9月
秋の吐息が乏しい頃。
夏の吐息が乏しい頃。
新しい息吹とともに
風がうっすらと変わります。

 先輩の部屋も少し様変わり
少しずつ増えていった、私の小物。

「そろそろ、マグカップも欲しいかな」

先輩のほんの独り言。

「私のマグカップはありませんでしたっけ?」

私に答えるように優しい瞳が息を持つ。

「あるよ。
けど、そう言う事じゃなくてさ」

先輩の瞳が私と自分を行き来する。
こう言う仕草と思考が御剣先輩にロリコンとからかわれる所なんでしょうね。

「ペアでそろえます?」

「うん。
さくらには悪いけど
唯子と小鳥とおそろいなんだよね。今のは」

視線を外しながら言うと
本当に浮気みたいですよ?

「形も色もおそろいにしちゃいましょうか?」

「同じ服着たり?」

「はい。
真っ黒のワンピース」

「それは、簡便」

ふっと飛び出す笑い事。
とりあえず、先輩の新学期一日目はゲットできたようです。




買い物に行こう





 始業式なんてものは
大抵が短くすんで
そのまま部活に出る鷹城先輩を見送り
野々村先輩をその保護者に(先輩談)

「でも、駅前に来たのはやりすきじゃありません?」

「うん?
さくらはさ、コップ買うだけのつもり?」

「違うんですか?」

「チッチッチッ♪」

私が首をかしげると
楽しそうに指を左右に振る。
あの……それ、目がついて行っちゃうんですが……。

「さくらも家に来る頻度が唯子や小鳥並になってきたしね。
泊まりの数なら二人より上だし」

「これで泊まりの数が二人より下なら
私は落ち込んじゃいますよ」

「だ・か・ら♪
今日はさくらグッズを買い込んじゃうのだ!」

「ふふ、その言い方だと
ぬいぐるみ、パジャマ、コップ、ソーセージですかね?」

「そうそう、
俺、さくらのぬいぐるみ作っちゃうよ」

「もう、先輩は器用だから良いかもしれませんけど
私は先輩のぬいぐるみなんて作れません」

すねた振りして後ろを向く。

「さくらには、ぬいぐるみの俺でも抱きしめないでほしいな」

すかさず、先輩が後ろから抱きしめてくれる。
私達は周りのカップルと同様に
べたべたとしながら小物を見ていた。



「でも、カップル専用の小物屋さんってのも珍しいですね」

「なぜか、この街ってカップルが多いんだよなぁ
女子寮の管理人さんとか」

そんな事を話しながら次々と買い物籠が埋まる。
って、先輩が私のパジャマまで選んでる。
やっぱり、鷹城先輩との時間のせいかな?

「さくらは桜色のパジャマとか似合いそうなんだけど
どう?」

視線に気がついたのはおずおずと聞いてきた。

「じゃ、先輩も桜色のパジャマ着るんですか?」

「えっと……」

「色も合わせるんですよね?」

「はい……着ます」

まさか、うなずくとは思ってなかったので
ちょっとびっくりです。
 マグカップ、スリッパ、歯磨き、Tシャツと
本当におそろいのを買って行きます。


「彼女が出来たらさ
お下がりじゃなくて
こう言うおそろいとかってしてみたくて」

帰り道にいつもの調子で先輩がそうつぶやきました。
夕日にそまる先輩の横顔も綺麗で
寂しそうにも見えます
だから

きゅっ

と、手を繋ぐのも
やりたかった事なんじゃないかと
思いました。

「さくら……」

手を握るだけでも
凄くドキドキした、夏と秋の間の買い物でした。




後日の朝

唯子「あー
   しんいちろ、幾らさくらちゃんがいとしいからって
   さくらちゃんのパジャマで寝るのは感心しないなぁー」

真一郎「うるせぇ!
    ばか唯子!
    このパジャマは俺んだ!」

唯子「しんいちろがピンクのパジャマ
   似合ってる! すっごい似合ってるよー!」

小鳥「唯子……笑ったら
   悪いよ……ふふ……あはは」

真一郎「ちびっ子も笑うんじゃねー!」

と、言う事があったそうです。

唯子「で、さくらちゃん
   しんいちろが着てたパジャマってさくらちゃんのじゃないの?」

ななか「綺堂さんのパジャマが相川先輩の所にあるってのが
    また、良いですよね〜」

さくら「ええ、先輩が
    パジャマをおいてけなんて言うから
    私もおいてったんですけど
    いつの間にか先輩はそれを着て楽しむように」

すっと顔を伏せて
ないてるように見せると

真一郎「さくらも、こんな悪ふざけするなー!」


この後
先輩に女物のパジャマを着る趣味がある
って、話で結構盛り上がりました。
土日のお泊りには

唯子「さくらちゃんネグリジェ
   ネグリジェもって行こう」

小鳥「朝早くに見に行くからね」

さくら「はい。楽しみにしてます」

真一郎「着ないからなっ!」





あとがき
書いた理由は最近恒例(笑)
いきおいでいつものように書きました
こう言うのどうですかね?
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