藪漕ぎの楽しみ

上兜への道を歩く

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 昨年の台風被害による四国の山間部の道は復旧に時間が掛かったようだ。特に新居浜・西条周辺の山間部に登山口がある林道の復旧に“やきもき”したのは私達だけでは無いだろう。

 その“壊れた林道”の一つに、「上兜山」の取り付きに使っている“窓の滝”への林道がある。その林道の入り口を松山自動車道から見ることが出来る。吹田から松山への帰路に垣間見える「通行止め」の看板が無くなるのを、今か今かと待つこと何ヶ月になったのだろうか?

 知らせは突然だった。「窓の滝への林道が全面復旧して通行可能だそうです」との、リンク仲間の「エントツ山」さんからの、我が掲示板への書き込みだった。

登山口 倒木をくぐる

窓の滝登山口〜ひかげつつじ展望所(自称)】(2005年12月31日)

 今日の登山口である“窓の滝”への林道に愛車を走らせた。相棒が“西種子川”へ落ちている大量の岩や土砂ごと川を埋めた木々の様子に声を上げている。台風の被害は、はるかに想像を超えていた。この台風は2004年9月26日(21号)だった。新居浜周辺の山間部を襲った大雨は甚大な被害をもたらした。この被害の真っ只中に四国の山サイトのリンク繋がりの家族もいた。この家族の記録(アライグマさんのサイト)は凄まじいものだ。

 台風被害から復旧した林道を走ると、窓の滝に近づく頃には12月の残雪だった。久々の4輪駆動に、愛車のエンジン音が嬉しそうだ。ん・・な訳無いか?

 さて、窓の滝をやり過ごしてしばらくは、荒れた未舗装の道だ。ラリーをしているような感覚で、深くえぐれた溝を避けてハンドルを右に左に切りながら進む。そして、いつもの登山口に停め、出発準備である。8時前だった。登山道(標識もなにも無いので、敢えていえば・・の話で)は予想通り荒れていた。倒木が行く手を塞ぐ場所に出会う。二年振りに歩く道なのだが、その道を覆う雪にあるのは動物達の足跡だけだった。

 兎のものらしい足跡は、私達を先導してくれているように続いていた。いつもの第一休憩場所の“松の木展望所(自称)”には、一時間を要した。

 

石ケ山丈方面 串ガ峰方面

 眼の前の“西種子川”の対岸の植林の伐採地も、雪を被っているせいか(?)暫らくぶりに訪れたせいか(?)わからないが、以前と様子が違ってみえる。雪雲は1000m付近まで覆っていた。もう、ここへ通い始めて6年の歳月を経て、松の木の背丈も成長したように感じる。そうなんだ、私達が大阪へ引越してから4年になる・・そう思えば、歳月の過ぎ去るスピードには驚かされる。

 温かい紅茶を胃袋に入れて、出発である。

 

 

去年の台風(?)で荒れている 横掛けからジグザクに稜線へ 稜線への道 急登になって来た

 “松の木展望所”からは、植林の作業道を利用する。今の時期なら、稜線通しが可能(薮に覆われた時期には厄介なのだ)なのだが、いつもの路を選ぶ。植林の林の中にも台風の爪痕が認められる。柔らかい新雪は、足跡とともに気持ちのいい音を残して行く。

 しばらくで、トラバースから稜線への直登の箇所だ。ここら辺りにはテープがたくさん残っている。稜線に近づくと雑木の林だ。雪の量も増えてきた。相棒の「先頭を変わろうか?」の言葉は、私のスピードがちっとも上がらないからなのか?それは、私の体力を思ってのことなのか?

 

 “ひかげつつじ展望所”は、数年前からは木々が視界を遮ってしまい、“展望所”とは呼べなくなっていた。その“ひかげつつじ展望所”の前の直登部は、膝までの雪になっていた。雪の量のせいだけじゃなくて、体調も影響しているのか判らないが、ここまでの所要時間が1.5倍は掛かっていた。

 

ヒカゲツツジ展望所近く(瀬戸内展望所の稜線が見えて来た) ヒカゲツツジ展望所も雪に埋もれている

 ここからは、串が峰への稜線が見える筈。が、雪雲が遮っているので、それも叶わない。

 おにぎりを頬張りながらの休憩で出した結論は、ここまでの所要時間と、この先の雪の量を考えると、“撤退”だった。それにしても、近頃の体力の減退と、目的を果たすという決意みたいなものの無さはなんなんだろうか?山への情熱が冷めてしまったのか?果たして“お手軽登山”だけで満足しているのか?2005年の山収めを、こんな形で終わってしまって後悔は無いのか?

 大阪への転勤後、思ったようには山行の計画が立たなくなってしまっている。また、一昨年からの、私自身の生活サイクルの変化(以前は自分の余暇の時間を趣味だけに廻せていたのだが・・)が大半を占めているのだが、加齢による体調の変化も加わったのが事実なのだ。もう無理の利く歳では無い。

 私達の山への情熱の原点でもある、「上兜」の山懐での“山への思い”をもう一度思い返す。大阪での4年間の生活を振り返るとき、仕事に追われる日々、また、その日常に追われる毎日だった。だから、なんなんだ?そうなんだ、別に誰かのために山へ行っているわけでもないし・・・行きたい時に行ったらいいんだし、自分が納得できる事こそが大事なんだ!だから、どういう形であろうと、後悔しないんだ。そう言い聞かせよう。

 

左手の植林と自然林の境界を登って稜線近くを・・・ 真ん中の山の向こうに串ガ峰がある

 さて、串が峰への稜線への路を瞼に収めて、下山だ。

 

 何処でも下りると必ずある崖 前日(?)歩いたのか林道に残る足跡

 淡々とした下山なのだが、植林のトラバースへの降りの箇所あたりは雪面に亀裂があった。この地形での雪崩の心配は無いが、雪と一緒に滑り落ちたとしたら大変なので慎重にステップを切る。“松の木展望所”には12時半に着いた。小休止である。

 再出発後、真下に林道が見える箇所で、相棒の「朝あった足跡がどこへ行っているか確認する?」に、尾根路から外れて林道へ直接降りることとした。その林道への最後の箇所で難儀した相棒が「大体、最後にはこういう羽目に遭うのよねぇ〜」の言葉は意味深である。そして林道の例の足跡は、直ぐ先で引き返していたのだった。林道をしばらくで愛車が待っていた。13時過ぎである。

 2005年の山収めは納得の行くものではなかった。しかし、私達の山行は始めた当初からず〜っとこんな感じだったんだ。若者みたいに“イキガッたり、ガツガツ”しなくてもいい。「waiwai隊」なりの、マイペースと決め込もう。

 

 


 相棒の「先頭を変わろうか?」の言葉は、私のスピードがちっとも上がらないからなのか?

いいえ〜、おっちゃんが「10歩ごとに休まんとしんどい」と言ったからなんじょ。^_^;

 先頭を変わってどこがルートか分らない時に、何年も前に付けたおっちゃんの赤テープが役にたったわ〜。遠慮がちに細い枝につけてあるんだけど・・、すぐわかる♪ 

こんな物好きしか通らない所には、ちょっとだけ印を付けさせて貰ってもいいよねぇ。waiwai隊が通った以前には古〜いテープがあったから誰かが自分の為に付けたんだろうし、waiwai隊の後にも、紫の紐の人と、スーパーの袋を裂いて作った印を付けた人が歩いている。

 

そんな印を見て、後から来る人も、どれが正しいとか思わず自分なりの判断で登るしかない・・、そんなルートなのよ〜ここは、だからいつ来ても楽しいし嬉しいんじょ。例え途中撤退でもね。(^_-)-☆