実家
耕介と言う婿を迎えて数日……
薫は悩んでいた。
(うちの考え違いじゃろか……
新婚ってもっとこう……
「はい。あ〜ん♪」
とか……
「耕介さん……口元にご飯粒が……」
とか、言ってうちの口でそれを食べたり……)
薫は自分の考えで悶え転がりまくってる。
「いや。うちは……」
誰かにしてるようないい訳……
「どっちにしろ……あんまり会えんのはオカシイ!」
思い立ったらすぐ行動。
薫はここ1年で【希望する事】を覚えたのだった……
………………
…………
……
雪乃の部屋(はぁと)
「……」
一瞬がくっと来た……
「いい歳して……(はぁと)はないじゃろ……」
「誰がいい歳なの?」
「そりゃ母さん……
ひぃっ!」
薫は背中の気配を感じて青くなる……
「そりゃ……娘が結婚
までする歳ですもの……
「神咲さんって若く見えますね♪」
なんて、ご近所で言われて良い気にもなってましたよ……
でもね。でもね。私だってね……
薫ちゃんのいじわるー」
そう言いたいだけ言って雪乃は駆け出して行った……
「しまった!
逃げられた……」
「薫ぅ!」
「と、父さん……」
雪乃が逃げた方からやって来る。薫パパ一樹。
「良くも……雪乃を泣かしたな……」
「いや……あの……」
重厚な雰囲気があたりを包む。
重い空気と
ねっとりとした視線……
今の薫は全身何所を動かしても一樹には手に取るように解るであろう……
「良くやったぁ!
雪乃のあの目に涙いっっぱい浮かべて抱きついて来る所が……
もうもう……
父さんは嬉しいぞー」
と、薫は思いっきり抱きしめられる。
「と、父さん……」
「さっきから、同じ言葉しか聞いてないぞー」
「えっと……」
「それは俺の嫁です」
「うむ、返そう」
薫は耕介に抱きしめられる。
「こ、耕介さん……」
「修行に行こうか……薫」
「うわ、聞いたか十六夜。
薫だってよ。薫」
「それはそうでしょう……
もう薫は耕介さまのお嫁さんなのですから……」
耕介は十六夜(刀)を持っている。
そこからにょきっと人(十六夜)が生えてるので結構不気味だ。
「うわぁ……
妙にむかつく……
お前ら何所へでも行っちまえー!」
一樹は涙ぐみながら元来た方へ走って行った……
「何も泣かんでも……」
「に、似たものカップル……」
薫と耕介はそれぞれ感想を口に出す。
「すみまらん……耕介さん
格式だけは多い家で……」
「今のは格式なのか?」
「いえ……性格です」
薫も耕介も顔を見せ合い笑い会う。
「これから、滝に打たれるのが修行らしいんだが……」
「お供します……」
滝壷で薫は後悔していた……
(は……恥かしい……何時もは暗がりなのに……)
対して耕介は一点集中と言わんばかりに薫【のみ】を見つめる。
じっと見つめる耕介。
頬を染めて恥かしがる薫。
茂みで見ている母と父と十六夜。
「ここからどうなるのかなぁ……」
「心無しかわくわくしますね」
「十六夜も言うようになりましたね」
「雪乃さま……」
「お、耕介さんが動くぞ」
「ほら、久々の二人なんだし……」
耕介は薫の手を取る……
「は、はい……」
頬を染め
うつむいて
信頼の全てがあると言わんばかりに
引き寄せる手に体を預ける……薫。
ふと……目が会った……
唇が合わさる……
耕介の手が肩を抱きしめ……
二の腕をさすり……
胸の方に伸びてくる……
「こ! 耕介さん!」
「あ……ごめん……」
抱きしめる腕が離れるも
薫の体重は耕介に寄ったまま……
茂みの奥では
雪乃が一樹に持たれかかる。
十六夜が暇そうに両者を見ていた……
ゆうひが見え始める時間……
「結局……何の修行だったのでしょう?」
「気を効かしてくれたんだよ……」
耕介の言葉に薫は大きくうなづいた。
――夕食――
「孫はまだか?」
「ぶっ!」「なっ!」
いきなりの一樹の言葉。
「な、な、な、なにいってるとですか?!」
「うむ……そろそろ修行と称した婿いびりも終わりにしようかと……」
一樹の言葉が飛んだ時。
薫も飛んだ。
唸る拳
ふっとべ父よ……
「いびってただけかぁ!」
「だって、だって、俺もやられたんだもん!」
「理由になるかぁ!」
「耕介くん!」
「は、はい!」
「娘婿はいびるように」
「はい!」
「うなづくなぁ!」
「薫……
じつは私が見ている限りずっと……」
「うむ、家系なんだ」
「そ、そんな事って……」
「不思議よねぇ……婿を取ってるのに
婿の方が皆似てるって……」
「雪乃さまと薫はあまり似ていませんものね」
「ねぇ……」
「そうだ、まだ那美が居た!」
「なんの話だー!」
「お義父さん、その時は是非!」
「うむ。一緒にいびるか!」
「いびるなー!」
和真(薫の弟)の運命や、いかに!
続かない続かない(笑)
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