眠つている私の胸に妻の手が置いてあつた

紙のやうに薄い手であつた


何故私は一人の少女を愛してゐたのであつたろう


『夢』尾形亀之助
































ぎらぎらと、陽の光。
さらさらと、乾いた校庭の砂。
だらだらと、体操着の少年たちは脚も重たく走る。

「はあ〜・・・ケンスケぇ、あと何周や」

流れる汗を拭い、鈴原トウジは後ろの少年を振り返る。

「10周したからあと10周かな・・・全く、やってられないよ・・・」

メガネを直しながら、相田ケンスケは走る集団を見回す。

「ところでトウジ、碇は?」

「なんや、腹イタい云うて抜けてトイレ行きよったで」

「あ〜あ、便乗すれば良かったな・・・」

集団は、プールの前を通る。
水を叩く音。
輝く飛沫。
嬌声。

「・・・女子は水泳、男子はマラソン・・・替わって欲しいね」

ケンスケの恨めしそうな視線。

「ホンマや。・・・水泳もええけど、そん後の昼寝もたまらんしな」

「あれ、委員長だ・・・こっち見てるぞ」

「ん?・・・なんや、向こうもこっちが羨ましいんかいな」

「そんなワケ無いだろ」

だらだらと集団が過ぎ去って、金網越しに佇むスクール水着の少女。
水泳帽から滴る水滴が、頬のソバカスを滑り落ちる。

「やっぱり、碇君が居ない・・・」

洞木ヒカリは水泳の授業に振り返ると、水着の少女たちを見渡す。

「アスカもまだ帰って来てないし・・・本当におトイレなのかしら?」































M:G-2
げりをん2
































コンクリートの壁に囲まれた、湿った空気。
低い天井に、すりガラスの窓越しの光が暗く描かれる。
ぎいっと開くドア。

「ア・・・アスカ?・・・」

潜めた声の少年が滑り込む。

「アスカ・・・どこ?」

ロッカーの列が立ち並ぶ狭い部屋。
敷いてあるスノコをおそるおそる踏みながら
体操服の碇シンジは、列の間をひとつひとつ覗き込む。

「・・・居ないのかなあ・・・でも確かにプールの更衣室って・・・」

突然、後ろから両目を塞ぐ手。
濡れた指、華奢な腕。

「わわっ!」

「しぃ〜っ!・・・騒ぐんじゃないわよバカシンジっ!」

シンジが振り返ると、水着の少女が水泳帽を外した。
濡れた赤い髪が、水滴を散らしながら艶めかしく解ける。

「・・・もう、アスカ、驚かさないでよ・・・」

「ま〜ったく、あんたってホント、肝っ玉小さいのねえ・・・」

アスカは、濡れた顏でイタズラっぽく微笑む。
潤んだ青い瞳を、きらきらと輝くまつ毛が飾る。
ぼおっと見つめるシンジ。

「・・・なあ〜にボケッとしてんのよ。さ、早いとこ始めるわよ」

「え、ちょ、ちょっとアスカ・・・ホントにココでするの?」

「もおっ!そのためにわざわざ授業を抜け出したんでしょーがっ!」

「でも、ココは学校だし・・・僕たちが夫婦だってバレたら・・・」

「オトコはぐだぐだ云わないのっ!」

「むぐぅっ!」

アスカの冷えた唇が、シンジの唇の熱を奪う。
深くくわえられた口を開くと、灼熱の舌が滑り込む。
ぐるぐるとシンジの舌に絡み、締め上げ、絞る。

「ん・・・んんん・・・ぐぅ・・・」

喉を鳴らすシンジの首に回された腕の力が、少しずつ弱まる。
同じ熱さになったお互いの唇。
幾筋もの糸を引いて離れる。

「はあ・・・シンジ・・・キモチ良い?」

「あ、うん・・・キモチ良いよ、アスカ・・・」

「ねえ〜、やっぱロケーションは大切でしょ〜?・・・あんっ」

シンジはアスカの水着の胸をまさぐりながら、キスを返す。
深く深く差し込まれた舌が、アスカの喉の奥から擦れ声を掻き出す。

「ん・・・んん・・・」

やがてシンジの唇は、首筋へと這う。

「あはぁ・・・んん・・・いやあ・・・あんっ」

「アスカ・・・」

「あ・・・え?・・・」

「ねえアスカ、ほら、こんなになっちゃってるよ」

シンジは、指の先でアスカの胸の先を弄ぶ。
水着の上からもはっきりと判る、固い突起。

「ほら、アスカがエッチな気持ちなのが判っちゃうよ」

「い・・・いやあ・・・」

「こんなに薄い水着じゃ、みんなに判っちゃうよ」

「いや・・・や・・・め・・・」

「ほら、こっちだって・・・」

胸から腹、そして股間へと撫でた指が、水着の上から陰裂をなぞる。

「ひっ」

「ねえ、膨らんでるのも判っちゃうよ。みんなに判っちゃうよ」

陰裂の上方を指で擦る。

「温かいね・・・アスカのココはすごく温かいね」

「ああああっ!・・・い、いやああああっ!」

強く擦り上げる。
ぶるっと震えると、下肢から力が抜け、
そのまま、アスカはスノコにぺたんと座り込んだ。

「・・・イッちゃったの?アスカ」

上目遣いでこくんと頷くと、切ない表情を浮かべ

「・・・シンジのが、欲しい」

濡れて張り付いた体操服の半ズボン。
アスカの顏の前に、そそり立つ肉が布を押し上げている。

「アスカ・・・口で・・・」

「・・・うん・・・」

そっとシンジのズボンとトランクスを下ろすアスカ。
そのまま愛おしそうにシンジの自身に頬擦りする。

「・・・シンジも、こんなにしちゃったらみんなに判っちゃうでしょ」

「・・・アスカが悪いんだ。アスカだから、こんなになっちゃうんだ」

「・・・バカ・・・」

そっとその先端にキスすると、根本からゆっくりと舐め上げる。

「あ・・・キ、キモチ良いよ、アスカ・・・」

「んふ・・・シンジの匂いがする・・・」

「・・・え?・・・」

「・・・シンジの、汗の、匂い」

アスカは、とろんとした目を閉じる。
シンジの先端に舌を這わすと、静かに含む。
片手で支えながら、口内で少し吸う。

「んん・・・ぐ・・・くう・・・アスカ・・・」

ゆっくりと頭を振りながら、根本まで進む。
小刻みに動く舌が刺激する。

「は・・・ん・・・」

天井を仰ぎ見るシンジの細い声。
それを合図に、アスカの唇は窄まり、ゆっくりとしごき始める。
支えていた片手はシンジの陰嚢へと下がり、優しく揉みしだく。

「・・・いい・・・すご・・・いよ・・・アス・・・カ・・・」

アスカは動きの速度を増すと、もう片手を自分の股間へと伸ばす。

「んん・・・んんんんっ」

「・・・アス・・・カ・・・イク・・・イッちゃうよ・・・」

激しく振られる頭が、頷いた。

「ア・・・アスカ・・・出す・・・よ・・・いっぱい・・・」

「・・・んん・・・んんんんんんっ!」

アスカの口から跳ね上がる様に引き抜かれたシンジの自身。
漲る熱さが、その先端から太く迸り出る。

「ア・・・アスカぁっ!」

「あんっ!」

粘つく体液はその軌跡を描き、待ち受ける恍惚とした表情を打つ。
潤んだその青い瞳を輝かせ、アスカは匂い立つ若い精を受け止める。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」

アスカの息遣いに蠢く濡れたスクール水着。
顔面を汚し尽くした粘液は、どろりとそれへ滴る。
幾筋もの濁った航跡。
その先端の、白濁した滴。

「あ・・・ああっ・・・」

「・・・アスカ?」

シンジの両足に、アスカは震えながら縋り付いた。

「いやっ・・・あ・・・ああああっ!」

一瞬の水着の緊張が、弛緩する。
アスカの座るスノコの下から、かすかに水の流れる音。

「アスカ・・・」

コンクリートの床に広がり、流れる、温かな液体。
むせる様に蒸し暑い密室の空気に、すえた匂いが漂う。

「アスカ、おもらし・・・しちゃったの?」

顔をだらりと俯き、アスカは小さく頷いた。

「ダメじゃないか・・・」

シンジはアスカの顎を持って上向かせる。
体液と恥辱に汚れた表情の上を、シンジは指で掃いた。

「・・・ダメだよ、ガマンしなきゃ・・・ここは学校なんだよ?」

顎を握ってアスカの口を開かせると、その粘ついた指をねじ込む。

「んんっ・・・んんんんっ!」

シンジの指に絡みつく、生温かい舌。上気した頬。
とろりとした瞳からは、小さな涙がこぼれ伝う。

「・・・学校でおもらしなんかしちゃっていいの?ねえ、アスカ」

乱暴に髪の毛を掴んで、シンジは汚れた自身にアスカを引き寄せた。

「んっ・・・んんっ・・・んっ・・・」

ぴちゃぴちゃと云う音を立てて、ごくりと咽喉を鳴らして、
アスカはその汚れをきれいに舐めとる。

「アスカ・・・おいしかった?」

上目遣いの目が、にっこりと微笑む。

「うん、おいしかった・・・シンジは?」

「良かったよ・・・とっても」

「終わったのね」

凍りついたふたりの視線の先。
スクール水着から水を滴らせ、シュノーケル付きの水中メガネを
青い髪の上に戴いて、少女は無表情に紅い瞳で見つめていた。

「あ・・・あんた・・・その格好・・・」

アスカのコトバに綾波レイは首を傾げる。
胴周りの白い浮輪を引き上げ、足ヒレをぺたぺたと鳴らして歩み出る。

「格好?・・・判らない」

「あのねえ・・・」

下半身を慌てて整えたシンジの、か細い声。

「あ、綾波ぃ・・・いつからそこに居たの?」

「・・・フクロ攻め

「・・・・」

「・・・・」

「碇君」

「・・・な、何?綾波・・・」

「葛城一尉より、本日放課後、ネルフ本部に来る様云付かっています」

「そ・・・そう・・・判った」

「ちょっとファースト、あたしはどうなのよ」

「それはこれから伝えるわ」

「ったく、勿体ぶらないで早く云いなさいよっ」

レイはしばらく中空を見つめる。

「何よ・・・あんたまさか忘れたんじゃ・・・」

「・・・弐号機パイロットへ。葛城一尉より、本日放課後、ネルフ本部に来る様云付かっています」

「同じじゃないのっ!」

「じゃあ、確かに伝えたわ」

くるりと踵を返すと、スノコの上をぺたぺたとレイは去って行く。

「・・・何?アレ・・・」

「さあ・・・」

あっけに取られるふたりを、ロッカーの陰から見つめる少女。
そばかすを滑った滴が、濡れたスクール水着に滴る。

「フ、フケツだわ、アスカ、碇君・・・あんな、口でなんて・・・」

震えるヒカリの身体が、次第に折れ曲がる。

「し・・・しかも・・・お、おもらしまで・・・」

内股に縮む両脚。
その股間に、こぶしがぎゅうと押し付けられる。

「フ、フケツよ・・・フケツ過ぎ・・・ああっ!」

その白い脚の表面を、生温かい液体が伝い落ちる。
小さな水音。ぶるぶると震える身体。閉じられた瞳から湧き出る涙。

「あ・・・はあ・・・はあああ・・・」

ぺたりと座り込んだスノコから、すえた匂いが立ち昇る。




















「みんな、ガマン出来ないのね」






















「「ええ〜っ!?・・・生け捕りぃ〜っ!?」」

暗い、ネルフのブリーフィングルーム。
床一面のスクリーンに照らされ佇む、制服のアスカとシンジ。
その前で、赤いジャケットの女は人さし指を立て、ウインクをする。

「そ。千載一遇のチャ〜ンス。・・・無人探査機の調査に依れば、どうやら、まだ活動出来るまでには成熟していないらしいのよ」

「でもミサトさん、この使徒は火山のマグマの中に居るって・・・」

シンジは、足下のスクリーンに映る、不気味な不定形の影を指す。

「だ〜か〜ら〜、潜るワケ」

「ち、ちょっとミサト・・・そんなこと出来るの?」

「せ〜っかく見つけたのに、待ってる手は無いでしょうがアスカ」

「はあ・・・相変わらずムチャクチャな論理ねえ・・・」

葛城ミサトは、光に煽られた顏に、得意満面な笑みを浮かべる。
隣りでため息をつく、金髪に白衣の女。

「・・・何ハリキってるんだか・・・」

「なあによお、リツコ・・・作戦部始まって以来の大作戦でしょうが。これがハリキらずに居られるかっての」

「失敗した時のことを考えれば、能天気じゃ居られないはずよ」

「失敗?赤木リツコ博士にしては、ネガティヴなお云葉じゃない」

「エヴァがマグマに潜るのよ?どんな事態が起こるか判らないわ」

リツコは腕を組んで、ミサトを睨み付けていた視線を外した。

「アレが完成しているならまだしも・・・」

「アレ・・・って何ですか、リツコさん」

シンジの訝しげな表情。

「ATフィールド制御システム。・・・まあ、簡単に云えば、リモコンエヴァね」

「「リ・・・リモコンエヴァ〜っ!?」」

リツコは、ぽかんとしたふたつの顏を交互に眺めながら

「エヴァは有線兵器でしょ?・・・だから、遠隔操縦はアイディアとしては最初から有ったの。それを、強力なATフィールドを搬送波とした制御信号を送信して、無線でコントロールしようと云うことなのよ」

「そ・・・そんなこと可能なんですか?」

「理論的には可能よシンジ君。・・・将来的には、非接触充電型バッテリーと組み合わせた、完全なワイアレスエヴァも考えられているわ」

「ワイアレスエヴァ・・・それが可能なら・・・」

視線を向けるアスカに、シンジはうなずく。

「・・・うん、今回みたいな任務でも、パイロットに危険は・・・」

「とーこーろーがー」

ミサトが、横目でリツコを見ながら

「・・・ピザ屋さんは間に合わなかったのよねえ・・・」

「あらミサト、技術部を侮辱するつもりかしら?」

「事実じゃない」

「送信側は完成させたわ」

「受信機が無きゃねえ・・・」

「ミサトっ!」

「あ、あのー・・・」

睨み合うふたりに、シンジはおずおずと

「・・・あの、それで、・・・今回の作戦は・・・」

ミサトはようやくシンジに向くと

「レイに潜ってもらうわ。初号機も耐圧耐熱装備を実装済みだから」

「え・・・ええーっ!?メオトゲリオンが出るんじゃないの?」

アスカの声に、リツコは目を閉じ、シワを寄せた眉間を押さえて

「本来は、初号機をメオトゲリオンで遠隔操縦するはずだったのよ」

「それが間に合わなくなっちゃってねえ・・・」

ニヤつくミサト。
キッと見やるリツコを無視して

「・・・まあ、そう云うワケで、あなたたちには、初号機がマグマの中で使徒を捕獲する間、陸上で待機していてもらいたいの」

「な・・・何よぉ・・・つまんないのぉ・・・」

「ア・・・アスカぁ・・・」

「大体あの女はどこなのよっ!作戦会議だってのに」

「・・・司令に呼ばれたみたいね」

リツコの冷たい表情に、シンジは背筋を凍らせる。

「はっ!何よ、この大事な時に司令とイチャ付いてるワケぇ!?」

「あ・・・あの、アスカ・・・そう云う物云いは・・・」

もはや鬼の形相となったリツコから、シンジは視線を逸らす。

「・・・まあまあアスカ、レイにはこの任務のために特別な訓練をしてもらっていることだし・・・」

「訓練?・・・ミサト、それってもしかして・・・」

アスカには応えず、ミサトは手の中のリモコンスイッチを押す。
床のスクリーンに映る画像が、変化する。

「「・・・やっぱり・・・」」

アスカとシンジの足下の映像。
全身に武骨な鎧。腰の周囲にリング状のバラスト。脚にはフィン。
頭にゴーグル型スキャナーとアンテナを載せた、初号機。



広がる床。
広がる天井。
窓に囲まれながらも暗く、何も無い、広大な部屋。
荒い男の息遣いが響く。

「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」

大きなデスク。
その上に、仰向けに身体を小さく折り畳んだ少女。
制服のレイ。
めくれ上がったスカート。足首に小さく丸まったパンティ。
暗い天井を向いた、白く小さな尻。

「はあっ、はあっ・・・レ・・・レイぃっ!・・・」

そこに伸し掛かり、剥き出しの下半身を打ち付ける髭の男。

「・・・イ・・・イキそうだっ・・・くっ・・・うっ・・・」

サングラス。手袋。ジャケット。四つん這いの男の下。
レイは無表情に、その苦悶の顏をちらりと見る。

「司令・・・早く・・・会議が終わるわ」

「わ・・・判ってる・・・うっ・・・ううっ!・・・」

男の動きが止まると、そのままがくりと身体は弛緩した。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」

碇ゲンドウはゆっくりと起き上がると、膝立ちになる。
レイの淡い色をした陰裂から、ゴムに包まれた自身を引き抜く。
だらりと垂れる粘液。

「・・・痛かったか?」

「少し・・・」

レイは股間をティッシュで拭う。
ゲンドウは床に降りながら

「ローションが足りなかったか・・・」

ゴムを始末するうちに、レイは身なりを整える。

「司令」

「・・・何だ、レイ」

「もう行っても良い?」

「あ、・・・ああ」

カバンを持つと、レイはだだっ広い公務室を出ようと踵を返す。

「・・・レイ」

くるりと振り返る。

「何?」

「・・・レイ・・・」

「・・・・」

青い髪を揺らし、小さく傾ぐ首。

「・・・レイ、わたしは・・・」

「ダメ」

「・・・レイ・・・」

紅い瞳は、真っ直ぐとサングラスを見据える。

「云ってはダメ。それは破滅だから。全て、終わってしまうから」

「しかし、わたしは・・・」

「これで良いの。わたしはあなたの人形。それで、全てうまく行くの」

目を伏せると、レイは再び踵を返した。

「レイ・・・」

ひとりになったゲンドウは、どさりと椅子に身を沈める。
深く、長いため息を表情ごと塞ぐ、両の手の平。



青空の高みから降り注ぐ、ぴりぴりとした陽の光。
沸き上がるガスが、空中にいくつかの影を投げ掛ける。
巨大な火山の噴火口は、不思議な静寂の光景を見せていた。

「いよいよだね、アスカ・・・」

「なあにが“いよいよ”よっ!出番なんか無いわよバカシンジっ!」

火口の脇に佇む、赤い人型の機体。
胎内のエントリープラグに装備された、複座式インテリア。
その前席で、赤いプラグスーツはぶつぶつと云葉を続ける。

「手柄は全部あの女がひとりじめなんて・・・ムカツキーっ!」

「・・・アスカぁ・・・」

後席の青いプラグスーツは、ため息まじりにモニターを見る。
頭上に設営されたクレーンに吊るされた、初号機。

「何も無きゃ良いんだけど・・・綾波・・・」



インテリアに横たわる白いプラグスーツ。
レイは、目の前に開いた通信ウインドウのリツコを見る。

『どう?レイ。今、LCLを冷却回路側に切り替えたわ』

「快適です赤木博士」

『これならエヴァ側のサーモには負担が掛からないはずよ。スキャナ及びソナーは?』

「異常有りません、赤木博士」

『バラスト関係は?』

「異常有りません、赤木博士」

『耐圧耐熱システムはどう?』

「異常有りません、赤木博士」

『捕獲用ネットガンは?』

「異常有りません、赤木博士」

『よろしい。・・・でもレイ、ひとつ異常が有るわね』

「?・・・何ですか?」

『顔色が悪いわよ、レイ。・・・何か心配事でも有るの?』

「いえ・・・任務に関しては、何も・・・」

『任務に関しては・・・ね・・・』

「・・・・」

『まあいいわ。・・・じゃあ、もう一度確認して置くけど、制限時間は30分。それを超えたら装備の耐久性は保証出来ないから、目標捕獲の如何に関わらず、速やかに浮上すること。良いわね?』

「了解」

『よろしい。では作戦指揮者に代わります』



ネルフの大型移動指揮車。
その金属の箱の中、ミサトはディスプレイの中のレイに向く。

「最新のデータでは、目標までは10分以内に辿り着くはずよ」

『了解』

「電波障害の関係で、降下中の通信は有線による音声のみに切り替わるわ。ネットで捕獲した目標は先に引き上げるから、合図よろしくね」

『了解』

「じゃあ行くわよレイ・・・ダイブ開始!」



クレーンから、初号機が降下を始める。

「あ、始まったよ、アスカ・・・」

「・・・せいぜい楽しんでらっしゃいよファースト」

頬杖を突いたアスカの視界に、灼熱の色に沈む機体が映る。

「・・・あたしなら、ジャイアントストロングエントリーとかするところなんだけどなあ・・・」

「・・・何それ?」



光り輝くオレンジと、蠢く黒。
プラグ内には、眩いマグマの模様が映し出されていた。

『どう?レイ』

「順調です。機体内の温度上昇も予想範囲内です」

『さっすがリツコね。ココはホメとかなきゃ』

「スキャナ及びソナーを作動させます」

『相手は動かないけど・・・充分注意してねレイ』

「了解」



「ねえシンジ・・・」

赤いプラグスーツの背中の声。

「・・・何?アスカ・・・」

「・・・子供・・・欲しい?・・・」

「え?・・・ど、どうして?」

「別に・・・ただ、何となく・・・」

「・・・そりゃあ、欲しいよ。僕とアスカの子供だから・・・」

「そうよね・・・そのために使徒をやっつけてるんだものね」

「まあ、そのためだけじゃないけど・・・でも・・・」

ゆっくりと振り返る、アスカの青い瞳。

「・・・僕は、“家族”が欲しいんだ。僕に無いモノだから」

「・・・シンジ・・・」

「・・・僕から失われてしまったモノだから・・・」

「・・・シンジ・・・あたし・・・」

その時。
プラグ内に鳴り響く、けたたましいアラート。



『レイっ!どうしたのっ!?状況は!?』

「正体不明の物体に、機体が拘束されましたっ!」

『まさか・・・あの使徒が!?』

「あ・・・ああっ!・・・ダ、ダメっ!・・・」

『・・・レイっ!・・・レイいいぃっ!・・・』



「どうしたんですかっ!ミサトさんっ!」

『マグマの中で、レイが使徒に攻撃されたらしいの!』

「「ええっ!?」」

『詳しい状況は判らないわ・・・応答が無くなって・・・』

「ちょっとミサト!あの使徒はまだ動けないんじゃなかったの!?」

『判らない・・・急激に成熟したとしか・・・』

「ミサトさん!行かせて下さい!・・・綾波を助けなくちゃ・・・」

『ダメよ!その機体じゃマグマの熱にも圧力にも耐えられないわ!』

「そんなこと云ったって!・・・じゃあ綾波は!」



『ミサト』

「リツコ・・・一体何が・・・」

『精神汚染よ・・・レイの心理グラフが崩れて行ってる・・・」

「せ・・・精神汚染!?」

『多分、あの使徒は、対象の思考波に感応してそれを読み取り、そのパターンを自らのフォルムとして成熟するのよ。そしてその対象の精神を犯す・・・。だから、レイが近付いた途端、活動を開始したんだわ』

「そんな・・・まさかっ!」

『これを見て・・・初号機が最後に送って来たスキャナー画像よ』

目の前のディスプレイに映る、マグマの中の人影。

「い・・・碇・・・司令・・・」




レイ・・・


「ダ・・・メ・・・」


レイ・・・


「云ったら・・・ダメ・・・」


レイ・・・わたしは・・・


「それは・・・破滅の・・・呪文だから・・・」


わたしは・・・


「・・・全てが、終わってしまうから」




くすっ・・・




・・・感じてたクセに。




痛い?・・・とんでも無いわ。




我慢していたのよ。




・・・声をあげそうになるのを。








どうして?








・・・ねえ、どうして?








「終わらせたく無かったの・・・」








「だって・・・」
















「わたしは、司令を・・・」



















「リツコ・・・どうすれば・・・」

『落ち着いてミサト・・・何か方法は有るはずだわ』

「一緒に引き上げるには、ケーブルが重さに耐えられない・・・タイムリミットまで、あと15分しか無いのよ!」

『・・・要は、初号機を解放させれば良い。使徒のレイに対する精神汚染攻撃をやめさせれば良いのよ。・・・そのためには・・・』

「・・・そのためには?」

『別のエサを与えれば良いの。・・・別の、強力な思考波を・・・』



『シンジ君、アスカ』

「リツコっ!」

「リツコさん・・・早く、綾波を・・・」

『判ってるわ。そのために、力を貸してくれるかしら?』

「もちろんですっ!」

「ほら、どうすれば良いのよっ!」

『・・・ではあなたたち、そこでセックスしなさい』

「「またあ〜っ!?」」



「ちょ・・・ちょっとリツコ!あんたまた何考えてるのよっ!」

『ATフィールド制御システムよ。あのトランスミッターで、彼らの思考波を送り込むの。最大値でね。もちろん最大値を得るためには、最高のシンクロ状態を作り出す必要が有るけど』

「そんな・・・うまく行くの?」

『正直、判らないわ・・・でも、今はそれに賭けるしか無い』

「・・・・」



『・・・ふたりとも・・・聞いてた?』

「聞いてましたよミサトさん・・・それしか方法が無いんですよね?」

『可能性としては・・・これしか無いの』

「どうやらヤるしか無いみたいねえシンジ・・・」

「良いの?アスカ・・・」

「しょーがないでしょうが・・・まあ、前にも一回ヤってるし・・・」

「・・・判りましたミサトさん。僕たち、セックスします」

『・・・ありがとうシンジ君、ありがとうアスカ』



『トランスミッター、作動。送信を開始するわ』

「リツコ・・・もし、使徒が食らい付くまでの出力が得られなかったら・・・」

『あのふたりなら大丈夫。きっと、達してくれる・・・レイのために』



インテリアに横たわる全裸のシンジ。
その腰の上に、全裸のアスカは胸をそびやかせて、跨がる。

「・・・初めての時も、こんなだったね、シンジ」

「・・・そうだねアスカ」

アスカはゆっくりと身を屈めると、赤い髪の中でシンジにキスをする。
軽いキス。やや深いキス。舌を差し込むキス。

「・・・もう濡れちゃった」

「さすが、僕の奥さんだ」

「・・・シンジだって、こんなになってるじゃない・・・」

股間の下に手を伸ばし、そそり立つシンジを柔らかく掴む。

「・・・だって、アスカの旦那さんだもの」

「バカ・・」

シンジの先端を、ぬるりとした器官にあてがう。

「急がなきゃ・・・あの女のためってのはシャクだけど」

「アスカ・・・」

「・・・入れるね、シンジ・・・」

「うん・・・」

腰を落とす。

「「ああっ!」」




・・・感じてたクセに。



「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」




・・・感じてたクセに。





「はあ・・・ああっ!・・・んっ・・・んんっ!」






・・・感じてたクセに。







「ああっ!・・・いやあっ!」










『ミサト、レイの精神汚染レベルが、Yに達したわ』

「残り時間はあと7分・・・リツコ、トランスミッター出力は?」

『まだ、・・・初号機を解放するまでには至っていない・・・』

「アスカ・・・シンジ君・・・お願い・・・」



赤い恥毛と、黒い恥毛が擦れあい、絡みあう。
華奢な身体が蠢き、その白い乳房を鷲掴んだ手は、揉みしだく。

「はあはあ・・・シンジっ」

「アスカ・・・き、決めたよ、アスカ・・・」

「・・・ああっ・・・え?・・・」

「アスカ・・・子供を作ろう・・・ぼ、僕たちの子供・・・」

「ああっ・・・んっ・・・んんっ!・・・シンジ・・・」

「そうさ・・・僕たちの子供・・・出すよっ・・・中に出すよっ!」

「シ・・・シンジっ!・・・あ・・・ああっ!」

「ううっ!!」



『来たわっ!最大出力よっ!』

「レイっ!」




・・・逃げよう。



「・・・え?」




・・・どこまでも、逃げよう。





「・・・逃げる・・・」






・・・ふたりで、逃げよう。







「・・・・」








・・・この世の、果てまで。









「・・・司令・・・」













・・・イっ!・・・レイっ!』

「・・・はっ」

『レイ、聞こえる?応答してっ!』

「は、はい、聞こえます、葛城一尉」

『レイっ!・・・無事なの?状況を報告して!』

「初号機は解放されました。目標は変形を繰り返しながら離れつつあります」

『混乱しているのね・・・レイ、捕獲作戦は現時点を以て破棄します。・・・殲滅出来る?』

「はい、コアの位置を確認しました。直ちに殲滅します」

『了解、頼んだわよっ!』



耐圧カプセルから取り出された、プログナイフ。
バラストで安定を保った機体は、両足のフィンで強くマグマを蹴る。
キラリと輝くスキャナーゴーグルの照準がロックオンした使徒のコア。
小さく赤黒い半球に、真っ直ぐと振動刃の切っ先は突き出される。
断末魔が、エントリープラグをも震わせる。

「あ・・・あれは・・・」

消滅して行く使徒のスキャナー画像に見入る、紅い瞳。

「・・・赤ちゃん?」



エントリープラグに満ちる、穏やかな息遣い。
裸の胸に広がる紅い髪が、優しく撫でられる。
キモチ良さそうに閉じられる青い瞳。
ぴったりと重ねられた肌は、汗ばんで湿っている。

「フフ、垂れて来た・・・シンジのが・・・」

「アスカ・・・出来たかな?」

「え?」

「・・・僕たちの、子供」

シンジの胸に伏せられた顏が、視線を上げる。

「今ので・・・出来たかな?」

「・・・シンジ・・・」

じっと見つめると、アスカの両肩はそっと掴まれる。

「アスカ・・・逃げよう」

「?・・・逃げる・・・って・・・」

「どこまでも逃げよう。ふたりで逃げよう・・・この世の、果てまで」

「シ・・・シンジ・・・」

「こんな世界から逃げよう。そして、慎ましく、平凡で、幸せな暮らしをしよう・・・僕と、アスカと、・・・僕たちの子供で・・・」

「・・・シンジ・・・あのね、シンジ・・・」

「ずっとそのことを考えてたんだ。ずっと、そのことを・・・」

「シンジ、あたしね・・・」

伏せられる、瞳。

「あたし・・・ピル、飲んでるの・・・」

「・・・え?」

ゆっくりとアスカは身体を起こす。
乱れた髪に縁取られた、俯いた表情。

「・・・ううん、別に避妊のためじゃなくて、・・・生理が重いのをリツコに相談したら、低用量のを処方してくれて・・・」

「・・・どうして、云ってくれなかったの?」

震える、アスカの小さな声。

「・・・シンジに・・・シンジに、子供が欲しく無いんじゃないかと思われるのが、イヤだったの・・・」

伏せられた睫毛に、シンジは輝くものを見た。
次の瞬間、優しく抱き寄せる手が、アスカの背中を掻き抱く。

「・・・ごめん、アスカ。・・・そうだね。平和じゃない世界に産み出されたって、子供は幸せになれるわけが無いよね・・・」

「シンジぃ・・・」

「いつかきっと、平和がやって来た時に、僕たちの子供を産もう。・・・慎ましやかで、平凡で、幸せな世の中に・・・」

「・・・うん・・・」

涙に濡れた瞳と、優しさに微笑む瞳が、見つめ合う。
そして、唇が重ねられる瞬間、それらは閉じられた。



広大な空間に響くゴム底の足音に、ゲンドウは窓から振り向く。

「・・・レイか。任務ご苦労だった。良くやったな」

執務室に立つ制服姿の少女が、サングラスに映る。
その手に下げられたカバンが、ばたりと落ちた。

「?・・・レイ?」

ゲンドウに駆け寄る、その青い髪。
ズボンに縋り付くと、サスペンダーを外し、チャックを下ろす。

「な・・・こ、こら、どうしたと云うのだ、レイ!?」

あっと云う間に剥き出された、下半身。
目の前に現れたゲンドウの自身を掴む。
そのまま先端を舌でぺろりと舐める。

「レ・・・レイぃっ!」

根本からゆっくりと舐め上げる。
もう一度先端に辿り着くと、頬を膨らませて、すすり込む様に含む。

「はあはあ・・・レイ・・・一体・・・」

顏をしかめながらも、ゲンドウはレイの頭を掴み、股間に押し付ける。
レイは舌で擦りながら、少しずつ吸い込む。
ゲンドウの陰嚢を揉みしだく。

「レイ・・・ど、どこでそんな・・・」

「更衣室」

「何?」

見ると、レイはそそり立つゲンドウの自身を見つめていた。

「・・・もういいわね・・・」

「?・・・一体何を・・・お、おいっ!」

ふいに身体を押され、ゲンドウはデスクの上に仰向けに倒れる。

「レ、レイ・・・」

パンティを下ろし、片足から外すと、レイはゲンドウの上に跨がる。

「・・・まさか・・・」

レイの冷たい指の感覚が、ゲンドウの自身を包む。

「やめろ、レイ・・・ローションが無ければ、お前が痛みを・・・」

次の瞬間、彼の先端を捕らえた感触。

「レイ!?」

驚愕と共に見つめると、紅い瞳は俯き、そして頬はわずかに上気した。

「・・・濡れている・・・のか?」

「んっ!」

レイが腰を落とすと、ずぶずぶと根本まで埋まる。
愛液が溢れ出すのを、下腹に感じる。

「あっ・・・あっ・・・んっ・・・ああっ!」

しかめた顏に大きく口を開き、咽喉を膨らませて、レイは声を上げた。

「ああっ!いやあっ!んんっ!んああっ!」

「レ・・・レイ・・・な・・・何故・・・どうして・・・」

狂った機械の様に、激しく振れ続ける華奢な腰。
ぐちゅぐちゅと鳴く、湿った器官。

「レイ・・・ダメだ・・・そんなに動いたら・・・わたしは・・・」

「ああああっ!んんっ!!」

「ダ・・・ダメだ・・・限界が・・・ううっ!!」

「んっ・・・んあぁぁああぁぁあぁあぁぁあぁぁあぁっっっ!!!」

振り乱れる、青い髪。
飛び散る、涙の滴。
ゲンドウの胸に崩れ落ちる上体から、すっかりと抜け落ちた力。

「はあ・・・はあ・・・んっ・・・くぅん・・・」

鎮まる呼吸に混じる、細いかすれ声。
僅かに色付いた首筋から匂う、汗の匂い。
ゲンドウは、自分の上の小さな背中に、そっと手を這わせる。
びくりと震える。

「はんんっ!」

「・・・イッたのか・・・レイ・・・」

「・・・はあ・・・はあ・・・司令・・・」

ゆっくりと上げられる顏。
潤んだ瞳。唾液の糸を引く口元。

「司令・・・ゴムが無いと早い

「レイ・・・」

手袋に包まれた武骨な指が、口元の唾液を拭う。

「レイ・・・愛している・・・」

沈黙。
見つめ合う瞳の、一瞬の沈黙。

「・・・云ってしまったのね、司令・・・」

「ああ。何度でも云おう・・・愛している、レイ」

レイの上体が、しなやかに起き上がる。
真っ直ぐと見下ろす、紅い瞳。

「・・・わたしを選んでしまったら、もう他は選べないのよ。・・・そう、あのヒトのことも・・・それでも良いの?」

サングラスが外されると、瞳は微笑む。

「ああ、かまわんさ・・・お前さえ居てくれれば、それで良い。他には何も要らない。・・・ユイも、補完計画も、わたしには必要無い」

「・・・司令・・・」

その微笑みは、レイの無表情を埋めていった。
淡く咲く花の様に色付いた頬を、広がって行った。
潤んだ瞳から滴る涙を、武骨な指が尚も拭き上げる。
その止めどない作業。

「・・・うれしいの、司令・・・止まらないの・・・」

「ああ、レイ、判っているよ。わたしも、同じ気持ちだ」

「司令・・・じゃあ、わたしのお願い、聞いてくれる?」

「お願い?」

洟をすすり上げながら、レイは悪戯っぽく笑う。



「「ええ〜っ!?・・・駆け落ちぃ〜っ!?」」

暗い、ネルフのブリーフィングルーム。
床一面のスクリーンに照らされ佇む、制服のアスカとシンジ。
その前で、ミサトは腕組みをして、表情をしかめる。

「そうなのよ・・・司令とレイが、逃げたらしいの」

「父さんと綾波が・・・そんな・・・信じられない・・・」

シンジは、アスカと顏を見合わせる。

「そんなの、逃げ切れるワケ無いじゃない。だって諜報部が・・・」

「とーこーろーがーアスカ、さすがは司令ね。足跡ひとつ残っていないのよ」

「何それぇ!?」

ミサトは、光に煽られた顏に、落胆の色を浮かべる。
隣りでため息をつく、リツコ。

「・・・何やってるんだか。全くブザマね。今度こそ愛想が尽きたわ」

「それって司令に?・・・それとも諜報部?」

「両方よ」

「そんなこと云っても・・・手掛かりと云えばアレしか無いんだしぃ・・・」

「アレ・・・って何ですかミサトさん?」

シンジには応えず、ミサトは手の中のリモコンスイッチを押す。
床のスクリーンいっぱいに、画像が映る。

「「・・・これって・・・」」

それは、手紙の様だった。
そこに手書きで書かれた、文字。

『レイとふたり 慎ましく平凡で幸せな生活を送ることにする 捜索は不要 碇ゲンドウ』



コンクリートの壁に囲まれた、湿った空気。
低い天井に、すりガラスの窓越しの光が暗く描かれる。
ぎいっと開くドア。

「イ・・・イインチョ?・・・」

潜めた声の少年が滑り込む。

「イインチョ・・・どこや?」

ロッカーの列が立ち並ぶ狭い部屋。
敷いてあるスノコをおそるおそる踏みながら
ジャージ姿の鈴原トウジは、列の間をひとつひとつ覗き込む。

「・・・居ないんかなあ・・・けど、確かにプールの更衣室て・・・」

突然、後ろから両目を塞ぐ手。
濡れた指、華奢な腕。

「わわっ!」

「しぃ〜っ!・・・騒がないでよ鈴原」

トウジが振り返ると、水着の少女が水泳帽を外した。
濡れた髪から、頬のソバカスに水滴が落ちて滑る。

「・・・なんや、イインチョ、驚かさんといてや・・・」

「フフ、鈴原ってホント、怖がりなのねえ・・・」

洞木ヒカリは、濡れた顏でイタズラっぽく微笑む。
潤んだ瞳を、きらきらと輝くまつ毛が飾る。
ぼおっと見つめるトウジ。

「・・・イ、イインチョ・・・」

「な・・・何?鈴原・・・」

高まる胸の鼓動。紅潮するソバカスの頬。

「イインチョ・・・すまん、ションベン行きたくなってしもた」

「な・・・何よ!レディーに向かって!」

「レ・・・レディーも何も“出物腫れ物所嫌わず”や」

「ダメよ」

「ダ・・・ダメて・・・どーゆー意味やねん!」

「ココでしなさい鈴原」

「ココて・・・わしにションベン漏らせ云うんかいな!」

「そんなこと云ってないわ」

ヒカリはにっこり微笑んでしゃがむと、大きく口を開けた。

「な・・・なななな・・・何考えとねんイインチョ・・・」




















「うわあ・・・あのふたりグログロねえシンジ・・・」

「そ・・・そうだねアスカ。さすがにあそこまでは僕たちも・・・」

「ん?何だよ“僕たち”って?」

「い、いや、何でも無いよケンスケ、こっちの話」

「ふうん。・・・しかし飲○プレイか・・・悪いけどシンジ、ス○トロは趣味じゃないんで、俺は戻るぜ・・・全く、この後弁当だってのに、良くやるよなあ・・・」









































「司令・・・」

「何だ?レイ」

「・・・赤ちゃん・・・出来たかな・・・」































<おしまい>




NOVELSに戻る

ふりだしに戻る