を揺らす程の興奮。

「うん。・・・判った」

荒い息の下、ベルトを外すのももどかしくズボンが降りる。
ブリーフの中の、脈動。

「入れるよ、アスカ・・・」

錠剤でも、指でも無い、固く熱い肉が、ゆっくりと押し込まれる。

「うん・・・う・・・ああああっ!」

「く・・・アスカ・・・やっぱり締まる・・・締まるよ・・・」

目の前で開ききっていたはずの、穴。
それがまるで息を吹き返したかの様に、ぎゅうぎゅうと締めつける。
途端に、伏せた背中ごと腰が激しく前後に動き始める。

「アスカ!?」

「判んない・・・判んないの・・・もう何も判らないのおっ!・・・」

「ぐうっ・・・ア、スカ・・・そんなに・・・したら・・・」

激しい締まり。自分に打ち付けられる臀部。めくれ上がる肛門。
その合間に見え隠れする、てらてらと濡れ光る己の性器。
膨大な快感が、意識を襲う。

「ダメだっ、アスカっ、キ、キモチ良過ぎるぅっ・・・ガマン出来ないっ!」

「だ、出して・・・シンジの薬、あたしの中にぶちまけてっ!」

「アスカはっ?・・・ア、アスカはっ!?」

「あたしも、もう・・・う・・・うぁあぁあああぁああぁああっ!!!」

「ぐああっ!」

強烈な締めつけ。
背骨の中を急激に這い上がる、透明な恍惚。
下半身の先端から噴出する、灼熱の溶岩。

「ああっ!!はあはあ、出た・・・出たっ、すごい・・・出ちゃった・・・」

抱きついたぴくぴくと痙攣する背中に、よだれと荒い息を吐き出す。

「アスカ、ダメだよ・・・アスカ、ビョーキなのに・・・アスカの匂い、すごい濃いから・・・僕、ダメに・・・なっちゃったよ・・・」

「・・・・」

「・・・アス・・・カ?」

枕に埋まる顔を覗いてみる。

「・・・失神・・・してるの?」

長いまつげを揺らす、安らかな呼吸。
その背中を抱いたまま、ごろりと横になる。

「しばらく・・・フタしておいてあげるよ、アスカ」

優しい笑顔で、布団を掛ける。
愛しい体温が、ふたりを包む。




















「やっぱり、汗をかくのが一番ね」






















「ん?何か云った?リツコ」

整頓の行き届いた机の上。
灰皿からあふれ出る口紅の付いた吸い殻。

「何でも無いわ。こっちの話」

その頂上に、新しい一本をねじ込む。
口紅の主は、書類の束から視線を上げる。
金髪を掻き上げると、眼鏡を外す。
蔓を甘咬む。

「アスカが治ったとなると、テストは予定通り出来るわね、ミサト」

イスを回して振り返ると、殺風景な部屋に赤いジャケットが映える。

「ところが、今度はシンちゃんが熱っぽいんですって」

「・・・粘膜感染ね」

「ん?何か・・・」

「こっちの話。・・・では、結局テストは延期と云うことかしら?」

「本人は平気だと云ってるわ。学校も休んではいないし」

「まあ、最低限シンクロさえ出来ればテストは可能だけど・・・ミサト」

眼鏡を白衣の胸ポケットにしまうと、立ち上がる。

「・・・もう、パイロットはふたりしか居ないのよ。彼らを一緒に住まわせて置くのは、リスクマネージメントの観点から云っても考えものじゃないかしら」

壁に寄り掛かるジャケットは、腕組みを外して

「元々、メオトゲリオンを動かせるのはあのふたりしか居ないのよ?・・・シンクロするためには、あの子たちのメンタルが一番重要だと云ったのは、リツコ、あなたでしょう?」

立ち姿に寄ると、人さし指を眼鏡入ったポケットに突き立てる。

「ふたりがラブラブで居ること。・・・リスクマネージメントに於ても、それが最大のプライオリティよ」

突き合わせた顔と顔。
ふっと、口紅が歪む。

「ふふ、負けたわミサト。ま、今回は、わたしも何も云えないわね」

「え?何のこと?」

「こっちの話」

「ところで・・・」

机にタイトミニの腰を載せ、相手の背を見る。

「あの反応のことだけど・・・」

「波長分析結果パターン青。非常に微弱なため、未だ正確な場所を特定出来ず。第三東京市を中心とする半径15キロ圏内であることは確定済み」

「進展無し・・・ってことね」

「鋭意分析中」

「でも・・・もしも・・・」

振り返る顔に、自問の云葉をぶつけてみる。

「・・・使徒だったら・・・」



川沿いを漂う湯煙に、滝の音が染みる。
眼下の緩やかな流れに、飛沫の余韻が白く漂う。
緑のざわめきに、湯の花の香りが撹拌される。

「・・・・」

岩風呂の薄い白濁に透ける、白い肌。
青い髪は僅かに濡れて、無表情に貼り付く。

「・・・・」

手ぬぐいが、少女の頬を撫でる。
水辺の光景を眺める表情が、薄く色づき始めた頃。

「・・・?・・・」

背後の扉が、すっと開く気配。
振り返れば、男の裸体。

「・・・司令・・・」

「レイ。一緒に入ろう」

顎鬚ごと口元をにやりと曲げながら、湯殿に踏み出す。

「待って」

「?・・・レイ?」

水面で両手を握り合わせると、隙間をきゅっと絞る。
ぴゅうと飛んだ湯の塊が、正確に男の顔を濡らす。

「命中」

「・・・・」

「司令。身体を流してから」

「あ・・・ああ」

積み上がった一番上の手桶を掴むと、湯を掬って屈めた身体に掛ける。

「これで良いか」

「問題無い」

「・・・・」

風景を眺め続ける横顔に寄る。

「気持ち良いか」

「ええ」

「温泉は久しぶりか」

「久しぶりの日本。久しぶりの第三新東京。何もかも、久しぶり」

「そうか」

「でも、露天風呂付きのお部屋は、初めて」

「日本にしか無いからな。せっかく帰って来たのだ。楽しまなくては」

湯に濡れた武骨な手を、そっと浮上させる。
やけどの痕を少しの間眺めると、少女の顎に添える。
そのまま、色付いた無口な唇を、乾いた無口な唇で塞ぐ。

「ん・・・ん・・・ん・・・」

舌がゆっくり差し込まれると、僅か、顰められる眉間。

「ん・・・んふっ・・・」

いつもの唾液の味を確認して、唇は離れる。
冷たい視線が、視界に入る。

「どうした・・・キスは好きだろう?」

「・・・楽しんで、いないわ」

「何?」

「あなたは楽しんでない。違うことを考えているから」

「・・・・」

お互いの上気した顔を見つめる。

「帰って来た理由、それであなたの頭の中は一杯」

「レイ・・・」

「食事をしてる時も、チェスをしてる時も、あなたは上の空」

「・・・・」

「真剣なのは、PSIIをいじっている時だけ」

「・・・・」

「そう。・・・あなたは、まだ、ネルフの司令なのね」

白く細い腕が、湯を退けて、肩を這い上がり、首に絡み付く。

「レイ・・・」

「・・・お願い・・・今は・・・」

冷徹で、冷静で、無感動で、無表情な、美しい顔が
歪む。

「わたしのことだけ、考えて」

涙。
目尻に光る、稀な宝石。

「・・・レイ・・・」

かすかな嗚咽を、温かい唇が塞ぐ。

「んんっ」

首筋から湯に落ちた手は、筋肉質の脚を擦り、股間へと伸びる。

「んあ、・・・レイ!?」

固くなり始めた脈打つ器官を、ゆっくりとしごき始める。

「レイ・・・いやらしくなったな・・・」

口元を歪め、白い乳房を両の手で包む。

「ひゃんっ」

「・・・胸も大きくなった。そして・・・」

胸の谷間を滑り降りた片手が、そのままへそを撫で、脚の間に潜り込む。

「はああっ!」

「ぬるぬるだな。感じやすい、いやらしい身体になったな、レイ」

「そ、それは・・・あんっ!・・・し、司令が・・・」

湯の中で粘る液体の、その奥に指を差し入れる。

「あ、あ、・・・はああっ、・・・はあああああっ!!!・・・」

屈むと、開いている乳房の色づく先端を口に含む。

「い、いやっ!・・・司令っ・・・」

「イキそうか?」

「い、いや・・・イキたく・・・イキたくないのっ・・・」

「一緒が良いか?」

「一緒・・・いっしょぉ・・・」

「そうか」

口元が、大きく歪む。

「ダメだ」

「!」

中に入れた指が曲がり、天井をこする。
と共に、親指の爪先が、クリトリスの尾根をこする。

「は・・・はああああああああっ!!!!」

しがみつく身体が、ビクビクと痙攣する。

「フッ。さてと・・・」

「あ・・・あ・・・い・・・や・・・」

震える腰を抱き、湯の中で、自分の器官を淫裂にあてがう。

「や・・・めて・・・イった・・・ばかり・・・で・・・」

「すぐイクいやらしい身体には、おしおきだ」

「あ・・・あああああっ!!」

かすかに見える、赤黒い肉の飲み込まれる光景。
ざばざばと、湯が波打つ。

「ああっ!!・・・は、激し・・・」

顰めた端正な顔が、やがて恍惚に緩む。
目から、口から、鼻から、体液が流れる。

「フフ、腰も大きくなった。これなら子供が産めるな」

「・・・こ、こど・・・」

小刻みな嗚咽の間に、意志の聞こえない云葉。
だが、本能が顔を微笑ませる。

「それっ」

細く柔らかいわき腹を両手で抱えると、両足を自分の肩に担ぎ上げる。
湯舟のへりに白い身体を押し付け、全身を打ち付ける。

「深いか、ん?・・・どうだ、奥に当たるの判るか?」

「あ・・・あぐ・・・く・・・」

「その様子じゃイキっぱなしだな、レイ」

びりびりと固く立ち上がった乳首を強く摘む。

「ぃひっ」

急激に引っ張り上げ、離す。

「はぐっ・・・ぎひぃ」

両頬にあたる脚の甲が、ぶるぶると痙攣する。
僅かに開いた瞼から、白目が覗く。
口の端から、泡が吹き出る。

「クッ、・・・わたしもイキたくなって来たぞ・・・」

「・・・あ・・・か・・・」

「ん?」

「あ・・・か・・・ちゃ・・・ん・・・」

本能の云葉。

「よし」

さらに身体を押し付けると、白い肢体は折れんばかりに小さく畳まる。
そのまま、じっと抱く。

「子宮に掛けるぞ。いいな。もうすぐだ・・・もうすぐ・・・」

そよと涼風が吹いた、瞬間。

「うっ!」

びりびりと尻の肉が緊張し、ぴくぴくと弛緩する。

「・・・くっ、出たぞ。当てたまま出したぞ。・・・レイ。どうだ」

意識の昇華した表情に、喜色が貼り付いている。

「・・・うれしいか、レイ」

ぐったりと空を仰ぐ、閉じられた瞳。

「レイ・・・」

沈黙に、風が、止む。
見つめる目の、決意。

「・・・確かに、わたしはまだネルフの司令なのかも知れん。現に、ココにこうして舞い戻って来たからな」

両腕で、無言の裸体を湯から抱き上げる。

「お前に、また過酷な命令を下すことになるかも知れない」

静かに息づく乳房から、下腹部へと視線を走らせる。

「だがな、レイ。お前にもいつかきっとメンスが来て、子供が産めるようになる。子供が出来る。・・・少なくとも、わたしはそう信じている」

汗ばんだ額にそっとくちづける。

「その時こそ、家族で、慎ましく平凡で、幸せな生活を送ろう」

立ち上がると、ゆっくりと部屋に向かう。



「どう?非接触充電バッテリーのことは、大体把握したかしら」

『はい、リツコさん。要は、前に話してた、ワイアレスエヴァですよね』

「そうよシンジ君。今回は装備したレーザー・ブラスターの電源も供給するから、かなり大型になるけど、アンビリカルケーブルに制限されない分、有線時より動きの自由度は利くはずよ。充電ポイントは、本部横手に見えるわね。実装時には第三新東京の広範囲に・・・」

『あーっ!もーっ!そう何度も何度も同じこと説明されたら、まるであたしがバカみたいじゃないっ!・・・まあ、こいつのことは置いといて』

『アスカぁ・・・』

「判ったわ。じゃあ、後よろしくねミサト」

モニターから振り返る。
暗い発令所に浮かび上がる赤いジャケットが腕組みを外す。
コントロール席に座る背中に向かって

「じゃあおっぱじめますか。お手伝いよろしくね〜伊吹二尉」

「はい」

すぅと、息を吸い込んで

「アンビリカルケーブル、パージ!」

「了解」

巨大なモニターに、土煙を上げて外れ落ちる接点が映る。

「ATフィールド、展開!」

ジオフロントに佇む、巨大な影。
ピラミッド型のネルフ本部の傍ら。
巨大なバックパックを背負い、人型決戦兵器は、銃を構える。

「メオトゲリオン、発進!」



『ダミー・ターゲットは15個所。その全てをレーザーで破壊すること。三波照射する度に、充電ポイントにて要充電よ』

「「了解」」

『不具合クレームいちゃもんその他、気付いたことがあったらすぐにリツコおばさんに知らせてね』

『ミ〜サ〜ト〜』

「「了解」」

プラグ内一面に広がるスクリーンに映る、第一の目標への風景。
切り取る前席の人影に向い、

「さ〜て、さっさと済ましてお家に帰ろか、シンジ」

「了か・・・へっくしゅんっ!」

「ちょおっとお、キタナイわねえ。LCL汚さないでよ。・・・ったく、風邪ひくなんて根性が足らないんじゃないのお?治すまでアレはオアズケだからね」

「そ、そんな・・・へっくしゅんっ!」

「そんなもこんなも・・・うっ!」

「ずずっ・・・ん?アスカ?」

無言の同乗者に、振り返る。

「どうし・・・」

表情の無い顔が、背後に立つ。
がちゃがちゃと、備え付けのツールボックスの中身が散乱する。

「?・・・アスカ、何を・・・」

取り出されたスパナが、大きく振りかぶり、降り下ろされる。

「うわあっ!」

手で顔を覆うが、金属の先端は側頭部を叩く。

「ぐぅっ・・・うぅぅ・・・ぅ・・・」

目の裏が赤く染まる。
呼吸の仕方を忘れる。
意識が、しぼむ。

「ア・・・ス・・・」

「・・・・」

青い瞳には、輝きは無く
ただ視界と云う情報を脳に送るのみ。

「・・・・」

ぐったりとした頭から、血に染まったヘッドセットを外し、捨てる。
自分のシートに戻る。

「・・・・」

『どうしたの?アスカ、シンジ君。動きが止まったみた・・・』

かちりと、通信のスイッチを切る。



「センパイ、た、大変ですっ!・・・」

「どうしたの、マヤ」

コントロール席から振り返る顔に貼り付いた、驚愕。

「これは・・・パ、パターン、青・・・し、使徒、です・・・」

白衣の立ち姿を跳ね除け、椅子の肩越しに寄る。

「使徒!?・・・位置は!?」

「それが、その・・・」

手元のモニターを覗き込む。

「メオトゲリオンが!?」



巨大な人型はゆっくりと振り返ると、元来た道を引き返す。
先には、天井から降り注ぐ光に一面を反射させた、ピラミッド。



「こっちに向かって来ます!」

「プラグ射出信号は?」

「ダメです。受け付けません」

「アスカ!シンジ君!返事して!」

「・・・ムダよ、ミサト」

「え?」

コントロールパネルに手を付くと、がくりと肩を落す。

「・・・まんまとやられたわ。ウィルス型使徒だったとは・・・」

「ウィルス型・・・使徒・・・」

呆けた様な表情を前に、ぎりぎりと、歯をくいしばる。

「・・・風邪のウィルスそのものをキャリアとして、人間の身体に侵入し、支配する・・・かなり頭の良いヤツね」

「そんな、じゃあふたりは・・・」

「乗っ取られたのよ。使徒に。・・・ふたりはワクチン接種されているはずだから、ウィルス性では無いとタカを括ったのが間違いだったわ・・・汗なんかかかせてる場合じゃなかった」

「汗?」

「こっちの話」

「本部が、射程圏内に入ります!」

モニターに、銃口を向けた、黒い影。



引き絞る、トリガー。
まばゆい閃光が、幾何学の城にねじ込まれる。



「きゃーっ!」

暗い空間を歪ませる大きな振動。軋む床。重く鳴る空気の恐怖。

「ひ、被害状況を・・・それから、オペレーターを非常招集して・・・副司令にも連絡・・・これは訓練では無いわ」

「頂上部が破壊されました・・・死傷者は今のところ報告が有りません・・・」

「あのヒトが居たらオダブツだったわね」

「そんなこと云ってる場合じゃないわリツコっ!第二波が来るわよっ!」

「もっと下・・・居住区あたりにかしら」

自嘲とも諦めとも取れる、曖昧な笑い。
その時、モニターに赤いアラートが光る。

「そ・・・そんな・・・信じられませんっ!」

立ったまましっかと背もたれに掴まるジャケットの袖越しに

「どうしたの?」

「し、初号機が・・・発進しますっ!」

「な・・・なんですってっ!?」



ゆっくりと振り返ると、遠い森に、同じ人型が現れる。
銃口はぴたりと、その頭部に向けられる。



「パイロットは?」

「全く応答が有りません。通信チャネルを遮断している模様」

「あれも使徒なの?・・・まさか、メオトゲリオンのリモコン機能で・・・」

「いえ、誰かが操縦している模様です。生体反応が有ります」

「まさか・・・」

ちらりと、横に立つ冷静な金髪を見やる。

「・・・もうひとりの、パイロット・・・?」



『レイ、聞こえるか』

「はい、司令」

エントリープラグには、目指すピラミッドが映る。
人造湖に影を落す、銃を構える人型が映る。

『あと200メートルで敵射程圏内だ、そこでケーブルをパージする。5分以内にカタを付けろ。作戦は判ってるな」

「はい、司令。司令は大丈夫?」

『何がだ』

「パージのコマンド」

『あー、・・・L1、L2、R1、R2の4つ同時押しの□、○、×、△だ』

「良く出来ました」

『レイ』

「はい、司令」

『・・・愛している。無事に帰還しろ』

緊張の中の、微笑み。

「はい。必ず」



「もうすぐ、初号機が使徒の射程圏内に入ります!」

「丸腰で・・・どうするつもりなの?」

背もたれに掴まったまま、呆然とモニターに見入る。

「でも・・・誰がどうやって初号機をアシストしているのかしら?・・・初号機だけじゃ、射出ハッチさえも開けられないはずよ?」

「もしかしたら・・・」

上目遣いで、ちらりと白衣の主を見上げる。

「・・・アレ、が有れば、可能ですよね・・・センパイ」

「・・・アレ、って何よ。リツコ」

ずいと迫る。
重い口が、開く。

「・・・ポータブル・ストラテジック・インテリジェント・インターフェイス」

「?」

「PSII。要は、携帯型発令所、ってところかしら。簡易的だけど、電話回線を通じてどこからでも設備の主な機能を遠隔操作出来るわ」

「でもセンパイ、アレは開発中止に・・・試作機も、安全と機密の点から破壊されたと・・・」

睨む視線を押し付ける。

「まーさーかー、リーツーコー・・・」

「・・・知らないわよ。管理してたのはあのヒトだから」



「へっくしゅんっ!」

窓の外に湯煙が漂う、畳敷の部屋。
あぐらをかいて座る、浴衣に丹前の男。
目の前の、備え付けのテレビからの声。

『司令?』

「大丈夫だ。・・・レイ、もうすぐだぞ。あと十秒」

テレビと電話のモジュラーからケーブルが伸び、黒い箱が繋がる。

「9」

両手に握られたコントローラー。

「8」

そこから生えたマイクに、髭の間から云葉を注ぐ。

「7」

やや不鮮明な画面に、ピラミッドが映る。

「6」

横の人造湖の水面が、きらめく。



『5』

赤い瞳が、輝く。

『4』

目標を、睨み付ける。

『3』

四肢が、緊張する。

『2』

意識の、頂点。

『1』

「パージ!」



電極を振り切り、身を屈め、突進する。
銃口が、急激に寄る対象にブレた瞬間。

「えいっ!」

人造湖に差し込んだ両手の、その間から、勢い良く水流が放出される。
人型の顔に掛かる。

「命中」

視界の一瞬のジャミング。
トリガーは引き絞られるが、的が居ない。
光線は、虚しく宙を割く。

「ここよ」

滑り込み、後ろに回り込んだ手に、プログ・ナイフ。

「チェック・メイト」

背負われたバッテリー上部の電極を切り割く。
火花が、散る。
振り向いた銃身から、低い充電のうなり。
ぴたりと、眉間に当たる、銃口。



「まだ一波残っています!」

祈る両手が、固く握り合わせられる。

「・・・レイ!」



長い、長い、沈黙。

「任務、完了」

『よくやったな、レイ』

「これより機体を放棄、直ちに帰還します」

ゆっくりと後ずさると、銃口を構えた姿は動かない。



握る手がほどける。

「え?・・・え?・・・リツコ、どう云うこと?」

ふう、と溜息ひとつ。

「・・・ブラスターの充電途中に機体が内蔵電源に切り替わった・・・だから、そのまま内蔵電源からブラスターに充電されたのね。銃は満充電だけど、メオトゲリオンは活動限界よ。もうトリガーに掛かる指ひとつ動かせないわ」

「それって・・・バグじゃない?」

仕様よっ!・・・フッ、さすがね。そこまで見抜いていたとは・・・」

「電磁ロックが解除されました!メオトゲリオン、プラグ射出可能!」



振動で目覚めると、暗い光景。

「痛て・・・あれ、僕は・・・」

プラグの狭い空間を照らす薄明るい非常灯。
生乾きの血を手の平に見ながら、頭を振る。

ああっ・・・くっ、くぅぅっ・・・

「?」

悲痛なうめき声に振り返ると、蠢く人影。
苦悶の表情に、脂汗。
のど元を掻きむしる、ねじ曲る指。

「!?」

駆け寄る。

「ど、どうしたのアスカ!?・・・苦しいの!?」

その時、通信ウィンドウが開く。

『聞こえる?あんたたち・・・無事なの?・・・それとも・・・』

「ミ、ミサトさん、アスカが・・・アスカがぁっ・・・」

『シンジ君!?・・・どうしたの?血だらけよ?」

「良く・・・覚えてないんですけど・・・確か、アスカに殴られて・・・気を失って・・・」

『殴られた!?』

「そうなんです・・・そう、急にヒトが変わったみたいになって・・・」

『つまり・・・シンジ君は感染していなかった・・・ってこと?』

「感染・・・って?」

『使徒ウィルスよ。説明は省くけど、アスカは使徒に身体を乗っ取られたの』

「そ、そうだっ、アスカがっ!」

これ以上無いと云う程顔を歪め、スーツの胸に爪を突き立てる。
指先は、既に血が滲んでいる。

『アスカを道連れに、使徒ウィルスが自滅しようとしてるのね』

新しく開いたウィンドウから、低くつぶやく声。

「リ、リツコさん・・・そんな・・・ど、どうすれば良いんですか?」

『打つ手は・・・無いわ』

「そんな・・・そんなぁっ!」

苦しみに震える身体を、抱き締める。

「アスカ・・・死なないで、アスカ・・・僕が助けてあげる。きっと、助けるから」

耳元の、かすかな囁き。

シ・・・シン・・・ジ・・・ううっ!!

「アスカぁっ!」



「リツコぉっ!何か無いのっ!」

「何故、シンジ君は感染しなかったのかしら?・・・風邪に掛かったはずなのに」

「シンジ君の方が症状は軽かったわ」

「もしかして、アスカからシンジ君には感染しなかった?・・・つまり、それは使徒が、シンジ君の中で繁殖出来ないから・・・」

「どうして?」

顎を撫でる手が、止まる。

「・・・そうよ、判ったわっ!」



『シンジ君』

「リツコさん・・・アスカが・・・アスカがぁ・・・」

『シンジ君、アスカを助けたい?』

「もちろんですリツコさん・・・僕はどうすれば・・・」

『ではシンジ君、そこでアスカとセックスしなさい』

「は・・・はぁ?」

『早く。一刻を争うわ』



「ちょっとリツコ。毎度何考えて・・・」

「使徒ウィルスは、別種の風邪ウィルスの中では生きられないのよ」

「?」

「シンジ君は既に風邪に掛かっていたの。だから、感染しなかった」

「・・・でもそれとセックスと、どう云う・・・」

「シンジ君の風邪を、アスカにうつすの・・・粘膜感染で」

「えっ?」

「キャリアである風邪ウィルスは、他の風邪ウィルスから使徒を守っていたに違いないわ。そのウィルスがアスカの中で死滅した今、使徒は丸裸よ。そこに攻撃を加えれば・・・」

「・・・でも、本当にそんなことで、相手を殲滅出来るの?」

「相手は自滅しようとしてる・・・だから、アスカと使徒を切り離すことさえ出来れば・・・・」



『シンジ君・・・』

「聞きました。判りましたミサトさん。僕、アスカとセックスします」

『一刻を争うの・・・アスカを救えるのは・・・シンジ君しか・・・』

「はい。必ず、アスカを救います。・・・救ってみせますっ!」

目の前で苦しみに歪む痛々しい身体。
ゆっくりと剥いたプラグスーツを傍らに投げ捨てる。
自分のスーツを下ろし、己の器官をしごく。

「アスカ・・・こんな状態でしたくなかったけど・・・行くよ」

細い身体を抱き締め、手の平に吐いた唾を相手の器官に塗り付ける。
熱く、乾いた淫裂。
ゆるやかに、肉を差し込む。

あ・・・ぐぅ・・・ぎぎぎぎ・・・

痛みに顰められる顔。
間近で見る目頭に、涙が浮かんでいる。

「可哀想に・・・アスカ・・・死なないで、アスカ・・・」

突如、激痛が走る。
背中に突き立てられた、両の手の爪。
そのまま、肉を削ぎ、掻きむしられる。

「ぐ・・・ぐぅ、アスカ・・・」

痛みを振りきる如くに、激しく腰を叩き付ける。

「う・・・うぐうううっ!・・・出すよアスカ・・・出してあげるよ・・・いつも早いって怒られるけど、今日は・・・」

頭を抱え込む。
紅い髪に顔を埋める。
いつものシャンプーと、LCLと、汗の匂い。

「う・・・くっ!」

下半身がぶるぶると震える。
哀しい解放が意識になだれ込む。

「出たっ・・・でも、まだまだ・・・まだまだだっ!・・・」

片足を担ぎ上げると、もう片足を尻の下に敷く。
互い違いの股間を、激しく突き上げる。

「アスカ・・・まだ行くよ・・・絶対に助けるから・・・助けるからっ」

結合部にぐちゅぐちゅと、精液が泡立つ。
顔を見ると、小さく震えながらも、反応は無い。

「ダメだよ・・・アスカ、死んじゃダメだっ!」

上体を倒すと、相手の腕を掴み、腋の下に鼻先を擦り付ける。
甘く、濃厚な、匂い。

「はっ・・・はっ!・・・ぐうううっ!」

びくびくと身体が震え、二度目の解放が訪れる。

「まだ・・・まだだ・・・まだ・・・行ける・・・」

両足を持ち上げると、ぴったりと閉じあわせる。
そのまま、横にひねりながら、臀部に腰を打ち付ける。

「はああ、ちくしょう、痛くなって来た・・・でも、まだまだだっ!」

意識の無い顔は、大きく口を開いて、荒い呼吸をしている。

「そうだ・・・粘膜なら、体液なら、何でも良いはずだ・・・アスカ、行くよ」

歯をくいしばると、次に口を尖らせる。
覆い被さる顔が、眼下の顔を見つめる。
ずる、ずるっと、唾液の固まりが、意識の無い口に滴る。

「飲んで・・・アスカ、飲んで・・・」

咽喉が、わずかにこくりと鳴る。

「もっと・・・もっと行くよ・・・」

大きな塊が、ぼたりぼたりと顔に降り注ぐ。
指で掻き集め、口に注ぎ込む。

「の、飲んで、アスカ・・・飲んで、うっ」

こくりと、力無く咽喉が動く。

「ううっ・・・何だか、これ、いやらし・・・ああっ!」

快感と痛みが先端から迸る。

「あっ、ああっ、出た・・・」

相手の上に倒れ込む。

「はあ、はあ、まだ・・・出来るかな・・・」

腰を動かすと、ぐちゅぐちゅと、粘液の鳴る音。
跳ねる心臓が、肩を、頭の中を、震わせる。

「そ、そうだ・・・血だ・・・僕の血を、飲んで・・・アスカ」

ゆるゆると、上体を起こす。

「確か、ツールボックスにナイフが・・・」

首筋に、絡みつく腕。

「!?」

そのまま、抱き締められる。

「アスカ・・・」

か細く、弱々しく、かすれた、囁き。

・・・シンジ・・・あたし・・・死ぬのかなぁ・・・

「そ、そんなこと無いっ!アスカは絶対死なないっ!死なせないっ!」

・・・シンジ・・・あたし・・・シンジに抱かれたまま、・・・死にたい・・・

「そんな・・・そんなっ!アスカあっ!」

ぶるぶるとした痙攣が伝わる。

・・・あたし・・・幸せだったよ・・・シンジに逢えて・・・幸せだったよ・・・

「・・・アスカ、死なないでよ・・・アスカが死んだら・・・僕はどうすれば・・・」

涙が、顔にこぼれ落ちる。

・・・楽しかったよ・・・短かったけど・・・たのし・・・か・・・

「アスカあっ!!!」

ゆるゆると手が首筋から滑り降りると、そっと頬を撫でる。

「アス・・・カ・・・」

・・・シンジ・・・最後に・・・

「なに・・・」

・・・後ろでして・・・

「え?・・・う、うん・・・」

引き抜くと、薄い精液が肉色からたらたらと流れ出る。
己はと見れば、力無く垂れ下がる。

出来そう?

「わ、わかんない・・・抜かず三発やっちゃったから・・・」

しょうがないわね」

上体を起こすと、粘液にまみれた器官を、ゆっくりと口に含む。

「じゅ・・・ずっ・・・ず・・・ずずっ・・・」

「ああ、アスカ・・・気持ちいい・・・染みるよ。あったかい」

先端を舐めながら、歯の先で裏側を掻く。

「ぴちゅ・・・ちゅ・・・ちゅ・・・ちゅ・・・」

「うはっ、はあ・・・いい・・・行けそうだよ・・・」

全体を含むと、舌をぴたりと当て擦る。

「んちゅ・・・んんっ・・・んぷっ・・・んちゅう・・・」

「吸って・・・吸って吸って・・・」

「ん・・・んちゅうううっ・・・ちゅうううう・・・」

「来た、血が集まって来た・・・やれそうだ・・・大丈夫そうだよ」

「んぷっ、・・・じゃあシンジ」

「うん」

「する前に、舐めて」



「元気そうね」

「まったく」

「フケツ・・・です・・・」



濡れた公園のベンチを眺める立ち姿。
ビニール傘の透明な明るさに、雨がその流れを描く。
赤いジャージの上下は、所々、黒く濡れる。

「・・・綾波」

後ろから掛けられた声に、傘が回る。
買い物袋を下げた、包帯と絆創膏だらけの学生服。

「シンジ君。怪我、大丈夫?」

「あ、うん・・・」

「風邪は?」

「もう平気。・・・ヒトにうつすと治るって、本当だったんだね」

「わたし、風邪に掛かったことが無いから、判らないの」

「そうなんだ・・・羨ましいな」

ふたりで、座れないベンチを眺める。

「綾波・・・もう、行っちゃうの?」

「ええ。脅威は去ったから」

「そう・・・」

「また、会えるわ。きっと」

「そうか・・・そうだね」

雲の動きが、水に映る。

「碇君。この前は、ごめんなさい」

「え?・・・この前、って?」

「この前の雨の日。別れ際、急に、キスなんかして」

「あ、ああ、いや、別に。・・・気にしてないから」

赤い顔を、背ける。

「どうかしていたの。司令が、わたしのことを考えてくれなかったから」

「父さんが・・・」

「でも、もう良いの。愛されてるって、判ったから」

「そ、そうなんだ。・・・父さんは、元気?」

「風邪で、寝込んでる」

「風邪?・・・それでも、行くの?」

「ええ。逃げなきゃダメだって。駆け落ちなんだからって」

「何だか・・・楽しそう、だね」

「楽しそう?」

ビニールの向こう、灰色の空を見上げる。

「・・・そうね。幸せなのね、わたし」

微笑む横顔に、見とれる。

「・・・じゃあ、今日は、握手」

ベンチに買い物袋を置くと、手を指し出す。
傘から垂れ落ちる滴に、ふたりの手は濡れる。

「じゃあね、綾波。・・・元気で」

「碇君も。・・・それから、みんなも」



「へっくしょいっ!」

「キタナイわねミサト。マスクぐらいしなさい」

イスを回して振り返ると、殺風景な部屋に赤いジャケットが映える。

「そのマスク似合うわよリツコ」

鼻の頭から顎の下まで覆うマスクの上から、眼鏡を取る。
その姿に苦笑しながら

「ま〜ったく、ワクチンも効かない新種が突然大流行とはね〜」

「シンジ君が感染したウィルスである可能性が大きいわね」

「使徒ならともかく、突然シンちゃんが新種のウィルスに感染するってのも不思議ね」

「しかもそれが使徒を殲滅させる・・・これも愛の奇跡かしら」

「判らないわよ〜。シンちゃん、洋行帰りのヒトと不倫してカンケーして粘膜感染しちゃったのかも知れないしぃ〜・・・へっくしょいっ!」

「荒んだオトナねミサト」

ばさばさと書類をまとめると、ゴム手袋を外す。

「とにかく、ワクチンを作るまでわたしが倒れるワケには行かないから、出て行ってくれないかしらミサト」

「リツコ。・・・あんたでしょ、司令を呼んだのは」

「・・・・」

微熱に上気する表情を険しくする。

「もうパイロットはふたりしか居ないとか、どーりでそんなハナシをすると思ったら・・・」

「もし、頭の良い使徒が攻撃を仕掛けるとしたら、ふたりしか居ないパイロットが出払ってる時か、直接彼らを狙うか、どちらかだとは思わない?ミサト」

「・・・あのパターン青のこと、判ってたの?」

「判ってたら催淫剤なんか・・・」

「サイーンザイ?・・・何のこと?」

「コホン、こっちの話。・・・まあ、彼らには必要なかったかしらね」



「ぶわっくしょんっ!・・・おっそーいっ!シンジっ!」

がたりと、玄関のドアが開く音。

「ごめんアスカーっ!買い物して来たら、ちょっと遅くなっちゃってーっ!」

声を聞いた途端、ぱあっと表情に光が訪れる。
どさりとレジ袋を置く音を合図に、寝室のドアが開く。

「どう?具合は・・・熱は下がった?」

現れた少年の心配顔。

「お・・・遅かった・・・じゃない」

戻された少女の不機嫌顔。

「ご、ごめん・・・」

雨の匂いがする制服がベッドに腰掛け、不機嫌な額に手を伸ばす。

「・・・まだ下がらないみたいだね・・・」

「下がらないわ。全然下がらない」

「え?」

「下がらないからさあ・・・」

「・・・・」

笑顔を載せた枕の下に手が伸びる。
見覚えの有るピルケースが、取り出される。









































「はい、司令。これ」

「それはちょっと大き過ぎないか、レイ」









































<おしまい>




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