白馬〜唐松を歩く   

 

 

 2002年7月23日〜25日【白馬岳(不帰キレット縦走)】

 

 今年の夏休みは引越しの後整理などもあり、山行予定が確定しないままで迎える事となった。相棒の「何処へ行くん?」のプレシャーに、阪急・梅田の紀伊国屋で入手した、白馬のガイドブックを参考にしての計画が出来たのが、20日だった。

 

 
1日目(7/23)【栂池〜白馬大池〜小蓮華〜白馬】

 

 

 引越し疲れの相棒の体調の事もあり、前泊を栂池平としたので、今日は白馬岳までの“花モード”山歩きだ。

 

 

 
 5時45分に山荘を出発。ぬかるんだ道は歩き難いが、階段状の登りと左右に密生しているネマガリタケに視界はきかない。やがて、水場に着き小休止だ。そこからは、木道の道が暫く続くが、天狗原の湿原と花々が気持ちを和らげてくれる。タテヤマリンドウ・イワイチョウ・ヒオウギアヤメ・ワタスゲなどが咲き競っている。

 

  

 

 そして、雪渓の残っている斜面を登る。この頃には、下山者と早くも行き違うようになる。大岩の間を抜けると二つ目の雪渓が現われた。踏み跡は右の方向に向いている。そして、なだらかな道を進み乗鞍岳で小休止。大きなケルンの建つ乗鞍岳から少し降りると、白馬大池でクロサンショウウオが群れていた。山荘には9時に到着し「コーヒでも・・」が、小屋の値段表を見て前のベンチでのコーヒーブレイクとする。

 

 

 白馬大池は、縦走路の交差点みたいで人がたくさんいる。休んでいると、若者のグループが降りてくる。小蓮華山へは、2時間程の登りだ。ハクサンコザクラ・ハクサンイチゲなどのお花畑の中を進むと、ハイマツ帯となる。ハイマツの下には、ゴゼンタチバナ・リンネソウが咲いている。やがて、登山者の進路を塞ぐ雷鳥の親子が姿を見せる、雷鳥坂だ。

 

 

 

 広い尾根へ出ると、コマクサが群生をなし、チシマギキョウ・イワギキョウ・ミヤマダイコンソウなど一面のお花畑だ。暫くの登りで小蓮華岳である。頂上には、鉄剣が建っている。11時半だった。小休止の後、白馬岳へ向かう。快適な道で、三国境から少しの登りで13時25分に白馬岳に立った。ここには、大勢の人達が次々と登ってきていた。360度の大パノラマを楽しんだ後、村営白馬頂上小屋に向かった。

 

 

 

 宿泊の手続きを済ませてのビールが心地よい。「今日は、個室が空いていますヨ」との事で、個室を頼みゆっくりと寛ぐ。大雪渓を登ってくる登山者が次々に現われる。小屋の前に座っていると、やはり登って来るのは中高年のグループが大多数だ。夕食後、夕陽の撮影のために丸山に向かった。が、ガスが次々と湧き上がって来るので、視界がさえぎられる。しかし、目の前にブロッケンが現れた。初めての経験で、一緒に夕陽を撮影に来ていた若者のグループも感激していた。

 

 

 

2日目(7/24)【白馬〜鑓ケ岳〜不帰キレット〜唐松岳】

 

  

 

 

 今日は、今回の縦走の核心部でもある、不帰キレットだ。もじどうりの“かえらず”にならないよう願いながら出発だ。丸山には5時に着く。ここには“日の出”の撮影のために大勢の人が出ていた。だが私達は先を急ぐ。

 

 

 左前方に変な姿の杓子岳を仰ぎ、右方には立山から剣岳の連峰が黒部の峪を挟んで聳えている。そして、はるか前方に槍が岳が雲の上に姿をみせている。しばらくで、杓子岳のトラバース道で、“オバサン三人組”に追いつく。前方には、二組のペアの姿が見える。私達は杓子岳をパスして、鑓ケ岳への取り付きで朝食とする。朝食後、白馬側の絶壁を覗き込むとお花畑が広がっていた。テガタチドリの群落だ。

 

 

 
 小鑓を越えて、ゆっくりと登れば鑓ケ岳へ着いた。縦走路の別れにザックを取りに降りると、先ほどの“オバサン三人組み”が追いついてきた。「この山は、何という山ですか?」とか、「鑓温泉への分岐は?」とか口々に聞かれる。呆れてばかりではダメ・・で、「私もここは初めてですが鑓温泉に降りる道は、あそこに見える峠に案内がある筈で、左へ降りる道がある筈です・・・」と別れる。

 

 

 
 鑓温泉との分かれを見送り、少々の登りで、天狗山荘は雪渓を下った処にあった。先ほど10名程の大きなザックの集団が、先行していったのが見えたが、昨夜はここでの泊まりだったのか・・・とにかく、8時に小屋に着く。鑓ケ岳の登りで私達を追い越した“単独”の人と、中高年ペアが朝食休憩中だった。
 
 天狗山荘で休憩後、水を補給して出発だ。なだらかな登りの道は、右手に見える剣岳を見ながらの散歩気分で気持ちいい。暫く進むと、行手が開ける場所に着いた。何か声がする・・・大きなザックの若者達が、直ぐ下のガレ場を占拠していた。“天狗の大下り”の取り付きだった。渋滞の始まりだが、先頭はそこに見えている。先程先行した人達も、事の成り行きを見守っている。「高校生の新人を含むグループだ」そうで、取り付きの2m程の岩場の下降を「足をここへ置け」とか、「こちらへ回れ」とか指示の声が飛んでいる。

 

  えらいこっちゃ・・・渋滞は、始まったばかりだ。

 

 

 天狗の大下りの取り付きでの騒ぎに気圧されて、先行きに不安を感じたが、道を譲ってもらったからには、行くしかない・・ザレた道をグーンと高度を下げて、不帰のT峰は稜線を伝う道だった。そして、間もなくU峰が現れた。

 

 

 ナンジャコリャ・・何処を昇るんだ。鞍部で休んでいるペアに先行してもらって、後を付いて行く事とした。そのご主人は「五年前に雨の中歩いた」とのことで、私の不安も消し飛んだ。取り付くと、ペンキマークと鎖、ハシゴの連続で、岩は硬く足場もしっかりしていた。「石鎚の東稜みたい」と、相棒が口にする。そうだ、“整備の行き届いた東稜”かもしれないが、こちらのは規模が大きくてそれも何個もある・・・
 
 「下を見ないように、足元だけ見ていこう」と、高度を上げていくとガスが沸いて来た。しかし、足元を確認した一瞬ガスが飛び、スパっと切れ落ちた足下が見えた。なんと言う高度感だろう!そして又、ガスが視界を覆う。雪渓を伝って吹く風がほてった肌を冷やして、気持ちいい。そして、あっけなくU峰の頂に着く。ここが、北峰だった。

 

 

  
 南峰からV峰へは、ハイマツ交じりの歩きやすい道で、さほど危ない箇所も無く通過する。だが相変わらずのガスの中で、唐松岳へのルートも確認できない。風の当たらない場所で休憩して、再出発すると直ぐ上が頂上だった。何も見えない頂上で、記念撮影だった。14時だ。
 
 唐松岳頂上小屋は、直ぐ下に建っていた。宿泊の手続き後の“生ビール”は、いくら高くてもいい・・・そして、同行をお願いした山口の夫婦には、感謝の気持ちでいっぱいである。

 

 

 

 3日目(7/25)【唐松岳〜丸山〜八方】

  

 昨日お世話になった山口のご夫妻は、五竜〜鹿島槍〜扇沢で、山中2日を残しているそうで、ガスの中を小屋を発った。私達は、今日は八方まで降りるだけである。 朝食を済ますと青空が広がっていた。正面に仙人池の赤いヒュッテの屋根が見える。一昨年歩いた仙人池ヒュッテから黒部に落ちる仙人谷を眼に焼きつけて、下山にかかる。
 下山路は、夏道は使えなくて冬道のルート(尾根)だった。眼下の街並が朝陽に照らされて、輝いていた。しばらく降りると、五竜の後ろの鹿島槍が顔を覗かせた。ここらあたりは、お花畑で相棒は“とっても忙しい”・・・ハクサンシャジン・カライトソウ・アカバナシモツケソウ・ダイニチアザミ・タテヤマウツボグサ・キンコウカ等・・ 

 

 

 左手にずーっと見えている稜線が、白馬大池〜白馬三山〜不帰キレット〜唐松の山々で、やがてケルンの建つ場所へと降りてきた。

 

 

 

 リフトを乗り継ぎ、相棒がスキーを諦めるきっかけを作った“兎平”も、今は“お花畑”だった。あれから,、既に二十年の歳月を経ていた。

 

 

 おまけ【小谷温泉】
 
 寄り道の温泉は、小谷温泉とした。

 

 

 

 天狗の大下りの取り付きでの騒ぎにまたしても怖気づいた私は、クラックに足を深く入れすぎて穂高同様抜けなくなってしまって、おっちゃんの手を煩わしてしまった・・・・。八方尾根の花の撮影は日が照りすぎてうまく撮れず出来てきた写真を見てガッカリじょ。