29.TA2011Sによるリミッター機能をもったマイクアンプの制作  15'12

ドキュメント


TA2011Sのデータシートにある回路で測定したアタック時の過渡特性を示す。(ネット上で紹介されている一般的な回路)

600Ωのトーンバースト信号源から、制限開始レベルより6dB大きな信号を電解コンデンサーを介して突然加えたものである。

歪みは認められない。アタックタイムは50mSとかなり長い。データシート通りである。

以下周波数何れも1KHz

TA2011Sは軽く使えば歪まないといえる。

TA2011Sは東芝の製品である。製造中止であるがまだ入手可能のようである。またチャイナ国のセカンドソースも販売されている。

   

同じく、14dB(5倍)大きなトーンバーストを加えたときの過渡特性

負極側が圧縮が終わるまで波形がつぶれている。IC内部のアンプのバイアスに偏りがあるためと思われる。ピークマージンが僅か6dBしかないのでこのようになる。

次々にトーンバーストを繰り出せば波形はきれいになる。従って実際の音声では違和感は無い。民生用のテープレコーダー等で活躍していたものと推察される。

   

同じく、制限開始から30dB大きなトーンバーストを加えた場合の過渡特性。

ここまでくると、実際の音声でも少しは違和感があるのではと思われる。100mS以上にわたりクリップされている。

以上が一般に使用されているTA2011Sの回路のアタック特性である。

   

ドキュメントで説明しているようにアタックタイムを短くしたときの過渡特性である。

アタックタイム約5mSEC、制限開始レベルより14dB大きなトーンバーストを突然加えたときの波形。

上はICの出力端子(5番)の波形。負極側がクリップされているが時間は約5mSと短くなっている。

下の波形はオペアンプNJM4580DDによる外付けアンプの出力波形。ソフトクリップが効いて飛び出しが軽減されているのが分かる。

前3枚の波形と比較すると、まったく違ったリミッターに変貌しているのがよく分かる。

   

同じくアタックタイム5mS、14dB圧縮時の波形。

上の波形はIC入力3番端子すなわち外付けアンプの入力波形。(3番端子で既に圧縮が行われている)

ICの5番端子(出力端子)に比べればクリップは無い。

下の波形は上の信号を外付けアンプで増幅した出力波形。(前の写真と同じもの)

   

アタックタイム約2mS、14dB圧縮時の過渡特性。

上は、外付けアンプの入力波形。下はその出力波形。

この程度のレベルで運用することが望ましい。この波形と次の波形が回路図の仕上がり特性である。

TV局の音声担当にも従事されていたJA4APJ清水氏にモニターしてもらったが音質は私のリミッターと殆ど変わらないとのことであった。

   

アタックタイム2mS、20dB圧縮時の外付け出力アンプの波形。(1KHz)+6dBでソフトクリップされている。

私が長年管理していたアナログテレビの音声多重端局のリミッターはこの程度のアタックタイムでした。リミッターの後に+2dBのクリッパーで頭の飛び出しをカットしていました。温度補償されたハードクリッパーでした。今回出力アンプに簡単なソフトクリッパーを組み込みましたが、ダイオードの温度変化に注意が必要です。

今回のリミッターは平均的な感度のダイナミックマイクを使用した場合、少し大きな音声でも20dB以内の圧縮におさまるようにレベル設定したつもりである。

これらの観測は独自に開発したトーンバースト発生器を用いたものであるが、先に紹介したパソコンのトーンバーストでも可能と思います。この波形であれば、1KHz20波のトーンバーストで間隔はリカバリータイムの2倍の4000波(4SEC)とする。パソコンのL,Rに出力し、どちらかでオシロをトリガーする。

   

周波数100Hzの20dB圧縮特性。下の波形は制御信号波形。

波形を見ると制御信号は半波整流されているようである。従ってこのICは負極(−側)のピークは検波しない。またアタックタイムを短くしょうと検波回路の時定数を短くすると低域でリップルを平滑できずこのように歪みを生じる。この波形はオシロのプローブ(10MΩ)を6番端子に触れた時のものである。プローブを外せば歪みはこの半分程度となる。(制御電圧のリップルで歪みを生じているのが分かる)

私のホムページのトップ制限増幅部に制御電圧波形を示しているので比較してもらいたい。制御電圧は垂直に立ちあがり階段のように変化していくのがわかる。また私の声は正極のみ検波されている。

   

TA2011Sは制限開始レベルから大きな信号を与えても殆ど振幅は変わらない。ネットではこのICを用いたものをコンプレッサーと称しているが、コンプレッサーの動作とは別物である。ALCまたはAGCアンプとでもいうべきだと思う。

この波形は今回のリミッターに私の音声をマイクから正極で入力し、充分圧縮したときの波形である。私の声は殆ど正極(+側)にピークがある。

   

次にマイクを逆相にして上の写真と同じように充分圧縮したときの波形である。ドキュメントで説明しているようにこのICは制御電圧を半波整流しているため、圧縮された波形にこのような大きな振幅の違いが発生することになる。振幅のピークの低い音声の負極(−側)のみを検波するので、正極側は大きくはみ出してしまうことになる。同じレベルの音声を圧縮した場合入力極性の違いによりこのように振幅が異なるということである。、

多分たいていの人は正極側にピークがあるのではなかと思うが、調べて見ないと解らない。測定器の無い人も回路図のとおり組み立てると同じ性能になると思われるのでトランシーバーに入力しマイクの極性を切り替えALCメーターでレベルを比較してみてもおおよそのことは分かると思われる。マイクの極性切り替えはバランス出力でないとやりにくい。スイッチで切り替えるようにすると分かり易い。どちらの極性でもリミッターとしての作用はあるがよく調べた上で使用する。

   

100円基板より上等の基板に組立てた制限増幅器。PTTスイッチはケースの上ぶたにつけている。緑のLEDは電源、赤はPTTをおすと点灯する。

上中央がNJM4580DD,左下がTA2011S、黄色と青のコンデンサーは制御電圧平滑用フイルムコンデンサーで取り替えてテストし易いように端子を立てている。左下の緑の配線はアース端子である。ケースはコーティングやアルマイト処理でアースが取れないのでカッターナイフの背中などでよく剥ぎとりビスなどを取り付ける。

実際の使用方、 トランシーバーのマイク端子に接続し、ALCが少し振れる程度にマイクゲインを調整し大きな声でしゃべってみてALCレベルがあまり変化しなければリミッターは動作していることになる。トランシーバーのマイクゲインはツマミの位置が真ん中ぐらいになるようリミッターのマイクレベル抵抗を調節する。回路図のレベルはケンウッドTSー870でやや高いレベルである。

   

JRCのALC内蔵マイクアンプIC,NJM2783を使ったリミッター機能付きマイクアンプ

てんとう虫大のSSOP14タイプのICである。ピッチ変換基板に半田付けするのがやや面倒であるが、このICはゲインが充分あり簡単にマイクアンプが製作できる。次回紹介したいと思っています。なおこのICは現在製造中のようであり、通販で入手可能です。型名で検索すればJRCが入手先を紹介しています。データーに間違いがないよう2組作るようにしている。

RSコンポーネンッ 5個購入単価208円