この頃、変な夢を見る。






























ミサトのマンションの居間で・・・

テレビの前に座ってる。

素っ裸の・・・あたし。

カーペットでお尻がざらざらして、

少し汗ばんでる。

目の前には・・・

山のようなビデオディスク。

探すの。

何だか判らないけど、

必死に探してる。

そのビデオを。

髪を振り乱して、

叫び声さえあげて、

がちゃがちゃとその山を崩す。

で、見つける。

やっと、見つかる。

デッキに入れようとすると、

ふいに現れる。

・・・あたしを止めるの。




















『手』が・・・








































 

         

〜童貞シンジ肉しごき検査〜









































「アスカ、どうしたの?」

「な、何?」

「何か、ぼーっとしちゃってさ・・・変だよ?」

このあたしが変だって?

「う、うるさいわねえ、何でも無いわよ」

「なら良いけど・・・ねえ、ご飯冷めちゃうよ」

・・・エプロン付けてフライパン持って・・・あんたそれでも男ぉ?

「別に良いじゃないか。料理結構好きなんだから」

え?

「・・・あたし今何か云った?」

「?・・・やっぱり変だよアスカ、どうしたの?」

「ど、どうもしないって云ってるでしょっ!た、食べるわよ食べれば良いんでしょっ!」

・・・あたし何やってんだろ。

もう使徒は来ないってのに・・・

この狭いマンションでバカシンジやミサトと暮らしてる。

不味くは無い料理を噛んで、飲み込んで、テレビを見て、寝る。

・・・おかしくなって当然ね。

そんなあたしをへらへらと見つめるバカ。

あんたもおかしくなってるわよ。

うんざりだわ。

その目。

・・・目?




















・・・寂しそうな・・・








































またあの夢。




















デッキに挿入すると、

ディスクがかたかたと回りだす。

白くざらつく画面に、

何かがぼんやりと映る。

何?

赤い。

赤い・・・人影?

突然ばちばちと画面がはじける。

洗ったような鮮明な映像。

・・・プラグスーツ。

あたしの・・・赤いプラグスーツ

でも・・・着てるのはあたしじゃない。

・・・シンジ?

股間を両手で隠して。

恥ずかしそうに内股で。

何で・・・何であんたがっ!

何で・・・

ぼうっとなる。

お尻がぬるぬるする。

首筋に汗が吹き出る。

気が付くと・・・

あたし・・・    してるの。

  に指を入れて

     をこすって・・・。

声をあげて泣いてる。

ううん・・・感じてる。

ばたりと仰向けに倒れる。

痛いほど反る背中。

大きな叫び声。

腿に感じる生暖かさ。

すえた匂い。

カーペットに広がっていく染み。

荒い息。

もうろうと、頭をテレビに向ける。

・・・画面では、怪物が口を開けてる。

海の中で、弐号機を飲み込もうとしている。

操作レバーを握るあたしの手。

・・・シンジの手が重なる。

そんな・・・

そんな・・・はずは・・・

あの使徒は、

あたしひとりでせん滅したはず。

・・・シンジに出会う前に。

画面が暗転する。

スイッチが切れる。

続きを見ようと伸ばした手。

掴まれる。




















・・・あの『手』。









































「・・・ねえアスカ、本当にどうしたの?」

「え、な、何?」

「この頃本当に変だよ?」

・・・判ってるわよ。

「う、うるさいわねえ、早いとこ食べれば文句無いでしょっ!」

「アスカ・・・」

・・・また・・・あの目。

「・・・アスカ、もしかしたら・・・」

「・・・もしかしたら・・・何?」

「・・・・」

「もしかしたら何よ」

「・・・いや、何でも無い・・・何でも無いんだ。た、食べてよ」

「云いたいことが有るならハッキリ云いなさいよ」

「な、何でも無いよ」

「何だってのよこのバカっ!」

乾いた音がした。

頬を押さえるシンジの呻き声。

あ・・・あたし・・・。

「ご・・・ごめんなさいシンジ・・・」

「え?何が?」

「何がって・・・ひっぱたいちゃって・・・」

「?・・・誰を?」

「えっ?」

そんな・・・じゃあ今のは・・・

「・・・アスカ・・・やっぱり」

「何も云わないでっ!」

「・・・アスカ・・・」

「・・・もう、寝るわ」









































画面を食い入るように見つめる。

あたしがシンジと居間で並んで寝てる。

・・・ふっ、とんでもないわね。

同じ個室に入れられたことはあっても

あんな無防備なカッコなんて・・・。

寝ているあたしの唇に

そろそろと近付くシンジ。

あと少し。

あと少し。

その時。




















目を開けるあたし。

微笑むの。

幸せそうに。

シンジを受け入れるの。

愛おしそうにお互いの唇を貪りあって。

お互いの舌を絡めあって。




















テレビの前に這いつくばって

高くお尻を持ち上げて・・・

あたし・・・また    してる。

指をぐしょぐしょに濡らして。

幸せそうなあたしを見ながら。

シンジに抱かれるあたしを見ながら。

シンジの   を舐めてる。

愛おしそうに口に含んでる。

・・・泣いてる。

嬉しいのね。

幸せなのね。




















「好きだよ、アスカ」

「・・・あたしも」




















・・・快感とともに

笑いが込み上げる。

そんなワケないじゃないっ!

あたしがあいつを好きだって?

あんな情けない男が

あたしにつり合うワケないじゃないっ!

その努力もしない奴が

あたしに相応しいワケないじゃないっ!





















そうか・・・

あたし、遂に気が狂ったんだ。

だってそんな奴好きになるワケない。

絶対に無い。

有り得ない。

好きになる理由が無いもの。

声をあげながら

笑いながら

涙を流しながら

快感の頂点が過ぎる。

顔をカーペットに伏せて

呼吸の隙間で笑い続ける。

泣き続ける。

両手で頭を抱えて

大声で泣き続ける。

そして、あたしの手を掴む・・・




















『手』









































「いててっ、アスカ、何だよ」

スキ。

「ふふふ・・・知ってるのよ」

キライ。

「えっ?」

スキ。

「あの手はあんたでしょう?」

キライ。

「な、何?」

スキ。

「・・・あたし、気が狂ったの」

キライ。

「・・・アスカ・・・」

スキ。

「あたし、気狂いなのよ」

マトモなら、スキになるはずない。

絶対に無い。

有り得ない。

思いっきり腕を捩じりあげる。

「痛い、アスカ、痛いってば」

「シンジ・・・あんた童貞?」

「えっ、ちょっとアスカ、何云ってるの?」

「そんなはず無いわよねえ。あんたあたしとヤッたんだもん」

「や・・・やったって、何を?」

「    よ」

「お・・・    って・・・」

「・・・そうよ。あんたと    したのよ」

「アスカ・・・」

「あれは真実なのよ・・・現実なの」

「・・・・」

「日常こそが嘘なのよ・・・今のあたしこそが夢なのよっ!」

「・・・アスカ・・・やっぱり・・・」

「・・・あたし・・・あたし・・・」

「アスカ・・・」

「・・・う・・・うっうっ・・・」

止まらない。

涙が、止まらない。

そうよ・・・

「・・・好きなの」

「アスカ、ダメだ」

「好きなのよ、シンジ」

「ダメなんだ、アスカっ!・・・忘れなきゃダメだっ!」

シンジの胸。

すがりつく。

「・・・シンジ・・・」

胸が震えてる。

腕が、あたしの背中に回る。

「・・・アスカが僕を受け入れてくれた時・・・嬉しかった」

「・・・・」

「本当の愛を知って・・・幸せだった。でも・・・」

「・・・でも?」

腕に力が入る。

「・・・それがアスカを壊してしまった。アスカが救いを求めてる時に・・・僕はアスカを拒絶してしまったんだ・・・」

「・・・シンジ・・・」

「・・・トラウマを取り除くためには、記憶を移植するしかなかった。僕への感情を消去するしか・・・」

そう・・・そうなの。

シンジに対する想いへの拒否反応も・・・そう云うことなのね・・・。

「・・・アスカ、僕への想いは、君を壊してしまう」

「・・・シンジ」

「そして・・・君への想いが、君を壊してしまうんだ」

「・・・いや」

「・・・僕のせいだ」

「・・・いやっ」

「みんな、僕のせいだ」

「・・・いやあっ」

「・・・愛しちゃいけない、アスカ、ダメだ」

「・・・いやああああっっっっ!!!!」

「愛し合っちゃいけないんだっ!」

強く、強く。

抱かれる。

あたしの中の、ありったけの想いが・・・

・・・シンジに染み込んで行く。









































これはいつもの・・・夢。

そのはずよ。

だって・・・あたしは素っ裸で・・・居間に立ってる。

いつもと違うのは・・・目の前にシンジが居ること。

裸のシンジが、あたしを見つめてること。

「ねえ、シンジ・・・教えて」

「え?」

「あのときのあたしが・・・どうしたのか」

優しく触れる唇と唇。

でも、やがてふたりの唾液で汚れる。

わたしの胸を、腹を無心に舐め回す舌。

目を閉じてその感触に身体を任せる。

やがて、液体を啜る粘り気の有る音が部屋を満たす。

内腿がシンジの頭を強く挟む。

昇りつめる。

叫ぶ。

ふっと光が途切れる。

強烈な開放。

すえた匂い。

シンジが抱くあたしの両腿。

その間から、ごくりごくりと咽喉の鳴る音。

・・・まさか!?

「シンジ!?」

濡れそぼった顔が向く。

額に張り付く髪。

顎から滴るあたしの・・・

「良いんだ・・・欲しかったんだ、アスカの・・・」

「・・・シンジ・・・」

起き上がってシンジの頭を両手で掴む。

静かに、ゆっくりと、あたしの顔でシンジの顔を拭う。

口の中をあたしの舌で拭う。

シンジの   をそっと握る。

「あ、アスカ・・・」

「知ってる・・・こうしたんでしょ?」

ゆっくりと含む。

・・・懐かしい匂い。

顔が熱くなる。

目から流れ出る。

・・・そうよね。

泣きたくなっちゃうわよね。

幸せ過ぎるもの。

切な過ぎるもの。

「あ、アスカぁっ・・・」

嗚咽とともにシンジを飲み下す。

口から出すと、頬擦りをする。

あたしに染みて行くシンジ。

涙に混じる幸福の粘液。





















痛く無い。

痛く無いの。

あたしの身体には、シンジが刻み込まれてる。

例え、何度記憶を書き換えようが

何度想いを消そうが

この身体は覚えてる。

この身体が証拠なの。

あたしは処女じゃない。

シンジも童貞じゃない。

それは永遠に変わらない。

死ぬまで変わらない。

「シンジっ!刻んで、あたしの身体に、シンジをっ!」

「・・・アスカ、僕は・・・この気持ちは、変わらない・・・」

「シンジ・・・忘れない・・・忘れないわ、この気持ちっ!」

「アスカぁっ!・・・好きだっ・・・好きだよぉっ!」

「シンジぃっ!・・・好きっ・・・大好きぃっ!」

溶け合うほど、強く抱かれる。

弾けた空白に、熱い想いが注ぎ込まれる。

あたしの中の余韻。

あたしの中のシンジ。

判ったわ。

どうして、シンジを好きになったのか。

・・・その瞬間、あたしの頭に大きな暗い穴が開いた。

ずるずると、気持ちが滑り込んで行く。

・・・お別れなのね。

シンジの唇の感触。

あたしを抱く手の温かさ。

また逢える。

そう、また逢えるじゃない。

新しい記憶で。

あたしを愛してくれてるひとに。

だから、さよならなんかじゃない。

悲しくなんかないの。

悲しくなんか、ない・・・。








































幸せをありがとう、シンジ。




























































「アスカ、どうしたの?」

「な、何?」

「何か、ぼーっとしちゃってさ・・・変だよ?」

このあたしが変だって?

「う、うるさいわねえ、何でも無いわよ」

「なら良いけど・・・ねえ、ご飯冷めちゃうよ」

・・・エプロン付けてフライパン持って・・・あんたそれでも男ぉ?

「別に良いじゃないか。料理結構好きなんだから」

え?

「・・・あたし今何か云った?」

「?・・・やっぱり変だよアスカ、どうしたの?」

「ど、どうもしないって云ってるでしょっ!」

「アスカ・・・」

「・・・変な夢を見たの」

「夢?」

「そう、・・・夢。











画面が暗転する。

スイッチが切れる。

続きを見ようと伸ばした手。

掴まれる。

振り返ると、満面の笑み。








































また、逢えたね。








































<おしまい>




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