“花の島礼文”
残雪の大雪山系を通過すると、程なく、左手に見える利尻岳を回り込むように全日空機は、稚内空港に着陸した。稚内から今日の宿泊先の香深へは、海に浮かぶ山―利尻岳を眺めながらのフェリーだ。出迎えの、民宿のご主人に『岩魚はつれますかネェ』と尋ねる。―私の計画の中には、同行者の“花”と同じぐらいの比重で、北海道での釣りが組み込まれていたのだ。夕飯を済ませ、夕陽見物に桃岩展望台へと急いだ。登山道脇には“チシマフウロ”“レブンソウ”“カラフトダイコンソウ”そして、斜面一面の“イブキトラノオ”の大群落が、私たちを出迎えてくれた。
翌朝は、オヤジさんの言う、アカハラを釣りながら頂を踏もうという計画のもと、朝一番のバスで出発だ。登山口脇に流れる小川が、今日の目的の川だ。小学校の横を上流へと30分程歩く、川は想像していた程、大きくはなく、深い所でも膝程度で川幅も3m程度である。
しかし、アカハラは入れ喰いで(チビばかり)・・いいかげんにしてくれ!ポイントなんかあったものじゃないし、釣っては放しの繰り返しだ(私の仕掛けは一・五号の通しにチヌ針五号である。)一時間程釣りあがった頃、同行のカメラマン(失礼!)の足下で、ゴボッという音と共に黒い巨大な影が走った。私の仕掛けは、奴を狙ってのものだが、言うまでもなく奴は“腕のいい”私の敵ではなかった。
堰堤も、滝も、大きな淵もない平川は、延々と礼文岳までルンゼとなって上がっている。当初の“川を遡上して頂上へ”は、酷い笹に行く手を阻まれ、一旦登山口へ戻ってから頂上を目指す事とした。二時間程で頂上である。この登山道には、あんまり花はなかったが、雲に浮かぶ島―利尻が目に焼き付いている・・。
翌日、礼文林道にある“レブンウスユキソウ”の群生に会いに行ったのは、改めて言うまでも無いかナ(99.7.11〜13)
“山の島利尻”
登山暦二年の私達は、昨晩コースを決めかねていた夫婦と、同じペースで歩を進めることとなった。
だが私のザックは、水とVIDEOが重く肩にのし掛かっている! “五葉の坂”あたりで小休止とし。避難小屋の上の礼文岩から、沓形が眼下である。沓形稜を“汗をふき拭き”昇ること一時間、目前に三眺山を望む頃、朝陽が射して来た。三眺山は九合目(1490m)である。VIDEOを回している私の後ろで、同行者の大声が・・何と南斜面が一帯のお花畑で“リシリリンドウ”“リシリオウギ”“ミヤマアヅマギク”など可憐な花々が咲き競っている。
ここからが「沓形」コースのハイライトだ。“背負子投げ”の岩場を降り“崩落の為注意”の個所である山頂直下のガレ場のトラバースは、ペンキに導かれて無事横断。しかし、直後の岩とザレ場の直登部で、同行者がロープに体を預けたため体を振られてバランスを崩す、がヒヤッとしただけで済み一安心である。三眺山までは、まずまずのペースで昇ってきたが、花が咲揃う個所では時間を潰してしまう。だがそれも一つの愉しみなので、それでいい。
鴛泊からのコースと合流してからは、山頂を観ながらザレた岩のあいだを真っ直ぐ昇るのみで、1721mを踏むことができた。昼食をゆっくり取り下山開始だ。
“全く得意の降り”の同行者は、一歩一歩をザレの小石の道に時間をかけるが、問題は“水”だった。このペースだと足りないかナ、と思いながら小休止していると、頂上で会った“オバサン軍団”が「ミズ〜」と言いながら傍らを降って行った。と思ったら“キャー”の叫び声である。“オバサン三人組”は寝転がった侭。この登山道は、尾根道なので気温が高い晴天の日は大変なのだ。“名水”のある甘露泉水の手前で、営林署の若者が「皆なフラフラで降りてくる」と笑っていた。(99.7.14)
“黒岳”
層雲峡のホテルから、予約していたタクシーで、銀泉台まで40分程で着いた。大雪山系は広大な山塊だ。北海道の最高峰の旭岳からトムラウシまで銃走路が延びているが、有人の小屋も無く避難小屋泊かテント持参の山行となる。
今日は、赤岳〜北海岳〜黒岳の縦走だ。昇り始めるとまもなく第一雪渓である。踏み跡を辿りながらの横断は30度くらいの斜面で、滑ったら100mは落ちそうである。時間をかけて横断を終えると「中高年のグループ」(もっとも私達も同類だ)が昇ってきた。これ幸いと先行してもらうこととする。“コマクサ平”で小休止。
“コマクサ”“チングルマ”等書き出せばキリが無い。同行者は、撮影に時間を費やす。雪解け水が登山道を流れて、小川となっている中を昇り“第四雪渓”をやり過ごすと「赤岳」だった。私達には、初めての2000m峰である。この頃にはガスも酷くなってきたが、小泉岳へは一ピッチだった。
中休し、合羽を羽織る。雪とガスで一面真っ白の中、白雲岳の十字路を目指すが、この頃には、周りは私達二人だけとなってしまった。十字路を右にとって一路北海岳を目指す。北海岳は、旭岳〜黒岳のお鉢平にある2149mの峰である。小泉岳から一時間、旭岳方面から“お鉢”を回ってきた登山者が何人か集まっている。ガスの為、お鉢の底は一部しか見えないが、暗い底から残雪が白く浮かび上がって見える。
黒岳までは二時間もあれば行けそうなので、風のあたらない場所を選んで昼休とする。黒岳石室は、“日本一高いビール”を売っている。合羽を乾かしていると風がガスを吹き飛ばし、大雪の山々がその姿を現したが、撮影場所を探しているうちに、またガスってしまった。―ナンテコッタイ―。下山口の、ロープーウェイまでの路に“黒ユリ”を見た。全く見事な黒い花だった。(99.7.16)
“トムラウシ行”T
昨日と同じ運転手で、予約した時間に、沼の原登山口へ出発。(昨日までのザックと僅かな土産物は、昨晩、一足先に宅急便で送付)・・今日はテント泊なので、荷物も一回り大き目だ。登山届を書き、出発は六時だ。
登山口から二つ目の橋を渡る頃、後続のグループが追いついて来たので、先を譲りマイペースで歩を進めるが、直ぐの急坂で足が上がらなくなる。十歩進んでは息を整える状態である。ふと振り返ると青年が一人で昇ってきた。沼の原分岐で写真を撮っていると、その青年の胸のワッペンが気になり、話し掛けると岩手の「つり人」ワッペンという事だ。10分程「つり」の話題に花を咲かせながら歩を共にするが、出発から一度も休んでいなかったので、私達は小休止とする。
湿原を抜け、少し降った処に「五色の水場」があり、水の補給をしている傍らを、パトロールの二人連れが先行者の有無を尋ねてきた。が、この水の補給が一騒動となる話は無い事として・・(兎に角、この年の北海道は記録的な暑さだったらしい)汗を拭きふき五色が原に辿り付く頃には、雪解けの沢の水を飲みながらの行軍となる。“エゾコザクラ”“エゾリュウキンカ”“ミヤマキンバイ”“コソバウップルソウではなくウルップソウ”等など雪解けの山々は百花繚乱だ。
五色岳は、各方面からの登山者で満杯状態だった。今日の泊まり場のヒサゴ沼まであまりゆっくりはしていられないので、“神遊びの庭”も急ぎ足での通過となった。ヒサゴ沼のキャンプサイトは十張り余りの色鮮やかなテントが花を咲かせていて、今日一日の疲れは熟睡を保証していた。
五色の水場で会った二人から上にも水場があると聞いていたので、登っていくうちの沢がそれと思い込んで、ついそこの水を飲んだんよ。その後、その沢添いに泥んこの登山道がついていたのには、ゾッとしたじょ。
帰ってあちこち問い合わせ、半年後〜一年後にはもしエキノコックスが寄生しとれば、検査でわかると言われたんで、半年後に検査し陰性だったけど・・・。ほんまに大丈夫かいな??
“トムラウシ行”U
夢の中で、ガリガリと変な音が聞こえてきた。熊か?いや、こんなに人がうじゃうじゃいるテント場に、わざわざ出ることは無い筈だ・・・
起床予定時刻より早く眼がさめたのは、緊張しているせいなのか?薄明かりの外を覗いてみると、昨晩の“ガリガリ”の犯人が判明・・昨夜遅くに到着組みが、雪解け水の、進路変更の溝を掘っていたのだ。
簡単な朝食を済ませて、出発である。ヒサゴ沼がモルゲンロートに煌めく幽玄な景色を背に、キックステップで、残雪の斜面を登りきると、化雲岳からの縦走路と出合った。朝霧の中、“日本庭園”で一休みしてお花畑の庭を巡って北沼に着く頃には、霧雨なのか雲の中を歩いているのか、判らない状態なので、合羽を着ることとした。トムラウシへの取り付きは大岩の連なった中であった。ペンキ印の案内と踏み跡を頼りの登りも、絶頂までは一息の距離だった。
頂は、強い風と霧の中にあり、記念の写真を撮り早々と下山にかかる。トムラウシ温泉への降りでは、次々と登って来る登山者とすれ違うが、やはり霧の中である。“前トム平”あたりで前後して降っているペアも、私達と変わらないペースだ。コマドリ沢の雪渓では靴スキーで滑り降りる・・快適だ。
が昼食の場所を探しながら歩いているうちに、崩壊した雪渓に行く手を阻まれてしまった。新しい踏み跡が、手前に出来ているのを、見過ごして通過していたのだ(雪解けの、雪渓の上は日一日、ルートは変わる)沢添いのコースから外れると泥んこの路が永遠と、うねうねと、ウンザリするほど、(どういう形容詞があてはまるのだろう?)長く続いていた。
“全く得意の降り”の私とおっちゃんは、今回の山旅の最後になって、大喧嘩 (>_<)
原因はトムラウシ温泉の予約ハガキに4時か、4時半だったと思うけど着かない方はキャンセルとなると書いてあったからなんよ。せかされても仕方ないよね〜 (;_;
でついにここで、すねて切れた私が「先に行ったら」と言い、別々に降りるって事になったんじょ。ほとんどの人は林道終点の登山口までだから、その分岐からは余り降りる人はいなくて、熊が出そうな感じだった。すべって泥んこの中に突っ込むわ、ドロドロで着いたんだけど、15分しか差がなかったらしくて、「誰かに林道終点から乗せてもらったんじゃろう?」 なんて言うもんだから、途中で会った人が丁度降りてきたので、証明して貰ったんじょ ヽ(^o^)丿
おっちゃんは、途中の林道で温泉にいく分岐を見落とし、林道をしばらく行ってしまい、止まってくれた車もドロドロの格好を見て乗せてくれなかったらしい。フフ
それにしても、東大雪荘、ひどい!! 事故がおこる事だってあるでしょ? 温泉につかって、食事後ロビーでおみやげ等見てた時、泥んこの人が到着し何も言われてないのを目撃したんじょ!
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