I LOVE YOU


月に架かる赤い橋。
まるでファーストの赤ね。
赤い瞳。
静かな・・・静かな夜。
もう、何日たったのかしら。
ずっとこうして・・・ここでこうして・・・空を・・・見ている。
ざりざりとした砂の感触。
地面の熱。
そして・・・波の音。
絶え間無いホワイトノイズ。
気持ちいい・・・。

・・・気持ち悪い・・・

唇に残る感触。
何かが触れた。
そうして、空が見えだした。
そうして、世界が見えだした。
誰も居ない世界。

いえ・・・ひとりじゃないわね。
赤い波の上に佇む影。
ファースト。
赤い瞳。
赤い光。

・・・何を見てるの?
哀れんでいるの?
誰からも必要とされないあたしに
その哀れみの赤い光を向けてるの?

・・・滑稽ね。
人形はあんたの方だと思ってた。
あたしは人形じゃないと思ってた。
でも・・・今はこうしてここに捨てられてる。
もう要らないってうち捨てられてる。
誰にも役に立たない人形。
誰にも。
ママにも。
・・・あいつにも。

「・・・好きだったのね」

・・・何云ってるの?
あたしが?
あいつを?
そんなはず無いじゃないっ!
そうよ、あたしはあいつを憎んでたわっ!

「・・・必要だったのね」

違うっ!

「助けて欲しかったのね」

違うっ!

「抱きしめて欲しかったのね」

違うっ!違う違う違うっ!

「・・・でも、もうダメ。あのひとは居ない。消えたの」

・・・消えた?

「・・・この世界を創ったのは、あのひと」

・・・あいつが?

「あなた以外の他人を求めなかった、あのひとの自我なの」

あたし・・・あたしをあいつが必要としていたって云うの?

「そうよ。そしてあのひとは気付いた・・・そのことに」

嘘・・・

「だから、消えたの・・・自分から」

・・・何故?

「この世界を再生するため」

どうしてっ!

「・・・あなたを救うため」

あたしを救う?

「そう」

あたしを救うために・・・自分を消した?

「そうよ・・・見てごらんなさい」

白い指がそっと差す
その先。






























・・・失ってしまったの?

あたしは・・・失ってしまったの?

あんたを・・・失ってしまったの?

全てを・・・失ってしまったの?

・・・シンジ・・・






























白い砂に書かれた文字。

I LOVE YOU






























イヤッ、イヤァッ!イヤァァッ!!・・・イヤアアアァァッッ!!!
































誰かの叫び声。
目を覚ますとカーテン越しに陽の光がちらちらと天井を撫でていた。
ひりひりとした喉を通して荒い息をしている。

叫んでいたのは・・・あたし・・・。

無機質な医療機器の電子音が響く清潔な病室で
あたしは汗に濡れていた。

恐ろしい夢。
ひとがたくさん死ぬ夢。
あたしの知らないひとたちが
あたしを知らないままに無意味な死を死ぬ夢。

たとえ知っていたとしても、
誰ひとりあたしには関心を払わないだろう。
あたしは必要のない存在なのだから。































<おしまい>




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